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<インタビュー>miwa、“秋”をコンセプトにした最新EPと3度目のビルボードライブ・ツアーを語る

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 シンガー・ソングライターのmiwaが、秋をコンセプトにしたEP『月に願いを』をリリースした。今作は、季節をテーマにした自身3枚目のEPであり、秋の季語でもある“月”と夏目漱石の『月が綺麗ですね』の逸話をモチーフに制作された「月が綺麗ですね」、妹の結婚式のために書いた「Wedding Wish」や『ぶらり途中下車の旅』のテーマソングである「空っぽ」といった多彩な収録曲にも注目だ。19歳のデビューから常に等身大の歌を届けてきたmiwaが、テーマを設けて作り切った今作に込めた思いとは。そして、今年の11-12月には自身3回目のビルボードライブ・ツアー【miwa CLASSIC Ⅲ】も開催。ここでしか聴くことのできないアレンジと編成で、いつもとは一味違うパフォーマンスを披露してきた同公演への意気込みを訊いた。(Interview:永堀アツオ)

コンセプトを決めて1つの作品を作り切るというのがすごく面白い

――秋をコンセプトにしたEP『月に願いを』がリリースされました。2022年夏のEP『君に恋したときから』、と2023年冬のEP『バレンタインが今年もやってくる』に続き、2023年春のシングル『ハルノオト』を挟み、季節をテーマにした3枚目のEPになります。

miwa:去年の夏に初めてEPを出したときに、コンセプトを決めて1つの作品を作り切るというのがすごく面白いなと思って。今回は“秋”をテーマにしたんですけど、秋をテーマにした曲って意外と少ないんですよね。

――確かに夏や冬と違って、すぐには思い浮かばないですね。miwaさんにとっては、秋とはどんなイメージですか?

miwa:昔、ももクロちゃん(ももいろクローバーZ)に「いつか君が」という曲を提供したときに、秋をテーマにしてて。そのときはももクロちゃんたちに“秋といえば?”っていうテーマを投げかけたら食べ物の話が多かったので、秋の味覚を取り入れた曲にしたんですね。でも今回は、私は月をテーマに書いていけたらいいかなって思って。


――どうして月でしたか?

miwa:まず、中秋の名月があって、秋って月を愛でる季節だなと思って。あと、月に関する逸話で、夏目漱石が、弟子に<I LOVE YOU>を<愛しています>って訳すんじゃなくて、<月が綺麗ですね>くらいに訳しておくのがいいんじゃないかと言った、という有名なエピソードがあるじゃないですか。それが、すごく日本人らしいし、面白いなと思ったんですよね。月を見上げて大事な人を思うという、月を見ることが愛情表現にもなりうるぐらいに大事にされてきた文化なんだろうなと感じて、月をテーマに楽曲を書くことにして完成した曲が「月が綺麗ですね」という曲です。

――ピアノバラードになってますよね。

miwa:今回はメロディから作っていったんですけど、やっぱり和を感じるメロディにしたいなと思って、ピアノで作って。今までにないようなテイストにしたいとも思ったので、和やオリエンタルな雰囲気が出るような楽器を使おうとも思っていて。和歌にも月を愛でながら、大切な人に向けて歌を詠むっていう文化があるんですよね。だから、ちょっと昔ながらの古風な感じをメロディにも歌詞にもアレンジにも入れられたらいいな、なんて思ってました。

――歌詞は片想いといっていいですかね。どんな二人を想像してましたか。

miwa:片思いなのか、両思いなのかは定かではないんですけど、ただ、思いをまっすぐにまだ伝えられないという感じですね。なんというか、私は落ち着いた雰囲気を感じていて。夏目漱石のエピソードを思い浮かべたときも、「月が綺麗ですね」で相手に思いが伝わるって、とても静かな風景じゃないですか。

――確かにそうですね。喧騒の中で大声で言ってる感じはない(笑)。

miwa:ね。すごく静かな月夜に、ボソッと言うわけですよね。しかも、それで完結する。その静けさや風情が表せたらいいなと思ったんですよね。

――miwaさんは月を眺めたりすることはあります?

miwa:毎年、中秋の名月を楽しんでいます。一眼レフの望遠レンズを持っているので、お月見をしながら、満月の写真も撮っていて。今年もお団子を用意したりしたんですけど、実はこの曲のレコーディングが今年の中秋の名月の日だったんですよ。すごい縁があるなと思ったし、お月さまのパワーが入ってたらいいなと思います。

――どんな思いで歌いましたか?

miwa:この静けさを表現するためというか、和の感じを出すためというか、淡々と歌っているように聞こえるけど、胸に秘めた思いがあるっていうのを表現したいなと思って。サビではちょっとエモーショナルな部分が出せたらいいなと思っていたので、なるべくビブラートを使わずに感情を表現してて。それがこの曲でチャレンジしたことで、結果としては、アレンジも含めて秋の月夜の雰囲気が出たので、よかったなって思っています。

――もう一つの新曲についても聞かせてください。「Wedding Wish」はタイトル通り、ウェディングソングですよね。

miwa:妹の結婚式のために書いた楽曲ですね。この秋に結婚式をするので、妹の結婚式を想像しながら書きました。妹には、背中を後押しするような前向き感のあるポップスというリクエストをされて。難しいな、いわゆる結婚式ソングじゃない曲だなって思って。ビート感のあるものをリクエストされたので、Aメロはポップスっぽい感じにしつつ、サビをどうしようと思って、結構悩んだんですね。一旦、その流れでも書いていったりしたんですけど、私の中ではもうちょっとウェディング感を出したいな、王道のサビにしたいな、どうしたらいいんだろうって考えて。そこで思いついたのが、ワーグナーの「婚礼の合唱」をモチーフにしたサビで。

――クラシックの名曲を大胆に使ってますね。

miwa:そう、これでサビが開けた感じがして、私の中でウェディングソングとしてしっくりきたなっていうところで完成したんですけど、妹は結婚式の本番までのお楽しみなので、気に入ってくれるかはわからないというドキドキがあります。

――きっと感動すると思います。miwaさんにとって妹さんはどんな存在ですか?

miwa:すごい頼りがいがありますね。よく相談も乗ってくれるし、いろんな感想も言ってくれるし、何でもできますね。これまでも妹のために作った曲があるんですけど、久しぶりだったので、とうとうウェディングソングなんだなって感じはありました。

――3rdシングル『chAngE』のカップリングに収録された「you can do it!」は受験生だった妹に向けて描いた応援ソングになってました。

miwa:受験で悩んでるとか、学校のことで悩んでるみたいなところから、今はウェディングソングになったのかっていう感慨深さがありました。今はとにかく、妹が幸せならそれが一番嬉しいなと思いますし、妹に向けて書いてるので、妹が聴いたときに私の曲だって思えるような曲になったらいいなって思いながら書いてましたね。まだ聴かせてないので何とも言えないですけど、お披露目する結婚式当日に気に入ってくれて、感動してくれることを祈るのみです。


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3度目となるビルボードライブ・ツアーに向けて

――そしてもう1曲の新曲「空っぽ」は『ぶらり途中下車の旅』7〜9月のテーマソングとして書き下ろしになってます。

miwa:「タイトル」(2018)と「Holiday」(2019)に続いて、3度目のタイアップなので、今回はどういう曲にしようかなと思ったところで、『ぶらり途中下車の旅』に“ぶらり”とつくように、空っぽの気持ちでまっさらな旅に出るっていうテーマで書けたらいいなと思って。だんだんと大人になっていくと、なかなか後先決めずに新しいことに挑戦したり、新しいところに出かけたりというのが難しくなってくるじゃないですか。頭で考えたり、しっかりと計画したりすることが多くなっていくところを、心の赴くままに出かけるというか、新しいことを始めるみたいなところがテーマになるといいなって思って。


miwa - 「空っぽ」short movie

――miwaさんは旅のスケジュールは全部決めていく方ですか。

miwa:やり残すことがないように、一応下調べをして、やりたいことを決めていくことが多いですけど、気がつくと詰め込みすぎちゃうタイプなんですよね。でも、旅ってやっぱり、実際に行ったから出会えた、偶然の出会いがあって。ガイドブックには載っていないお店だけど、すごく良かったということがあったりするので、余白を残しておくのが大事だなと常々思ってて。

――先ほども言ってましたが、歳を重ねるほど難しくなりますよね。

miwa:空っぽの気持ちになることが難しいからこそ、曲にしたいなと思ったし、そういうときがあってもいいんじゃないか、なんて思っちゃいますね。本当は何もない状態の方が何でも入るじゃないですか。配信リリースしたときのジャケットも空っぽのカバンだったんですけど、カバンにいっぱい荷物が入ってたらもう何も入らないけど、空っぽのカバンだったら何でも入れられるなって。

――空っぽの気持ちでまっさらな旅に出る曲には<誰もが夢の途中>というフレーズもあります。miwaさん自身は今、どんな夢を見てますか。

miwa:再来年の3月で15周年を迎えるので、来年から15年目が始まるんですね。だから、15周年に向けては何かやりたいねって話していて。まず、ずっと夢だったmiwaミュージアムはやりたいなって思ってます。衣装とかギターとか、これまでに使ったいろんなものを展示したり、全然出してない映像が見られるような展覧会をやりたい。あとは、この前ももクロの(玉井)詩織ちゃんに「マリンブルー」という曲を書いたんですけど、楽曲提供をもっとやっていきたいなと思いますね。コライトもやってみて楽しかったので、いろんな人とタッグを組んで、たくさん曲を書けるようになっていけたらなと思います。



玉井詩織 - 「マリンブルー」Lyric Video

――3枚目のEPが完成しましたが、ご自身にとってはどんな1枚になりましたか。

miwa:秋の曲って少ないと思うんですけど、特に「月が綺麗ですね」は秋の夜に聴いてもらえる曲になったんじゃないかなと思います。空を見上げたり、1人の時間を大事にできたり、前向きになれる楽曲が多いのかなって思うので、だんだん夜が長くなっていって、1人で考え事をする時間も増えてくる季節に、大切な人を思い浮かべたり、自分のこれからの新しい挑戦を思い浮かべたりしながら、ゆっくりと聞いてもらえるEPになるといいなと思います。

――そして、3年連続3回目となるビルボードライブ・ツアー【miwa CLASSIC Ⅲ】の開催も控えてます。

miwa:またやらせていただけるのがすごい楽しみです。1回目2回目とやってみて、今までのライブとは違った音楽の楽しみ方を知れて。お客さんとの距離感がすごい近かったり、食事をしながら、お酒を飲みながら見たり。人それぞれ楽しみ方が違うと思うし、アレンジも編成もビルボードライブならではの構成になっていて。このメンバーで3回目でもあるので、だんだん結束も固まってきてるんですね。最初は本当に初めましてで、バイオリンとチェロの2人は『THE FIRST TAKE』が先で、いきなりツアーみたいな感じだったんですけど、3回目でもすごくこのライブも楽しみにしてくれて。ビルボードライブに慣れてきたからこそ、『こういう曲があったらいいよね』とか、『あの曲をやろう』っていうアイディアもどんどん出てきている。もちろん、今回初めて来る方もいると思うんですけど、私達なりの楽しみ方もお客さんの楽しみ方もわかってきた3回目だと思います。2回目3回目の人もいたりすると思うので、もっともっとリラックスしたり、歌に入り込めたり、はたまた食事や飲み物を楽しんだりっていう、いろんな楽しみ方ができるライブになるんじゃないかなと思います。


――miwaさんが見つけた楽しみ方というのは?

miwa:いつものライブより時間は短いんですけど、やっぱり生楽器の良さ、生歌の良さを感じてもらえるっていうのが一つ。あとは、普段のツアーではやってないような楽曲や懐かしい楽曲も披露するっていうところと、短い時間の中で構成しているので、アップテンポの曲からバラードの曲までギュッと詰まっているところかなって思います。

――ライブハウスからアリーナまでいろんな場所でライブやってきてますけど、ビルボードライブはどんな会場だと感じてますか。

miwa:今までで一番お客さんとの距離が近いんですよね。ステージの一番前と一番前の人のテーブルがくっついてるぐらい近いので(笑)、圧倒的肉眼で見れると思いますし、前の方の席の人は生のピアノの音や生のアコギの音、きっと私の生声も聞こえてると思うんですよ。そういう生の音の良さも聞いてもらえると思うし、すごく近くで演奏も見れるし、雰囲気もリラックスしてる。1回目は私も初めてだし、お客さんも初めてだったので緊張もしてて。『いつ食事をしたらいいのかわからなくてドキドキした』みたいな声も聞いたんですけど、私もセットリストをもうちょっとこうすればよかったなという反省もあったので、それを生かした3回目になってますね。演奏中に、例えば飲み物をおかわりすることも自由なので、リラックスしながら聞いてもらえる空間にはしたいなって思っています。

――恒例になっていきそうですね。

miwa:恒例になるといいなと思っています。ビルボードライブ東京では、イルミネーションやスケートリンクが見えるし、年末に冬景色を見ながら冬の曲を歌うっていうことが今まであまりなくて。かつて、【39 live】でサンタの衣装を着たときくらいしか、冬っぽいステージはなかったので。

――どちらかというと、「ミラクル」や「君に出会えたから」のように夏フェスでタオルを回しちゃうような明るく元気なイメージが強い人が多いかもしれない。

miwa:そうですね。あとは、春に桜吹雪のなかで歌ったこともありますけど、なかなか冬っぽいステージが今までない中で、年末に1年間を振り返りながら、冬景色を見ながら冬の曲を聞いてもらえる。やっとビルボードライブの雰囲気が年齢とともに合ってきたところもあるので、大人になった今の私にすごく合ってるなって感じてて。夏フェスももちろん楽しいんですけど、お酒を飲みながら、食事をしながら、着席でお客さんに楽しんでもらえるライブは今までなかったので、ここだからこそ披露できる楽曲もあるし、披露したいアレンジもあるし。本当にリラックスして、食べながら飲みながらゆったりと曲を楽しんでもらえたらいいなと思いますし、ビルボードライブの良さを味わってもらえる3回目にしたいですね。


miwa「月に願いを」

月に願いを

2023/11/15 RELEASE
SRCL-12667/8 ¥ 4,950(税込)

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Disc01
  1. 01.月が綺麗ですね
  2. 02.Wedding Wish
  3. 03.空っぽ
  4. 04.片想い - With ensemble
  5. 05.ハルノオト - With ensemble

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