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<連載:THE BEAT GARDENとシャベル>第4回は阪神タイガース・島本浩也選手、38年ぶり優勝に導いた仕事人と「Start Over」の出会い
Interview & Text:Mariko Ikitake
Phtotos:Shintaro Oki(fort)
THE BEAT GARDENが“喋りたい”相手のルーツや活動を根掘り葉掘り聞いていく連載「THE BEAT GARDENとシャベル」。 THE BEAT GARDENの4thアルバム『Bell』のリリースを記念してスタートした本連載の第4回に登場するのは、阪神タイガース・島本浩也選手だ。
2022年9月よりTHE BEAT GARDENの代表曲「Start Over」を入場曲に使っている島本選手。その縁でUと連絡を取り合う仲になったという。音楽・スポーツのプロとして、ともに再出発を誓った2022年――THE BEAT GARDENはドラマ『六本木クラス』の主題歌「Start Over」でブレイクを果たし、島本選手はケガから復帰すると、阪神タイガースの18年ぶりの優勝と38年ぶりの日本一で全国の野球ファンを熱くさせた。
「アレ(A.R.E.)」が話題を呼んだ岡田彰布監督から「島本サマサマ」と信頼も厚いリリーフ左腕と3人の意外な共通点が判明するスペシャル対談をお届けする。(インタビューは2023年12月上旬に実施)
連載「THE BEAT GARDENとシャベル」初回 with Gahoはこちら
連載「THE BEAT GARDENとシャベル」第2回 with wacci 橋口洋平はこちら
連載「THE BEAT GARDENとシャベル」第3回 with ぺこぱ・シュウペイはこちら
――38年ぶりに阪神タイガースを日本一に導き、歴史的快挙の立役者として大活躍された島本選手。2023年は改めてどんな年でしたか?
島本:ケガしてから復帰するまでに時間が長くかかりましたが、優勝できてその思いが報われたというか、ケガをしてよかったなと思えた一年でした。どん底を知った身としては、余計に喜びが大きかったです。
――リハビリ中は自分と向き合う時間も長かったと思いますが、その間はどんな気持ちでしたか?
島本:悔しさは常にありましたが、復帰したら絶対に活躍すると心に決めていました。
――(2023年は)プロデビュー13年目ということですが、THE BEAT GARDENも……
U:結成13年目なんです! しかも、38は僕たちにとっても特別な数字なんです。僕らのモチーフがミツバチで、ファンの方々をBeemerと呼んでいて、いろいろご縁がありますね。島本選手は「Start Over」をどこで知ってくれたんですか?
島本:『六本木クラス』です。後輩が「このドラマ面白いです」ってオススメしてくれて、第一話でこの曲が流れてきたときに「これや!」って感じて。そのときに初めて聞いたんですけど、それが去年の最終戦の前日で、次の日にすぐ「登場曲を変えてください!」ってお願いしました。途中で登場曲を変えることって、あまりないんですけど。
U:うわ~、嬉しい! 『梨泰院クラス』は見てましたか?
島本:いや、そっちは見てないんです。
U:Gahoが歌う韓国語のオリジナルもいいですからね。
MASATO:普通なら本家Gahoヴァージョンに行くところ、僕たちの曲を使ってくださるなんて……嬉しいです。
島本:その最終戦で初めて「Start Over」を聞いたのは、リリーフカーの中でした。〈ウォ!〉っていう掛け声が、優勝が近づくにつれて大きくなって、投球練習しているときもそれが聞こえるぐらい、甲子園全体がすごかったです。
U:嬉しいですね。最終戦の試合を見ていた僕らのファンが「曲が流れているよ!」って教えてくれたんです。それで嬉しくなって、僕が島本選手にDMしました。
島本:僕も皆さんに届いたらいいなと思ってました。なので、DMが来たときはびっくりしました。
阪神タイガースの島本浩也投手が
— U (@U__official) September 21, 2022
僕らの「Start Over」を入場曲に
使って下さったと聞いています
ミュージシャンとしても
憧れの甲子園球場で
島本選手、そしてファンの皆さんが
熱くなって下さる事を
想像するだけで嬉しいです
その瞬間を
会場で一緒に感じたい
本当にありがとうございます!
――「Start Over」はTHE BEAT GARDENにとっても再出発のような、気合の入った曲ですよね。島本選手もケガで苦しんだ2020年、2021年を乗り越えて、見事復帰されました。両者ともに2022年は再出発の年と言っても過言ではないですね。
U:コロナでライブができない状態が続いて、2021年にはメンバーがひとり、家の事情で辞めてしまいました。この曲に出会えてなかったら、僕ら、フェードアウトしていた可能性も非常に高かったくらい、ラストチャンスで掴んだのがこの曲なんです。島本選手が同じ時期におケガされていたことを後から知って、実はどこかで共鳴するものがあるのかもって思っていました。
島本:僕も「今年ダメだったら、もしかしたら……」っていう思いがあったんです。ケガして、2年間投げてなくて、去年と今年が本当に勝負の年でした。怖かったです、本当に。
U:どう考えても怖いですよね。正直、気持ちだけで乗り越えられないじゃないですか。いけるんだって自分を洗脳する感じでしたか? それとも「ダメだったら仕方ない」って半分諦めもありましたか?
島本:ダメなら諦めるしかないっていうほうですね。
U:僕らもそうでした。自分には「まだまだやれる!」って言い聞かせるんですけど、そう思いきれないというか。でも、島本選手と出会ってから、優勝に向けて根拠のない自信がありました。事務所でみんなと一緒に試合を見ていましたけど、「絶対勝つでしょ」っていう雰囲気だったよね。
MASATO:前回の日本一優勝は岡田監督が選手時代の頃ですよね。僕の友達も違う球団でピッチャーをやってるんです。その子もケガと向き合っているときは、這い上がる気持ちはあるけど、その気持ちだけでは、なかなかいけないというか。だから、底知れぬ勝負強さと気持ちと島本選手を支えるものがあったんじゃないのかなって、先ほどの話を聞きながら考えていました。
U:MASATOは高校まで野球やってたもんね。
MASATO:小学生のときにスポーツ少年団に入って、高校まで続けました。僕、滋賀のど田舎出身なんですけど、小さい頃にタイガースの選手が3人来てくれたんです。
島本:今も毎年、この時期に滋賀県で交流会をやってますね。滋賀県人会っていうのがあって、滋賀出身の選手が集まって、少年野球を教えているんです。
MASATO:そのときに夢を与えられたんです。あの思い出がずっと忘れられなくて。僕、あまり昔の記憶を覚えているタイプじゃないんですけど、これだけはめちゃくちゃ覚えてて(笑)。それくらい、嬉しかったんです。友達に「今度、島本選手と対談するんだ」って言ったら、みんな盛り上がってくれてました。
U:僕の地元にも野球好きの友達がいて、島本選手のことめっちゃ話してます。何も言ってないのに「今日、対談の日やんな~」って(笑)。みんな、島本選手のこと見てますよ。
REI:僕も関西出身で、おじいちゃん・おばあちゃんっ子でした。おじいちゃんがタイガースの大ファンだったので、夕食の時間になったらテレビで野球を見るのが習慣で。「今日はアカンかったな~」っていう会話が生活の中にある環境で育ったので、タイガース優勝は僕も嬉しい出来事ですし、今日の対談のこともおじいちゃんたちに伝えたら、すごく喜んでました。
島本:関西に住んでたら、夜は阪神の試合を見るっていうのが当たり前ですよね。テレビつけたら阪神、みたいな……はぁ、音楽関係の方との取材は初めてなので緊張してるんですけど、僕、大丈夫ですかね? 3日前くらいから、めちゃくちゃ緊張してました。
U:試合より緊張しちゃっているんじゃないの? そんなに緊張しなくて大丈夫だよ(笑)。
リリース情報
THE BEAT GARDEN『Bell』
2023/6/14 RELEASE
<初回盤(CD+DVD)>
UMCK-7211 5,800円(tax in)
<通常盤>
UMCK-1746 3,000円(tax in)
<UNIVERSAL MUSIC STORE限定盤(CD+グッズ)>
DSKU-12174 4,500円(tax in)
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THE BEAT GARDENが島本浩也選手に質問!!
U:プロ野球選手という夢を叶え、さらに日本一も叶えた島本選手は、なにか決まったルーティンをお持ちですか? 例えば、階段を上がるときは絶対に右足から上るとか。
島本:めちゃくちゃ多いです。シーズン中は毎日試合があるんですけど、球場に着く5分前ぐらいから、「Start Over」を流して、球場入りしています。
U:マジすか。嬉しい。
島本:あとは、昼ご飯をいつも食堂で食べるんですけど、試合の日は大体かつ丼を食べてます。ルーティンは言いだしたらきりがないぐらい、いろいろあります。やらなくて失敗したときに後悔したくないっていう思いがあるので。
U:めっちゃわかる! 僕は右足から階段を上って、左足でゴールしないと嫌なんですよ。あと、たまたま人と肩がぶつかったとして、右側をぶつけたら、右だけダメージを負ってる状態が納得いかないので、左側も軽く壁にぶつけてみるとか。
全員:ハハハ(笑)!
MASATO:たくさんの挫折を経験されたと思いますが、そんな中でも島本選手を救ってくれたものは何なのか気になります。僕が野球をやっていたときは、野球ノートを作って、監督からもらった言葉とか自分に響いた言葉を書く習慣がありました。これって野球人あるあるなのかなって。
島本:入団したときは3桁の背番号で、一軍に出られない状況が4年間続きました。3年目のクビになるか、ならないかっていうときに、今の嫁さんと出会いまして……こんな話していいのかな?
THE BEAT GARDEN:していい!
島本:嫁に出会うまでは、ひとりでは何もできなかったというか。まだ21とか20ぐらいだったので、嫁と出会って、いろいろサポートしてもらったおかげで、ここまで来られたのかなって思います。ひとりだったら、選手生活はすぐ終わっていたかもしれないです。
U:野球選手って結婚が早めの方が多いですよね。なぜなんですか?
島本:みんな野球しかしてこなくて、ひとりじゃ何もできないんです(笑)。かつ丼も用意されたものを食べますから(笑)。なので、家族が一番の支えだと思います。
REI:日本一になる前と後で、変わったことはありますか?
島本:自分が思っている以上に周りがこんなに喜んでくれるとは想像もしてなかったです。この前、優勝パレードで「ありがとう」っていう言葉をたくさん掛けてもらって、そんなことを言ってもらえるほど、すごいことをしたのかって。やっているときは一生懸命過ぎて、何も考えていませんでした。「あ、勝った。終わった」って感じだったんですけど、後々実感しましたね、すごいことをしたんだって。
U:目の前の勝ちしか考えてなかったんですね。
MASATO:優勝よりも、一戦一戦の積み重ねだったわけですね。
REI:それを知った今では、プレッシャーにならず島本選手の力になっていますか?
島本:そうですね。来年は今年よりもいい成績を残すことを目標に、まずは自分のことを考えたいです。そのうえで、連覇できるように取り組みたいなと。プレッシャーには感じず、それも楽しみたいなと思ってます。
U:いろいろ経てるから、全然、浮かれてる感じもしないです。
島本:まだ緊張してます(笑)。
REI:スポーツ選手にとって、睡眠も非常に大事な部分だと思いますが、何かこだわりはありますか?
島本:とにかく長い時間寝ることを重視しています。それ以外には、あまりこだわりはないです。
REI:何時間以上寝るんですか?
島本:8時間以上は寝るようにしています。
REI:僕たちとあまり変わんないですね。
MASATO:声帯も8時間以上休めないと回復しないみたいで、僕たちもツアー中は11~12時間とか寝ることが多いです。
REI:ライブでハチャメチャに動くので、筋肉痛にもなりますし、声も枯れるんですけど、スポーツ選手はどんなケアをしてるんですか?
島本:試合がある日は、大体11時ぐらいに甲子園に入って、まずトレーナーに治療してもらいます。その後、トレーニングを始めて、夜6時から試合が始まったら、また治療を始めて試合に臨みます。
U:治療っていうのは、鍼とか?
島本:鍼も試合が終わってからしますし、電気治療とか、いろんな治療をしますね。
REI:それをやると、疲労は回復するものなんですか?
島本:するとしないとでは全然、違いますね。
U:負けてしまったときのマインドはどうやって回復しているんですか?
島本:先輩から「打たれた日はどこか外に行け」って教わりました。次の日のために、とにかく気持ちを切り替えることが重要で。次の日になれば、また取り戻せるというか。
REI:なるほど。僕たちはツアー中でも毎日ライブをしていないので、島本選手の“毎日が本番”っていう環境には相当なプレッシャーがあるように感じます。
島本:逆に、すぐやり返せるチャンスが常にあるので、毎日あるほうがやりやすいかもしれないです。
U:エゴサとかするんですか?
島本:たまにします。YouTubeで自分の映像を見ることも。
U:僕も島本選手のことをXで検索したことがあるんですよ。ファンの人のポストに親心みたいな愛があって。「島本には頑張ってほしいな」とか、選手と同じ気持ちで悔しがったり苦しがったりしてる。音楽だとそれがあまりないんですよね。僕らはどちらかというと、ステージで輝いているところだけを見せているので、ストーリーの裏側をさらけ出してしまうと届かないことも逆にあるんです。でも、野球選手って全部をファンと共有しますよね。ケガしたときも治ったあとも、その過程をファンは全部知っているから、ファンの方たちから並々ならぬ愛を感じました。
リリース情報
THE BEAT GARDEN『Bell』
2023/6/14 RELEASE
<初回盤(CD+DVD)>
UMCK-7211 5,800円(tax in)
<通常盤>
UMCK-1746 3,000円(tax in)
<UNIVERSAL MUSIC STORE限定盤(CD+グッズ)>
DSKU-12174 4,500円(tax in)
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日本のアーティストの中で一番、島本選手を応援します!
――スポーツ選手は自分でケアもして、毎試合に挑んでいらっしゃるからこそ、それを知っているファンも一喜一憂するんでしょうね。契約更改交渉の記者会見で、島本選手は「来季は最低50試合で投げたい」とおっしゃっていましたね。
島本:今年の成績は試合数でいうと35試合でした。一軍にいれば、中継ぎピッチャーは年間50試合ぐらい投げられるので、今年よりいい成績を残せるようにしたいです。
――それに向けてトレーニングも何か変えるんでしょうか?
島本:練習量を増やすつもりです。あと、体重も増やそうと頑張っているんですけど、なかなか……。昔からいくら食べても増えないんです。お酒を飲んでも(体重が)増えなくて。
U:代謝がいいんですね。羨ましいです。
――一年で50公演するアーティストもめったにいないと思いますが、THE BEAT GARDENも島本選手と同じように2024年は50公演してみるっていうのは……
THE BEAT GARDEN:無理です!
U:どこかで壊れると思います。その代わりに、日本のアーティストの中で一番、島本選手を応援します!
島本:ありがとうございます(笑)。
U:僕らも「Start Over」をきっかけに世間に知ってもらう機会が増えて、こうやって島本選手にも知ってもらえたので、来年ももっとTHE BEAT GARDENも知ってもらえるよう努力します。島本選手だけでなく、もし今後、他の選手が僕たちの曲を使ってくれたときに、選手のパワーになるようなミュージシャンになりたいと思っているので、期待していてください。
~島本選手との対談を終えて~
MASATO:お会いできて嬉しかったです。実際に会ってみたら、想像していた選手像とは違って、パーソナルな部分も見せてくださって親近感がわきました。どういう経緯で「Start Over」を使ってくださったのかを直接聞くことができて、曲に対する熱い思いもストレートに伝えてくださって、本当に嬉しかったです。
U:お会いする前から、なんとなく通ずるものが多いのではと思っていたんです。ケガの話をされているときの表情を見ていて、「やっぱり、いろいろあったんだな」って感じました。島本選手のおかげで、「Start Over」に新たな意味ができたと思っています。目の前のことを着々とこなして積み重ねていくのは島本選手も僕たちも同じだと思うので、自分たちももっと頑張ろうと思いました。
REI:すごく気さくな方で、野球に対してストイックな方なんだということがわかりました。いろんなことを経て、今のステージに立てているということを聞けて、僕たちも勇気をもらいました。
U:緊張しているってずっと言っていたので、次は一緒に飲みに行きたいです。殻を破れる気がする!
MASATO:今回、島本選手はビジターだったので、僕らが島本選手のホームにお邪魔したいと思います。
U:島本選手も阪神タイガースも応援してます! 改めて、優勝おめでとうございます!!
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THE BEAT GARDEN『Bell』
2023/6/14 RELEASE
<初回盤(CD+DVD)>
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<通常盤>
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