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<インタビュー>あたらよ アニメ『僕の心のヤバイやつ』OPの新曲「「僕は…」」と、初の海外公演、これまでの歩みにある“変化”

インタビューバナー

Interview:天野史彬


 あたらよが、新曲「「僕は...」」を1月8日にデジタル・リリースした。

 「悲しみをたべて育つバンド。」と名乗り、繊細に心情を描いた歌詞と、それを引き立てるサウンドに定評のある3ピースバンド=あたらよ。彼らの2024年初リリースとなる今作は、アニメ『僕の心のヤバイやつ』第2期のオープニング・テーマとして、主人公の視点や心情を投影して制作されたという。2023年には台湾で初の海外ライブを行うなど、さらに大きく“育って”いく彼らに、最新曲や先の海外公演のこと、そして自身の成長について語ってもらった。

初の海外ライブでの経験

――2023年、あたらよは台湾で開催されたイベント【ISLAND's LA RUE Music & Arts Festival】に出演されましたが、初の日本国外でのライブは皆さんにとってどのような体験になりましたか?

ひとみ(Vo. / Gt.):最初は不安が大きかったんですけど、お客さんがみんな積極的で、日本語の歌詞をみんなで歌いながら聴いてくれたんです。その光景はすごく衝撃的でした。日本では(あたらよの曲を)一緒に歌っちゃう光景はあまりなくて、しっかり聴く人が多いので。台湾はそれとは違う一体感があって、とても楽しかったです。

たけお(Ba.):僕も最初は不安の方が大きかったんですけど、いざライブをやってみると、お客さんのノリがすごくて。

まーしー(Gt.):そう、お客さんが携帯で撮りながら、でもノリノリで、すごく自由な感じで聴いてくれて。そこが日本とは違う感じで、楽しかったです。ステージもすごく大きかったんですよね。前日に会場の下見をした時から「ここをパンパンにしたらどんな景色が見えるんだろう?」と思っていたんですけど、実際、すごくたくさんの人が集まってくれました。


――初の日本国外でのライブを経て、もっと外に飛び出していきたいという気持ちも強まりましたか?

ひとみ:そうですね、初の海外でこんなに温かく迎えてもらえた、というのは経験として大きくて。台湾のフェス以降、他のアジア圏の国からも「うちにも来てください」という声が届くようになったので、これだけ待ってくれる人がいるなら、積極的に海外にも足を運びたいなと思いました。


“素直じゃない”市川くんが詩を書くとしたら

――あたらよにとって2024年一発目のリリースとなる新曲「「僕は...」」が先日配信されましたが、この曲は、アニメ『僕の心のヤバイやつ』第2期のオープニング・テーマですね。制作はどのようなイメージから始まりましたか?

ひとみ:オープニングということもあって、勢いのある曲にしたいという思いがまずはあったんですけど、その上で、歌詞はアニメサイドから「主人公である市川京太郎の目線で書いてほしい」というオーダーがあったので、極力そこを意識しながら書きました。原作も読ませていただいたうえで、「市川くんが詩を書くとしたら、どういう感じになるかな」と想像しながら書いていきましたね。アニメの中で、市川くんが詩を書くシーンがあるんですけど、私の勝手な想像で、詩を書く人には内に秘めたものがある人が多いんじゃないかと思っていて。市川くんにも、本当は思っているけど言葉に出せないことがたくさんあるだろうから、それを歌にして届ける時にどういう表現がいいかを想像しながら……特に1番は市川くんの気持ちを想像して書きましたね。



あたらよ / 「僕は...」


――ひとみさんから見て、市川くんはどんなキャラクターに映りましたか?

ひとみ:なんというか……「素直じゃないなぁ」と思いました(笑)。そもそも、本当は自分の中に「こうしたい、ああしたい」という思いがあるんだけど、それをやっている自分のことを受け入れ切れていないところがあるんですよね、市川くんは。ただ、アニメの第2期では、そんな市川くんがどんどんと自分を受け入れていく描写が増えていくんですけど。


――『僕の心のヤバイやつ』という作品自体に対しては、みなさん、どのような想いを抱きましたか?

ひとみ:単純な恋愛アニメではないな、と思いました。市川くんが人として成長していく姿が描かれていくうえで、結構心にグサッと刺さるような名言が出てくるんです。私自身も読んでいて、気づかされることがたくさんある作品だなと思いました。

まーしー:僕は、「羨ましい青春してんなぁ。俺も美少女に好かれたかったなぁ」と思いました(笑)。

ひとみ:正直すぎる(笑)。

まーしー:真面目に話すと、この曲では、2本のギターソロでふたりの関係を表してみたり、サウンドは全体的に、浮き沈みも含めて、市川くんの心情を表現できるように作っていったりしたんです。


――たけおさんは、『僕の心のヤバイやつ』に関してはどうですか?

たけお:僕は、市川くんに共感しちゃいますね。

ひとみ:市川くん、たけおに似てるもんね(笑)。市川くんを見ていると、「たけおかな?」と思う瞬間がある。

まーしー:そうそう。

たけお:ふたりからそう言われて原作を読んでみたら、節々で市川くんに「わかるよ、その気持ち……」と思いました(笑)。



TVアニメ「僕の心のヤバイやつ」第2期本PV


中二病がちょっと入っているくらいの人の方が、いい詩を書く気がするんですよね

――(笑)。先ほど「市川くんが詩を書く」という話が出ましたが、ひとみさんも歌詞を書かれるわけで、市川くんの気持ちがわかる部分もあったのではないですか?

ひとみ:そうですね……中二病がちょっと入っているくらいの人の方が、いい詩を書く気がするんですよね(笑)。市川くんも中二病だから(笑)、歌詞を書くとしたらめちゃくちゃいい歌詞を書くだろうなと思いました。


――いわゆる中二病と言われるような自分の心の繊細な部分に、皆さんはどう向き合っていると思いますか?

ひとみ:私は、曲や歌詞にして昇華している感じですね。歌詞って、普通に読み上げると恥ずかしくなるような言葉が入っていたりするけど、それを自分で書いて自分で歌っているっていう、ちょっと気が狂っていないとできないようなことをやっている気がするので。私の中では、中二病の心がなくなっちゃったら、つまらなくなっちゃうなと思うので、中二病の心はほどよく持っていたいですね。

たけお:僕は、中二病はちゃんと中学生で卒業しました。

ひとみ:置いてけぼりにすんな(笑)。


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バンドを続けていったら、
自分が知らなかった自分がステージ上に出てくることもあるのかな

――「「僕は...」」の歌詞では、〈まるで僕が僕じゃなくなっていく〉と表現されるくらいの「変化」が描かれているように感じました。ひとみさんとしては、この〈まるで僕が僕じゃなくなっていく〉というラインに込めた個人的な想いはありますか?

ひとみ:いや、今回はあくまでも市川くんの目線で歌詞を書いたので、私自身の感覚は実は真逆かもしれないです。どちらかというと、「私は私でありたい」というタイプかも。


――なるほど。ただ、あたらよとして活動されてきた中で、自分の想像を超える程の変化は、皆さんの中にあったのでは?

ひとみ:そうですね。市川くんが変わっていくのは、山田杏奈ちゃんという子がいたことがきっかけで「自分が知らなかった自分が出てくる」という良い変化だと思うんですけど、そういう変化は私にもあるなと思います。私は、小さい頃は本当に引っ込み思案で、ずっと母親の後ろに隠れているし、店員さんに話しかけるのも無理っていう性格だったんですけど、そんな自分が今ステージに立って人前で歌うことができているのは、このふたりが私を変えてくれたからなんだ、と思っていて。今もまだステージに立つことが怖い時はあるけど、この先バンドを続けていったら、もっと堂々と、自分が知らなかった自分がステージ上に出てくることもあるのかなと思います。それによって、あたらよのライブパフォーマンスや、表現が変わっていくこともあると思うし。

まーしー:僕は、前はすごく俯瞰でライブをやっていたと思うんですけど、最近はライブに入り込むようになったというか、ライブ中に号泣しちゃったりすることもあって。曲に入り込んで、それをお客さんにぶつけるということができるようになっている気がします。昔よりも、人に伝えることのできるギターを弾けるようになったかなって。あと、変化といえば、昔は買えなかった生ビールを毎日飲めるようになりました(笑)。


――(笑)。まーしーさんとたけおさんから見ると、ひとみさんは変化している部分はあると思いますか?

たけお:うーん……特にないですね(笑)。

まーしー:学生の時から、ずっと変わんない気がする(笑)。

ひとみ:変わったよ!(笑) ライブ中、声が震えなくなったとか。昔は伝え方やパフォーマンスにも目が行かなくて、ひたすら「やり切る」ことを目標にしていたような感じだったから。

まーしー:音楽面でいうと、確かにね。昔のデモを聴くと、青い声というか、若い声をしているなと思う。それが段々、芯が太い声になってきた。歌詞や歌への気持ちの入れ込み具合も、初期のライブは今と全然違った。ひとみだけじゃなく、みんな、足ガクブルでライブをやっていたから、そこは変わったかもね。でも、普段の生活は変わらないよね? 少なくとも、飲み屋にいる時は変わらない(笑)。

ひとみ:そうね……音楽面で成長できていればいいか(笑)。昔はステージに立つのが怖すぎて、「早く終わってしまえ」と思いながら歌っていたけど、今は昔よりも、ステージの上で歌うことを楽しめるようになりました。


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