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<インタビュー>『FINAL FANTASY VII REBIRTH』テーマソングの歌唱担当:ローレン・オルレッドが来日、植松伸夫も太鼓判を押すボーカルに注目



ローレン・オルレッドインタビュー

Interview & Text: 黒田隆憲
Photos: Yuma Totsuka
Translator: 松田京子

 ミュージカル映画『グレイテスト・ショーマン』(2017年公開)の名曲「ネヴァー・イナフ」を歌唱したローレン・オルレッドが、『FINAL FANTASY VII REBIRTH』のテーマソング「No Promises to Keep」を担当。その繊細かつ力強い歌声により、作品における象徴的な存在であるエアリスに「新たな命」を吹き込んだ。

 両親ともにクラシック界で活躍する音楽一家に生まれ、マライア・キャリーに出会って「ポップスの道」に進むことを選んだローレン。その後、長い下積み時代を経て俳優レベッカ・ファーガソンの「吹き替えシンガー」に起用されるなど、他のシンガーとは一線を画すユニークなキャリアを積んできた彼女に、これまでの半生を振り返ってもらった。

──父親はSalt Lake Choral Artistsの指揮者、母親はソプラノ歌手という音楽一家に生まれたというローレンさんが、ポップスに目覚めたのは?

ローレン・オルレッド:いとこがマライア・キャリーのベストアルバムを貸してくれたんです。その声を聴いた瞬間、「私もこういう歌い方がしたい!」と強く思ったのがポップスに目覚めたきっかけでした。それまでの私は児童合唱団に所属し、クラシック系の楽曲ばかり歌っていたのですが、それからは自室に鍵をかけ(笑)、マライアの歌に合わせて練習するようになりました。マライアをきっかけに、セリーヌ・ディオンやホイットニー・ヒューストン、トニー・ブラクストンといったシンガーの楽曲も聴くようになっていきましたね。それが11歳の頃です。

──これまで親しんできたクラシック音楽と比べて、マライアのどんなところに魅了されたのですか?

ローレン:家ではクラシックや映画のサントラ、もしくはワールド・ミュージックばかり流れていたので、マライアの歌を聴いたときは本当に驚きました。全身で表現しているようなソウルフルなあのボーカルスタイルは、私にとって初めての体験で。例えばアドリブやフェイクはクラシカル・ミュージックにはないので、本当に衝撃的だったんです。

──ポップスに夢中のローレンさんに対し、ご両親はどんな反応でした?

ローレン:私の母親はクラシック声楽のボーカルコーチなので、「クラシックにおける正しい発声方法」に精通しており、いわゆるポップシンガーの歌い上げるスタイルは、喉にとってもあまりよくないし、すぐに痛めてしまうのではないかと非常に心配していました。でも私は、ポップシンガーの歌い方を学ぶことは喉を鍛えることだと思っていて。確かにクラシックシンガーよりも、ポップシンガーのほうが音楽のキャリア自体は短いかもしれない。けれど、その犠牲を払ってでも彼女たちのような表現がしたいと思っていましたね。今は両親ともに受け入れてくれて、とても応援してくれています。

──ポップスの道を志すようになり、具体的にどのような活動をされていましたか?

ローレン:とにかくプロとして歌いたかったので、そのためにニューヨークで暮らすことを夢見ていました。1年間、大学でミュージカルを学んだのですが、そのときの先生に「バークリー音楽大学を受けてみたら?」とアドバイスされたんです。「ポップスの体系的なプログラムを持つ世界で唯一の音楽大学がバークリーだから」って。それで試験を受け、合格しました。バークリーで学んだことは本当にたくさんありましたね。例えばバンドと一緒に歌うときに、シンガーとしてどうあるべきか。ソングライティングやレコーディングの基礎もそこで学び、今の自分の音楽人生の指標となっています。

──22歳のとき、米NBCの音楽オーディション番組『ザ・ヴォイス』のシーズン3(2012)に出場しましたよね?

ローレン:ハイスクール時代から地域のタレントショーや、ボーカル大会のようなものにはよく出ていました。18歳のときも、『アメリカン・アイドル』のオーディションを受けたことがあったのですが、そのときは書類で落とされてしまいましたね。22歳で『ザ・ヴォイス』に応募したときは、レコード会社との契約が失敗に終わったところからの再スタートという感じだったので、敗退し、本当にがっかりしました。

──それでも続けてこられたのはどうしてだったのでしょう。

ローレン:実は『ザ・ヴォイス』の出演後、一度音楽から離れていた時期があったんです。地元のコーヒーショップで働きつつ、結婚式などで演奏するウェディング・バンドの一員として活動していました。5年くらいポップスシーンの第一線から離れていたことになります。そうこうしているうちに、作曲家がデモ制作で仮歌を入れるときに、スタジオに入って一緒に仕事をするようになって。例えば映画俳優が作品の中で歌うときの、リファレンス用のボーカルです。人前には出ていないけど、歌い続けていたんですよね。そこで少しずつ自信を取り戻していきました。

──その流れで(映画『グレイテスト・ショーマン』音楽担当の)パセック&ポールと出会い、「ネヴァー・イナフ」の仮歌に参加することとなったわけですね。

ローレン:はい。『グレイテスト・ショーマン』で、スウェーデン出身のオペラ歌手ジェニー・リンドをレベッカ・ファーガソンが演じることになり、彼女のためにガイドとなる仮歌をレコーディングしました。ところがそれをレベッカが聴き、「これはローレンが歌うべきでしょ。私が口パクで合わせるから」と言ってくれたんです。


──そんなことって滅多にないですよね?

ローレン:確かに。ただ、その話を聞いたときにもちろん興奮はしましたが、今までずっとがっかりさせられることばかりの人生だったので、とりあえず映画をこの目で見るまで信じないようにしようと思っていました(笑)。この業界って、自分の中の「期待感」に左右されないよう、自分自身のコントロールがすごく大事なんです。

──とてもよくわかります。

ローレン:でしょう(笑)? とはいえ、実際に劇場に座ってあの音楽が流れ出し、レベッカが私の声で歌っているシーンを見たときには涙が止まりませんでした。私にとって、最も幸せだった瞬間の一つです(と言って涙ぐむ)。

──レベッカ・ファーガソンとは何かやり取りがありましたか?

ローレン:レベッカとは何度もお会いしたのですが、ジェニー・リンドが話すスウェーデン訛りの英語をうまく歌詞に入れられるよう、レベッカに歌詞を読んでもらいました。それを録音して何度も聴きながら、歌詞に反映させていきました。逆にレベッカも、私が歌っているところを動画で撮り、手の動きや体の動きを参考にしていましたね。

──とても美しいコラボレーションの形ですね。

ローレン:本当に。レベッカは素晴らしい俳優だと思いましたし、唯一無二の素晴らしい体験でした。

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──『グレイテスト・ショーマン』の体験は、ローレンさんの環境をどう変えましたか?

ローレン:まずコーヒーショップを辞めました(笑)。その後、マイケル・ブーブレのアルバム『ラブ』(2018)に収録された「ヘルプ・ミー・メイク・イット・スルー・ザ・ナイト」のゲストボーカルに呼んでもらったんです。やっぱりシンガーは、それが口パクかどうかはわかるみたいですね。マイケルは映画を観てから「歌っているのは誰なのか?」と探し回ってくれたようで、デイヴィッド・フォスターと3人でミーティングがあり、その後デイヴィッドのツアーにも帯同することになりました。

──ローレンさんにとって、『グレイテスト・ショーマン』の仕事はまさに人生のターニングポイントだったと。

ローレン:マイケルやデイヴィッドのおかげで素晴らしい体験ができましたが、それでも私が「ネヴァー・イナフ」を歌うと、多くの人から私がカバーしていると思われることは多々あります。「あの映画のレベッカそっくりに歌えるんだね」とか言われたりして(笑)。「ネヴァー・イナフ」は、自分自身の人生を変えてくれた曲ではありますが、人々に私を知ってもらうきっかけにはならなかったんですよね。

──今回、『FINAL FANTASY VII REBIRTH』のテーマソング「No Promises to Keep」を歌うことになった心境は?

ローレン:『FINAL FANTASY』は、アイコニックなキャラクターと誰もが知っているあのメロディー……カルチャーとしても重要なレジェンド級の作品であり、その一部になれることを本当に光栄に思っています。

──歌うときに心がけたのはどんなことですか?

ローレン:『グレイテスト・ショーマン』におけるレベッカ・ファーガソンのときのように、まずエアリスと彼女のストーリーについて学び、それを曲に乗せて歌うことを心がけました。

No Promises to Keep (FINAL FANTASY VII REBIRTH THEME SONG) Music Video / ローレン・オルレッド× 360 Reality Audio

──映画『グレイテスト・ショーマン』の経験が生かされたわけですね。

ローレン:まさに。前回と違うのは、レベッカのときのようにエアリスと話し合うことは不可能だということ(笑)。エアリスの気持ちを想像するしかなかったんです。ともあれ、今までやってきた全ての仕事が今に活きているし、本当に役立っていると思っています。コーヒーショップではお客さんへの接し方を学んだし、ウェディング・バンドで歌っていた経験からは、不測の事態や誰かが倒れたりしたときの応急手当に慣れました。

──ローレンさんの起用を提案した植松伸夫さんとは、何かやりとりはありましたか?

ローレン:植松さんが初めて私の声を聴いたのは、やはり『グレイテスト・ショーマン』だったそうです。エアリスの声を探していたときに、私に歌ってもらうしかないと確信していたと聞きまして、本当に光栄に思います。実際のレコーディングでは、かなり自由に解釈して歌わせてもらったんです。たとえばリズムを変えたかったら「自由にやってください」と言われて。とてもやりやすかったですね。


Loren Allred × 植松伸夫 conTIKI - No Promises to Keep / THE FIRST TAKE

──ところでローレンさんは、今回初めて日本を訪れたのですか?

ローレン:実は、2018年にプライベートのイベントで訪れたことはあったのですが、これだけ大掛かりなプロジェクトで来日したのは初めてです。日本は本当にお気に入りの国の一つ。みなさん自分たちの仕事を丁寧に、心を込めて取り組んでいることを感じます。

食べ物は特に海鮮物が好きです。昨日も豊洲の魚市場へ行ってきました。他の場所では得ることのできない貴重な体験でした。魚も卵焼きも、そして苺も大好き! あんなに美味しい苺を食べたのは生まれて初めてです。大福も食べました。(日本は)ちゃんと文化や伝統を大事にしていますよね。大都会だとそれを感じられない国もたくさんあるんですけどね。

──お話を聞いていて、ユニークなキャリアを積んでこられたからこそ今のローレンさんがいると感じました。今後はどんなアーティストになっていきたいですか?

ローレン:まずは、自分名義のツアーをして色々なところをまわりたいですね。いろいろ経験してきたので成長もしていると思うし、最近はいろんなプロデューサーと仕事をして、曲作りの面でも成長していると思います。いろんなジャンルにも挑戦しています。実は、次のアルバムが9割くらい完成しているんです。それを聞いてもらうのが楽しみですね。

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