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<コラム>ホロライブ×HoneyWorksが届ける“かわいい”が詰まった最新アルバム『ほろはにヶ丘高校』全曲レビュー



コラム

Text:北野 創

  ボカロ、歌い手、VTuberなど、インターネット発の音楽がますます盛り上がりを見せている2024年、それらのカルチャーの魅力をギュッと凝縮したような作品がリリースされる。それが「hololive × HoneyWorks(ホロハニ)」による1stアルバム『ほろはにヶ丘高校』だ。

 「ホロハニ」は、50人超のタレントが所属するVTuberグループの“ホロライブ”と、クリエイターユニットの“HoneyWorks”による新たな音楽プロジェクト。ホロライブのタレントには個人で音楽活動に取り組むメンバーも多く、また、アイドルとしての華やかな姿を前面に押し出した「hololive IDOL PROJECT」、よりシリアスなメッセージを届ける「Blue Journey」といった、複数メンバーによる音楽プロジェクトも展開している。

 そんななかで「ホロハニ」が表現の核にしているのは“かわいい”。なおかつ“男の子のためにかわいいわけじゃない!”というコンセプトのもと、女の子にも楽しんでもらえるような“かわいい”を届けるのが、本プロジェクトの軸になっている。HoneyWorksといえば、TikTokなどのSNSで絶大な支持を集める「可愛くてごめん」(2022年)をはじめ、“かわいい”をテーマにした人気曲を多数生み出してきたことで知られる。そんな彼らが独自の視点でホロライブタレントの“かわいい”を表現したのが、『ほろはにヶ丘高校』という作品なのだ。

 また、今回のアルバムは、新規書き下ろし楽曲で構成された『ほろはにヶ丘高校 -Originals-』と、既存のHoneyWorks楽曲をホロライブタレントがカバーした『ほろはにヶ丘高校 -Covers-』の2枚組で構成。ユニークなことに“ほろはにヶ丘高校”という架空の学校が舞台として設定されており、ホロライブのタレントたちがその学園内で青春を繰り広げているイメージで制作されている。

 そのようにタレント各々の個性やキャラクターを踏まえたうえで、様々なタイプの“かわいい”と“青春”が表現された本作。ここからは全20曲(CDボーナストラックは除く)を個別に紹介していきたい。

『ほろはにヶ丘高校 -Originals-』

▲【XFD】hololive × HoneyWorks 1st Album 『ほろはにヶ丘高校 -Originals- 』

01 かわいこちぇっく! - 戌神ころね

 「ホロハニ」最初のオリジナル曲として2023年9月に先行配信された本楽曲は、学園の先生に扮した戌神ころねが文化祭を盛り上げるべく“かわいい子”をスカウトして回る、という内容。ブラスなどの賑やかな音を交えたスピーディーな曲調が、犬キャラのころねがしっぽを振りながら奔走する愛らしさを強調している。



02 アイドル十ヶ条 - 猫又おかゆ、姫森ルーナ

 トップアイドルを夢見て“アイドル十ヶ条”を心に刻みながら努力する2人の青春模様が詰まった、スカコア寄りのパンクチューン。まるで部活動のようなスポ根感も感じさせつつ、十ヶ条の内容は“笑顔全開”や“時にあざとく”などあくまで愛嬌のあるものに。実際、2人の初々しい歌唱アプローチがあざとい!



03 Tokyo Wabi-Sabi Lullaby - Gawr Gura

 ホロライブEnglish所属の英語圏メンバーが歌うメロウなミディアムナンバー。留学生の彼女が故郷を想うような歌詞になっており、R&B調のモダンなサウンドに篠笛などの和楽器、踏切や花火のSEを織り込むことで、東京での夏の情景と侘び寂びが浮かび上がる仕掛けに。ぐらが好きな日本のシティーポップっぽいフレイバーも感じられる。



04 ブライダルドリーム - 兎田ぺこら、宝鐘マリン

 ホロライブ内でも屈指の人気と知名度を誇るホロライブ3期生コンビ、通称“ぺこマリ”の2人が結婚式を挙げる公式カップリング曲……と思いきやマリンの夢だったというオチ。ウエディング感溢れるメロディや音を散りばめつつ、ドタバタ感のある曲調でまとめられているのも、2人揃うといつも賑やかな彼女たちらしい。



05 うたげ☆独壇場! - 百鬼あやめ

 シャープなカッティングギターを軸に高速で駆け抜けていくような疾走感が気持ちいい、ボカロック以降のポップネスを感じさせるアップチューン。“アイドル戦国時代”を生き抜かんとステージに立つアイドルのきらめきを、百鬼あやめが可憐かつ芯のあるボーカルで表現している。



06 アウトサイダー計画 - ラプラス・ダークネス、鷹嶺ルイ、博衣こより、沙花叉クロヱ、風真いろは

 秘密結社holoXが力強いロックサウンドに乗せて届けるのは、クラスにうまく馴染めないアウトサイダー(社会不適合者)としての矜持。早弁したり授業中に漫画を読んだりと、やっていることはかわいらしいが、はみ出し者の気持ちをあくまでもポップに描いているのが本楽曲の肝だろう。



07 パクパク成敗 - Hakos Baelz

 EDM~トラップをベースにしたガールズクラッシュなサウンドに、正義感溢れる生徒に扮したハコス・ベールズのクールな歌声が映えるダンスポップ。歌詞が前曲とリンクしていて、「先生、ラプちゃんが早弁してます!」とチクるところが面白いし、ハコスのオリジナル曲「PSYCHO」と“最高”をかけた歌詞も技あり。



08 1日ヒーロー - Kobo Kanaeru、Takanashi Kiara

 文化祭のステージに立って“1日ヒーロー”になることができた感動を、陽気に弾むポップンロールに乗せて届けるのは、ホロライブインドネシアのこぼ・かなえるとホロライブEnglishの小鳥遊キアラ。“まほう解けちゃうね...”と寂しさも見せつつ、最後は“青春の1ページ”として明るく受け止めるところはまさに青春だ。



09 リア充★撲滅運動 - 紫咲シオン

 “ラブもキュンもまぼろしだから”と、周囲がリア充になることを全力で阻止したい陰キャ女子を、紫咲シオンがスカコア系のポップパンクとともに表現。“妬みなんかじゃないよ”と歌いつつ、“恋”という自分にとって未知の気持ちに恐れと憧れを抱いていることが透けて見える感じが、思春期っぽくてむずがゆい気持ちになる。



10 教室に青 - 星街すいせい

 この楽曲の情景を例えるなら、文化祭の終わり、キャンプファイアーの時間。今まさに青春を共に過ごす学友たちとの思い出や絆、その時間には“卒業”という名の終わりがいつか訪れることを感じさせる、夜空が目に浮かぶエモーショナルなロックナンバーだ。星街すいせいの感情豊かで輝きの詰まった歌声が胸に迫る名曲。



『ほろはにヶ丘高校 -Covers-』

▲【XFD】hololive × HoneyWorks 1st Album 『ほろはにヶ丘高校 -Covers- 』

01 ファンサ - 夜空メル、白上フブキ、夏色まつり、不知火フレア、白銀ノエル

 HoneyWorksによるプロジェクト「告白実行委員会~恋愛シリーズ~」より、ソロアイドルのmonaが歌う熱血アイドルソングを5人でカバー。もともとエモい楽曲だが、サビで全員の歌声が重なると彼女たちの絆の強さも感じられてさらにエモくなる。歌詞の“monaビーム”の箇所が“holoビーム”になっている芸の細かさも。



02 イノコリ先生 - 角巻わため、常闇トワ

 それぞれソロでの音楽活動にも精力的で歌唱力も抜群なホロライブ4期生の2人が取り上げたのは、“先生(明智咲)”と“生徒(芹沢春輝)”の陰のあるストーリーで人気を集めるワイルドなロックチューン。凛としながらもパッション溢れるわため、独特の低音域がクールに響くトワ、対照的な歌声がガチンコでぶつかり合うかっこよさ全振りの楽曲に。



03 motto☆いちごオレ - さくらみこ

 どこか舌足らずな雰囲気の甘い歌声が魅力のホロライブ0期生メンバーが、mona楽曲らしいヒロイックなアイドル像を描いたロックナンバーをカバー。力強い曲調とスウィートな声質の甘辛なマッチング具合いが絶妙だ。この曲の歌詞も“monaウィンク”が“mikoウィンク”に変わるなどさくらみこ仕様に。



04 誇り高きアイドル - ときのそら

 “アイドルなんか”と勝手なイメージで見下す輩に反意を示す、アイドルとしての気高きプライドを歌ったmona楽曲を、ホロライブ最初のバーチャルアイドルとしてその支柱を担うときのそらが歌唱。横浜アリーナという大きな夢のステージに向けて頑張る彼女が歌うからこそ、よりグッとくる。



05 シス×ラブ - Kureiji Ollie、Anya Melfissa

 成海聖奈と成海萌奈(mona)の姉妹による楽曲を、ホロライブインドネシア2期生の仲良しコンビがカバー。一緒に育ってきた姉妹の絆を描いた歌詞が、彼女たちが歌うことによってまた別の意味での絆を感じさせるものに聴こえるところがポイント。ストリングスを導入した煌びやかで高揚感溢れるサウンドも泣ける。



06 大嫌いなはずだった。 - 獅白ぼたん、尾丸ポルカ

 乃木坂46メンバーが歌唱したバージョンでも知られる、榎本虎太朗と瀬戸口雛による甘酸っぱい恋愛ソングを歌うのは、ホロライブ5期生の2人。ぼたんが雛のパート、ポルカが虎太朗のパートを担当し、青春の煌めきがそのまま音になったようなピアノロックに乗せて、面映ゆくも清々しい恋模様をデュエットに昇華している。



07 東京サマーセッション - 大空スバル、天音かなた

 ある夏の日、花火大会、お互い意識し合っているけど恋人未満の男女――青春全開のシチュエーションを描いた人気曲を2人でカバー。男の子役をスバル、女の子役をかなたが歌い、セリフっぽいフレーズでの学生カップルらしい初々しさのあるニュアンスの付け方を含め、胸がキュンキュン高鳴ること必至。



08 決戦スピリット - Moona Hoshinova

 TVアニメ『ハイキュー!! TO THE TOP』のエンディングテーマとして愛されるCHiCO with HoneyWorksの熱いロックナンバーを、ホロライブインドネシア屈指の歌唱力の持ち主として知られるムーナ・ホシノヴァが歌唱。敗北でさえも自分の糧にして前に突き進む覚悟を、エネルギッシュなパフォーマンスで見事に形にしている。



09 同担☆拒否 - 桃鈴ねね

 いつも明るくて元気なイメージが強いホロライブ5期生の桃鈴ねねが歌うのは、「ヒロインたるもの!」シリーズに登場するキャラクター・ちゅーたんの推しに対する真っ直ぐな気持ち(とある種の独占欲)をあくまでもポップに表現したナンバー。実はいろいろなバックボーンのあるちゅーたん曲だが、ねねらしいピュア成分多めな仕上がりに。



10 センパイ。 - AZKi、大神ミオ、雪花ラミィ

 声優ユニットのTrySailが歌うアニメ映画『好きになるその瞬間を。~告白実行委員会~』のオープニング主題歌を、3人が純度の高いトライアングルハーモニーでカバー。憧れの先輩に対する強い恋心と届かない想いをドラマチックに描き出している。爽やかな聴後感がアルバムの締めに相応しい。



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