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<インタビュー>Ken Yokoyama、様々なジャンルから音楽を生み出し“絞り出した”ニューアルバム『Indian Burn』に迫る

インタビューバナー

Interview & Text:小野島大

Photo:SHUN ITABA

 Ken Yokoyamaの2年8か月ぶりのニューアルバム『Indian Burn』が最高だ。年明けのアルバム発表を前提に全3作のシングルをリリースという異例の工程。その意図は前回のBillboard JAPANのインタビューでも語られていたが、既存シングルの楽曲はタイトル曲の3曲のみ、残りはすべて新曲で構成された作品というのも嬉しい。彼ららしいエネルギッシュで痛快なパンク・ロックから、レゲエ、スカ、カリプソ、オールディーズ風ロックンロールまで多彩な音楽性を内包しながらも、Ken Yokoyama以外のなにものでもない個性に貫かれている。

横山健が考える「バンドの精神性」

――シングル3枚作ってアルバムにまとめるにあたって、どのようなことを考えました?

EKKUN:まず、シングルの構想があって。その終着地点として、アルバムという感じでスタートしました。

横山健:アルバムにこういう色を付けたいとか、特に狙いはなかったです。ただ結果としてシングルをやったことで、シングルにレゲエ調のものを入れたりとか、色々バラエティに富ませたことで、焦点の絞れたものに結果としてなったかなぁという気はします。


――アルバムとしてやらなくちゃいけないことは何なのか、ということですか。

横山:そうですね。こう、それが何なのかの正体は分からないけど、色を付ける、芯を持たせるという。密度、濃度を濃くする作業が出来たような気がします。シングルを出したことで。





アルバム『Indian Burn』ティザー映像


――今回、シングルの曲はタイトル曲だけ入っていて、カップリング曲は入っていません。残りはすべて新曲なんですが、こういう構成にするのは事前に考えていたんですか?

横山:それは考えていましたね。決めていました。


――それって要するに、アルバムをこういう風にしようという考え方がはっきりしていないとできないことじゃないですか。

横山:確かに。自分にとって良い曲をちゃんとアルバムに寄せたい。シングルには表題曲のほかにチャレンジになるような曲も入っているわけじゃないですか。そういったものがアルバムに入っていると、すごく散漫になっていたと思うんですね。キュッとまとめた感じにしたかった。その中でもバラエティには富んでいるんですけど。そんなイメージですかね。


――曲を作った時点で、これはアルバムに入れるとかシングルに入れるとか、決めていた?

横山:決めていたよね。

EKKUN:うん。

横山:日常会話でしていましたね。これはシングルかもなぁとか。


――そういうのはメンバー全員で話し合いながら決めていったんですか?

横山:そうですね。


――EKKUNとしては、今回はどのようなアルバムにしたいと思ったんですか?

EKKUN:曲がどんどん出来上がっていく段階で、出来上がっていく曲たちが、けっこうバラエティに富んできていたので。『4Wheels 9 Lives』の時に出せなかったものを『Indian Burn』に反映させたいなと思って作っていました。


横山健

――彼が入った時に、ドラムが非常に優れているから、色んな曲ができるようになったと言っていたじゃないですか。それはこれまでの曲作りに反映しているんでしょうか?

横山:そうですね。していると思います。当時思っていたよりも器用じゃないということはわかったんですけど。


――そうなんですか(笑)。

横山:もう5年やっているとね(笑)。でもやっぱり、しっかり仕上げてくれるので。リズムに関しては、バンドメンバー全員が関わって討論するんですね。ドラムの範疇というよりは作曲の範疇だと思うので。でもドラマーによっては、自分のやりたいことをどうしても曲げない人とか…逆にそういうことが曲を引っ張ってくれることもあるけれども。EKKUNはしっかり、曲とバンドに向かってくれるので。このバンドでやりたい曲調、打ちだしたいのはこういうことっていうのを理解してやってくれる。バンドマンって案外、自分のテリトリーに他のメンバーが首をつっこむことを嫌がる人って多いんですよね。曲やバンドに向かっているとかというよりも、自分はこうしたいっていうのが強い。EKKUNってすごくこう…聞いてくれるんですよ、こっちのアイディアを。でも、そういうことってお互いの人格否定とかに、繋がりかねないんですよ。


――ポリシーの問題になってくるもんね。

横山:そうなんです、そうなんです。僕もいろんなメンバーと組んでいてそういう経験をしているんですけど。意外と一番聞いてくれるんじゃないかと。例えば、こういうことをしたらどうかなっていうのをうまくその場で消化できなかったとしたら、大体、空気は悪くなるものなんですけど、EKKUNは彼の性格なんでしょうね。「ちょっと、しっかり次回までに考えてくる!」って言って。その辺が、一つの集団を形成する仲間として、プレイ云々というより、そこがすごく一緒にやっていて気持ちが良い。


――ドラマーとして、例えば得意なプレイとか、得意な曲調とかあるじゃないですか。

EKKUN:やっぱり速いツービートがやっぱり得意で(笑)。主戦場というか。


――それが不得意だったらこのバンドには入らないよね(笑)。

EKKUN:そうなんですよね(笑)。そこは良い感じにスンナリ完成というか、形にできやすいんですけど。やっぱりミドルテンポの曲がすごく苦手な部分があって。苦手なんだけど、そういういろんなジャンルの音楽は好きでずっと聴いているから。だから、そういう部分は(自分の中に)あるんですよね。

横山:眠っている(笑)。

EKKUN:そこを、このアルバムの制作を通じて、反映させられたんじゃないかなと。オカズのパターンとか。今まではツービートの曲の時にけっこう有効だったんですけど、それをもっと、ミドルテンポの曲にも反映させられたのかなと。例えば「Indian Burn」はスカとロックン・ロールが融合している感じですけど。最後のメインのテーマに入って行く前の、ドラムソロみたいなところとか。


――一瞬のブレイクね。

EKKUN:そうそう。そこでかましたソロとか。あの辺もたぶん、スカとか通っていなかったら出てこなかっただろうなと。



EKKUN

――リスナーとしては聴いていたからやったことなかったけど、何となく自分の中にそういうものがあったからできたと。

EKKUN:そうですね。そういうことをすごく感じました。作っていて。


――そういう可能性も含めて、彼をバンドに入れたというのはあるんですか?

横山:そうですね。好きで聴いているのは情報として知っていたし、うちのバンドはブラストビートばっかりじゃないよっていうのは言ってあったので(笑)。期待はしていましたね。新曲を一緒に作っていく中で、だいぶ対応してくれるようになったなと思います。


――ドラム・パターンは横山さんから指示されてやる感じなんですか?

EKKUN:指示、が主なんですけど。でも指示という感じでは捉えてはいなくて。アイディアを貰って、そこから膨らませていく。

横山:ドラムアレンジに関しては僕よりも南ちゃん(南英紀)の方が、すごくアイデアがあって。 「良くわからないけどこういうことしてみたら?」っていうのが、よくあるよね。


――例えば、バンドってメインのソングライターがいて。曲を作る時はその人の意向が大きくなる。それに合わせてメンバーがどうバックアップするか、それがバンドだという考えもあると思うんですが、横山さんにとってはそういうものでもない?

横山:そうではないですね。それだったらバンドじゃなくても良いと思うんですよ。ソングライターが一から十まで全部考えるなら。アンドリュー W.Kみたいになっても良いなら良いんだけど(笑)。


――いきなり懐かしい名前が(笑)。

横山:あの人ね、アルバムの隅から隅まで全部自分が責任を持つっていう発言をしているインタビューを読んだんですよ。それってすごいことだなと、ある意味。僕にはできないですよ。僕は自分の意見もあるけど、ないところもあるんですね。ベースラインをこう弾いてほしいとか、ドラムをこう叩いてほしいとか。任せるよっていうところも当然あるわけで。お互いにそういう関係でいたいんです。それがバンドマジックなんじゃないかと思うんですよね。ジュンちゃん(Jun Gray)は、ベースラインとか頑固な方ですけど。それでもちゃんと聞く耳を持ってくれる。そういう人とやりたいですね、僕は。


――特定の個人の主張を実現するためにバンドがあるのではないと。そういう姿勢はやっぱり、バンドサウンドに反映されますか?

横山:絶対されると思います。バンドの精神性だと思うので。


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Ken Yokoyama「Indian Burn」

Indian Burn

2024/01/31 RELEASE
PZCA-107 ¥ 2,750(税込)

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Disc01
  1. 01.Parasites
  2. 02.My One Wish
  3. 03.A Pile Of Shit
  4. 04.The Show Must Go On
  5. 05.These Magic Words
  6. 06.New Love
  7. 07.Better Left Unsaid
  8. 08.Indian Burn
  9. 09.Deep Red Morning Light
  10. 10.Long Hot Summer Day
  11. 11.A Little Bit Of Your Love
  12. 12.Heartbeat Song

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