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<インタビュー>竹内アンナが語る初のビルボードライブ・ツアー、そして“何気ない一瞬も切り取れば素敵なドラマになる”をテーマにしたアルバム『DRAMAS』への想い

インタビューバナー

Interview:永堀アツオ

 昨年8月にメジャーデビュー5周年を迎えたシンガー・ソングライター、竹内アンナが自身初のビルボードライブ・ツアーを開催する。昨年の5月から6月にかけて、同世代の二人組によるdawgss(ドーグス)と3ピースで全国9箇所のライブハウスを回り、同年秋にはカフェやアートスペースを舞台にした弾き語りのツアーを敢行。さまざまな編成でライブを行ってきた彼女が、今回のツアーではネオ・ソウル・バンド、パジャマで海なんかいかない(通称:パジャ海)を迎えたスペシャルなライブを準備しているそう。ファイナル公演当日に3rdフルアルバム『DRAMAS』をリリースすることを発表している彼女は、果たしてどんなステージを見せてくれるのだろうか。

初のビルボードライブ・ツアーに向けて

――初のビルボードライブ・ツアーが決まった際の心境を聞かせてください。

竹内アンナ:ビルボードライブは学生の頃から何回も足を運んでいて、タキシードは2回観に行ったし、コリーヌ・ベイリー・レイやママズ・ガンを観たのもビルボードライブでした。他にも海外の来日アーティストをたくさん観に行ってたので、自分にとっては、いつかやってみたい憧れの場所だったんです。だから、決まったときはとても嬉しかったです。

――どんなライブにしようと思っていますか。

竹内:ビルボードライブは特別なイメージがあって。普段のライブハウスとはちょっと違う場所なので、普段やらないことができたらいいなって考えています。いつかビルボードライブでやりたいと思ってたのに加えて、「パジャマで海なんかいかない」ともいつか一緒にやりたいねっていう話をしてたんですね。せっかくだったらこのタイミングで一緒にできたら面白いことができるんじゃないかなということで、パジャ海をお呼びして、大胆にアレンジを変えてみようっていうイメージで作っています。

――どうしてパジャ海と一緒にやりたいと思いました? パジャ海のBessho(Key)さんは、竹内アンナさんのライブサポートに入ったこともありますし、以前、「Besshoさんと私の2人編成でもやったこともあるし、パジャ海のライブにゲストで呼んでいただいたこともある」と話していましたね。

竹内:Besshoさんはずっとお世話になっていて。パジャ海のライブにゲストで呼んでいただいたときに自分の曲をパジャ海にアレンジしてもらって、それが、スタジオでのリハーサルの段階からすごく楽しかったんですよ。ざっくりした目標を決めるけど、「とりあえずジャムってみよう」みたいな感じで、みんなでセッションしながらアレンジを決めて。そのスピード感とか、その場で生まれていくものとか、化学反応みたいのが、自分にとってもすごく刺激的だったんですね。楽しいなって思ったのに加えて、出来上がったアレンジが自分の想像していたものの外側にいたものだったので、この人たちと一緒にやったら「また曲の新しい一面が見れて面白いんじゃないかな」というのでお願いしました。

――そのときにやったのは?

竹内:確か「TOKYO NITE」でした。あと、Besshoさんと2人でカバーもやったりして、すごい楽しかったなっていう記憶があるんです。そのご縁もあって、その後に「生活」を一緒に作りました。


――昨年2月にリリースした EP『at FIVE』に収録された曲で、ポエトリーが入ったフリージャズになっていましたね。

竹内:あれもライブ感のあってたまらなく楽しいレコーディングだったんですけど、いいステップアップだなって感じてて。ゲストに呼んでもらって、一緒に曲作って、ビルボードライブで一緒にやる。いい段階を踏んでるなって思いますね。


――リハーサルはどんな感じで進んでいますか?

竹内:先にBesshoさんとミーティングをして、「ここら辺の曲は大胆にアレンジ変えてみたいです」みたいなご相談をしました。Besshoさんからいただいたアイディアを元にリハーサルに入って、みんなでセッションしながら作っていく流れなんですけど、みんな素晴らしいミュージシャンだから、一瞬も気を抜けないっていうか。リハーサルが終わった後に、毎回すごく達成感がありますね。

――dawgssの2人とやった時とは、違った雰囲気になりそうですか。

竹内:そうですね。アプローチが彼らとはまた違うんですよね。dawgssの2人とやったときも自分はたくさん刺激をもらって成長を感じたし、今回もベースのHarunaちゃんは同い年なんです。同世代ではあるけど、全然違うジャンルとか、アプローチができる方たちだから、自分自身も新しいプレイスタイルをここでまた開拓できたらいいなと思っています。

――今回どんなライブになるのか想像つかないですね。

竹内:それは私もなんですよ(笑)。パジャ海はその場で組み立てていく人たちだから、私も実際に本番でステージに立つまでまだ分からないこともある。その、分からないことがすごい面白さだと思うんですよね。もちろん、リハーサルで大体は組み立ててるけど、本番でやったときにみんなはどうやってくるんだろう、みたいな。そのドキドキ感は楽しみですし、ライブはカオスな感じになると思うので、いっぱい楽しんでもらえたら嬉しいです。

――今回はまだアルバムツアーではないですよね。どんなセトリを組んでるんですか?

竹内:ビルボードライブという憧れの場所で、私としては、デビュー5周年のお祝いの一環だとも思ってるので。デビューのときから今までの曲を振り返りつつではあるんですけど、慣れ親しんだ楽曲たちも、パジャ海と一緒にビルボードのステージでやったら全然違う顔になると思います。もちろん、初めて来てくれる方もいるだろうし、ずっと来てくれてる方もいるだろうけど、みんなが総じて驚くようなアレンジにはなってるかなって。楽曲に沿ったアレンジのものもあるけど、初期の頃の方の曲は大胆にアレンジ変えちゃったりしてて、私も「こう来るんだ!」っていう驚きがあったので、皆さんにも新鮮に楽しんでもらえるかなと思います。あと、ニューアルバムの曲もちょっとやろうかなと思っています。

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「何気ない一瞬も切り取れば素敵なドラマになる」をテーマにしたアルバム

――リリース前の曲もやるんですね!? 新曲は現場で生で聴くのを楽しみにしたいと思うのですが、3月にリリースされる3rdフルアルバム『DRAMAS』の全体のテーマだけを聞いてもいいですか。

竹内:前作から2年ぶりで、EP『at FIVE』の曲も入ってるので、制作期間的には1年半ぐらいかけてゆっくり作ってたものになってるんですけど、ずっとぼんやり思ってたことがあって。日々を過ごしていて、見過ごしてしまう瞬間ってたくさんあるじゃないですか。でも、それを1個ずつ丁寧に切り取ってみると意外とドラマチックなことがあったりする。他人から見たら大したことなくても、自分にとっては大切だったなみたいなことがたくさんあって。でも、それは切り取って見ていかないと、忘れちゃうものなんですよね。別に忘れてもいいんだけど、忘れたくないなって思う瞬間を切り取っていけたらいいなって思いながら作っていて。だから、「何気ない一瞬も切り取ればドラマ」が自分の中では大きなテーマになっていますね。

――どうしてそのテーマを深めようと思ったんでしょうか。

竹内:制作を始めたときからぼんやりと思ってはいたんですけど、一つは、去年の夏に初めての一人旅でヨーロッパ旅行に行った時に、より感じる場面があって。旅行だからちょっとフィルターがかかってたのかもしれないけど、全部がすごく特別に見えたんですよね。例えば、街を歩いてて、厨房裏の勝手口みたいなところで、コック帽を持った男の人2人がタバコを吸ってて。それが、すごく絵になってたんですよね。彼らからすると何てことのない瞬間だけど、そこだけを切り取ってみると映画みたいで、勝手にストーリーが膨らんでいって。そんなふうに瞬間を切り取ってたらきりがないんだけど、自分の普段の生活も見過ごすばっかりじゃなくて、1個ずつ切り取ってあげたら、いつか思い出したときに、覚えててよかったなって思う瞬間がたくさんあるんじゃないかなっていうふうに感じたんです。

――ちなみにどこに行ったんですか?

竹内:オーストリアとチェコに行きました。治安の良さを第1に選んだんですけど、ウィーンは音楽の街だし、建築物が好きなので、いろいろとコンサートに行きつつ、昔の建物をたくさん見に行けたらいいなと思って。本当にプライベートとして行ったんですけど、結果的に得るものはたくさんあったなって感じているので、そのときに行ってよかったなというふうに思います。あとは、去年の秋ぐらいに、お笑い芸人のアキナさんと一緒に大阪のラジオ番組を3か月程やらせてもらったんですよ。同じものを見たり聞いたりしても、アキナさんの視点や目線での切り取り方がとても刺激的だったんですね。ちょうどアルバムを作っていた時期と被っていたので、よりその思いが強くなってたのかなというふうに思います。

――日常の視点というか、世界の眺め方の提言のようなものですよね。

竹内:そうですね。例えば、すごく幸せな二人がいたとして切り取ってズームインすると、すごく特別で幸せに感じるけど、ズームアウトしていくと別に大してことは起こってなかったりする。でも、自分たちの中だけで特別に輝いていたらそれでいいんじゃないかって。ただ、このアルバムは「何てことない一瞬も切り取ればドラマ」というテーマを掲げて作っているけど、何でもかんでも切り取ればいいかって言ったらそういうわけでもなくて。切り取るときに、そこにちゃんと愛はあるのか、みたいなことも言ってるんですね。

――SNSでは簡単に切り抜きできたりしますからね。

竹内:嫌なとこを切り抜いて、嫌なふうに拡散されることもたくさんありますよね。それってすごい悲しいことだなって思います。せっかく切り取って形として残すんだったら、ちゃんと世に放つ前に「ちゃんと愛があるものなのかな?」っていう愛のダブルチェックをできたらもっとヘルシーな感じになるんじゃないかなって。claquepotさんと作ったのは、そういう願いを込めた曲になってますね。

――今作にはR&B系のシンガー・ソングライターのclaquepot(クラックポット)と同世代のシンガー・ソングライターであるMashinomiも参加してますね。

竹内:去年、claquepotさんにフィーチャリングで参加させていただき「Space」っていう曲を作ったご縁もあったので、せっかくだったら、こっちにも一緒に参加してもらいたいなっていうので、声をかけさせてもらって。すごくチルい曲になってますね。Mashinomiちゃんはもう5年ぐらい前からちょこちょこ遊んでるくらい仲良しで。Mashinomiちゃんの作る曲も好きだったし、誰かと最初から何かを作るのってやったことがなかったのでやってみたいなと思って。最初にカフェで話して、構想をノートに書き出して。それを持って、私のおうちに来てもらって、一緒にパソコンの前で楽器弾きながら作っていって。こんなにがっつりとゼロから一緒に作ったのは初めてだったので、その曲もすごく楽しかったですね。

――構想というのは?

竹内:私たちが小中学生のときに好きだったディズニーチャンネルのスターが歌ってたようなガールズロックを踏襲する感じになってますね。そういう昔の気持ちを忘れないでいたいよねっていうマインドで作ったので、めちゃくちゃ懐かしい気持ちになったし、このアルバムの中でも一つちょっと異彩を放ってるかなっていうふうに思います。

――どんなアルバムになりそうですか。

竹内:いやあ、めちゃめちゃ彩り豊かですね。1曲1曲カラーが違う12曲になってて。マスタリングが終わった後に、1曲目から最後まで全部聞いたんですけど、自分でも「これ、本当に同じ人が作っているのかな?」って思ったくらい(笑) バリエーション豊かなので、聞いてくださる皆さんにも1曲1曲、違う景色を楽しんでもらえるんじゃないかなって思います。

――どの曲を披露するのかが楽しみですが、お客さんにはどんな気持ちでビルボードライブに足を運んでほしいですか。

竹内:実際に自分が行ってみて思ったのは、ビルボードライブは少し敷居が高いイメージがあったんですけど、大学生時代にビルボードライブに通ってた私でも買えたチケットもあるし、カジュアルな席もあって。ドレッシーな格好をしてる方もいれば、カジュアルな方もいる。意外と気軽に行ってもいい場所なんだと思ったんですよね。だから、自分よりも若い世代、それこそ学生の方が初めてビルボードライブに遊びに来るきっかけになりたいし、普段通われてる方にも気軽に来てもらえたら嬉しいなという気持ちでいます。

――初めての人は緊張しますよね。

竹内:うんうん。もしも私のライブで初めてビルボードライブに来るよって方がいるんだったら、そんなに緊張しすぎないで、ぜひ気軽に足を運んでもらいたいなって思います。でも、普段のライブハウスとは全然違う雰囲気ではあるので、ちょっとおしゃれをしてみるのも楽しいと思う。そのキラキラした雰囲気も含めて楽しんでもらえたらなと思いますね。あと、大事なことを言うのを忘れてました。まず、ビルボードライブさんに特別なグッズを作ってもらったんですよ。ライブの写真が入った、初めての卓上時計が出るのでぜひチェックしてください! そして、緑とオレンジのグラデーションが混ざり合った色をテーマにしたグッズと近しいカラーのオリジナル・カクテルも出ます。絶対に美味しいと思うので、みんなぜひ、飲んでください!!

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