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JAMOSA 『LUV~collabo BEST~』インタビュー
コラボレーションの魅力を「いろんな人と恋に落ちれるところ」と語るJAMOSAは、自身が惚れ込んだアーティストと真剣に名共演を繰り広げ、フィーチャリングという文化を大切に育ててきたアーティストだ。故にその歴史と想いが詰め込まれたコラボベスト『LUV ~collabo BEST~』は半端じゃない。よそのコラボとは本気の度合いが違う。音楽愛と人間愛によって構築された楽曲の数々について、本人に話を訊いた。
マイケル・ジャクソンとの出逢い~邦楽に対する戸惑い
--10歳のときに、マイケル・ジャクソンの【Dangerous Tour】の来日公演にキッズコーラスとして参加。これってどんな経緯で実現したの?
JAMOSA:『ウィ・アー・ザ・ワールド』と『ヒール・ザ・ワールド』のバックアップコーラスにキッズコーラスが必要ということで、英語で歌える子供を募集していて。それで数少ないメンバーのひとりに選ばれて、2日間にわたって福岡公演で共演することになったんです。
--JAMOSAにとって、マイケル・ジャクソンってどんな存在なんでしょう?
JAMOSA:私が小さい頃からお母さんが聴いていたから、アーティストとして凄い人だとは思っていたけど、同じステージに実際に立ってみたらお客さんの熱狂ぶりが凄くて「あ、この人、めっちゃヤバいんだ。すげぇ」って子供ながらに。それで「こういう仕事したい。これぐらい影響力のある人になりたい」と思ったのをきっかけに私は本格的に歌い始めたんです。
--他にはどんなアーティストの影響を受けているんでしょう?
JAMOSA:スティーヴー・ワンダーとかジャネット・ジャクソンとか。ジャネットに関してはすべて掘り起こしたぐらい本当に大好きで。あと、10代の頃はメアリー・J. ブライジを聴いてて「あんなシンガーになりたい!」ってすごく思ってましたね。
--少女時代は日本とアメリカを行き来していたようですが、これは何故?
JAMOSA:お母さんが台湾人で、親族の多くがタイワニーズ・アメリカンだったんですよ。それで日本語だけじゃみんなと喋れないから「ちゃんと家族と会話ができるようにアメリカへ行きなさい」って言われて、アメリカの叔父さんや叔母さんの家で暮らすことになって。で、日本で過ごしているときはアメスクへ。
--その時代って今のJAMOSAにどんな影響を与えたと思いますか?
JAMOSA:自分が「これだ!」って思ったことを小さい頃からやってきたから、無駄な時間を過ごさずに済んだ。もちろん月曜日~金曜日は学校の勉強もしっかりしていたけど、金曜日の夜から日曜日はぶっ通しでクラブ行ってて、もうどっぷりクラブカルチャーに染まってたし。そうやって、その時期に何ひとつ無駄のない生活を送れていたから、今の私の音楽ってあると思うんですよね。10代に吸収したことが今すごくタメになってます。
--17歳でアメリカ映画「リトル★ニッキー」の挿入歌を務めてるじゃないですか。なぜこんなチャンスに恵まれたんでしょう?
JAMOSA:L.A.にその当時住んでて、4人の女の子とユニットで活動していたんですね。そのユニットのプロデューサーがいろんなアーティストをプロデュースしたり、いろんなハリウッド映画の挿入歌を作ったりする人で。で、私が作った曲をそのプロデューサーが「良いかも」って言って、アダム・サンドラー(「リトル★ニッキー」脚本・主演)にプレゼンしたんです。そしたら「この曲良い、使わせてよ」ってなって、挿入歌にしてもらうことになって。映画観てると2ヶ所で流れてくるんですけど、犬が交尾してるシーンで流れたりして超ウケました(笑)。でも感動もして。信じられなかったですね。
--その後、日本のクラブシーンを中心とした活動が始まる訳ですが、当時の日本のシーンってJAMOSAの目にはどんな風に映っていたんですか?
JAMOSA:一言で言って、好きじゃなかったですね。日本に帰ってきたばっかりだったし、邦楽に対して「なんじゃこりゃ?」って感じで。その頃は日本語の詞も書けない頃だったし、いろんなことが理解できなかった。でも音楽は好きだから東京のクラブで歌い続けていたら、SPHERE of INFLUENCEのマネージャーと出逢って「一緒に曲やらない? SPHEREもニューヨーク育ちでバイリンガルだからさ」って誘われて。SPHEREと会ってみたらすごく意気投合して「私と同じようなバックグラウンドの人が日本のシーンでも頑張ってるんだ」って思ったんです。で、曲を一緒に作るチャンスもくれて、全国ツアーにも連れて行ってくれて、その中で「JAMOSAの歌詞がいいよね、って思ってもらいたい」ってなって。それが今私が日本語の詞を書けるようになったきっかけです。
--宇多田ヒカル、MISIA、DOUBLE、AIなど、R&Bが日本のシーンにも定着し始めていた頃だと思うんですが、今挙げたようなオーバーグラウンドで活躍するアーティストにはどんなことを感じていました?
JAMOSA:すごくリスペクトしてましたよ。それよりもヒップホップシーンが「なんじゃこりゃ?」っていう感じだったかな。アメリカから帰ってきたばかりの頃は拒絶してた。でも今になって聴いてみると、ちゃんとメッセージ性もあって「なるほどね」ってリスペクトできるし。で、歌姫に関しては最初から抵抗はなかったし、曲の世界観もリスペクトしてました。今やDOUBLE姉さんは私を妹みたいに可愛がってくれているし、AIもそうだし。
--その頃、JAMOSAが目指していたり、大事にしていた音楽や表現の形ってどんなものだったんでしょう?
JAMOSA:日本語の詞を書けないからって、誰かが作った日本語の歌詞を歌って「説得力がない」と思われるのは嫌で。ちゃんと日本語を身に付けて、そこから歌詞を発信できるように努力してきました。例えば「これは日常会話で絶対使わない」と思ったら、歌詞でも使わない。それは今でもそう。「BOND」という言葉は"絆"っていう意味なんだけど、私は実際によく口にしている言葉なんですよ。だから出来るだけ自分のボキャブラリーの中で曲を書いていく。妙に背伸びをしないっていうのが、私が曲作りの中で一番大切にしていることかな。
Interviewer:平賀哲雄
レゲエアーティストとのコラボ~日本ヒップホップシーンの今
--あと、JAMOSAは精力的に他のアーティストと絡んできたアーティストですが、これは意識的にそうしていったの? それとも結果的に?
JAMOSA:私は「こうなりたい」って想像したことは全部実現していて「こういうアーティストと一緒にやりたい」「いろんなアーティストをフィーチャリングしたい」っていうのもすごく思ってたんですよ。でもそれは自分が「これは格好良いな」って思うものを形にして、音楽をちゃんと愛してきた結果で。そこをしっかりやっていれば、良いアーティストは寄ってくるんですよね。SPHEREの件もそうですけど、それは自然と実現できていったもの。
--いわゆるコラボレーションの魅力や意義ってどんなところにあると思いますか?
JAMOSA:いろんな人と恋に落ちれるところですね。みんなそれぞれ違うから、いろんなことを学べて成長できたりするし、自分を再確認することもできる。男性と恋愛するのと同じで。「あ、leccaは私のこういうところを引き出してくれた」「leccaはこうだけど、私はこうだよね」とか。本当、ひとりひとりと恋愛しているみたいで、それがコラボレーションの魅力じゃないかな。
--そんなコラボ曲満載のベストアルバム『LUV ~collabo BEST~』、自身では仕上がりにどんな印象や感想を持たれていますか?
JAMOSA:パレットみたい。いろんな色によって一枚のアルバムになってる。似ている曲はないし、ジャンルとしてもいろんなものが入ってるし。JAMOSAのいろんな面が見れる、成長の過程も感じられる一冊の本みたい。『Cruisin' feat. JAMOSA/SPHERE of INFLUENCE』から始まって、今までの。収録できなかった曲もたくさんあるんですけど、それは第2話、3話で入れるとして。今回は第1話として楽しんでもらえればなと。
--では、そのコラボの数々について触れていきたいんですが、まず『ROSE~エールを贈るよ~ feat.lecca』。女性への応援歌となっていますが、こうした曲をleccaと作ることになった経緯を教えてもらえますか?
JAMOSA:「一緒に曲を作ろう」という話は前々からしていたんですけど、お互いにクラブシーンで活動していて、気になる存在だったんですよ。プライベートではよく飲みに行ったり、ご飯を食べに行ったりしてて。で、ウチらは悩みがあったときは相談に乗ってもらって「それはよくないよ」とか本音で言いあったり、褒めあったりもしているんです。良い意味でライバル同士だし。そういう関係性を曲でも表現して、2人とも女子ファンがすごく多いので、彼女たちへのエールを贈ることができればなと思って。
--leccaも既存のイメージやカテゴライズに捕らわれない、屈強なアーティストだと思うんですが、JAMOSAさんはどんな印象を持たれていますか?
JAMOSA:一言で言って、イイ女だと思います。強いし、でもすごく優しいし。憧れの女性ですね。
--続いて『BOND~キズナ~ feat. 若旦那』。若旦那と歌うに相応しいメッセージソングになっていますが、実際にコラボしてみていかがでしたか?
JAMOSA:予想以上のものになりましたね。でも若旦那は思っていた通り、すげぇ熱い人だった。leccaの男バージョンなのかなぁ。若旦那は凄いとつくづく思います。天才ですね。
--そして、もう約5年前にリリースした楽曲になりますが、根強い人気を誇るナンバー『言えないよ feat. CORN HEAD』。この曲は今、JAMOSAさんの中でどんな存在になっていますか?
JAMOSA:昔の曲なんだけど、ライブで歌うとまだお客さんが歌えていたりして。今の若い子って、今リリースされている流行りの曲しか聴かないじゃないですか。でもその中で『言えないよ feat. CORN HEAD』を私より全然年下の子が知っていたりすると、この曲が本当に愛されてるんだなって感じる。それはライブで実感しました。だから今回サウンドを変えてもう一回お届けしたいとリクエストして入れさせてもらえました。
--今作は前半にレゲエ色の強いアーティストとのコラボ曲が続きますが、これは意図的なもの?
JAMOSA:今、気付いた(笑)。超偶然ですね。
--そして、こちらもJAMOSAがリスペクトする人とのコラボ曲です。『手紙 feat. DABO』。このナンバーも大きい存在になってるんじゃないですか?
JAMOSA:相当でかいですね。これもライブで今でも盛り上がる曲で「歌い続けたいな」と思ってるし。あと、私の生まれ育ったホームグラウンドのクラブカルチャーど真ん中の曲なのに、新聞記者のおじさんとか、普通のOLとか「『手紙』良いっす」って言ってくれるんですよ。それは私の中ですごく意外だった。「絶対にB-BOYしか好きじゃないだろう」と思ってたんだけど、YouTubeでもすごく聴いてもらえてるし、JAMOSAと言えば『手紙 feat. DABO』って思ってる人がたくさんいる。だから今回のアルバムにこの曲は絶対に欠かせなかったですね。DABOくんも自分のベストにこの曲入れてくれたし。
--今作に参加してるラッパーは日本のヒップホップ黎明期から活躍している人たちですが、現在の日本のヒップホップシーンってJAMOSAにはどんな風に映っていますか?
JAMOSA:昔はすごくバトっていた気がするんですけど、今は本当にみんな仲が良い。もちろんそうじゃない人もいるんだろうけど、昔の方が足を引っ張り合っていたと思う。でも今はZEEBRA氏がDJ DIRTYKRATESとして邦楽を現場ですごくかけていたりとか、DJ CELORYたちと【黒船】っていうツアーをやって日本語のヒップホップ/R&Bだけを日本中でかけたりとか。やっぱりウチらの国はウチらでサポートしなきゃ意味ないって、アーティストたちが支え合ってる。で、それをやることによって、他のDJも「邦楽ってかけていいんだ」って思えば、日本のヒップホップ/R&Bも変わっていくじゃないですか。なので、今はアーティストたちがお互いをリスペクトしてサポートしてる印象を受けますね。
Interviewer:平賀哲雄
「この人たち、マジだ!」って感じてもらえると思う
--続いて、これからの季節にたくさんの涙を誘うであろう『あなたの胸にもどれるなら feat. JAY'ED』。このハーモニーには自身でも感動されたんじゃないですか?
JAMOSA:そうですね。これは【Girls Award JAPAN 2010 AUTUMN/WINTER】で歌わせてもらったんですけど、自分でも歌いながらキュンと来ました。誰かを想っているのに我慢するのって一番ツラいじゃないですか。で、この曲と同じように気持ちを伝えたいけど伝えられない、一線を超えてはならない状況にいる人ってたくさんいる。JAY'EDもその経験者だと思うし。だからこれはジャンルとか関係なく、JAMOSAが歌っているとかも関係なく「この曲が良い」って思う人が聴いてくれればいいと思ってます。
--2人の声で奏でられる「あんなに愛しあった二人はもう二度と結ばれちゃいけない」は切なすぎます。
JAMOSA:でしょ!? やっぱりそこが引っ掛かったでしょ? みんな「なんで結ばれちゃいけないんですか?」って聞くんだけど(笑)。
--JAY'EDの声にはどんな印象を持たれていますか?
JAMOSA:JAY'EDは本当に私を信頼してくれていて。私もJAY'EDのことを信頼してるし。同じタイミングでインディーズ活動をしていたんですよね。leccaとかSPHEREもそうですけど、同じ時代を過ごしてる。年齢はちょっと違うけど、私からしてみれば同じクラスにいるみたいな。で、同じ音楽シーンの流れの中にウチらが乗っかっていって、共に感じることがあり。ダメなときもあって良いときもあって。その中でJAY'EDと私はすごくリンクしたんですよね。前に『Fly Away』という曲を一緒に歌ったんですけど、そのときから「ウチらの相性って本当良いね」ってずーっと言ってて。お客さんもそれを感じてくれていたし、この2人は鉄板です。JAMOSA=JAY'ED、JAY'ED=JAMOSA。
--そして『HOME SWEET HOME / GICODE with AI,JAMOSA』ですよ。資料には「家族同然の4人」と綴っていましたが、みんな今でも大事な存在ですか?
JAMOSA:この4人も同じクラスですね。同じクラスの一列目みたいな(笑)。みんな英語も日本語も喋れるし、なんかゴチャゴチャだし、超ワガママなところとか超真剣なところも似てたりするし。あと、情が深くて、仲間をすごく大切にする4人だと思うんですね。だから一緒にいると落ち着くし。そういうウチらの人間性が『HOME SWEET HOME / GICODE with AI,JAMOSA』には表れてると思う。
--いつかステージの上で再び4人揃って聴かせてほしいです。
JAMOSA:一度ageHaでやったんですけど、そのときは満員で大変なことになっちゃって。この曲はそのときしか生で4人揃ってやっていないので、もう一度何かのタイミングでやれたら良いですね。
--そして、今作の最後を飾るMISIAのカバー『Everything feat. MIHIRO~マイロ~』。この曲をカバーしようと思ったのは?
JAMOSA:私は福岡出身なんですけど、地元のクラブに行き始めたとき、MISIAの『つつみ込むように…』がちょうど回りまくってて。まだCDは出てなかったんですけど、クラブではすごく噂になってたんですよ。福岡では伝説の人だったんです。それからボン!ってブレイクしてR&Bのもうひとつの波を作ったというか。久保田利伸さんもいたけど、女子としてリアルなR&Bを売り出していくのは彼女が最初だったと思うんですよ。その中で凄い革命を起こした人だし。で、たくさんの素晴らしい曲を歌われているけど、特に『Everything』はみんなが知っている曲で。で、その曲を「今、新たに生み直したい」っていう気持ちもすごくあったし、MISIAに対するリスペクトも込めつつ、JAMOSAの名の下にやるならこうなる。っていう『Everything』を形にしたくて。
--そんな名共演だらけの『LUV ~collabo BEST~』ですが、世にどんな風に響いていって欲しいですか?
JAMOSA:いろんな想いがあるけど……、今はいろんな音楽が簡単にリリースされてるし、数だけはどんどんどんどん増えていって。コラボレーションとかコンピレーションとかがすごく売れてて「いっせーので、みんなそっち向け!」みたいな感じになってるけど。でも『LUV ~collabo BEST~』を聴くと、多分「この人たち、マジだ!」って感じてもらえると思う。パズル遊びのようにコラボレーションしている訳じゃなくて、ひとつひとつの楽曲において他に変わりがいない相手と真剣に音楽をやってるって。それで「私もマジでやろう」って何かに対して思ってくれたらいいな。本当に良いと思って、自信を持って曲を届けているので。
--極端に分かり易いものしか売れない近年の音楽シーンですが、そうやって真剣に音楽と向き合うことが何よりも正しいと思っていますか?
JAMOSA:もちろん。「今これが流行ってるから、これを軽くやっておこう」って流れ作業のように音楽をやるんじゃなくて「私はこれを本当に信じているのか」って確認しながら、良いクオリティのものを届けていく。私も曲作りからマスタリングまですべての段階に関わっていくし、何かひとつ抜けてもマネージャーとケンカするし。「なんで私はこれを知らないの?」って。自分の名前が乗るからこそ、そこは真剣。やっぱり「JAMOSAの曲って間違いないよね」って信頼してもらいたいし。何より音楽を愛してるから。それは聴いてもらえば伝わると思うんだよね。分かる人は分かると思います。
--いつか、今作に参加したアーティスト全員集めてイベントを開催してほしいです。
JAMOSA:私の誕生会だったらあり得ると思いますが(笑)。ただ、12月10日には『LUV ~collabo BEST~』のリリースパーティーがあるんですよ。さすがに全員は集合できないですけど、lecca、JAY'ED、MIHIRO、他にも何人かは来てもらえるので。そこでもこのアルバムの曲を楽しんでもらえると思います。
Interviewer:平賀哲雄
LUV~collabo BEST~
2010/11/10 RELEASE
RZCD-46651 ¥ 2,530(税込)
Disc01
- 01.BOND~キズナ~ feat.若旦那
- 02.言えないよ feat.CORN HEAD ~reborn~
- 03.SMILE welcomez JAMOSA
- 04.SEASON CHANGES feat.MEGARYU
- 05.手紙 feat.DABO
- 06.あなたの胸にもどれるなら feat.JAY’ED
- 07.Cruisin’ feat.JAMOSA
- 08.今でも好きだよ feat.WISE
- 09.HOME SWEET HOME
- 10.Everything feat.MIHIRO~マイロ~
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