Billboard JAPAN


Special

<わたしたちと音楽 Vol.33>水曜日のカンパネラ・詩羽 自分が信じるかわいい!を突き通して見えてきたこと 

インタビューバナー

 米ビルボードが、2007年から主催する【ビルボード・ウィメン・イン・ミュージック(WIM)】。音楽業界に多大に貢献し、その活動を通じて女性たちをエンパワーメントしたアーティストを毎年<ウーマン・オブ・ザ・イヤー>として表彰してきた。Billboard JAPANでは、2022年より、独自の観点から“音楽業界における女性”をフィーチャーした企画を発足し、その一環として女性たちにフォーカスしたインタビュー連載『わたしたちと音楽』を展開している。

 今回ゲストに登場したのは、水曜日のカンパネラの詩羽。音楽プロジェクトの2代目・主演&歌唱担当という異例の肩書きで音楽活動をスタートした彼女は今、俳優としても活動のフィールドを広げている。ユニークでオリジナリティのあるルックスは、水曜日のカンパネラとしてデビューする前からのこだわり。「上手に生きていけない」自分から脱却するために行動に移したイメージチェンジが、彼女の人生を大きく変えた。(Interview & Text:Rio Hirai[SOW SWEET PUBLISHING] l Photo:Megumi Omori)

見た目を変えることが
自分を大きく変える第一歩に

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――水曜日のカンパネラに加入するまでは歌手になることは考えていなかったということですが、今の活動をしていなければ何をしていたと思いますか。

詩羽:デザイナー……ですかね。芸術系の大学でデザインを学んでいて、水曜日のカンパネラに声をかけてもらう少し前からデザイン会社のインターンシップを調べていたんですよ。同時に、SNSでは自分のファッションや今考えていることをアップしていて、それを見て誘ってもらったので、とても自由に今の活動をスタートできました。


――今のヘアメイクやファッションは、それまでの詩羽さんの延長線上にあるんですね。

詩羽:そうなんです、原型は高校生の時にはできていましたね。私は学生生活で上手に生きていけなかったタイプなんです。「こうなりたい」というアイコンや理想像があったわけではなく、そのときの弱かった自分から脱却したかった。「強くなりたい」という思いで、口にピアスを開けて、髪を刈り上げてみたんです。


――強くない状態のときに、人と違うことをやるのは勇気がいると思うのですが、自分を変えるために勢いをつけたということなんでしょうか。

詩羽:自分がすごく辛かったときに助けてくれる人となかなか出会えなかったりして、自分のことは自分で助けてあげないとどうしようもないという時期があったんです。根強く植え付けられている価値観があるから、気持ちを変えるのはすごく難しくて。でも見た目は、一歩踏み出せればすぐに変えられるんだなと思って、そう気がついてから急に行動に移しました。


――それまでは、どんなことが辛かったり、うまく生きられないと感じていたのでしょうか。

詩羽:なんだろう、すごく普通の子でした。「みんなと同じように生きよう」って頑張ってた時期もあるんですが、それが自分にはあまり合っていなかったみたいで……でもみんなが普通にできていることが普通にできなかったからこそ、自分にできることを考えてそれを伸ばしていけたんだと思います。


――見た目を変えてみて、どんな変化が起きました?

詩羽:私は都立高校に通っていて、周りではTikTokが流行っていたんです。みんなTikTokに出てくる子たちみたいに可愛くするのが当たり前、という学校だったので、髪を刈り上げて口にピアスを開けている女の子なんて他にいなくって。私に対して「なんだこいつ」って思って態度に出していた人もいたんだと思うんですけど、私としては見た目を変えたことで自分の周りに一つバリアができた気分というか……中面まですぐに強くなるわけじゃないんだけど、弱いままの自分の周りにひと膜はれている感覚がありましたね。それがいつの間にか、内面まで強くしていってくれた感じ。


今の活動の強みは、自分の意思を届けられること

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――そこから水曜日のカンパネラとしてデビューして、髪型やメイク以上の自己表現が求められるフェーズに入ったと思うのですが、そこに戸惑いはなかったですか?

詩羽:初めは、そもそもミュージシャンになろうと思ったこともなかったので、ステージ上で何をしたらどうなるのか、何もわからない状態でのスタートでした。それに、私がデビューした時はコロナ禍の最中でしたから、声も出しちゃいけない、手を上げたりもしちゃいけないと規制がたくさんある中だったのでリアクションもなく、何が正解かわからなかったですね。でも半年くらいで、曲がバズったんですよ。それからメディアに出してもらう機会も増えました。メディアに出ると、SNSなどでも色々言われることがあって……。自分が本当に大事にしたいことを見失いそうにもなりましたけれど、そういう時期を経て、逆に今は明確に自分を見失わずに活動できていると思います。


――先代がいるという珍しい状況の中で、自分がやりたいことを明確にしながら活動できているのは、やはり詩羽さんが大切にしている軸があるからでしょうか。

詩羽:もちろん「受け入れてもらえるかな?」というプレッシャーもあったのですが、実際に始めてみると意外と受け入れてもらえた感覚があったんです。その手応えを感じてからは、さらに色々やってみて、自分の強みを考えるようになりましたね。私が自分自身のことをかわいいって認めることで、私のパフォーマンスを見てくれている人たちにも、自分のことをかわいいとか、すごいとか、ちゃんと褒めて認めていいんだって思ってもらいたい。自分の好きなものを大切にして、でも他者も尊重して思いやりを持って生きていこうねっていう意思をステージ上で伝えることができるのが、私の活動の強みです。


――多様性が謳われるようになった時代ですが、実際はSNSなどで分断が煽られたり、価値観が偏っていくのも感じます。そんな中で、自分らしいかわいらしさを大切にしている詩羽さんの姿に勇気づけられる人が多いのも納得できます。

詩羽:本当に、TikTokとか見ていても、みんなが「かわいい」と思う像が画一化されていくのを感じていて。めちゃくちゃルッキズムが残っている社会で、私の思う“かわいい”がちゃんと尊重してもらえてるのはある意味不思議でもあります。もちろん私の“かわいい”に共感してくれない人もいるし、それは好き嫌いでしかないので、私は自分で自分が信じるものを追求していけば、その先に共感してくれる人が集まるんだろうって思っています。


――詩羽さんのように、自分が信じるものを突き通したくても勇気が出ない人もいると思うのですが、そんな人には「とりあえずやってみれば良いじゃん」と思いますか?

詩羽:私は、やってみれちゃったからこそ、「やってみたら良いじゃん」って言えちゃうんですけど、やっぱり環境的になかなか挑戦できない人もいると思うんです。特に学生とかの場合、大人に囲まれてルールを植えつけられながら生きてると、「一歩踏み出せない」という思いを抱えることになってしまっている人がすごく多いんじゃないかな。でも社会に出ると、「学生のときってなんて狭い世界で生きてたんだろう」って思いませんか? もっと世界は広いから、視野を広げてみると、もっと楽しく自由を探すことができるんじゃないかな。


女性だから、男性だから、
という考えがなくなっていけば良いのに

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――詩羽さんは、女性であることは活動に影響を与えていると思いますか?

詩羽:良くも悪くも影響はあるでしょうね。今でこそ男性がスカート履いたりネイルをしたり、自由になってきているけれど、私は小さい頃からメイクやファッションが好きなので、それを自由に楽しめたのは「女性で良かった」と思っていました。自分の体型も昔は好きじゃなかったけれど、ファッションのおかげで好きになれたし。でも私の理想は、女性だから、男性だからという話がなくなること。SNSでもよく「女は〜」「男は〜」という論争が起きるじゃないですか。なかなか簡単なことじゃないのはわかるけど、そういう偏見がなくなっていくといいな。


――社会は少しずつ変わってきていて、詩羽さんのような20代の人たちではまた感覚が違うんじゃないか、よりフラットな視線があるんじゃないかと期待してしまうのですが、そんな実感はありますか。

詩羽:自分の周りには意見が近い人が集まりがちだと思うので、私自身が「性別じゃなくて同じ人間として考えようぜ」とか「ルッキズムによる誹謗中傷はやめよう」というメッセージを発信しているから、あまり差別的な人は近寄ってこないのかもしれません。でもSNSで、自分のファンじゃない人とも話してみると、本当に色々な意見があって……自分の周りだけで見ると変化しているのを感じるけど、社会全体で見たらあまり進んでいないんだろうなという現実を思い知ります。


どうしようもない悩みがあるときは、
しっかり食べて、たくさん眠る

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――すごく冷静に、自分自身や社会を分析しながら歩んでいらっしゃる印象を受けたのですが、落ち込んだ時や壁にぶつかった時の詩羽さんなりの対処法はありますか。

詩羽:壁にぶつかったと思うことはまだないんですけれど、落ち込むことはありますね。そんなときは、食べて、寝る!(笑)自分にはすぐにどうにもできない事柄ってあるじゃないですか。それこそルッキズムだって、すぐには変えられない。悩み続けたってどうしようもないってわかっていても、落ち込んでしまうときはあるから、そういうときには飲み込まれないようにちゃんと食べて、夜遅くなる前に寝ること! 夜より朝のほうが元気だって、22年間生きてきて気がつきました。


――シンプルで、すごく良いですね。では、キャリア1年目の自分に何かアドバイスをするとしたら?

詩羽:活動を始めて1年半くらいは、すごくピリピリしていたと思うんですよ。今よりも尖ってた、というよりトゲトゲしていたかな。でもそれも悪いことだったとは思っていなくて、飲み込めない意見は飲み込まないでよかったし、「それで良いんだよ」って言ってあげたいですね。そこでちゃんと自分なりに悩んで葛藤してきたからこそ、今があるわけですから。


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