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<インタビュー>池内ヨシカツ×竹中雄大、お互いがこだわり抜いて完成させた楽曲「Lonely」とは
Interview & Text:黒田隆憲
Photo:筒浦奨太
日本アカデミー賞の最多12部門の受賞を果たした映画「怒り」の劇中歌をはじめ、様々な映画音楽を担当してきた人気作曲家の池内ヨシカツが、「音楽をチャージする」をテーマに制作したオリジナル楽曲を「ChargeSPOT」アプリで先行視聴するというプロジェクト「Music Charge」をスタート。第一弾はCHEMISTRYの川畑要、Da-iCEの大野雄大、そしてNovelbrightの竹中雄大とコラボを行った(先行配信の期間は終了し、すでに音楽ストリーミングサービス各社から配信されている)。世代やジャンルはそれぞれ異なるが、圧倒的な歌唱力でシーンを牽引してきた3人のボーカリストを起用し、その新たな魅力をどう引き出してきたのか。今回Billboard JAPANでは、池内と竹中の対談インタビューを実施。お互いの印象や実際の制作プロセスなどについてたっぷりと話を聞いた。
「二人でかなりこだわりながら完成形に仕上げていきました」
――お二人はもともと親交があったそうですが、お互いについてどんな印象を持っていましたか?
池内ヨシカツ:初めて会ったのが3年くらい前だったかな。共通の知り合いを通じてお会いして。とにかく歌が上手いという印象。実際に話をすると、プロ意識がすごく強い人だということも分かりましたね。ライブ前とかお酒を絶対に飲まないと聞いて……もっとロックな感じで夜も大暴れしているのかと思いきや(笑)。
竹中雄大:意外とそうでもないんですよ(笑)。
池内:あと「ソロで海外進出したい」という話も聞いていました。以前からよくロサンゼルスに渡航していたらしく、僕もLAに住んでいたので、「どんなところに行ってた?」みたいな話で盛り上がったかな。好きなアーティストも結構、共通していたんですよね。
竹中:僕は、USポップス、ロック、ヒップホップなど結構オールマイティーに聴くんですけど、池内さんもいろんな国のいろんな音楽のエッセンスを取り入れながら、本当にバラエティ豊かな曲を作っていらっしゃる方だなと。今回も、コラボをするにあたって最近のデモを何曲か聴かせてもらったのですが、めちゃくちゃ振り幅が大きくてびっくりしました。本当に天才だなと。
――では、そのコラボ曲「Lonely」のボーカルを竹中さんにオファーした経緯を教えてください。
池内:雄大は日本のボーカリストの中でも個人的にトップレベルだと思っていて、昔に一緒に曲を作ろうという話をしていたので。まずはLINEで「今度、こんな企画をやるから歌ってほしい」って連絡しました(笑)。
「Lonely」
――コラボのオファーをもらって竹中さんはどう思いましたか?
竹中:さっき池内さんがおっしゃってくださったように、将来的には海外にどんどん進出していきたいという「シンガー」としての夢というか、目標を昔から抱いていたんです。なので今回、こういう企画を通して一緒に曲を作り、世界に発信できることを心から光栄に思いました。どんな内容になるかも楽しみでしたね。これまでは自分で作ったメロディを歌ってきたので、自分以外の人が書くメロディを歌うことにもワクワクしました。
――トラックは、竹中さんのイメージに合わせて書き下ろしたのですか?
池内:いえ、デモは1、2年くらい前に出来ていました。実は、とある映画用に作っていた楽曲だったのですが、その映画の監督が途中で交代してしまい、作品のテイストそのものも変わってしまったので、使われることなくストックしておいたんですよね。すごくいい曲になりそうだったので、「いつかどこかで使いたい」と思っていました。今回、こういう形で日の目を見たことも嬉しいです。
竹中:池内さんから、何曲かストックしているデモを聴かせていただいた中で「これや!」と。言葉で表すのは難しいですが、そんなふうにピンとくる時がたまにあるんです。メロディもキレイやけど、僕が今まで歌ってこなかったテイストだし、ぜひ歌ってみたいと思いました。海外で流行っているようなテイストを織り交ぜつつ、日本人にも馴染みのある曲調というか。僕自身のいいところも出せそうだなと思ったのも、この曲を選んだ理由の一つです。
――ボーカルのレコーディングはどのように行われたのですか?
池内:ちょうど僕はその時に台湾に行っていたので立ち会えなかったんですよ。
竹中:普通にスタジオに入って歌って、そのデータを送りました。今どきですよね(笑)。
池内:いただいた段階で完璧なテイクでした。その代わり、ミックスやマスタリングに関してはだいぶ密にやり取りをしましたね。ボーカルの位置をどうするか、他の楽器とのバランスはどういうイメージなのか、そこを詰めるのに一番時間がかかったかもしれない。ちょっとしたニュアンスの出し方とか、二人でかなりこだわりながら完成形に仕上げていきました。
竹中:ちょっとしたリバーブの量だとか、最後のサビのハモリの部分と主旋律の部分の絶妙なバランスだとか、おそらく普通の人は聞き取ることができないくらいの話かもしれない部分を、本当に手間と時間をかけて調整していきました。そうやって出来たミックスの音源が送られてきた時は、めちゃめちゃ感動しましたね。とにかくボトムがしっかりしていて、LAのすごく有名なエンジニアさんが手掛けてくれたというだけあってレベルが違うなと。
池内:ショーン・メンデスなどの楽曲を手がけているミックスエンジニアさんにお願いしたんです。とても腕はいいのですが、やはり言葉の壁があって細かいニュアンスを伝えるのに苦戦しました。それでも根気強くやり取りをして、雄大が思う理想と僕が思う理想をうまくすり合わせて仕上げてもらいましたね。
竹中:自分が予想していたものを遥かに上回る仕上がりでした。本当に嬉しかったです。
池内:未完成の音楽を細部まで意識して作り上げていく工程がすごく好きで。こだわりが強いからこそ、作っていてとても面白かったです。
- 「ボーカルの良さを引き立たせる曲にしたい」
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