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<インタビュー>「アタイが一番!」クロミと共演が話題のメイ・スティーブンスが伝えたい“自分らしくいること”の大切さ



KUROMIインタビュー

Photos: 辰巳隆二
©’23 SANRIO 著作(株)サンリオ

 「If We Ever Broke Up」がTikTokを中心に世界中でバズったメイ・スティーブンスが約3か月ぶりに来日した。韓国では“推し”と近づけたファンのことを指す「成功したオタク」と呼ぶそうだが、彼女もまさにその一人と呼べるだろう。幼少期から大好きだったサンリオの人気キャラクター・クロミとコラボ曲「Cheeky But Charming feat. KUROMI」を発表し、今年9月~11月にかけて展開中の「#世界クロミ化WEEK2023」を盛り上げる仲間として、サンリオピューロランドで開催された会見でクロミと生歌&ダンスで夢の共演を実現させたのだから。

 「アタイが一番!」をモットーに展開されるこの「#世界クロミ化計画」が大事にしているのは、とにかく自分を愛すること、そしてなりたい自分になること。自己肯定感MAXのこのナンバーを作ったメイも、チャーミングで自信とユーモアに溢れた、輝く一人だった。

<インタビュー>“TikTok新女王” メイ・スティーブンスが明かす大ヒット曲「If We Ever Broke Up」の裏側

――わずか数か月での再来日となりましたね。まずは感想を教えてください。

メイ・スティーブンス:また故郷に戻ってきたような気分ですね。日本は私にとって安心できる場所で、これほどにぎやかなのに安全なところだと感じています。日本が大好きで引っ越したいぐらい。食べ物も美味しくて、みんな親切で、すべてが素晴らしいです。

――前回来日した際にサンリオ愛を語っていましたが、昨日サンリオピューロランドを訪れたそうですね。

メイ:人生最高の日でした! ずっと笑顔を浮かべていたので、帰る頃には顔がかなり痛くて(笑)。でもすごく楽しかった。あんなに笑ったのは初めてで、これほど何かを楽しんだのは久しぶりでした。子供に戻ったような気分で、そんな風にまた感じられて嬉しかったですね。

――ライドも楽しみましたか?

メイ:もちろんです。着いてまずライドに直行しましたよ!

――お友達やご家族へのお土産もたくさんゲットしたのでは?

メイ:あまりにたくさん買ったので、スーツケースをもう一つ買って帰らないといけないんです。自分が持っているすべて、そしてどの洋服よりも、サンリオにお金を使ったと思います。本当に大好きで、持っている洋服の数よりもサンリオグッズのほうが多いくらい。

――今回は、クロミちゃんとのコラボレーション曲「Cheeky But Charming feat. KUROMI」のプロモーションで来日されましたね。

メイ:サンリオ尽くしの3日間で、とても楽しいです。夢のような来日で、仕事とは全く思えなくて……まさに天国です。

――クロミちゃんに実際に会ってみてどうでしたか?

メイ:すごくキュートで、彼女のドレスを盗もうと心に決めています(笑)。自分を少し落ち着かせないといけなかったですね。子供の頃、テーマパークに行ったことがなかったので、キャラクターに会う機会がありませんでした。そんな子供の頃の夢を実現できたのと同時に、心の中では「ああ、大変だ。もうその時が来てしまう」とテンパっていたので自分を落ち着かせようと必死でした。でも、実際に会えてすごく良かったです。

――今日取材に向かう途中にクロミちゃんのトートバッグを持った年配の方がいて、若者のみならず幅広い世代に愛されているキャラクターだと再確認しました。

メイ:素敵ですね! クロミちゃん、サンリオはすべての人に向けたキャラクターでブランドです。インクルーシブで、そこがすごく好きなポイントです。こんなにも素晴らしいブランドと一緒に仕事ができることを本当に光栄だと思っています。

――クロミちゃんの誕生日はハロウィンですが、プレゼントするとしたら何を贈りますか?

メイ:まさに完璧な誕生日ですよね。ハロウィンは私の大好きなホリデーのひとつです。クリスマスもそうですが、妖精の仮装ができるし、そうしてもOKな日なので。たぶん紫色の新しいドレスをプレゼントすると思います。明るい色も混ぜて、少し私らしいものにしたいですね。メイ・スティーブンスとクロミちゃんらしさをミックスした配色のドレスを、誕生日でもクリスマスでもいいので、プレゼントしたいと思います。

――そんなクロミちゃんのために書き下ろした「Cheeky But Charming feat. KUROMI」を制作するにあたって、どのようなことを重視していましたか?

メイ:“フィールグッド”な曲にすることですね。この曲を聴いて、自分自身についていい気分になり、自分に満足するとともに最高の自分だと感じてほしかったんです。これは曲を作るにあたって、とても重要なポイントでした。同時に私とクロミちゃんのスタイルを両方盛り込もうとしました。ファンクやJ-POPの要素も少しずつ入っていますし、しずくのようなサウンドも取り入れています。ヘッドホンをつけて曲を聴くと、そういったサウンドに脳が癒されるんです。耳馴染みが良く、歌詞も覚えやすくて、とにかくフィールグッドな曲にしたかった。この曲は、私の子供のような存在です。

――歌詞にクロミの子分であるバクが登場しているのもファンにとっては嬉しいポイントですね。

メイ:〈Come and ride a wave with me and “Baku”(わたしとバクと一緒に)〉という歌詞は、1か月ぐらいずっと私の頭にこびりついて離れなかったんです。どうにかして、その歌詞を入れたくて、口実を見つけては、12回くらい歌詞を書き直したんです。

――こだわりの歌詞だったんですね。この曲の制作プロセスは、これまでとは異なりましたか?

メイ:正直に言ってタフでした。私はファンク・ソングを書くことや曲の内容を決めることに慣れています。この曲に関しては、テーマやメッセージが決まっていて、どのように曲作りを行うのか、サンリオから飛び出してきたようなサウンドにどうやってするのかなど、自分のソングライティングの能力が試されました。難しかったですが、最終的な結果をこれ以上ないくらい誇らしく思っています。内容を変更したり、変化に対応したりすることに多くの時間を費やしたので、曲と一緒に自分も成長できたような気がします。私はもちろん家族も大好きな曲になりました。とても楽しいプロセスでしたし、親しい人と一緒にその過程を踏めたことを幸運に思っています。


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サンリオは、私にピンクの服を着ながら
自分らしく人生を楽しむチャンスを与えてくれた

――楽しくてキャッチーな曲ですが、とても前向きなメッセージが込められています。多くの人々の耳に触れるポップ・ソングだからこそ、そういったメッセージを盛り込むことは重要だと感じますか?

メイ:私がアーティストとして発信しているメッセージは、常に自分らしくあるべきで人の真似をしないということです。人と違うことは悪いことじゃないし、変わっていることも悪いことじゃない。クロミちゃんとのコラボを通じて、最高の自分であること、自分らしくあること、クリエティブであること、変わり者であることを肯定するメッセージを発信できるのは、とても新鮮です。SNS、インフルエンサーやPhotoshopなどの力が増す世の中でオリジナリティを保ち、混沌の中でも自分らしくあり続けるというのは、これから成長していく子供たちにとって非常に重要なことですから。

――今おっしゃったような混沌とした世の中で、メイさんはどのようにオリジナリティを保ち、自分らしくしていますか?

メイ:私は幼少期の大半を他人の真似をして過ごしてきました。目立つのが怖くて、そのせいでいつの間にか自分の性格や習慣までも変わっていました。そんな時にサンリオに出会ったことで、自分の中で変化が生まれたんです。それまでこれほど夢中になれるものはありませんでした。サンリオが大好きで、先ほど話したようにたくさんのグッズを集めています。サンリオは、私にピンクの服を着ながら、自分らしく人生を楽しむチャンスを与えてくれたんです。他人の真似をし続けることはできないと理解できたし、本格的にアーティスト活動をしてきたこの1年で、自分らしくありながらその時の流れに身を任せて楽しむことを学びました。人生は一度きりだから、楽しまなきゃ損ですよね?

――クロミちゃんはサンリオの中でやや異色な存在で、パンクでおてんばでありながら、女の子らしい部分も持ち合わせています。そこが彼女に惹かれ、共感する部分でしょうか?

メイ:私はよくドレスを着ていますが、ちょっとおてんばで変わり者です。クロミちゃんは、自分と同じような個性を持っているので、一番近いキャラクターだと思いますね。少し変わっていてラウドで、人と話すのが大好きで、女の子っぽいけれどちょっとおてんばな面もある。サンリオに出会ってから、ずっと惹かれているキャラクターですね。

――はみ出すことを恐れてしまう同年代やティーンもいると思いますが、そういった人々にアドバイスはありますか?

メイ:溶け込まなきゃいけないと思わないことですね。大人になり、人生について少し理解できるようになって、その必要はないと初めて気づきました。自分が着たいと思う服を着て、外に出ることを恐れないで、一歩踏み出すことができれば、自分らしく人生を生きていくことができます。もしあなたが何かを愛すること、情熱を持っていること、楽しいことがあるなら、それを追求することも大切です。私はスーパーで働いていましたが、ミュージシャンになって、世界中を旅し、大好きなサンリオと仕事ができるようになりました。何か好きなことがあるなら、それを手にするために努力するに限るということです。

――諦めたくなったり、昔の仕事に戻りたいと思ったりしたことは?

メイ:何度も何度もありました。8年間ずっと注目されようと必死で、途中で諦めそうになったこともありました。実は、私のキャリアが始まるきっかけとなったバイラル動画は、最後に投稿しようと思っていたものでした。2020年から毎日投稿を続けていて、この動画に何もリアクションがなければ、もう諦めようと決心していました。音楽はやめて、仕事を見つけて、引っ越して、大人としての人生を歩もうと思っていました。でも結果的に、音楽の道を歩み続けるための最大のサインとなり、とても感謝しています。

――クロミちゃんとのコラボ「Cheeky But Charming feat. KUROMI」に話を戻しますが、楽曲の世界観を見事に捉えたミュージック・ビデオも公開されています。

メイ:最高です。あんなに撮影を楽しめたのは初めてです。クロミちゃんやピンクの小物が様々な場所に置かれていて、ラバランプ、イルミネーションのようなライト、ポスターなど子供の頃に憧れていた部屋という感じでした。そんな空間でパフォーマンスできたことで、子供に戻ったような気分になりました。サンリオの世界に暮らすクロミちゃんの友達の一人になったような気がして、本当に楽しかったです。

――クロミダンスの感想は?

メイ:気に入っています! 私はあまりダンスが得意ではないので、初めて振り付けのビデオを見た時はすごく心配しました。でも、練習するうちに大好きになりました。耳のパートなど、とってもクロミちゃんらしいと思います。大好きすぎて、眠りながらもダンスしちゃいそうです。

――MVは、サンリオバージョンのあなたとクロミちゃんが世界を旅する姿も追っています。「If We Ever Broke Up」でのブレイク後、あなた自身が世界中を旅していると思いますが、その経験を通じて学んだことは?

メイ:自分があまり整理整頓ができない人間だということ(笑)。今は時間をかけて整理整頓をするようになって改善しました。同時に自分自身を受け入れること、自分の体型や不完全さを受け入れることなど、とても重要な人生の教訓を学びました。特に自分のルックスや性格を否定するのはやめるべきだと理解しました。他人のために外見をいじったり変えたりするのをやめて、ありのままの自分を受け入れる。人の好き嫌いを、私が変えることはできません。人を喜ばせるためだけに物事をするのではなく、自分の好きなようにするようにしました。

――バラード系のアーティストとしてキャリアをスタートしたメイにとって、サンリオのキャラクターと一緒に本格的なポップ・ソングを歌うことになるとは想像できなかったと思います。

メイ:本当にそうです。私は次のアデルになりたかったんです。ずっとバラードやハートフルな曲を歌いたいと思っていましたが、恋人とのひどい別れを経験して初めてファンクに出会ったことで、ソングライティングは感情を吐き出すだけのものではないと気づきました。まさか地球上で一番好きなブランドとコラボし、それについてインタビューを受けるなんて想像もしていませんでした。

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――では、あなたにとってソングライティングとは何ですか?

メイ:学校での辛い時期、別れ、友人関係の崩壊、家族の問題など様々な試練を乗り越える支えになってくれたものです。曲を書くことで希望を持ち続けることができました。感情を揺さぶられるような瞬間を与えてくれ、現実から一瞬離れて自分の考えと向き合うきっかけもくれました。私の人生を何度も救ってくれたんです。現在私が手にしているもの、過去に手にしていたもの、そして今後手にするものは、すべてソングライティングと音楽のおかげです。

――音楽の道に進みたいと思ったのはいつだったのでしょう?

メイ:とても具体的な瞬間で、初めて曲を書いたのは12歳の時です。子オオカミを守る母親オオカミについての曲で、とても誇らしかったので歌詞を書き込んだ紙切れとギターを持って、両親に見せたんです。両親は常に私と弟の特技を見つけることに注力していて、そのために色々なクラブに所属していました。この曲を父に聴かせたら、彼は「やっと得意なことを見つけたようだね」と言ってくれ、「よし、これが私のやりたいことだ」と悟ったんです。次第に、自分にとってソングライティングがセラピーになっていきました。4年間にわたり週に5~6日は、1日4~5時間ずっと曲作りをしていました。今でも私にとってセラピーで、今後もそうあり続けると思います。

――12歳の頃の彼女が、今のあなたの姿を見たら誇りに思うでしょうね。

メイ:そうだと嬉しいですね。

――尊敬しているというメーガン・トレイナー、そして今回クロミちゃんとのコラボが実現しましたが、他にコラボしてみたい人はいますか?

メイ:ラウヴです。彼が活動を始めた頃から、彼の音楽が大好きでずっと聴いています。でも、もしビリー・アイリッシュとコラボする機会があったら、私の人生は完璧になると思います。彼女のことが大好きなんです。

――サンリオ、音楽、パフォーマンスすること以外に、あなたに幸せをもたらしてくれるものはありますか?

メイ:4歳の頃からやっているスキーですね。誰もいないゲレンデをただ滑り、自分の考えに没頭する――私のもうひとつのセラピーですね。毎年スキーに行くのを楽しみにしています。来年1月に行く予定で、リラックスして、ストレスを発散して、スキーを楽しんで、美味しいものをたくさん食べる一週間になりそうです。

――今年も残りわずかとなりましたが、メイにとっての2023年のハイライトを教えてください。

メイ:サンリオ、メーガン・トレイナー、そしてザ・チェインスモーカーズとのコラボ。モントリオールで彼らのライブに出演したのですが、素晴らしい経験でした。レコード契約をした日は、人生で最も重要な日になりました。私が長らく望んでいたことで、契約書が目の前にあり、周りに多くの人がいて。奇妙な夢を見ているようで現実とは思えませんでした。この1年間、記憶に残る瞬間が数え切れないほどありましたが、この1年のすべてが忘れられない思い出です。人生における最高の年で、感謝しきれません。

――では最後に来年の予定を教えてください。

メイ:またグッズをリリースして、シングルを何枚か出そうと思っています。

――デビュー・アルバムの制作は進めていますか?

メイ:まだですが、新曲をリリースする準備は行っています。SNSで少し予告しているんですが、みんなに曲を聴いてもらえるのが楽しみです。来年リリースするために作った曲たちは、みんながよく知っている内容のものばかりです。少し話すと、ADHD( 注意欠如・多動症)について投稿したものがあります。今、私はいろいろなことを経験していますが、ADHDの人は他の人がしないようなちょっとした行動をするんです。ADHDの人たちにとって、そういうちょっとした瞬間に感謝するのはいいことだと思っていて、リリースが楽しみです。

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