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<CASIO×Billboard Live>Anlyが語る、自在な表現スタイルとクリエイティブの源流
「すべての人に音楽を奏でる喜びを」という想いから、新しい生活スタイルに寄り添う電子楽器を展開するCASIOがBillboard Liveとコラボレーション。Billboard Liveの出演者にリレー形式で「音楽の楽しみ方」を語ってもらう。
日本国内のみならず、海外でも精力的に活動している沖縄出身のシンガーソングライターAnlyが、ビルボードライブに初登場する。昨年10月には通算5枚目のアルバム『26ml』をリリース。自身のルーツである沖縄音楽をはじめ、ロックやブルーズ、ヒップホップにエレクトロなどさまざまな音楽ジャンルを行き来しながら作り上げたこのアルバムは、Anly史上最もジャンルレスでスタイリッシュな作品に仕上がっている。英語と日本語をミクスチャーしながら、弾き語りやループマシンを駆使したソロ、そしてバンド編成など場所によって表現スタイルを自在に変えていく彼女。ビルボードライブではどんなパフォーマンスを披露してくれるのだろうか。今回はライブに向けての意気込みはもちろん、音楽に目覚めたきっかけや楽器遍歴など、彼女のクリエイティブの源流に迫った。(Interview: 黒田隆憲)
コロナ禍も決してネガティブな側面だけではなかった
――Anlyさんが音楽に目覚めたきっかけは?
Anly:両親の影響もあって、小さい頃から音楽は好きでした。父は60年代〜70年代のロックやブルースを、母は沖縄の民謡などをよく聴いていましたね。私が住んでいた沖縄には米軍基地のラジオ局(AFN)があり、そこから流れてくるカントリーやフォークミュージックにも親しんでいたので、かなりミクスチャーなリスニング体験をしていたんです。
父は夕方になると、晩御飯ができるまでの間に縁側でギターをよく弾いていました。それを私が興味深く見ていると思ったのか(笑)、父がギターを買ってきてくれて。それをおもちゃ代わりに遊んでいたのが4歳か5歳くらいの頃でした。小学生になってコードが弾けるようになると、好きな曲を耳コピして歌っていましたね。全て独学だったのですが、「歌うためにギターを弾く」というスタイルは今も変わらないです。
――高校生の頃は、マーチングバンド部に入部してトロンボーンを吹いていたそうですね。
Anly:はい。中学生の時に吹奏楽部に入り、高1くらいまではマーチングバンドに所属していました。本当はアルトサックスが吹けるようになりたくて入部したんです。サックスは吹奏楽器の中でも花形じゃないですか(笑)。競争率が激しくトロンボーンに飛ばされてしまったのですが、今になってみるとそれで良かったと思っています。これは吹奏楽部出身だから言えることですが、トロンボーンを吹く人って「変人」が多いんですよ(笑)。先輩も不思議な雰囲気の人が多かったし、自分も馴染んでいましたね。
――トロンボーンは、スライド管を動かしながら弾く姿がダイナミックでかっこいいと思います。
Anly:確かに。マーチングの時は、スライド管が前の人にぶつからないよう注意が必要でしたけど(笑)。あと、トロンボーンってすごくいい位置にいるんですよ。楽曲を低音で支える時もあれば、トランペットと同じくらい目立つフレーズを吹く時もあって。裏拍でずっと吹いている時は、ホルンやユーフォニアムと「仲間」みたいな気持ちになるし、主旋律を吹く時にはトランペットと同じ気持ちになれるから、そういう部分は楽しかったですね。
――吹奏楽部で合奏を経験したことは、自身のオリジナルソングをアレンジする際に役立っていますか?
Anly:それはあるかもしれない。周りの楽器をよく聴く訓練になったと思いますし、自然とホーンやストリングスのセクションが入っている曲に耳が行くようになったので。「あ、この曲ではホーンがこんなふうに動いているんだ」みたいに聞き分けられるし、今はオーケストラのバンドもやっているので、それも当時の経験が生きてきている。あと、イタリア歌曲やオペラを歌う合唱隊にいたこともあるのですが、それもあってロックもクラシックも好き、音楽全般にずっと興味を持っていましたね。
――コロナ禍以降、家での時間を有意義にしたいという風潮のもと、クリエイティブな趣味をやり始める人が増えているようです。こういった世間の流れをどう思いますか?
Anly:確かに自分の周りのミュージシャンも、人とセッションしたり誰かの曲を演奏したりするより、「自分の楽曲を作ろう」みたいにクリエイティブな気持ちになった人も多いです。私もその時期、自分一人で全てのトラックを作ったりしていましたね。「こういうふうにベースは弾くといいんだ」「こうやって弾くと、演奏に切ないニュアンスが出せるんだ」といった発見もあったし、自分らしい音やフレーズを探す時間がたくさんありました。
他にも、ラジオを通してリスナーさんと曲を作っていくという企画を実現するなど、クリエイティブなことに色々繋げるなど、コロナ禍も決してネガティブな側面だけではなかったのかなと思います。
ビルボードライブは、アーティストにとっても「ご褒美」の場所
――来たる3月15日にはビルボードライブ横浜で、3月28日にはビルボードライブ大阪でライブが開催されます。意気込みを聞かせてもらえますか?
Anly:いつものライブは弾き語りだったりループマシンを駆使したり、あるいはフルバンド編成で演奏したりするんですが、今回はスリーピースで出演します。メンバーの一人、松ヶ下宏之さんは私の楽曲でアレンジにもよく携わってくださる方。ベースもギターも弾けるマルチプレイヤーなので、どの曲でどの楽器を演奏してくれるのかが、私にとっても楽しみの一つです。普段よりもシンプルかつタイトな演奏になりますが、ちゃんと広がりや奥行きも感じられるパフォーマンスにしたいですね。
――昨年リリースされたアルバム『26ml』の曲も披露してくれますか?
Anly:もちろん! 実は『26ml』は「カクテル」がコンセプトなので、ビルボードライブにぴったりのアルバムなんです。
――それは楽しみです。ちなみにビルボードライブにはどんな印象がありますか?
Anly:おそらくみなさんそうだと思いますが、上質な音楽を届けてくれるライブハウスという印象ですね。私はビルボードライブ大阪でガブリエル・アプリンのライブを見たことがあるのですが、食事やお酒を楽しみながら音楽を聴く雰囲気がとっても居心地良かったです。みなさん、何かしら「ご褒美」で来ていらっしゃると思うし、それを音楽を通じてみんなで共有しているのも素晴らしいですよね。
実はまだ、ビルボードライブ東京には行ったことがないのですが、ステージの後ろは大きな窓になっていて、綺麗な夜景も見える素敵な場所じゃないですか。「日常の中に溶け込む非日常空間」と言いますか、近いうちに是非とも行ってみたいです。
――ビルボードライブにくるお客様は、食事やお酒を楽しみながらも音楽をじっくり聴いている印象です。
Anly:そうなんです。だからアーティストも、いつものライブハウスやイベントではやらないような曲を、ビルボードライブではあえてやってみたり、いつもの楽曲も、ちょっと違った趣向を凝らして演奏してみたりする人が多いのではないでしょうか。そんなふうに音楽をより深く楽しめるビルボードライブは、アーティストにとっても「ご褒美」の場所といえるかもしれませんね。
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