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<インタビュー>全世界30億回再生の注目デュオ=NOTDが初来日、サウンド作りの裏側と“憧れの存在”アヴィーチーへの思いを明かす



NOTDインタビュー

Interview & Text: ノイ村
Photos: 筒浦奨太

 2017年の結成以来、「AM:PM」や「ソー・クロース」などのヒット曲を連発し、今では全世界で30億回ものストリーミング再生数を誇る、ダンス・ミュージック界随一の注目アーティストとなったスウェーデン出身のNOTD(ノーテッド)。

 その熱狂はこの日本にもしっかりと届き、11月上旬に実施された待望の初来日公演では、初日の東京公演が即日ソールドアウト。急遽、追加公演が決定するほどの大きな盛り上がりを見せた。筆者は初日の公演に参加したのだが、自身のヒット曲に加えてABBAからフレッド・アゲインに至るまで、新旧のクラシックを自在に操りながら観客を徹底的に踊らせるDJプレイや、ギターやドラムパッドの生演奏を織り交ぜることによって楽曲の持つエネルギーをさらに引き出すライブアクトとしての実力の高さに強く感銘を受けた。

 来日のタイミングで実施した今回のインタビューでは、そんなNOTDの魅力の核にある音楽に対する深い愛情や、同郷が誇るレジェンドであり、自身が最も影響を受けた存在であるという(来日公演でも楽曲が披露された)アヴィーチーへの思い、最新曲「Hold On Me」を含む楽曲の制作背景など、さまざまなトピックについて詳しく話を伺うことができた。きっと、これを読むことで、さらにNOTDのことが好きになるはずだ。

左から:トビー、サミュエル

――昨日のファンイベント(11月7日にタワーレコード渋谷店で実施されたサイン会)はいかがでしたか?

トビー:すごく楽しかったし、皆さんに会うことができて本当に良かったです。実はその日、初めて直接、自分たちのCD(『NOTED... [Japan Edition]』)を見ることができたのですが、それも嬉しかったですね。今まで、こういうサイン会をやったことはなかったし、何か話さないといけないなと思って少し緊張していたんですけど、皆さんが本当に優しくて良い人たちだったので、もう本当にすごく楽しかったですよ。

――空港にも出迎えてくれるファンもいたり、昨日の会場の近くでもファンの方に声をかけられたりと、とても熱狂的な反応がありますよね。

サミュエル:初めて来た国で、私たちに会いたがってくれている人々の姿を見ることができるなんて、最高にクールだと思います。これまでにアメリカやスウェーデンなどでもツアーをしてきましたが、それこそ空港で待ってくれているなんて、なかなかそんなことはありませんでしたからね。

――今回の来日公演ではライブセット(DJプレイにギターやドラムパッドでの生演奏を加えたもの)でのパフォーマンスを披露してくれるんですよね。

トビー:私たちはずっと楽器とともに育ってきましたからね。サミュエルは7歳か8歳くらいの頃からギターを弾いているし、私も14歳くらいから楽器に触れるようになったので、そうした要素をエレクトロニック・ミュージックに取り入れるのはとても楽しいですよ。

――DJではNOTD以外の楽曲もプレイされるんですか?

トビー:もちろん! 世界には良い音楽がたくさんありますし、大好きなジャンルもたくさんあるので、それを自分たちの音楽とミックスしたり、捻りを加えてみたり、実際に演奏したりするのは最高に楽しいですよ。そうすることで、音やサウンドなど、すべてがもっと良くなりますしね。それに、私たちは元々、SoundCloudでお互いの音楽を聴いたことで出会ったというのもありますし、とにかく良い音楽を探してプレイするのが好きなんですよ。

NOTDを中心に巡る、美しい音楽の循環

――それは楽しみです! NOTDは2017年の結成以来、とても急速に人気を高めていった印象があるのですが、ご自身としては今の状況についてどのように感じられているのでしょうか?

トビー:最初の頃は実はあまり実感が湧かなかったんですよね。というのも、当時、私たちはまだ学生で、数学や歴史の授業を受けたりしていたので(笑)。たくさんの人々が私たちの音楽を聴いている様子を見るのは不思議な感覚でしたよ。最初は数字の動きだけでしたけれど、それからライブを始めてみたら、お客さんがみんな私たちの曲を歌ってくれるんですよ。もう、「何が起きているんだ?」って感じでした(笑)。

サミュエル:ツアーに出たり、ライブをしたりするようになってから、ようやく何が起きているのかを理解しはじめたんじゃないかなと思いますね。それまではただ学校でのんびりしていただけなので(笑)。

――個人的に、YouTubeにアップされているDJ キャレド「ワイルド・ソーツ feat. リアーナ & ブライソン・ティラー」のリミックスを英語のレポートと並行して進めたVLOGのエピソードが大好きなのですが、学生生活を続けながらNOTDの活動もされるのは大変だったのではないでしょうか?

トビー:実は、そうとも言えるし、そうではなかったとも言えるんですよね。というのも、私たちは音楽系の学校に通っていたので、どの先生も私たちの活動を受け入れてくれましたし、すごく親切に接してくれましたから。学校側も私たちに音楽を作ってほしいと思っていたんですよ。とはいえ、音楽以外の授業に追いつくのはものすごく大変だったんですけどね(笑)。

サミュエル:特に、ツアーとかに出て、学校から離れる時は大変でしたね。宿題もやらないといけないし(笑)。

――(笑)。VLOGといえば、NOTDのYouTubeチャンネルではご自身の楽曲の制作プロセスをすごく丁寧に紹介されていますよね 。あれはどういった思いから実施されているのでしょうか?

サミュエル:私たちは、YouTubeにアップされている動画を見ながら、どうやって音楽を作るのかを学んできました。だから、私たちが音楽を作ることができるようになった今、同じように音楽をやりたいと思っている人にそれを見せるのは、すごくクールなことだと思っているんです。それに、大事なところは隠すようにしていますから、もし「こうなっているんだ!」と思って真似して作ってみたとしても、きっとまったく同じように作ることはできないと思いますよ(笑)。


――ご自身がそうやって音楽家としてのキャリアを育んでいったからこそ、今は同じことをさらに次の世代のためにされているのですね。

トビー:私たちもYouTubeの動画を見たり、他のアーティストの楽曲を再現することによって、その人がどのようにして楽曲を制作したのかというコツを掴んだり、自分なりの表現へと落とし込んだりしてきましたからね。もちろん、学校ではたくさんの人々から学ぶことができましたし、多くの友達もできたので、学んだ知識をお互いに与え合うことによって、さらに成長することができました。それは音楽という文化の持つ美しさでもありますよね。

――また、VLOGでは楽曲に関わったソングライターの方のコメントなども紹介されていますよね。この業界ではなかなかそういった場面を見ることが少なかったりするので、とてもクールだと思いました。

サミュエル:ソングライティングは楽曲の制作プロセスの大部分を占めているわけで、それを紹介しない理由はないと思ったんです。特に、最初の頃はまだまだ自分たちだけで十分に楽曲を制作することができていなかったので、そのことを正直に伝えることがとても大切だと感じていたんですよね。

トビー:そうやって制作をしてきたからこそ、今の私たちがいるわけですからね。だから、楽曲に関わった全員を紹介するというのは、私たちにとって、とても大事なことなんです。

――やはり、ソングライターの方々との作業を通して、たくさんのインスピレーションを受けているのでしょうか?

トビー:もちろん! そもそも二人(NOTD)の間でもお互いにたくさんのことを学んでいますし、さらにソングライターやアーティスト、プロデューサーといった方々と一緒に仕事をすると、本当にたくさんのことを学べますよ。一緒に仕事をしてみたい、一緒に新しい音楽を作りたいと感じている才能ある方々はたくさんいますし、繋がることでもっと楽しい音楽を生み出すことができると思っています。

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――ちなみに、お二人はどのようなアーティストに大きな影響を受けてきたのでしょうか?

トビー:まずは、出会った時から今でもずっと愛してやまないのがアヴィーチーですね。間違いなく、私たちに最も大きな影響を与えたアーティストだと思います。あとは、特に初期の頃のThe 1975。私たちは楽器を演奏するのでバンドもたくさん聴いてきましたし、彼らからは特に影響を受けていると思います。他にも、ポーター・ロビンソンやSan Holoなど、もう本当にたくさんのアーティストがいますね。

サミュエル:あと、スクリレックスからの影響もすごく大きいと思いますよ。

――なるほど。個人的にはThe 1975の名前が挙がったのが少し意外だったのですが、バンドのどういった部分に魅力を感じていますか?

トビー:感情表現ですかね。あのバンドはいつも、誰もが共感できるような感情を描いているように感じるんですよ。アップテンポの曲もあれば、悲しい曲もあって、どういった楽曲でも、常に心にフィットする感覚があるんですよね。それに、ソングライターとしても、プロデューサーとしても、The 1975は並外れた才能を持っていると思います。

――アヴィーチーについても聞かせてください。言わずと知れたレジェンドですが、特にどういった部分に惹かれ続けているのでしょうか?

サミュエル:アヴィーチーはキャリアの早い段階から、ダンス・ミュージックの持つ可能性を広げることに熱心に取り組んでいました。例えば、「ウェイク・ミー・アップ」ではカントリー・ミュージックを取り入れて、最初はたくさんの人々が「何だ、これは?」と戸惑ったわけですが、すぐにみんな、あの曲が大好きになりましたよね。彼は間違いなく音楽そのものを前へと押し進めていたわけで、だからこそ天才なんです。

トビー:メロディーのセンスも本当に素晴らしいですよね。とても遊び心があるのと同時に、とてもエモーショナルなものでもある。今でも、彼が作曲したほとんどのメロディーを覚えていますよ。

――特にアヴィーチーのお気に入りの楽曲を一つ選ぶとしたら、何を選びますか?

サミュエル:私は「ディアー・ボーイ」ですね。

トビー:同じです。「ディアー・ボーイ」は特に素晴らしいと思いますね。あの曲は確かリード・メロディーをジャズの楽曲(ジャズ・フォーク音楽のサックス奏者Jonas Knutssonの「Hymn」) からサンプリングしていたと思うのですが、それをハウス・ミュージックと組み合わせることによって音楽の可能性を押し広げているし、それもキャリアの早いタイミングでやっているのがすごいですよね。楽曲に込められた感情やプロダクションも素晴らしいし、当時はとても新しいものに感じられたんです。ちょうどその頃に私たちも音楽を作り始めたので、「ディアー・ボーイ」には特にインスピレーションを受けましたね。だから、この曲は私たちにとって、すごく特別な位置にいるんですよ。

さまざまな感情を描く、NOTDの楽曲制作プロセスについて

――楽曲制作をする上で、特に重視されているポイントを教えてください。

サミュエル:さまざまな感情を組み合わせることですね。私たちは、自分たちの楽曲を聴くことで、どこか甘酸っぱい気持ちや切ない気分になるのが好きなんですよ。だから、楽曲自体がアップテンポだったとしても、そこに情感のあるボーカルを乗せたりするんです。そうすることによって、どのような場面でも聴けるようになるんです。踊ってもいいし、泣いてもいいんですよ。

トビー:あと、私たちはそれぞれ異なったスタイルや感性を持っていますし、それが組み合わさることでユニークなものが生まれているんじゃないかなと思いますね。

――もしかしたら言語化するのが難しいかもしれませんが、お二人の違いはどのような部分にあるのでしょうか?

サミュエル:確かに難しいのですが、一つ挙げるとすると、私はどこか感情的な部分に惹かれるところがありますね。

トビー:私は楽曲がアップテンポになるような要素を加えることが多いかもしれません。表現するとしたら、サムがより感情的な部分を、私がより踊れるような部分を得意としている、という感じでしょうか。

――リリックのインスピレーションはどのようなところから湧いてきますか?

トビー:人が人生を過ごす中で感じること、人間関係の中で抱くような感情をインスピレーションにして書くことが多いと思いますね。やはりそういった感情はたくさんの人が共感できるものだと思いますし、特に失恋のような感情が大きく動く場面では、切ない音楽をより切なくすることができますから。

――ちなみにご自身の経験を反映することはありますか?

トビー:時々ありますね(笑)。私も悲しい感情を抱くことはありますから。時々ですよ(笑)。


――日本のシンガーソングライターの由薫さんが参加された「AM:PM」の日本語バージョン(「AM:PM (YU-KA Version)」 )は、日本人の私たちにとってもそうした楽曲に込められた感情をより深く理解することができる、とても嬉しいサプライズでした。このコラボレーションはどのようにして生まれたのでしょうか?

サミュエル:「AM:PM」が特に日本で愛されているということを知って、それがすごく嬉しかったので、何か特別なものを作りたいなと思ったんですよ。それで、由薫さんと繋がることができたんですけど、彼女はわざわざスウェーデンまで来てくれて、一緒にスタジオに入ってボーカルを録音することができたんですよね。そうして、このバージョンが完成しました。

――由薫さんとはどのようにして繋がったのでしょうか?

トビー:私たちのレーベルから紹介してもらいました。彼女の曲をたくさん聴いて、本当に素晴らしい、まさにこの曲にぴったりだなと思いましたよ。

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――11月10日には、待望の新曲「Hold On Me (feat. Emei)」がリリースされますよね(※本インタビューはリリース前に実施)。一足お先に聴かせていただいたのですが、まさに感情をすごく刺激されるような、それでいて楽しく踊れる、とても良い曲だと感じました。この曲はどのようにして生まれたのでしょうか?

サミュエル:数か月前に、アメリカ・ロサンゼルスでソングライティングのキャンプをして、2週間のうちに色々なソングライターと一緒にたくさんの曲を作って、その中で生まれたのが「Hold On Me」ですね。できた時からとても特別な曲だと感じていたので、トラックを完成させた後に、これに合うボーカルを探して、Emeiと出会ったんです。彼女の歌声は本当に素晴らしかったですね。

トビー:面白いのは、「Hold On Me」はDevan GloverとGrant Boutinという「AM:PM」と同じソングライターと一緒に作った曲なんですよ。また一緒に仕事をするのはとても楽しかったですね。


――Emeiさんもそうですが、NOTDの楽曲ではいつもフレッシュで魅力的なアーティストがボーカルとして参加している印象があります。個人的にも新しいアーティストを発見するのにとても役立っているところがあるのですが、どのようにしてアーティストを探しているのでしょうか?

トビー:私たちはいつもたくさんの音楽を聴いて、新しいアーティストを探すようにしていて、すごく良いなと思う人を見つけたら、それをずっと覚えておくんですよ。それで、楽曲ができた時に、「この曲だったら、あの人の声が合うんじゃないかな」と感じたら、その人に連絡して「私たちのために歌ってくれませんか?」とお願いするようにしています。いつも、私たちが好きな人たちと一緒に楽曲を作っているんです。有名かどうかはまったく気にしていないですね。ただ良い曲ができればそれでいいんです。

――それは素晴らしいですね。ちなみに、「有名かどうかは気にしていない」と仰っていただいた上で大変恐縮なんですけれども、いつか一緒に共演してみたいというアーティストはいますか?

トビー:The 1975とはいつか一緒にやってみたいですね。それが実現したら本当に最高だと思います。あとは、やっぱり私たちに大きな影響を与えてくれた、スクリレックスやポーター・ロビンソンのようなアーティストとも共演できたら嬉しいですね。いつも色々な音楽を聴いていて、ジャンルを問わずにたくさんのアーティストを発見しているので、一緒にやってみたいと思う人はたくさんいますよ。

――ダンス・ミュージックの世界では、日々、トレンドが目まぐるしく変わっていくような印象があります。例えば最近ではUKのドラムンベースなどがムーブメントになったりしていますよね。こうした動きに合わせていくのはなかなか大変なのではないかと勝手に思ってしまっているのですが、NOTDのお二人はシーンのトレンドに対してどのように向き合っているのでしょうか?

トビー:トレンドについては前向きに捉えていますし、変化していくのも良いことだと思っていますよ。というのも、それってある意味では新しいジャンルが生まれているようなものですからね。そこから色々な音楽が広がっていき、他の人が取り組んでいる様子を見ることで、私たちにとっても大きな学びになりますし、一つの道に捉われることなく、より私たちのサウンドを進化させていくことができると感じています。

――それはとても良いですね。ちなみに、最近、気になっている動きやアーティストはありますか?

サミュエル:私はドラムンベースがすごく好きで、今のムーブメントはクールだと感じていますね。あとは、スタッター・ハウス(短く切り刻んだボーカルやシンセサイザーの音をフィーチャーした、ハウス・ミュージックのサブジャンル)も最近ではすっかり大きくなってますよね。私たちはギターを使ってそれを試したりしているんですよ。

トビー:あとはフレッド・アゲインですね。彼は間違いなくハウス・ミュージックを次のレベルへと引き上げているし、すごくクールだと思います。

――ありがとうございます。ここまで、楽曲制作についてのお話をメインに伺ってきたと思うのですが、お二人はゼッドやザ・チェインスモーカーズのような大きなアーティストとのツアーにも参加していますよね。ツアーでの日々はいかがでしたか?

サミュエル:ゼッドとのツアーは特に特別な経験でしたね。というのも、あれが私たちの初めてのツアーでしたし、初めてのショーでもありましたから。ものすごくたくさんの観客の前に立ったので、かなり緊張しましたよ(笑)。でも、実際にトップクラスのプロフェッショナルの姿を見ることで、ツアーのやり方やステージ、プロダクションなどたくさんのことを学ぶことができました。

トビー:何より、ゼッド自身がとても良い人だったんです(笑)。いつもフィードバックをくれましたし、必要なことはなんでも手伝ってくれたんですよ。

――それはとてもゼッドらしいエピソードですね(笑)。さて、これから私たちは初めてNOTDのライブを体験することになるわけですが、どんなショーになりそうでしょうか?

サミュエル:きっとあまり今までに見たことのないものになると思いますよ。特に楽器とDJを組み合わせたパフォーマンスをするダンス・ミュージックのアーティストはなかなかいませんからね。あとは、とにかく良い時間を過ごしてほしいですね!

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