Special
<インタビュー>デビュー20周年のFLOWが語る、自身最速BPMの最新アニソン『GET BACK』
Interview:高橋梓
Live Photo:柴田恵理
11月22日、5人組ロックバンド・FLOWがニューシングル『GET BACK』をリリースする。表題曲はテレビアニメ『帰還者の魔法は特別です』のオープニングテーマで、カップリング曲「LOST」はiOS/Android向けアプリ『コードギアス 反逆のルルーシュ ロストストーリーズ』メインストーリー第2部の主題歌。さらに「GET BACK(English ver.)」なども収録されている盛りだくさんな同作品について、本人たちに話を聞いた。
名曲ばかりのBPM200で制作された「GET BACK」
――ニューシングル『GET BACK』は皆さんにとってどんな作品になっていますか?
TAKE:表題曲「GET BACK」はFLOWのシングル史上最速BPM200の楽曲です。ドラムのIWAちゃんが大変だったかな(笑)。
IWASAKI:大変だったよ。めちゃくちゃ速かった!
TAKE:今BPM200って他にどんな曲があるのかって調べたら、THE BLUE HEARTS「リンダリンダ」、DREAMS COME TRUE「何度でも」、中島みゆき「地上の星」。名曲ばっかり。「GET BACK」、売れたな……。
一同:自分で言っちゃう(笑)。
TAKE:でも、ボカロブームなどでBPM200以上のものを若い世代を中心に聞き慣れている部分はありますよね。我々の世代は多分そこまで多くなかったですけど。今年FLOWは20周年を迎えさせていただくので、「この先も攻めていくぞ」という気持ちが過去最速のBPM200に表れていると思ってもらえると面白いです。
――テレビアニメ『帰還者の魔法は特別です』のオープニングテーマになっていますが、アニメのテイストはどんな形で反映されたのでしょうか。
TAKE:『帰還者の魔法は特別です』のオープニングテーマというお話をいただいて、ちょうど1年くらい前に制作に入ったんですね。原作は韓国の人気コミックスなのですが、日本の漫画とはちょっと違っていてフルカラーなんですよ。それを読んだ時に、魔法を出す魔法陣の鮮やかな色が印象的で。魔法陣というとどうしてもデジタルっぽい感じになるのですが、そこに輝きみたいなものを落とし込みたいな、と。具体的にいうと、ギターのフレーズの感じを鮮やかな色やデジタルっぽさに合うようにしてみました。
――歌詞に関してはいかがですか?
KOHSHI:まずアニメスタッフの方と最初に打ち合わせをして、キーワードや曲のイメージをお聞きしました。その上で原作やアニメを見て、気になるワードだったり、作品の核となるイメージを自分の中で統一して行く感じです。やっぱりこういったタイアップがあると歌詞は書きやすいですね。テーマも何もないところから好きなように作っていいという状況よりも、ゴールがある方が走りやすいというか。
――タイアップ楽曲の歌詞を拝見すると、一見作品のことを言っているように見えないのに、よく読むと作品について表現しているというパターンがありますよね。
KOHSHI:その変換作業が面白いんですよね。実はバンドとしてのメッセージが込められていたり、ね。FLOWファンにはそういうところを汲み取ってもらえたら嬉しいですし、アニメファンは作品に沿っている部分を楽しんでもらえれば、と。僕はそういったことをすべて計算して歌詞を書いてきましたから。
GOT'S:言えばいうほど嘘くさいよ(笑)。
――(笑)。演奏に関しても作品を意識されるのですか?
GOT'S:あんまり意識していないかも(笑)。出来上がってくるデモテープがもう作品を意識しているものになっているので、俺がどうこうするってことはないですね。
TAKE:意識しろよ!
一同:(笑)。
IWASAKI:TAKEのデモを聴いて、「こういう感じね」というのをまず自分に入れるんですけど、音楽の流行りってあるじゃないですか。2023年だったら、アイドルの楽曲でもものすごいBPMのゴリゴリのメタルの演奏がされていたり。自分たちは20年もバンドをやっていていろんなことに手を付けてきたので、ある程度その流行を表現するためのテクニックは持っているんです。実際にやるかどうかは別ですけど、流行をキャッチしておく意識は常にあるかもしれませんね。
KEIGO:歌もそうですね。もちろん原作も読ませてもらいましたけど、タイアップの作品を特別意識することはないかも。それよりも「GET BACK」のような疾走感がある曲であれば、ライブを意識するかもしれません。
――制作した時点で自ずと作品に寄り添えるようになっている、と。アニメスタッフの方と打ち合わせをされたとのことですが、印象的だったことはありますか?
TAKE:いつもこうしたタイアップの時は3曲くらい提出させていただいて、制作の方に選んでもらうんです。今回も3曲出したのですが、「一番速い曲が選ばれるんだ……」って思いました(笑)。その意図を汲んで、ブラッシュアップしたのが、この完成形。『帰還者の魔法は特別です』という作品はいわゆる転生モノで、過去に戻ってやり直すというお話なんですね。FLOWにとっては初の転生モノだったので、どう表現しようかなって悩んで。結果Bメロとサビで歌がリフレイン、繰り返すようにしました。
――なるほど!
TAKE:そういう表現ができるのも、タイアップの面白いところですよね。
「良いものは良いし、かっこいいものはかっこいい」
――カップリングの「LOST」は『コードギアス 反逆のルルーシュ ロストストーリーズ』メインストーリー第2部の主題歌です。やはり長年携わっているアニメだと、制作のアプローチの型があったりも?
TAKE:『コードギアス』はブリタニアという高貴な国の世界観があって、ストリングスの音がマッチするんですよね。15年前にやらせていただいた「COLORS」には入っていないのですが、その後の「WORLD END」、「PENDULUM」、今回の「LOST」、TVアニメ15周年の「DICE」、ORANGE RANGEとコラボをした「デイドリーム ビリーヴァー」、全てにストリングスが入っています。これは今まで培ってきたからこそのアプローチです。
IWASAKI:演奏に関しても俺はちょっと違いがあるかも。例えば「GET BACK」ははっきり起承転結が割れているというか、わかりやすくアプローチができるというか。「LOST」はもう少し緩く展開されているんですね。イメージとして「GET BACK」は縦に構成されていて、「LOST」を始めとした『コードギアス』シリーズは横に構成されている感覚があります。あくまでも自分の中のイメージですけど。
GOT'S:ベースもありますよ。縦と横とかはないですけど。
TAKE:斜め?
GOT'S:斜めもない(笑)! 「LOST」って意外とヘビーなんですよ。ゆったりしたテンポの中にヘビーで重いリフがあって、一つひとつの音がドンッドンッってあるというか。「GET BACK」は音数が多くて忙しく展開されていくので真逆っていう。
――この2曲で皆さんの幅広さが見えてきそうですね。パッケージの中には「GET BACK(English ver.)」も収録されています。海外でも精力的に活動されていますが、日本と海外の違いはやはり感じているのでしょうか?
KEIGO:どっちの良さもあるんですけど、ノリは全然違いますね。日本は一体感がめちゃめちゃある。海外、特に南米やアメリカでは顕著なんですけど、個人個人がめちゃくちゃ楽しそうにしてるんです。だからすごいですよ。日本ってギターソロのパートが来たら見入るじゃないですか。でも海外はうわーって盛り上がるんです。なんなら、俺たちが出る前の楽器チェックですごい盛り上がりですから。
TAKE:僕、現地の楽器テックさんに言われたんですけど、「お前はアメリカ人が忘れたロック魂を持っている。なぜなら16小説もギターソロを弾くからだ!」って(笑)。
一同:言われてた(笑)!
KEIGO:海外に行きはじめの頃こそあの分厚い歓声にびっくりしていましたけど、ありがたいことに継続的にいろんな国に行かせてもらえているので、国内外それぞれの良さに気づけましたね。
TAKE:今アニメや漫画、ゲームって日本の文化になっていて、唯一の輸出物だと思うんですね。日本が誇って良いカルチャーだ、このカルチャーがあるから日本人は胸を張っていいんだって、海外に行っているからこそ感じています。だって、アニメがきっかけで日本語を覚えてくれる外国人がたくさんいますからね。北米に関してはすべての州でアニメフェスが行なわれて、そこに万単位の人が集まって。そりゃユニクロもギャップもアニメコラボしますよね(笑)。
――たしかに(笑)。そのアニメの中心にいるミュージシャンの1組がFLOWの皆さんです。これだけ多くのアニメに携われているのはどうしてだと分析されますか?
TAKE:ソニー・ミュージック所属だから(笑)。
KEIGO:(スタッフに向かって)これからも末永くお願いします!
KOHSHI:(部屋を見渡しながら)タイアップがいっぱい転がってるなぁ(笑)。
GOT'S:ここ、ありがてぇビルだな!
KEIGO:俺が思うのはやっぱり実績かな。『帰還者の魔法は特別です』って魔法アニメじゃないですか。俺らはこれまで魔法アニメにほとんど携わったことがなくて。『テイルズ オブ ゼスティリア ザ クロス』くらいかな。その主題歌をやらせていただいた時にいい結果を残すことができたから、もしかしたら『帰還者の魔法は特別です』にもハマるんじゃないかって思っていただけたのかな、と。
KOHSHI:やっぱりジャンプ系のイメージが強かったもんね。
GOT'S:そうそう。だから日常系アニメの話は来ないですもん。『クレヨンしんちゃん』とか。
KEIGO:「この主題歌、うるさい!」ってなりそう(笑)。
――そんなことはないです(笑)。皆さんにとって「アニメ」という文化はどんな存在なのでしょうか。
KEIGO:確実にバンドの世界を広げてくれた存在、です。しかもいろんな意味で。曲もそうだし、ライブもそうだし、ましてや海外でライブをするなんてアニメと出会わなければ多分なかったと思うんですよね。しかも、アニメのすごさというものを知ることもできました。子どもの頃、普通にアニメを見ていましたがアニメはアニメであって、ただの娯楽と思っていたんです。でもこうして密接に関わることで世界を広げてもらえました。
――とはいえ、当初はアニソンバンドと言われることに抵抗があったというお話を様々なところで拝見したことがあります。
KEIGO:そうそう、めちゃくちゃ抵抗ありましたよ。アニメのイベントに行ったら「ロック畑のバンドが来た」と言われるし、ロック畑のイベントに行くと「アニソンバンドが来た」と言われるし。どっちつかずでハマっている気がしなかったですから。それに、そんなに多くは無かったですがコアなファンの方からは「あんまりアニソンバンドって言わないでください。私はライブハウスでFLOWと出会ったので」というようなことを言われたりもしました。
ただ、海外を含めていろんな現場に行っているうちに、「アニソンバンドかロックバンドか気にしているのは自分たちだけ。良いものは良いし、かっこいいものはかっこいい」って思うようになったんです。段々自分たちで吹っ切れてきた時に、アニメと出会ってバンドの世界を広げてもらったんだから、アニソンを演奏することは自分たちの1つの武器だと認識できました。だからこそ、『FLOW ANIME BEST』というアルバムもリリースしたし、【FLOW 20th ANNIVERSARY SPECIAL LIVE 2023 ~アニメ縛りフェスティバル~】というライブもやりましたしね。
――今の皆さんの姿を見たら、当時「アニソンバンドってあまり言わないでください」と言っていた方も納得するかもしれませんね。
KEIGO:そうかもしれません。でも、今は自分たちが胸を張ってやっているので、そういう声があっても気になりませんけどね。
TAKE:俺、この間そういう内容のポストをしたらプチバズリしました。2日で200人くらいフォロワーが増えた(笑)。
――拝見しました! 今は時代の流れもあって同じ考えの人が増えているのかもしれませんね。
IWASAKI:正解かどうかはわからないですけど、僕の中ではアニメはもうサブカルじゃないんですよ。サブカルだと思っているんだったら、その人は多分時代遅れ。こんなにど真ん中で勝てるコンテンツに“サブカルチャー”というイメージは合わないし、遠の昔に終わっていると思います。むしろ今はここに参入できないと勝てないと言ってもいいくらい力のあるコンテンツ。そういう意味では自分たちはすごく良い武器をもらったなと思います。
――仰る通りです。一方で、FLOWの皆さんには“ライブバンド”というイメージもあります。実際、ほぼ毎日のようにライブやイベントをされていますよね。
KOHSHI:バンドはライブしてなんぼですから。それにデビュー前は渋谷駅前で路上ライブをして、1からお客さんを集めるということもしていましたし。現場叩き上げのバンドなので、デビューしても変わらずやらせていただいています。
KEIGO:ライブしてないとバンドは腐っちゃう。しかもライブしている本人たちはちょっとデトックスみたいなところありますから。
GOT'S:それこそアニメに携わらせていただいてから、よりライブが増えた気がする。
KOHSHI:フェスの種類とかね。アニメイベントとロックイベント、それに自分たちのライブ。たまに企業案件があったり(笑)。
KEIGO:「No」は言わないバンド(笑)。
KOHSHI:パチスロ台の発表会でライブするとかもあったね(笑)。
デビュー20周年を迎え、目指すはサバンナ・ライブ?
――様々な経験を積んでこられた皆さんは、今年で20周年。これだけ長く活動されていると変わったと感じることもありそうです。
TAKE:むしろ変わったことばかりかもしれません。僕らはデビュー当時何がしたいかわからなくてロックやJ-POPといろんな音楽をやらせていただいていました。変化を恐れず進化し続けてきたのが、僕たちFLOWなんです。あと変わったところといえば、歳を重ねて老けた。
KOHSHI:シンプルにね。
KEIGO:ちょっとガタがきてる。指を手術したり。
KOHSHI:痛風になったり。
KEIGO:全部この人(GOT'S)なんですけどね。
GOT'S:全身に蕁麻疹も出た。ストレスなのかも。
TAKE:20年分のストレスがでたのか(笑)。
GOT'S:でもひと夏お休みしたので、もう大丈夫です。俺、その間にFLOWのライブを見たんですよ。俺が休んでいてもライブは休まないのが良いですよね。メンバーが休養しているときってバンドもお休みするパターンがあるじゃないですか。
KOHSHI:それが俺らの良いところ。
KEIGO:サポートベース入れてやりますって。
KOHSHI:「え、誰? 誰? 女の子のベース? いいじゃん! 楽しそう」ってね(笑)。
GOT'S:外から見てると演奏している時とやっぱり全然違いますよね。本当に普通のバンドを見ている感じ。でも頭の中では演奏しちゃって、あんまり休んでいる感じがしなかったです(笑)。
――外から見てかっこいいバンドだなって思いましたか?
GOT'S:俺が入ればもっとかっこよくなるなって。
一同:(笑)。
KOHSHI:ブレないね~!
KEIGO:かっこよさが足りなかったんだ(笑)。
TAKE:そう思ってないとやっていけないもんね。
――そんな皆さんが今思うバンドの強みはどこにあると思いますか?
KEIGO:20年やってきた経験なんじゃないですかね。しかもずっとこの5人で。だから胸を張ってやれているんだと思います。
GOT'S:なんでもやるもんね。嫌とは言わせてくれない。俺1人だったら嫌だなって思うこともやるんです。「とりあえずやってみよう」精神があるので、嫌でも乗っからなきゃいけないんですよ。
TAKE:UVERworldのTAKUYA∞くんも「やってたしかめてみろ」って言ってるから。
GOT'S:なんでもやるのは正解なんだ。
KOHSHI:TAKUYA∞かGOT'Sか。
――ロック界の二大巨頭!
KEIGO:真逆のこと言ってんのに(笑)。
GOT'S:共に倒れてくれる仲間がいるからやれてるんだよ。下手こいても5人一緒に倒れれば、「まぁ良いか!」みたいな。だから挑戦できるんです。
KOHSHI:バンドの良さだね。
GOT'S:そう。ソロは怖い。他にも倒れてるやつがいるな、俺だけじゃないんだって思うと安心する。だからなんでもできる。
――今まで何度も聞かれているとは思うのですが、20年続ける秘訣ってあるのでしょうか?
KEIGO:多分ないと思いますよ。
TAKE:始めた当初は20年続くと思わなかったですからね。当時、ロックバンドは5年位で東京ドームまで行って解散してたし。
KOHSHI:下手に売れるから解散するんだよ、きっと。
KEIGO:そうかも。俺ら、東京ドームまでまだまだ果てしないから続いているのかもしれない。
IWASAKI:解散するバンドがたくさんいるのに、メジャーで20年やらせてもらえているのはありがたいね。
GOT'S:やっぱさ、ちゃんとご飯食べられているからじゃない?
KEIGO:FLOWで食えてなかったらみんな殺伐としてるかもね(笑)。
GOT'S:「俺も曲書く!」とか言い出すかも(笑)。
TAKE:そうね。楽しくなかったら、もしかすると過去に転生していたかもしれないです。
――うまい!
TAKE:「うまい!」もらった!
KEIGO:嘘でしょ!? すごい食いついたからびっくりしちゃった(笑)。
――「GET BACK」を絡めるのは流石です(笑)! そして、FLOWとしてまだまだやりたいこともあるのでは?
TAKE:あります。来年やります。やってないことをやることは僕らにとって潤滑油なので、挑戦していきたいですね。今年20周年突入イヤーとして、過去最多動員数となる【FLOW 20th ANNIVERSARY SPECIAL LIVE 2023 ~アニメ縛りフェスティバル~】をやらせていただいて。だからこそ次に挑戦できることがあるなと考えているので、ファンの皆さんと一緒に進んでいけたらな、と思っています。
KEIGO:あとは、アフリカ大陸とオセアニア大陸に行けば、五大陸制覇になるのでFLOWを続けているうちに必ずやりたいですね。
TAKE:サバンナライブとかいいね!
関連商品