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<インタビュー>非日常感をドキドキしながら楽しみたい――10周年を締めくくったSHISHAMOが挑む、初のアコースティック・ツアー



インタビューバナー

Interview:Takuto Ueda
Photo:Shintaro Oki(fort)

  2010年に結成され、2013年11月に1stアルバム『SHISHAMO』でデビューした3人組ロックバンド、SHISHAMO。2022年11月からは記念すべき“CDデビュー10周年イヤー”を掲げ、年明けの日本武道館公演や3月の大阪城ホール公演、2枚組コンセプトアルバム『恋を知っているすべてのあなたへ』をはじめとした作品リリース、恒例の野音公演や全国ホールツアー、そして10周年イヤーの締めくくりとなるアリーナ2days公演など、1年間を全速力で駆け抜けてきた3人が、新たなチャレンジとなるライブを発表した。

 2024年1月に東京、横浜、大阪で開催するビルボードライブ公演は、バンド史上初の全編アコースティック編成でのライブ。これまでワンマンやフェスで披露してきたアコースティックver.の楽曲を収めた『ACOUSTIC SHISHAMO』を引っ提げ、このライブでしか見られない新たなSHISHAMOの一面を見せてくれるはず。3人に10周年イヤーの歩みを振り返ってもらいつつ、11年目の始まりを飾るプレミアムなステージに向けて、意気込みを語ってもらった。

この1年でさらにいい関係性を作れた

――CDデビュー10周年イヤーの締めくくりとして、今年11月には横浜ぴあアリーナMMでの2days公演を開催。まずは率直な感想を聞かせてください。


宮崎:10周年イヤーの締めくくりにふさわしい二日間になったなって思います。この1年間、とにかく活動を続けてきたので、それが終わる寂しさが強いんじゃないかと思っていたけど、ステージに立ってみたら「今この時を楽しまないと」って気持ちにお客さんがさせてくれて、二日間ともすごく楽しかったです。

吉川:初日の冒頭で流れた映像は、デビューした2013年からの歩みを辿っていくものだったので、私も過去に思いを馳せたりするのかなって思っていたけど、いい意味で“いつものライブ”と変わらないというか、まさしくこの瞬間というものをすごく感じられました。私、けっこうライブ前に緊張するタイプなんですけど、思い返せばそこまで気負わず、普段の自分のままでステージに立てた感じがします。

宮崎:味方が多かったよね。私も二人ほどではないけど、たまに緊張することはあって。そういうときは大体不安があるときなんですけど、その二日間は10周年を祝いに来てくれた人たちばかりだったし。あと、ああいう広い会場では景色に圧倒されちゃうんですけど、お客さんはまったく遠くに感じなかったです。

――そのあたり、武道館と比べてどうでした?


宮崎:この10周年イヤーの1年間で、お客さんとの絆がより深まった気がしていて。自分自身たちでは意外と“10周年”という実感がないんですよ。「10年頑張るぞ」みたいに思ったこともないし、やることをやっていたら10年経っていた、みたいな感じなので。でも、お客さんが「おめでとう」と言ってくれたり、普段以上にすごく想いを伝えてくれるので、それでお互いの気持ちが高まったというか、この1年でさらにいい関係性を作れたように思います。なので、武道館でやったときより、みんなとの心の距離の近さ、仲間感みたいなものはあったかなって思いますね。

――松岡さんはいかがですか?


松岡:私はけっこう過去を思い出しちゃいました。私が加入してから9年ちょっとですけど、活動を通していろんな方々に支えてきてもらったなって。それってたぶん、あっちゃん(宮崎)が言っていたことも関係していて、お客さんとの近さとか、みんなの反応だったり、そういうのって当たり前のものじゃないなって、ライブ中にすごく感じたんです。11年目も頑張ろうって思えるような元気とか、またみんなからいろんなものをもらったライブだったなって思います。

――二日目は“後夜祭”ということで、【スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2014】で共演したKANA-BOON、キュウソネコカミ、go!go!vanillasをゲストに迎えた一日でした。


宮崎:もともと2daysやることは決めていて。なんとなく二日目は対バンがいいんじゃないかという話になって、SHISHAMOの10周年というタイミングで呼ぶならあの3バンドしかいないよねって感じでした。後夜祭というテーマにもぴったりだし。でも、実際に当日を迎えてみたら、一日目がけっこうすごかったんですよ。充実感というか、もうこれで10周年イヤー終わりみたいな気持ちになっちゃった。

松岡:「やり切った!」みたいな。

宮崎:そう。「これ、明日どうしよう」みたいな(笑)。もう何も残ってなかったし、二日目をどんな気持ちで迎えたらいいか分からなくなっちゃって。でも、いざ始まってみたら、思っていた以上に素敵な一日になりました。二日目を特別な日にしてくれたのは3バンドの皆さんとお客さんなので、私たちは特に何もしていないんです。ただ楽しんだだけっていう。いろいろ受け取った日でした。

――それにしてもそれぞれ個性的というか、あらためて不思議なメンツの4組だと思いました。


宮崎:本当に強みがバラバラな4バンドだし、それぞれが違う方向を向いてるんだけど、この10年でちゃんと4バンドともかっこよくなっていて、それでいて10年前から大事にしているものが変わらない、というのはすごく感じました。こうやって10年経っても集まれること自体がすごいので、そこに誇りをもってこれからもつながっていけたらいいなって思います。

――デビュー10周年を迎え、バンドとして11年目以降に見据えている展望や目標などはありますか?


宮崎:10周年も生きているうちに自然と迎えた感じなので、これからも3人で健康にやっていけたらと思います。それって意外とすごいことなんじゃないかと思っていて。じゃないと音楽うんぬん言っていられないじゃないですか。なので、心も体も健やかでいたいなって今は思いますね。

――楽曲制作についてはいかがでしょう? 新作のオリジナル・アルバムも期待されているかと思いますが。


宮崎:これまで7枚のアルバムを作ってきましたけど、けっこう振り返ると面白いなと思っていて。当時の自分たちは特に意識していなかったけど、そのときのモードがちゃんとあるというか。しかも10周年イヤーはコンセプト・アルバムを出したので、自分たちの曲を振り返る機会も多かったんですよね。そのうえで、まだまだ広がっていけるなってすごく感じるし、見たことないSHISHAMOだったり、書いたことのない曲をちゃんと楽しみながら作っていけるって、そう思えるのが純粋にうれしいです。

吉川:朝子から新曲のデモをもらうたび、「次はこういう曲なんだ」っていつも変わらずワクワクするし、その気持ちは作品を受け取ってくれるお客さんにも同じように感じてもらえるんじゃないかなって思っていて。次のアルバムもどんな反応が返ってくるのか、それが今から何よりも楽しみです。

松岡:『SHISHAMO 7』から間も空いてますし、11年目以降も新しい曲をお客さんに届けていくことが楽しみです。


「こういうSHISHAMOの一面もあるんだ」

――11月にリリースした『ACOUSTIC SHISHAMO』についても聞かせてください。10周年イヤーを記念した作品で、これまでライブで披露されてきたアコースティックver.の楽曲が待望の音源化となります。


宮崎:昔からライブではよくアコースティック演奏をしていて。2016年ぐらいからかな。最近はフェスでもやってるんですけど、けっこう評判が良くて、ずっと作品にしてほしいという声はいただいていたんです。なので、自分たちの心の片隅にもずっと想いはあったんですけど、10周年イヤーは自分たちのためではなく、SHISHAMOを応援してくれるみんなのためにやれることをやりたい気持ちが強くて。なので、選曲も自分たちがやりたい曲というより、みんなが喜んでくれる曲を考えながら決めていった気がしますね。

――もともとライブでアコースティック編成を披露するようになったのは、何かきっかけがあったのですか?


宮崎:一番最初はちょっとイレギュラーでした。初のホールツアーをやったとき、よく分からないけど宇宙ツアーみたいなコンセプトにしていて、とある惑星に不時着みたいな場面転換があって。「じゃあアコースティックでやってみるか」って2曲やったんです。それが自分たち的にも意外と良くて、度々やるようになりましたね。

――特に思い出に残っているパフォーマンスを挙げるとしたら?


宮崎:野音じゃない?

吉川:そうだね。

宮崎:ほぼ毎年、日比谷野音でやらせてもらってるんですけど、やっぱり野外でのアコースティックは全然違いますね。お客さんも気持ちよさそうに聴いてくれるので好きです。


――アルバムの1曲目は「犬ころ」。初の音源化となりますが、この曲が生まれた経緯は?


宮崎:実はけっこう前にバンドver.でレコーディングしていて、CMでもそっちが使われているんですけど、先にライブでアコースティックver.で披露していた楽曲で。なので、タイトルは分からないけど「あの曲、何だろう」って気にしてくれていた方も多かったんです。勘で「犬ころ」って呼んでる人がけっこういたんですけど、そのままですみませんって感じです(笑)。

吉川:だから、何か劇的なトピックがあって生まれた曲ってわけじゃないよね。

――日々、楽曲を書きためていくなかで生まれた曲のひとつ?


宮崎:そうですね。聴いてもらったら分かると思うんですけど、何か特別なメッセージを込めたわけでもなく、「なんでもない毎日が本当は大切だよね」っていうことを歌った曲なので、自分のことのように聴いてもらえる人も多いんじゃないかな。

――初披露したときのことを覚えていますか?


宮崎:初披露はけっこうノリで……たしか数年前の野音の1曲目にやったんです。お客さん、ぽかーんじゃないですか。私たちはあの空気がけっこう好きなんですよね。「なにこの曲?」みたいな。そのときの反応が良かったので以降もやるようになった感じです。

松岡:みんな、「わーっ!」って私たちのことを迎え入れてくれたのに、始まったら「?」みたいな顔をしていたのが面白かったです。

宮崎:「知らないの私だけ?」みたいなね。

吉川:「すごい昔の曲なのかな?」みたいな。

宮崎:あの感じがいい。

――アコースティックで披露して、意外な反響があった曲などはありますか?


宮崎:「花」とか?

松岡:たしかに「花」だね。

吉川:そうね、思ってた。

宮崎:けっこう古い曲で、2015年のアルバム『SHISHAMO 2』に収録されているんですけど、そういう時期の曲も大事にしてくれているのはすごくうれしいですよね。

吉川:私はエゴサーチするのが好きなんですけど、アコースティックをやったライブのあとに「『花』が聴けてうれしかった」みたいに言ってくれる人が意外といて。

宮崎:この曲はアコースティックで演奏したことのほうが多いんじゃない?

吉川:それこそ一番初めのアコースティックでチャレンジしたのが「花」と「がたんごとん」だったので、かなり早い時期にアコースティックでやり始めた曲でもあります。

松岡:長くやってますよね。

宮崎:だからこそ、お客さんも衝撃があったのかもしれない。「こういうSHISHAMOの一面もあるんだ」みたいな。


ナイフで切るような肉を食べたい

――今回のアルバムのためにリアレンジするなかで新しい手応えがあった曲などは?


宮崎:でも、わりとずっとやってきたアレンジだったりもするので、自分たちの中ではその曲のもうひとつの顔として定着しているものがほとんどで……。このタイミングで新しくアレンジしたのは「夏の恋人」ぐらい。それ以外はレコーディングでちょっと変えたりはしたけど、基本はライブのときと変わらない。ただ、「君と夏フェス」とか「明日も」ってバンドでやってなんぼみたいな曲なので、最初にアコースティックをやり始めたときはけっこう難しくて。でも、そうやって今までやってきたからこその良さもあると思うので、ちゃんとアコースティックでも育ってきた曲にはなったのかなって思います。

吉川:ドラムに関しては「あの子のバラード」だけ、ちょっと変則的なセットでやってるんですけど、それ以外は基本的にカホンで演奏していて。アコースティックをやり始めた頃、今思えば失礼な話なんですけど、ある意味、ドラムの代わりみたいな意識だったんですよ。でも、演奏していくうちにカホンはカホンでまったく別の楽器だよなって思ったし、それからは音の出し方とか、その楽曲にどうアプローチするか、みたいなことをより真剣に考えるようになったので、このアルバムでそれをかたちにできたのは本当によかったです。

松岡:私も普段はまったく使わない楽器で、しかもどんどん増えていったので、気づけば要塞みたいなセットを組んでライブするようになって(笑)。ピアノも習っていたわけではないので、本当に一から練習したんですけど、最初はひどいもんだったんですよね。でも、よっちゃん(吉川)と同じように試行錯誤を重ねてきたからこそ、こうやってかたちにできたことはすごくよかったなって思います。

――普段の楽曲制作では、まず宮崎さんが作詞を起点に全体像を作り上げていくんですよね?


宮崎:そうですね、わりと最初に全体のイメージを考えて、それを二人に伝えていく感じです。

――その工程はアコースティックでも同様?


宮崎:アコースティックの場合、みんなでスタジオに入って、なんとなく音を鳴らしながら決めていく感じで、私はそういうやり方も面白くて好きです。オリジナルの何を残して何を新しくするか、変えたくないものと変えたいものを精査していく感じ。バンドからアコースティックに変えるときは基本、削ぎ落としていく作業になりますね。

――あらためて楽曲と向き合う時間にもなりますよね。


宮崎:実際、試しにやってみても「これはオリジナルを超えることはないよね」って思ったりすることもあって。ただ、曲の持っている力が強ければ強いほど、どんなかたちでも良さは伝わるので自由にやれるというか。今回はどの曲も本当に楽しんでやれました。

――難しいと思いますが、今回のアコースティックでお気に入りを選ぶとしたら?


吉川:私は3曲目の「ロマンチックに恋して」ですかね。リズムがアコースティックでがらっと変わっていて。でも、それがまた違う良さとして出ていて、もうひとつの完成形になったなって思います。あと、これはアルバム全体に共通しているんですけど、楽器が少なくてシンプルな分、コーラスワークが際立っているし、自分も担う部分が多いので、いつも以上に緊張感があって好きですね。

松岡:私は「あなたと私の間柄」かな。もともとすごく好きな曲だったので、アルバムに入れることができてうれしかったです。普段のアコースティックライブでは鍵盤ハーモニカを吹いてるんですけど、今回のアルバムでは初めてエレピを弾きました。サイズ感がまったく違うので大変でしたけど、自分でも買って家で練習したりしたので、みんなにもぜひ聴いてほしいなと思う一曲です。

宮崎:私は6曲目の「ハッピーエンド」ですかね。さっき言ったような、残すべきところと変えるべきところ、そこのバランスが一番うまくいった曲かなって思います。普段のバンドではガーッと熱量高く演奏しているけど、あえてアコースティックでは外す感じにしたというか。今年の野音で1曲目にやったんですけど、あのときの思い出も印象的で。蝉の鳴き声が聞こえるすごく暑い日で、その空気感のなかで鳴らしたこの曲がすごく気持ちよかった。

――そんな本作を引っ提げ、1月には東横阪のビルボードライブを巡るツアー【ACOUSTIC SHISHAMO】も開催決定。どんなライブになりそうですか?


宮崎:本当に今までやったことのないライブになると思います。アコースティック編成でワンマンをフルでやるのは初めてだし。座りっぱなしになるので、自分たちの腰がもつかどうか……。

吉川:そうだね。

宮崎:MCは3人とも立つことになると思う(笑)。

吉川:ビルボードライブに立つことも含めて初めて尽くしなので、どんな空間になるのか、どんなふうにお客さんとコミュニケーションを取るのか、未知数なことが多くて今から楽しみです。

――本格的な飲食メニューも用意している会場ですが、みなさんだったらライブを見るとき、どんなフードやドリンクを楽しみたいですか?


宮崎:肉?

吉川:そうだね。肉だね。

宮崎:ナイフで切るような肉を食べたい。ご飯を食べながらライブを見ること自体、すごく贅沢なことじゃないですか。だったら、その贅沢を楽しみたいなって思います。

松岡:私は一口で食べられるものがいいなって思う。目はステージに向けたいじゃないですか。

宮崎:お皿を持って食べながら見ればいいんじゃない?

――食べるのと見るのを両立させたいですよね。


松岡:そう、両立したい。

宮崎:でも、それも普段と違っていいかもね。SHISHAMOのお客さんってすごく愛が強くて、いつもステージをじっと見てくれるんですけど、こういう機会なので自分たちの音楽をBGMにしながら、その場を楽しむような時間にできたらいいなって思う。たまにはご飯に集中してもらって、横目でライブを見るくらいの。そういう瞬間があってもいいのかなって思います。

――ライブを楽しみにしているファンに向けて、最後にメッセージをお願いします。


吉川:まず『ACOUSTIC SHISHAMO』っていうアルバムがすごく良い作品になったと思うし、がっつりアコースティック演奏を聴いてもらえる機会を作れたのもうれしいので、一緒にそのワクワクとかドキドキを共有できる時間にしたいと思います。

松岡:みんながよく知ってる曲を、また新しい気持ちで聴ける楽しみがあると思うので、ぜひ遊びに来てもらえたらなって思います。

宮崎:アルバムはお客さんの想いがあったからこそ作れたので、本当に感謝していて。そのおかげでツアーも回れるし、初めてのビルボードライブなので、その非日常感をドキドキしながら楽しみたいです。しっとりゆったりした、今まで見たことのないSHISHAMOをみんなで一緒に作っていきたいですね。

SHISHAMO「ACOUSTIC SHISHAMO」

ACOUSTIC SHISHAMO

2023/11/08 RELEASE
UPCM-1410 ¥ 3,300(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.犬ころ
  2. 02.花
  3. 03.ロマンチックに恋して
  4. 04.あなたと私の間柄
  5. 05.恋
  6. 06.ハッピーエンド
  7. 07.夏の恋人
  8. 08.あの子のバラード
  9. 09.みんなのうた
  10. 10.BYE BYE
  11. 11.君と夏フェス
  12. 12.明日も

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