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<インタビュー>Omoinotake ドラマ『Eye Love You』主題歌「幾億光年」での新たな発見と、変わらない“メロディアスさ”へのこだわり

インタビューバナー

Interview & Text:高橋梓
Photo:Akari Yagura


 爽快なグルーヴ感とエモーショナルさを併せ持った楽曲で、着実にファン層を広げている3ピースバンド=Omoinotake。「産声」や「心音」「幸せ」「渦幕」など、数々のタイアップ作品を生み出してきた彼らが次に世に放つのは、TBS系火曜ドラマ『Eye Love You』の主題歌「幾億光年」だ。1月24日にデジタル・リリースされた同作は、どんな流れで誕生したのだろうか。楽曲についてはもちろん、3月からスタートするツアーについても話を聞いた。

ドラマ『Eye Love You』と向き合って生まれた新曲

――1月24日に、新曲「幾億光年」がリリースされました。今の心境はいかがですか?

藤井怜央(Vo. / Key.):とても大切に時間をかけて制作した楽曲で、やっと世に出せるという気持ちです。どんな反応をいただけるかすごくワクワクしています。

――おっしゃった通り、同曲はドラマ『Eye Love You』の主題歌として書き下ろされた楽曲です。

藤井:はい。台本を読み込ませていただいてから制作しました。


福島智朗(Ba.):このドラマは素直で明るい男性、ユン・テオ(チェ・ジョンヒョプ)と、過去に囚われてしまっている女性、本宮侑里(二階堂ふみ)という対照的なふたりが描かれています。 場面によってどちらにも感情移入できますし、大切な人の「本音がわかっているのか」という部分をすごく考えさせられました。

冨田洋之進(Dr.):台本を読んで、キャラクターがすごく個性的で魅力を感じました。


――そんな素敵なドラマの、どんな部分に注目して楽曲制作をされたのでしょうか。

福島:僕は歌詞を書くにあたって、やはり「心の見えなさ」という部分は意識しましたね。どれだけ愛しい人でも、というか愛しい人ほど言えない気持ちはたくさんあるだろうし、そのあたりを汲みたいと思って書きました。

藤井:曲に関しては、ドラマで描かれている明るくてポップな面とともに、滲ませる切なさのようなものも表したいと思って。そういった部分もメロディで表現できるように制作しました。


――同曲はOmoinotakeらしさの中にも、キャッチーさが光っていると感じたのですが、どんなロジックのもとこういった曲調になったのでしょうか。

藤井:ドラマのタイアップだと、ドラマ本編よりも前に予告として映像ティザーが出るじゃないですか。それはすごく意識していて。予告映像でサビだけを聴いたときに印象に残るようにしようと考えていましたね。



Photo: Akari Yagura

――たしかにサビ頭、スッと音が引いて〈デイバイデイ〉と入る部分は、とても印象に残りました。Omoinotakeの楽曲は作詞を福島さん、作曲を藤井さんが担当されることがほとんどですが煮詰まってしまうことも時にはあるのでは?

藤井・福島:ありますね。


――それを打破するために、冨田さんに意見を求めたりも?

冨田:普段は、僕も聴かせてもらって意見を出すことがあるのですが、今回はふたりを信用してすべて任せました。

藤井:そうですね。いつもはまずメンバーに聞かせて、その時点で感じることを吸い上げて、ブラッシュアップする部分を詰めていって。僕らの中でやり切ってからスタッフさんに聴いてもらう流れです。

福島:まずは各々やり切ってからね。その段階で煮詰まったとしても、結局自分でその煮詰まりを打破しなければいけないので、「今、煮詰まってるんだけど、どう思う?」と相談することはあまりないです。よく「歌詞やメロディが突然降ってくる」といいますが、それは普段からめちゃくちゃ作品に向き合っている状態でないと起こらないんですよ。時間を使って向き合って、それで散歩している時に突然降りてくる、みたいな。その時を待つためにやるべきことをやるのが煮詰まりの打破に繋がっています。

藤井:やっぱり煮詰まっている時に出来上がるものは、どこか変なんですよ。それを客観的に見てもらうために、メンバーやスタッフさんに意見をもらって気づきを得ることはあります。


――以前、藤井さんが「タイアップのオーダーに対して、自分がかっこいいと思えるものを探せるようになった」とインタビューでお話されているのを拝見しました。「幾億光年」で言うと、かっこいいと思えるものを探すためにどんなことをされたのでしょうか。

藤井:僕、その話をした時の心境を鮮明に覚えているんですよ。もう少し若い時はかっこいいと思える間口がすごく狭くて。でも、課題をいただいて乗り越えていくことで「かっこいい」の間口が広がった感覚がその時あったんです。去年『彼女たちの犯罪』(日本テレビ系)というドラマの主題歌で「渦幕」を作った時に、いろんなリクエストをいただきました。そのオーダーを100%飲み込めなくても、自分なりに咀嚼して良いところに落とし込めたという達成感があって。その達成感を持って作ったのが「幾億光年」です。


――「渦幕」の成功体験が大きかった。

藤井:そうですね。ただ、「渦幕」に限らず長く活動していくにつれて、曲に対する意見をいろんなところから聞くようになるんですね。その意見との向き合い方に慣れてきたこともあるかもしれないです。



Photo: Akari Yagura

――なるほど。そして「幾億光年」では、ライブでのホーンアレンジを手掛けられている小西遼さんも編曲に参加されていますね。小西さんが入られたことで引き出された魅力もありそうです。

藤井:「幾億光年」は、曲調は明るいけど歌詞は切ない楽曲になっているのですが、「明るい」「切ない」って人によって振り幅があるので難しいんですね。小西さんは去年のライブでホーンアレンジをしていただいたのですが、それこそ明るい曲、切ない曲両方の曲をアレンジしていただいていて。すごくいい形にしていただけたので、絶大なる信頼がありました。小西さんにお願いしたことで、「幾億光年」の「明るい」という面がより華やかになったと思います。お願いして本当に良かったです。


――レコーディングをするうえでも、新しい試みがあったのでは?

冨田:小西さんがレコーディングにも来てくださったんですよ。そこで16ビートのノリの解釈をメンバー全員に指揮してくれて。頭は合わせて、その先は好きな感じでやりましょう、みたいな。「ここからはドラゲ(冨田)のノリで行きたい」と予め伝えていただいていました。そのお陰で「こういうビートにしたらいいんだ」とわかりやすかったです。といっても実際やってみるとすごく難しいんですけどね(笑)。


――冨田さんでも難しいオーダーだったのですね(笑)。

冨田:レコーディングが始まる前、明るい曲調だったので「楽しく演奏するぞ」と言ったんです。すると小西さんが「今日は疲れてもらうから」と。「どういうこと?」と思って実際レコーディングがスタートしたら、小西さんが出そうとしているノリを実演するのがめちゃくちゃ難しいんですよ。今までなんとなくざっくりでやっていたことを、正確にやらなきゃいけないですし、ちょっとでも有耶無耶になるとツッコまれるし。すごく集中しなければいけなかったので本当に疲れました。小西さんも「ね、疲れたでしょ?」って(笑)。でもこれが大きな糧になりましたね。「幾億光年」以外の曲でも応用できますし、僕なりにリズムに対する解釈も変わりました。

福島:この曲ならではだと、テンポがサビでぐっと落ちるんですね。それを踏まえると、リズムの取り方もグルーヴも全然変わってくるんです。Aメロ、Bメロとサビで意識が変わるというか。それを出すのが大変でした。たまにテンポが変わる曲はあるのですが、振れ幅でいうと「幾億光年」がいちばん大きいかもしれませんね。



Photo: Akari Yagura

――そんな曲を作られた藤井さんはいかがですか?

藤井:今まではレコーディングまでに弾く内容を決め切って、デモで演奏したフレーズを本番ではグランドピアノで録るという形式でした。でも今回は小西さんがレコーディングに立ち会ってくださったので、その場で「こういうフレーズにしたらどうかな」「こういうのはどうでしょうか」という意見交換がたくさんありました。いつもなら、練習してきたフレーズをうまく弾いて終わりなんです。でも今回は元からその場で作ってフレーズを組み替えて。それが刺激的でしたね。歌に関しては、基本的にいつもメインボーカルを1本録ってミックスするのですが、今回小西さんのアイデアでメインボーカルをたくさん録りました。いわゆる「ダブリング」などと言われている技法なのですが、同じメロディを重ねることで独特な質感になるんです。その技法を用いて、今回は主旋律を6本ぐらい録っていて。初めての試みだったので、ミックスした時に広がりを表現することができました。そういった小西さんのアイデアはすごく面白かったです。


――様々な発見があったレコーディングだったのですね。ちなみにタイトルはどこからインスピレーションを受けられたのでしょうか。

福島:タイトルはいちばん最後に決まったのですが、想像もつかない距離を超えても届けたい愛を表現したかったのでこのタイトルにしました。もともとは「幾千光年」だったのですが、1000光年単位だと実在する星やブラックホールがあるんです。だったら、想像もつかない遠さまで行ってしまおうと「幾億光年」に変更しました。


――なるほど。アートワークも過去の例に漏れずスタイリッシュですよね。

藤井:イキイキとした花と、長い時間を経て枯れている花が使われていて。時間の経験を表していただいています。


――そして、2月にリリース予定のパッケージには新曲も収録されます。デモを拝聴させていただきましたが、こちらも素晴らしい曲でした。

福島:この曲に関しても「心の距離」がテーマとしてあるのかなと思っていて、近いのに遠い、遠いのに近いというような歌詞をまさに今書いているところです(※取材は1月上旬に実施)。ドラマにも重なる部分がある歌詞にできたら良いなと思っています。現時点ではどうなるかまだわかりませんが(笑)。

冨田:「幾億光年」に引けを取らず、上質な曲ですよね。「この2曲が収録されているパッケージ、いいじゃん!」という気持ちです。


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海外の方に「これはグッドメロディーだ!」みたいなことを
思っていただけていたらいいな

――リリースが楽しみです。そしてひとつ、曲に関係のない質問をしてもいいですか?「幾億光年」が主題歌のドラマ『Eye Love You』はいわゆる国際恋愛ストーリーでもありますが、皆さん外国との接点をお持ちだったりしますか?

福島:怜央がいちばんあるんじゃない?

藤井:海外旅行は好きでよく行きますね。でも、この間国内で嬉しかったことがあって。去年の夏に家族で熱海旅行に行ったんです。そこで熱海に旅行に来られているフランス人の方に「スマホの充電が切れちゃって、宿の場所がわからないんだけどわかりますか?」と英語で話しかけられたんです。僕は家族旅行だったので、自分の父やおじいちゃん、おばあちゃんなどもいたのですが、外国人の方が「この人だったらわかるかも?」と僕を選んでくれたのが嬉しかったです。それでちゃんと説明をして、宿まで一緒にたどり着けた経験がありまして。父も母も近くにいたので、英語で案内できたことが誇らしくもありました(笑)。

冨田:俺も似たようなことあった! 温泉施設の出入口に靴を履くために腰を掛けるソファーが置いてあって。結構混んでいたのですが、外国人カップルが僕にソファーを譲ってくれたんですよ。でも「女性の方を座らせてあげてください」と譲り返したんですね。そうしたら、男性の方が「gentlemen!」って(笑)。あぁ、俺ってジェントルマンなんだと思って、その日からしばらく自分のことを「ジェントルマン」と言っていました(笑)。

福島:ふたりとも温泉繋がりだなぁ。俺はサウナでイギリスの方と相撲を一緒に見たくらいしかないかも。でも、僕らのYouTubeコメントを見ると、海外の方がコメントをたくさん書いてくれていますよね。

藤井:あるね。僕が見ていちばん嬉しかったのは、「They are underrated.」というコメント。過小評価されている、もっと羽ばたければいいのにという内容のコメントが昔からあって、嬉しいんですよね。

福島:アニメのタイアップ曲をやっていることもあると思うのですが、YouTubeのアナリティクスを見ると海外からのアクセスが結構多いんです。


――ご自身では、どんな部分が海外の方に刺さっていると思いますか?

福島:多分、元々アニメやドラマのファンの方だと思うんですよ。それを見たうえで、僕らの楽曲に共感してくれている、作品にフィットしていると感じてくれているのかなとは思いますね。

藤井:あとは、今世界で流行ってる曲ってそんなにメロディアスじゃないと思うんですね。でも僕らはメロディアスであることをすごく大事にして曲を作ってるので、日本のアニメやドラマを好きで見ている海外の方に「これはジャパニーズメロディアス、グッドメロディーだ!」みたいなことを思っていただけていたらいいなと思います。


――Omoinotakeのメロディはとても美しいので、その可能性も高そうです。皆さん、これまでたくさんのタイアップ作品を生み出されていますが、多くのタイアップを獲得できるのは自分たちのどんなところに要因があると思われますか?

福島:取りかかる前に、誰よりも作品のファンになった状態でやりたいと思っていつもやっているので。それが伝わったうえでお話をいただいているとしたら、すごく嬉しいです。



Photo: Akari Yagura

――そして、3月からはツアー【春の大三角ツアー 2024】がスタートするなど、すでにライブの予定が次々と発表されています。皆さんにとってライブとはどんな場でしょうか。

藤井:いちばん“生きている実感がある場”ですね。人前で歌うという行為自体が、生きているなと感じられるというか。ライブがなくなってしまうと、人生がなくなってしまうとすら感じます。

福島:生でリアクションがもらえる唯一の場。どんな顔で聞いてくれているのかを確かめられる場所だと常々思っていて。たとえばSNSで「曲を聞きました」と言われても、現実味がないんです。そういった声を具現化してくれるのがライブだと思っています。

冨田:僕は正直に言うと、Omoinotakeにいるための存在意義というか。制作にもそんな関わるわけでもないですし、僕がこのバンドにいることの意味のひとつはライブでドラムを叩くことだと思っていて。それが、8割から9割を占めているのが本音です。


――それぞれの意義を感じながらライブに向き合ってらっしゃる、と。「幾億光年」もこの先ライブで披露していくと思いますが、ライブだから感じられそうな曲の魅力もありそうです。

藤井:よりファンキーに見えると思いますね。Aメロ、Bメロ、ドラム、ベースもすごくファンキーなので、そこを汲み取って踊ってほしい曲です。


――では最後に、今年の目標があれば教えてください。

福島:ヒットチャートのトップ10入り!

冨田:いいね。

藤井:じゃあ、そうしよう(笑)。それに、ある意味ずっと掲げている「ヒット曲を作る」「紅白に出続ける」という目標に近づいている気はしていて。「今年の目標」と「ずっと掲げている目標」を区別しないでもいいところに行きたいですね。たとえば「紅白に出続ける」を最終目標にしていますが、今年は「紅白に出る」を達成したいです。


Omoinotake「幾億光年」

幾億光年

2024/02/28 RELEASE
AICL-4548/9 ¥ 2,750(税込)

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Disc01
  1. 01.幾億光年
  2. 02.アクトレス
  3. 03.幾億光年 (Instrumental)
  4. 04.アクトレス (Instrumental)

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