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moumoon 『うたをうたおう』インタビュー
YUKA自ら「このうたをうたいながら、生きてゆこうと思いました」とまでの感想を述べた、今年最後のシングル『うたをうたおう』発表。これに合わせて、泣いて笑って悩んで奮い立って踊って歌って《生きていく》ということについて、moumoonの2人がエモーショナルに一切飾ることなく語ってくれた。読み終わった後、ホクホクする内容になっていますので、ぜひご覧下さい!
心に傷を負った人に映っていたと思います。
--前作『Chu Chu』からガラッと印象の変わった『うたをうたおう』。このタイミングで今作を発表しようと思ったのは?
YUKA(vo):「今年最後のシングルをバラードにしたい」と思っていたんですけど、まずは「シングル用に」とかは気にせずレコーディングへ入ることにして。それで、今回の曲のデモをレコーディングの日に聴かせてもらい、演奏に合わせて「ラララ」で歌っているうちに「超イイ!」と思って、これはすごく良い曲が出来そうだなと。そこで「じゃあ、次のシングルにしようか」みたいな感じで、徐々にシングルの座を掴むことになっていったんですけど。
--なるほど。
YUKA:でもバラードを作るのが久しぶりすぎて、気負っちゃうところもあるし、言いたいこともたくさんあるし、普段使っていないところ……ここらへん?
MASAKI(g,key):どこらへん(笑)?
--左脳ってことですか?
YUKA:かなぁ? そこらへんを使いましたね。ちゃんと向き合うってことをこの楽曲がさせてくれた。その分、家から遠くまで歩いていって、ずっと何時間もこの曲を聴きながら。しかも夜ね(笑)。歩かないと歌詞が出てこないので、レコード会社からも歩いて帰ったりして。それで途中にMASAKIくんの家があるからちょっと歌入れてもいい?」って押し掛けたりとか。でも「やっぱりダメだ~」ってまたそこから自分の家まで歩いて帰ったり。本当におなかの底が温かくなるようなパワーがある曲だと思ったから、その分だけ歌詞は苦労しました。
--夜な夜な徘徊していた訳ですね。
YUKA:相当怪しかったと思いますよ。通りすがりの人とか「泣いてる!この人!」みたいな。「あ~イイ曲だぁ!でも歌詞できない!」ってボロボロ泣いてたから。端から見たら心に傷を負った人に映っていたと思います。
--今作の資料には、YUKAさんの言葉で「このうたをうたいながら、生きてゆこうと思いました」と書いてあります。
YUKA:「こんな感覚になるんだぁ」って思いましたね。私にとっては笑うこととか、泣くこと自体が“うたをうたう”ことそのものだったので、「うたをうたおう」という歌詞でサビが始まるようになったことが嬉しくて。最初、そこの部分は音から何かが伝わればいいと思っていたから「うわぁぁぁ」でも「うおぉぉぉ」でもよかったんですけど。
--それはかなり画期的な曲ですよ。
YUKA:新しいですよね(笑)。ただ、ちゃんと「うたをうたおう」という言葉が楽器と一緒に、リズムと一緒に響きを成していたんですよね。それは偶然なんですけど、私にとっては「うたをうたおう」という言葉になったのはとても大事で。世の中には、うたが好きな人とか、うたよりスポーツが好きな人とか、いろんな人がいると思うけど、何かひとつ自分の心の光を消さずにいられるものがあるだけで「生きていけるわ、私」って思える。すごく不安だったり、悲しくてどうしようもないときでも、私はうたをうたっていると思うし。そんなことに『うたをうたおう』は改めて気付かせてくれた。
--となると、この曲を発表する上で期待することは、リスナーにも同じく「生きてゆこう」と実感してもらうこと?
YUKA:「私も生きてゆこうって思いましたぁ!」ってならなくても大丈夫だけど、私はここらへんが温かくなるんですよね。おへその辺りが。その温かさって、プールで1km泳いだりとか、運動会の後とか、思いっきり泣いた後の感覚にちょっと似ていて、とにかく心がすっごく動くんですよね。その動きを感じ取って、お腹にお日様がある感じになってもらえたらなって思います。
MASAKI:自分は太陽というよりも、ぎゅーっとなる。お腹が痛い訳ではないんだけど。
YUKA:便秘?
--(笑)。この曲は特に“生きる”というメッセージを感じ取りやすい曲だと思うんですけど、そもそもmoumoonの音楽の根底には“生活”に彩りを与えたい、という想いがあったんじゃないですか?
YUKA:うん、あります。一歩こっち行くとパラレルワールドですっごい楽しい世界になっている、みたいな。自分にとって、音楽に触れていたり、夢中になれている時間と現実はパカッと分かれていて、ずっと音楽側にいたいんだけど、現実にもいなきゃいけないこともある。だから気持ち良いパラレルワールドを作れる人たちでいたいなって。
--言うならば『Chu Chu』だってそういう音楽ですよね。今回のシングルには『Chu Chu』のライブ音源が収録されていますけど、キラッキラしてるじゃないですか。音源だけでもハッピーなムードを感じ取れる。
YUKA:曲を作っているときはライブも想像するし、届ける相手のことも考えるんですよ。一度も会ったことがない人もいるんですけど。「ライブ行けたことないっすよ。来てくださいよ、北海道!」みたいな。だけど想像上でその人のことを考えて歌詞書いたりとかするから。
MASAKI:自分らの曲は、もちろんネガティブな言葉が入ってくることもあるんですけど、曲を聴き終わったときにはガクってさせないようになってる。切ない曲もあるにはあるんですけど、それも「ハッピーになってもらえるといいな」っていうところから生まれているので。だからあんまり破壊的なことはやりたくない。そこは変わらず、音楽でちょっとウキウキしたり、楽しくなってもらえたらなと。
YUKA:破壊的なことをしたくなったらどうすんの? MASAKIくんが。
MASAKI:俺が? まぁサウンドに関してはどうにでも捉えられるじゃん。言葉ですよ、やっぱり。
YUKA:歌詞に関しては、ハッピーエンドで終わりたいというポリシーはあるけど、そのハッピーエンドが嘘くさかったら元も子もなくて。「んな訳ないじゃん」みたいな感じになっちゃう。だから自分が聴いても共感できる。そういう風に導いていきたいんですよね、どんなストーリーも。
Interviewer:平賀哲雄
私はMASAKIくんのスタジオでずっと踊っています。
--『うたをうたおう』のような曲が生まれた背景には、この2011年というタイミングもあったと思いますか?
YUKA:そうですね。恋愛とか、他のテーマになる可能性はあったと思うけど、迷わずにここへ着地できたので。2011年に起きたことはとてもとても大きくて、それに影響を受けていないはずがなくて、そういうところは確実に出ていると思うし。だけど、何かを捻じ曲げてでも人の心をこっちに向かわせたいとか、そういうことじゃなくて、ただただ本当に今起こっていることをありのまま眺めて、涙が出るのか、それとも笑えるのか。とにかくすごく正直になって捉えたら『うたをうたおう』のような感じの音になるんだろうなって思う。それを形にして発表できるようになってよかったなって。ずっとルンルンした曲を作り続けてきて、それもそれで楽しいんだけど、私たちはそれだけじゃないから。
--ずっと吐き出したかったんじゃないですか。『うたをうたおう』で歌っているようなことを。
YUKA:それはあるある。ずっと言ってたんですよ。テーマがこうとか、サウンドがどうとかじゃなくて、moumoonのこういう場所を曲にすることをそろそろしないと「私、もうダメかも」みたいな……話を中華食べながら。「もうそろそろやんないとダメだよ! 私、もうダメだよ!」って。
MASAKI:ハハハ!
--それ、お酒入ってます?
YUKA:入ってない、入ってない。ウーロン茶飲んで熱くなってました。そしたらMASAKIくんが「わかった」って。なんだっけ? なんとか麺を食べてたよね、MASAKIくん。そこで「やろうよ!」って暑苦しい人が語ってるっていう(笑)。
--じゃあ、そのラーメン屋での夜がなければ『うたをうたおう』は……
YUKA:なかったと思う!
一同:(笑)
--そういう場は重要ですね。で、さっきYUKAさんが言っていたように、2011年は決して例年と同じような世界ではなかったと思うんですけど、どんなことを考えながら歩んだ1年でした?
YUKA:いろんなことを考えたし、試したりしたけど……。例えば、被災地に高額の寄付ができたりとか、そういうことを継続できたらいいけど……、なんだろう? 自分が繋がっている人を本当にハッピーにしたいというか、それも自己満足なんだろうなと思うけど、大事にしたいと思って。そしてその周りの人たちにどんどん繋がっていけばいいんだろうな、という考えに結局は行き着いたんです。だってさ、すべてを自分じゃ解決できないじゃん。それで「みんなで、みんなで」って言うけど、そうやって士気を高め合うのはすごく素晴らしいことだと思うけど、それが実際どれぐらいの人に届いてんのかなって思うし。もうなんか「あー!!」ってなることがあり過ぎてヤバイいけど……、そこでダメージを喰らうとかじゃなくて、精一杯、好きな音楽を大事に作っていって、それがどこかに届いたり、聴いてもらえたりすることを大事にしたいと思ってて。
--なるほど。
YUKA:だって、震災前に作られた曲が震災後に物凄く届いてて。一方で、震災後に「被災地の為に作ったから」と言ってそれがすごく届くとは限らなくて。結局は気持ちがそこに向かっていたとしても、そうじゃなくても“届く”“気持ちが震える”ということを作り手がしっかり考えていないと!っていう話で。だからちょっとでも明るくしたいし、温かくしたいと思うから、それをやり続けることと、絶対に投げやりになったりしないこと。投げやりにならないことっていうのが、私が一番決意できたこと思います。
MASAKI:震災直後はね、音楽で……と思っても「そんな状況じゃないよ」っていうことだったから、しばらくは「自分たちは本当に何も出来ないんだな」「ちっぽけだな」っていうことしか思えなくて。地震の被害者の方の為に、っていうことは結局出来なかったですけどね。でも変わらず僕らは幸運にも音楽が作れているんで、曲を届けていくしかないなって。
--いろんな想いがあったとは思うんですけど、2011年のmoumoonはとても軽やかに映りました。何をインプットしてもアウトプットするものは軽やかで心地良い。楽曲にしてもライブにしてもYUKAさんのツイートにしても。
YUKA:それはきっと「そういう風にしよう」って思っているからだと思います、2人とも。この前、矢井田瞳さんと知り合ったんですけど「YUKAちゃんのブログを見るのは、すごく好きなんだ」「ブログって読んでて傷付いちゃったりすることがあるんだけど、YUKAちゃんのはそれがないって分かってるから、いつも見られる」って言ってくれたんです。それって私が立場で物を考えているみたいでもあるんだけど、それとはまた違って、これを目にするだろうっていう人がどこか気持ち良くないとなって、昔から思ってて。なんとなく言葉尻とかでも傷付いたりするじゃないですか。だからそういうところで毒を発する必要はどこにもないな、という想いはあるかもしれない。
--じゃあ、その毒はどうやって消化(昇華)してるんですか?
YUKA:毒!? それはどこから出てんだろうね!?
--ラーメン屋で怒ったりして?
YUKA:アハハ! 怒ってないよ! 熱く語っただけ(笑)。最近は毒というか、溜まったものを出し続けることも、それはそれで「うぅぅ」ってなっていっちゃうんですけど、そこからスウィッチを切り替えて、気持ち良い、快楽的な方の音楽を吸収したり、そういうアプローチでの曲を作るっていうのが結構発散になってたり。今作ってるアルバムにはそういう曲がすごく多いんですよ。だから「いぇーい!」みたいな状態で、私はMASAKIくんのスタジオでずっと踊っています。
--(笑)
YUKA:それで多分発散してるんだと思います。「イイよ!凄いよ!MASAKIくん!」って言いながら。……暑くなってきちゃった(※部屋の窓を開ける)うわぁ。
--そのYUKAさんのテンションに対し、MASAKIさんはどう対応してるんですか?
MASAKI:いや……もう一緒に楽しんでますけど。
YUKA:MASAKIくんもこの前、踊ってましたよ!
--踊るんだ!?
YUKA:はい!「俺、上手く踊れないんだよねぇ」とか言いながら(笑)。別に上手さは求めてないのに。それで「大丈夫だよぉ! 踊れてるよぉ!」みたいな。
MASAKI:そんなことあったっけ?
YUKA:「上手くなりたいよぉ」みたいな。
MASAKI:そんなこと言ってないでしょ?
YUKA:言ってたよ!
Interviewer:平賀哲雄
武道館、行こう! ……毎年言ってるね。
--どういう状況なの(笑)?
YUKA:デモを録って、ラフミックスしてもらって、スピーカーの音量をでっかくして聴いてるんですけど、自然と私はこんなんなってて(※はしゃぐ動作をする)、MASAKIくんも自然と立ち上がってこんなんなってて(※軽くはしゃぐ動作をする)。それで「楽しいね~!」みたいな。アハハハ!
--その現場、UST配信してくださいよ。
YUKA:いやいや、勘弁して下さい!
MASAKI:エアギターしてたね(笑)。
YUKA:してた、してた。こんなんなって(※激しくエアギターの動作をする)!
--ライブでそんな弾き方してるの、見たことないですよ。
YUKA:それが楽しいです!
--話を『うたをうたおう』に戻します。この曲の冒頭にある「誰のために笑っていたんだろう 誰のために泣いていたんだろう」というフレーズは、どんな想いや背景があって出てきたんですか?
YUKA:自分が無理して笑ってるなって思って「あれ?」ってなっちゃうことが時々あって。それってみんなにもあることだと思うんだけど、その瞬間ってすごく悲しくなったりとか「自分はハッピーだよ」ってアピールしていたこと自体が誰の為だったんだろうと考えて「からっぽだなぁ。何やってたんだろう?」って思う。例えば、涙を流したとしても、ステージの上で流す涙とかって誰の為でもなく、きっと自分の為に泣いちゃってるんだろうから「じゃあ、そんなものは流すのをやめよう」って思ったことがあったりとか。誰かが可哀想で泣くこともまず自分の為だろうし。そういう笑うとか、泣くとか、考えれば考えるほど不思議なんだけど、でもそのすべては自分の為と思うことで変われる気もして。
--その心の動きが表現された歌詞の中でハイライトになるのは、やはり「うたをうたおう」というフレーズだと思うんですが、歌い手としてはこれほど迷いなく歌えるフレーズもないですよね。その効果を誰よりも分かっている訳ですから。
MASAKI:うたは素晴らしいですからね。何千年も前の人も火を囲んで歌ったりしていた訳ですから、歌うっていうのは良いことなんですよ。一人で歌うのも良いし、みんなで歌うのも良いし。
--YUKAさんは“うたう”ことで人は何を得られると思いますか?
YUKA:私は“心の光が消えないように”っていつも思っていて、それが消えちゃったら電源が落ちちゃう。だからそれだけを何とか守って生きているイメージがあって、その為に歌っているんだろうなって。ポワ~って淡く黄色く光ってる丸いものが心の中にあって、それを守る為に。
--そんなmoumoonのニューシングル『うたをうたおう』。購入者特典として応募者全員をライブに招待するそうですね(※応募多数の場合は抽選)。
YUKA:クリスマス・イヴなんですけど、買ってくれた人みんなをご招待したいと思っていて。何人応募してくれるか分かんないから、多数の場合は抽選とかになっちゃうけど、2回まわしにしてでも、極力みんなに来てほしい。クリスマスの曲もやろうと思ってるし。
MASAKI:そうなの?
--初耳みたいですけど(笑)。
YUKA:思ってるよ。思ってるよ! 連絡不足ですみません。まぁ普段のライブとはちょっと違うかもしれないけど、新曲ももちろんやるし、楽しんでもらって「来てよかったね~」って言ってもらえるライブにしたいなと思っています。
--来年2月には初のホールツアーも決まっていますが。
YUKA:今、作っているアルバムの曲とかも披露できるんじゃないかなって思ってるんですけど、すっごい楽しみになんですよね。バンドのアレンジとか。回を追うごとに音の厚みとか格好良さがどんどん増してて、その演奏を聴きながら歌える幸せと言ったらもう! あと、お客さんにとっても良い環境でやりたいという願いからホールツアーを実現してもらうので、ひとつひとつの音が沁みてくる。そういうライブを各地でしたいなって。とにかく聴かせたい曲がいっぱいあるんですよ!
MASAKI:迷うんですよね~、セットリストとか。でも毎回「これ以上はないだろう」っていう感じでやるんだけど、それを超えることがあるんだよね。みんなのアイデアで。
YUKA:次の『ハレルヤ』がヤバイと、今から言っておくよ。ヤバイよ。
MASAKI:だからまた新しいものを考えないといけない。やっぱり「また違う感じのことをやってる」って思わせたいから。
--毎月【FULLMOON LIVE】もやってますし。
MASAKI:そうなんですよね。だからギャップも見せていきたいし。
YUKA:だらだら喋らない!
--(笑)
YUKA:すっごいダラダラしてるから。【FULLMOON LIVE】の配信は。だから次回からはちゃんと喋ろうと、盛り上げようと思っています。
--今年も残り僅かですが、やり残していることはありませんか? 正月に掲げて叶えられていないスローガンとか。
YUKA:あ!ちょっと待ってくださいね(※バッグからノートを取り出す)。
--書いてあるんだ(笑)?
YUKA:あれれれ? 書いてない。
--では、質問を変えます。2012年の目標をお願いします。
YUKA:今作ってるものとか、自分のモードが、すごく重心を下っ腹に置けている感じがするんですよ。だから、衝動とか、切なさとか、グっと来るものをみんなにちゃんと届けて、元気とか、明日への力へ繋がるようなうたをうたいたい。腹の据わった、良いお姉さんになりたいです。
--“腹の据わった、良いお姉さん”って良いキャッチですね。では、続いてMASAKIさん。
MASAKI:真摯に音楽を続けたいなと思う。それは毎年同じなんですけどね。あとは、武道館?
YUKA:そうだね! 武道館、行こう! ……毎年言ってるね。
--(笑)
YUKA:毎年言ってるけどさ、絶対大丈夫だから! 頑張ります!
Interviewer:平賀哲雄
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