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<インタビュー>なとり「Overdose」リリースから約1年――初めて語られるヒットソング誕生の裏側と待望の1stアルバム『劇場』



インタビューバナー

Interview:柴 那典

 現在20歳のシンガーソングライター、なとりが1stアルバム『劇場』をリリースした。

2021年5月の初投稿からTikTok上をメインにオリジナル曲を発表し、音楽活動を行ってきたなとり。2022年9月に初のリリース音源として配信された「Overdose」は国内外に広がり、ビルボードジャパンの総合ソング・チャート【JAPAN Hot 100】にて2023年の年間9位にチャートインする大ヒット曲となった。

2023年に入っても「猿芝居」「フライデー・ナイト」「エウレカ」「金木犀」「食卓」「Cult.」と着実にリリースを重ね支持を広げてきたが、ブレイクを果たした一方で素性は明かさず謎めいた存在でもあった。

今回はアルバムのリリースに際して、貴重な初インタビューが実現。ルーツから楽曲制作の背景、来年2月に予定している初のライブやこの先のビジョンまで、包み隠さず語ってくれた。

音楽を作り始めたきっかけはキタニタツヤの言葉

――アルバムの『劇場』、聴きました。曲単体ではなくアルバムの全13曲の流れで聴くことで、なとりというアーティストの価値観や美学が伝わってくる感じがありました。まず、アルバムが完成しての手応えや実感にはどういうものがありますか?


なとり:納得いくものは作れたかなと思います。自分を知ってくれている人も、知らない人も楽しめるアルバムになったかなと個人的に思っています。

――作るのに時間はかかりました?


なとり:アルバム自体は半年くらいで急ピッチで頑張った感じですね。その間に上京もしたのでバタバタしていたんですけど、こっちに来てからはずっとデモを作ってレコーディング作業をしていました。

――振り返っての話になりますが、なとりさんが曲を作り始めたきっかけはどういうものだったんでしょうか。


なとり:もともと曲を作りたいなとは思っていました。幼少期から音楽一家で育ったので、音楽には触れてきたし、いつか音楽ができたらなと思っていて。僕、キタニタツヤさんがめちゃくちゃ好きで。キタニタツヤさんのYouTubeライブで、パソコンとかスマホでも曲が作れるという話を聞いた時に、いつかやってみようと思っていました。高校を卒業してから時々触ってたら楽しくて、そこが作曲しようと思った原点かもしれないです。

――キタニタツヤさんを知ったのはいつ頃でした?


なとり:高2のゴールデンウィークです。運命的な出会いだったんですけど、その時スマホを没収されていたので、パソコンでYouTubeを開いていろいろ調べていたらキタニタツヤさんの曲が出てきて。当時からネット発のアーティストが好きだったので、そこからハマってしまって、今につながる感じです。

――音楽的なルーツというか、子供の頃から好きだったアーティストにはどういう人がいましたか?


なとり:兄と姉がいるんですけど、姉がORANGE RANGEを好きで。母親はママさんアカペラグループをやってて、ゴスペラーズの曲が家に流れていたので、それをずっと聴いていました。で、兄と姉がケータイを持つくらいにウォークマンを貰ったんです。その時に姉のウォークマンに入ってるK-POPとかflumpool、兄のウォークマンに入っているONE OK ROCK、UVERWorldとか、そのあたりを全部聴いて。そこからいろんなものに触れるようになった感じです。自分から好きになったのはゲスの極み乙女。が最初ですね。

――シンガーソングライターというスタイルに憧れを抱いたきっかけはありました?


なとり:それはもう、米津玄師さんです。米津さんに出会ってから、あの雰囲気に「マジでやばい!」って心を奪われて。そこからシンガーソングライターが大好きになりました。

――実際に曲を作り始めた時はどんな感じだったんでしょう?


なとり:もともとギターは弾いていたので、とりあえず弾き語りで一曲作ってみようと思って。そこから適当にベースをポンポン押したらできるだろうと思ったら、できました。それが「金木犀」のデモ版です。

――率直に言って、人生で初めて作った曲としては非常に完成度が高いと思うんですが、曲ができた時の感触ってどんなものでしたか?


なとり:なんか「音楽できるわ」って思って(笑)。仲のいい、信頼できる友達に聴かせた時に、ものすごい褒めてくれて、母親にも「いいんじゃない?」と言われたので、そこで自信はつきましたね。あの曲がきっかけでした。


TikTokで“ウケる曲”を作りたくて生まれた「Overdose」

――TikTokの初投稿が2021年5月でしたが、TikTokを活動拠点に選んだのはどういう理由だったんでしょうか?


なとり:TikTokだと聴かれやすいっていうのがありますね。もともと「金木犀」はYouTubeに上げたんですけど、1か月でも2桁いかないぐらいの再生回数で。TikTokはもともと見ていたし、いい曲を作ったんだから聴かれないと意味がないと思って、母数の多いコミュニティに行こうと思ったのがきっかけです。

――TikTokというプラットフォームに合わせて曲の作り方が変わったということはありましたか?


なとり:2曲目に作った「ターミナル」を初めてTikTokに出したので、作り方を変えたというよりも、そもそも根本がそこからなんですよね。サビだけ最初に作ってその後にフル尺で作るっていうのも、あんまり違和感なくそうなりました。

@siritoriyowai_ 作曲1ヶ月目の私が作りました。ターミナルという曲です。     #作曲してみた #おすすめにのりたい#有名になりたい ♬ ターミナル - なとり / natori

――サビから作るということは、パーツごとに曲を作っていくという発想なんでしょうか?


なとり:そうですね。サビができてから、反響が良ければパーツごとに作っていきます。

――その反響って、自分でコントロールできないものだったりするじゃないですか。例えばAとBを出して、Aはいまいち反応が悪いけれどBは再生回数が跳ねる、みたいなことがある。そういうことは作曲プロセスに影響を与えたりしますか?


なとり:例えばAが作りたい方、Bがウケがいい方だったら、最初は絶対にAの方を作ってたんです。けれど、そうしていたらだんだん数字が落ちてきて。なので、とにかく入り口を作ろうと思って、「Overdose」のデモを作る時にBの方を選ぶようにしたんです。とにかく聴かれないと意味がないというか、魅力を伝えるにも数字が足りないと思って。とにかくみんなにウケる曲を作ろうっていう、そのきっかけの曲が「Overdose」だったんです。

――ということは、「Overdose」という曲は、いろんなトライ&エラーの中でターニングポイントになった曲だった。


なとり:そうですね。それまで作ったことないジャンルだったんですけど、この曲で「こっちの方がウケるんだ」みたいなことは確信しましたね。

@siritoriyowai_ Overdoseという曲です。#バズれ #おすすめにのりたい #japanesemusic ♬ Overdose - なとり

――どういう要素、どういうポイントがウケると分析したんでしょうか。


なとり:四つ打ちで、コード進行がループしていて、サビ頭にキラーフレーズを持ってくる。あとは、何回も繰り返し聴けるもの。ずっと同じメロディを続けるのを意識して作るとバズるだろうっていうのが、「Overdose」の時の分析でした。

――「Overdose」は今おっしゃったような何がウケるかという分析だけでなく、なとりさんの美学や格好いいと思うものもミックスされているような曲だと思うんです。そのあたりのポイントはどうでしょうか。


なとり:メロディーですね。音程もキーも、自分でも何なのかわからないんですけれど、なとりの癖やらしさがあると思うんです。あとは音域ですね。この曲は音域がめちゃくちゃ低いので。

――「Overdose」だけ聴いていた段階では気付きにくかったんですが、アルバム全曲を聴いてから改めてこの曲を聴くと、ある種のシニシズムというか、物事を斜に構えて見ていたり、鬱屈していたりする、そういう刺々しい言葉やマインドがいろんなところにありますよね。それと、気持ちいいグルーヴとメロディーが絶妙に合わさっているのが「Overdose」という曲の魅力にあるなと思ったんです。それは他のいろんな曲にも共通するポイントになっている。このあたりはなとりというアーティストの個性になっているんじゃないかと思ったんですが、このあたりはどうですか?


なとり:基本、他人事というか、三人称目線で歌を作っているようなところはありますね。そうなると、何言ってもいいんですよ。毒々しいことを言っても、それに対して自分は傷つかないんで。だから音楽では、めっちゃ毒を吐いているかもしれない。

――ある種の箱庭のようなものを作って、それを俯瞰で見ているような感覚で歌詞を書いたり、それを歌ったりしているようなところがあるようにも思います。


なとり:それはあるかもしれないですね。僕の中には人を小馬鹿にする曲って結構多いんですけど、それはジオラマを見ているようなものを歌にしているのかもしれないです。

――「Overdose」が出た後でなとりさんを巡る状況ってがらっと変わったと思うんですが、そのことについての第一印象はどうでしたか?


なとり:バズればバズるほど不安でしたね。ランキングを見たら、僕が聴いてきた人に並んでいるので、それを見るのはめちゃくちゃ不安でしかなかったです。この人に追いつけてないのにこんなとこ行っちゃダメだろうっていう。

――数字の方が自分を追い越しちゃったみたいな。


なとり:ちょっと自分の曲じゃないような感じがしていたというか。それこそ他人事みたいな感覚で見ていて。不思議でしたね。

――この曲が世に出てから1年以上経ち、自分の名刺代わりになるアルバムが完成した今の段階では、この曲に対しての自分の思いは変わりました?


なとり:めちゃくちゃ変わりました。「Overdose」がバズってからは、自分のやりたい曲ばかりをやらせてもらえたので。そこで「自分はこういうことがしたいんだ」というのを伝えることができたから不安がなくなって、今はこの曲にすごく感謝してます。僕の見たことないところまで連れていってくれた曲だし、このアルバムも「Overdose」が軸になっているので。大切な曲にしなくちゃなと思っています。


状況を俯瞰して見た“皮肉の劇”

――バズることを狙って曲を書くということは、つまりは、自分のやりたいことよりも、不特定多数に判断を委ねているということになると思うんですよね。それだけになってしまうと、自分の足場がなくなるというか、「なとりのアーティスト性ってなんだろう?」ということになってしまう。けれど、このアルバムに至るまでに出してきた曲で、自分のやりたいことはこういうことだということを布石として打ってきた。その結果としてのアルバムが完成したんだという感覚がある。


なとり:その通りです。なとりの全部を詰め込めることができたというか。さっき言ったAとBを両方詰め込めてアルバムにできたなっていう印象があります。

――自分として、この曲を出すことで自分のやりたいことの軸が示せるだろうという自信があった曲はどれですか?


なとり:「金木犀」です。この曲は今でも一番好きな曲だし、なとりの根っこのエキスが全部出ている曲なんです。楽器隊もちゃんと生で録らせてもらったし、自分の好きなメロディーラインも詰め込んだ。これがやりたいんだっていうのを伝えられたかなと思います。

――「金木犀」という曲もちゃんと届きましたよね。


なとり:届いたつもりではあります。やっぱり「Overdose」に比べてどうかと言われると難しいんですけど、聴いてもらえている曲ではあるし、生配信でも受けがいいので。

@siritoriyowai_ 金木犀という曲です。MV 出たので見てね。#バズれ #おすすめにのりたい #金木犀 ♬ Osmanthus - natori

――この曲にはロマンティックなところも感じますが、これはどういうイメージから書いていったんでしょうか。


なとり:この曲の題材は、夢の中の自分に恋をするっていう話で。このテーマがないと「金木犀」という言葉も出てこなかったと思います。

――「金木犀」以外で、自分のやりたいことを示した手応えがある曲を特に挙げるならばどうでしょうか。


なとり:「エウレカ」は、新しいなとりの入り口としてはデカいですね。めちゃくちゃうるさいロックな曲というのは、なとりの中では挑戦的なことで。これは「出せてよかった」という印象が強いかもしれない。僕、もともとボカロックも大好きなので、こういう曲がめちゃくちゃやりたかったんですよ。これからも作っていきたいし、作れてよかったなと思います。

@siritoriyowai_ エウレカという曲です。#バズれ #おすすめにのりたい #エウレカ ♬ Eureka - natori

――バンドサウンドのアレンジで疾走感あるエネルギッシュな曲をやりたいという思いはずっとあった?


なとり:ありました。いろんなジャンルを踏襲したかったし、こういうロックを作らないとダメだというイメージがあって。

――おっしゃった通り、アルバムにはいろんなジャンルの曲があると思うんですが、なとりさんの言葉で整理すると、どんな風に分類していますか?


なとり:言葉にするのはすごく難しいんですけど、「Overdose」と「フライデー・ナイト」はエレクトロ。「猿芝居」は和×エレクトロみたいな感じですね。「金木犀」とか「ラブソング」は上質なポップスというイメージ。「ターミナル」はオルタナティブの系譜を受け取って作った曲という風に勝手に思っています。あとはビッグバンドもありますね。

――アルバムの1曲目はタイトルトラックの「劇場」ですが、この曲はアルバムを象徴する曲にしようと思って作った曲でしょうか?


なとり:いや、この曲は元々デモがあって、そのデモが1、2を争うぐらい好きで、いつかこの曲はちゃんと形にして出したいと思っていて。アルバムを作ることになってから、『劇場』というタイトルが、コンセプトという意味合いでアルバムとしてまとめやすいと思って、それでタイトルトラックにしました。

――“劇場”というコンセプトはどういうところから出てきたんですか?


なとり:この曲は、最初のデモを作ったときは、僕の一番闇の方にある根っこを絞り出して作った曲だったんです。でも、そういうことをツラツラ書いてる自分が、なんかめちゃくちゃ馬鹿らしいなと思って(笑)。さっき言ったように、それを俯瞰で見た時に、みんなに聴いてもらってる、まさにこの状況が劇場みたいだなと思って。“皮肉の劇”みたいなものが頭の中にあって、そこから劇場になりました。

――この曲は歌詞を見ても、ちょっと鬱々としているというか、ネガティブなものが感じられます。これはどういう理由だったんでしょう?


なとり:働いていたとき、めちゃくちゃ嫌いな上司がいて(笑)。周りのみんなが上手くいってる時に自分は仕事で怒られて、しょうもないですけど彼女とかもできなくて、当時本当にイライラしてたんですよね。1サビはそれを、今の現状だとバレないように言葉を上手く組み替えて書いたような感じです。

――この曲を書いていたときには働いていたんですね。


なとり:そうですね。それこそ「Overdose」を作ろうと思ったきっかけというか、全然聴かれなくなった時期ぐらいに作った曲で。本当に誰にも聴いてもらえなかった曲でした。

――2曲目の「食卓」はどうでしょうか。これも皮肉な曲ですが、どういうイメージで書いていったんでしょう。


なとり:これは、「猿芝居」という曲のデモを出したときに、TikTokで叩かれて「誰々のパクリ」みたいなコメントばっかりで。それで悲しいぐらいイラついちゃって、「なんでこんなこと言われなきゃいけないんだよ」みたいなところから、頭の中に「こいつらを食べてやろう」みたいな、逆に食い殺すイメージと「食卓」っていう単語が浮かんできて。TikTokにスワイプってあるじゃないですか、それが円卓が回ってる感じに近いなと思って。「回る皿の上で、てめえらを食ってやるぜ」みたいな。めっちゃ簡単に言うと、それがテーマというかコンセプトですね。

――ある種の悪意みたいなものを歌にした。


なとり:ヴィランになったつもりというか。音もめちゃくちゃヴィランっぽいので、自分が悪役になった感じの曲です。


「TikToker兼シンガーソングライター、くらいになったら顔を出してもいいかな」

――「猿芝居」はどうでしょう? これはどういう風に作ったんでしょうか。


なとり:この曲のデモは一番早くできましたね。前日ぐらいに「フライデー・ナイト」のデモがちょっとバズったので、調子に乗ってその日の夜に「明日この曲のフルを上げます」とか言っちゃって、でも何も浮かんでこなくて結局作れなかったんです。だから、その日のうちに急いで作らなきゃと思って。当時スマホで曲を作ってたんですけど、適当に音を鳴らしてたら和楽器っぽい音と祭囃子の音が聴こえて「これを使おう」って、それを基準に和っぽいメロディーを作った。1時間かからないくらいでできました。

――「フライデー・ナイト」はどうでしょうか。この曲はSpotifyのCMソングになりましたが。


なとり:「フライデー・ナイト」は、「Overdose」っぽいというか、簡単に世界に入り込める感じの曲がいいよね、と思ってデモを作りました。ただ、最初はフル尺のトラックにするのが全然うまくいかなくて。今は2分台の曲なんですけど、最初は5分半ぐらいのビッグバンドみたいな曲で、「それはさすがに聴かれないだろう」と思ってエレクトロにしたら、思ったよりコンパクトに収まった感じです。で、作ってる最中にSpotifyのCMソングのお話がきて、「あ、俺仕事してる」って思いながら作りました(笑)。

▲Spotify | なとり「その一曲に」30秒篇

――アーティストとしての音楽活動が本格的になっていく、音楽を仕事として意識したタイミングもそのあたりだった。


なとり:そうですね。あとは「猿芝居」の時に、いろんな人が関わってくれたんですよね。生楽器が入った瞬間に、「ちゃんとしたところで音楽作ってるわ」みたいなことを思い始めて、そこから東京に行く機会も増えていきました。「仕事してるんだな」って思った頃に「フライデー・ナイト」のタイアップの話が来て。そのあたりから切り替わりましたね。

――ビジュアルとしては素顔は出さずにイラストをベースにした形で活動しているわけですが、そこに関してはどんな考えがあったんですか?


なとり:僕としては、歌を聴いてほしかったんですよ。TikTokでバズる要因って、キャラと歌だと思ってて。「Overdose」のデモを出した時は実写で出してるんです。それがキャラになっていると思ってた。でも、キャラと歌だとちゃんと歌を聴いてもらえないというか、キャラ頼りでバズったんじゃないかって個人的に思ったんです。ちゃんと曲を聴かれるようになるまでは、あんまり情報を出さない方がいいと思って、顔を出すのも控えるようになりました。イラストって、特に僕みたいな曲の場合、音楽の世界に入り込みやすいんですよ。なんで、ビジュアル的にはイラストベースの方がいいなって、そうすることにしました。

――なとりさんのルーツにはボカロカルチャーもあるわけで、そこからの影響もあったりしますか?


なとり:それはあったんですけど、僕、本当は実写で出たかったんです。やっぱり、米津玄師が僕を全部作ってくれたので。そういう風にやるのが格好いいと思ったし、そうやりたかったんですけど、そこに至るまでにはなってないというか、ちゃんと曲を聴かれてないなと思って。たぶん、他の人にとって僕は今、音楽の人というよりTikTokerなんですよ。それが、TikToker兼シンガーソングライターくらいになったら顔を出してもいいかな、くらいのテンションで思ってます。

――アルバムの中で、最も今の自分が反映されていると思う曲は?


なとり:「Sleepwalk」という曲ですね。

▲なとり - Sleepwalk

――これはアルバムのリード曲でありますが、どういうところから作っていったんですか?


なとり:僕、ホラーゲームがめちゃくちゃ好きで、ホラーゲームの世界観や不気味さがある感じの曲を作りたいと思って。『P.T.』という何回も同じところをループするゲームをイメージして、あえて曲を短くして、何回もループを聴くみたいなイメージで作りました。あとは、リードトラックでもあるので、なとりの今まで聴いてもらった曲を踏襲しようと思って、四つ打ちとエレピを入れて。少しピッチを下げてるので若干不気味に聴こえるけど、ちゃんとノリやすいというのも意識して作りました。

――「Sleepwalk」は、自分のやりたいことと受け入れてもらいやすいことの絶妙なミックスになっている。


なとり:そうですね、さっきのA、Bのちょうどハイブリッドのとこにいるかなって思います。アルバムの6曲目に持ってきたのも、3曲目から5曲目の「猿芝居」、「Overdose」、「フライデー・ナイト」はみんなが好きそうな曲を入れたんですけど、7曲目の「金木犀」からは自分の作りたい曲、その中間に「Sleepwalk」がいるっていうイメージなんですよね。そこのハイブリッド感をちょうど出せたかなと思ってまいす。

――「夜の歯車」も、アルバムの中で異彩を放っている曲ですが、この曲についてはどうですか?


なとり:この曲を作ったのは、父親に「兄夫婦のための曲を作ってくれ」って冗談で言われたときに、マジでやってやろうと思ったのがきっかけで。こういうアプローチの曲をやったことがなかったんで、歌詞も初めて穏やかな視点で作ったんですけど、いい曲が作れたなと思うし、個人的に「こういう曲も作れたんだ」という気づきもありました。

――毒も棘もなく、本当にピュアに受け取る側のことを持って歌う歌を作れたと。


なとり:そうですね。そういう意味でも自分にとって新しいことができた気がします。この曲は長いんですけど、聴いていて疲れないんですよね。こういう曲も聴いてほしいと思います。

――2024年2月には初のライブが決まっています。ライブに関してはどんなことを思っていますか。


なとり:本当に人生初めてのライブなので、緊張しています(笑)。でも、もともとライブはめちゃくちゃやりたかったんです。憧れの人たちと同じ舞台に立ちたいというのがあったし、ライブ受けする曲も意識して作ってきたつもりではあるので、楽しみな気持ちもあります。

――もうひとつ聞かせてください。たとえば5年先、10年先を見据えて、こういう風になりたい、こういう光景を見たい、何かイメージしていることはありますか?


なとり:今のところ、小さい目標がポツポツあって。その目標をクリアしていくと、見えてくることもあるなと思っています。セカンドアルバムは出したいし、いろんな人ともコラボしてみたい。武道館にも立ってみたい。でもそれが最終目標かと言われれば、別にそういうわけでもなくて。いろんなことをこなしていく中で、1つでっかい目標を見つけたい。目標を見つけるのが目標です。

なとり「劇場」

劇場

2023/12/20 RELEASE
SRCL-12665/6 ¥ 5,500(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.劇場
  2. 02.食卓
  3. 03.猿芝居
  4. 04.Overdose
  5. 05.フライデー・ナイト
  6. 06.Sleepwalk
  7. 07.金木犀
  8. 08.夜の歯車
  9. 09.エウレカ
  10. 10.Cult.
  11. 11.ラブソング
  12. 12.ターミナル
  13. 13.カーテンコール

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