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<インタビュー>コムドット あむぎり、“AMUGIRI”として世に伝えていきたいこと
Interview: 森朋之
YouTubeクリエイター・コムドットのあむぎりが、AMUGIRI名義でメジャーデビュー。1stデジタルシングル「すいません」をリリースした。
高校時代からヒップホップに傾倒し、昨年は『フリースタイルティーチャー』に出演。今年7月に東京ドームで行われたライブイベント【Creator Dream Fes ~produced by Com.~】で「昔から大好きなヒップホップでメジャーデビューすること!」と夢を宣言し、念願のメジャーデビューを実現した彼に、ヒップホップとの出会い、「すいません」の制作、アーティストとしての活動ビジョンなどについて聞いた。
――10月30日にAMUGIRIとしてメジャーデビューを発表。ファンのみなさんの反応はどうでした?
AMUGIRI:(情報解禁のタイミングは)アメリカにいて、目覚めたら発表されてたんですよ(笑)。X(旧Twitter)のトレンドに上がっていて、自分もインスタに投稿したら「おめでとう」というリプが来て。知ってくれてる人がいっぱいいてくれて嬉しかったです。曲のタイトル(「すいません」)も出していたので、「楽しみにしてます」という方も多くて。
――7月に東京ドーム行われたライブイベント【Creator Dream Fes ~produced by Com.~】(以下CDF)でも「昔から大好きなヒップホップでメジャーデビューすること!」と宣言したし、「いつデビューするんだろう?」と待っていた方も多かったでしょうね。
AMUGIRI:そうだったらいいですけどね。「やりたいことは?」と聞かれたときも「自分のオリジナル曲を作りたい」と言ってたし、「待ち遠しい」と思っていてくれた人がいたら嬉しいです。
――まずは音楽的なルーツから聞きたいのですが、ヒップホップを好きになったのはいつ頃ですか?
AMUGIRI:高校3年のときですね。(コムドットの)メンバーのひゅうがとやまとに教えてもらって、『フリースタイルダンジョン』を見るようになって、「カッコいい」と思ったのが最初です。出演している方の曲とか、バトルで使われていたビートの原曲を聴いたり。特にハマったのはR-指定さんですね。そこからCreepy Nutsを知って、いろんな曲を聴くようになって。2021年に初めてライブに行ったんですけど、そこでも「やっぱりカッコいいな」と思いました。
――その後、自分でもラップをやるようになった?
AMUGIRI:最初は遊びというか、ただの自己満だったんですけどね。地元の友達と一緒に、フリービートに自分たちで書いた歌詞を乗せて。どこに発信するわけでもなく、仲間内で聴いてました(笑)。歌詞を書くのは難しかったけど、「面白いな」と思って。
――その頃の歌詞って、どんな内容だったんですか?
AMUGIRI:地元に向けた歌詞とか。友達と一緒にやってたからかもしれないです。
――レぺゼン西東京ですね! やっぱり地元には愛着がある?
AMUGIRI:ありますね。実家もあるし、友達もいて、地元に帰ると居心地がいいなと思うんで。特に何があるわけでもないんだけど(笑)。地元をテーマにした曲はこれからも作っていきたいです。
――昨年は『フリースタイルティーチャー』に出演。大きな話題を集めましたが、手ごたえはどうでした?
AMUGIRI:人生一、緊張しました。それこそ『フリースタイルダンジョン』に出演していた方々も参加していて、その人たちの前でフリースタイルバトルをやるっていう……今思えば、なんで受けたんだろう(笑)?
――(笑)。でも、そのときは「出たい!」と思ったんですよね?
AMUGIRI:そうですね。『フリースタイルティーチャー』は視聴者として見ていたし、「出ませんか?」というお話をいただいたときはすごく嬉しくて。一瞬、迷いましたけどね。バトルはノーカットで放送されるし、失敗したら放送事故になる心配もあったので。最初の収録は指導してくれるティーチャー(FORK/ICE BAHN)に1対1で教わって、その3週間後に本番だったんですよ。本番まではYouTubeにアップされてるラップバトルを練習する動画を見たり、メンバーやマネージャーとサイファーみたいなことをやったり。その動画をティーチャーに送って、「こうしたほうがいいかもね」みたいなアドバイスをもらって。
――出来る限りの準備をしていた、と。
AMUGIRI:そんなに時間がなかったので、大変でしたけどね。本番の日、スタジオにZeebraさんがいらっしゃって、驚いている間に、自分の試合になってました(笑)。放送後はコメ欄を見るのが怖かったですね。「どんなふうに言われてるんだろう?」と思って。
――ポジティブな意見が多かったのでは?
AMUGIRI:不調だった試合には厳しい評価もありましたけど、「なるほど」と思う意見も多かったし、即興で頑張ったことを評価してくれる人もいて、「しっかり見てくれてたんだな」と思いました。FORKさんもそうですけど、いろんなラッパーの方と会話できたのもよかったです。お会いできるだけで光栄なのに、一緒にフリースタイルもやれて、すごく貴重な時間でした。本番のときは緊張感を味わえたし、メンタルも強くなった気がします。このインタビューも緊張しますけど。
――東京ドームのステージに立つほうが緊張するんじゃないですか(笑)?
AMUGIRI:いや、その後の取材のほうが緊張しましたね(笑)。ぜんぜん慣れないです。
5月に悠馬がデビューしたことで
「やってみたい」という気持ちが強くなりました
――メジャーデビュー曲「すいません」について。楽曲の制作はいつ頃はじまったんですか?
AMUGIRI:やっぱり【CDF】で「ヒップホップソングでメジャーデビューしたい」と宣言したのがきっかけですね。そこからいろんな方に協力してもらって、少しずつ形にしていって。自分の宣言に背中を押された感じです(笑)。
――「すいません」は、人見知りで弱気なところがある自分を見つめながら、「自分は一人しかない。自分らしくやろう」という決意を表明する楽曲。AMUGIRIさん自身が強く反映されてますね。
AMUGIRI:一つめの曲なので、まずは自分のことを知ってもらいたいという想いがあって。自分の性格だったり、「こんなことあったな」みたいに思い出しながら歌詞を書いていきました。ファイトソングというか、自分を上手く出せない人に刺さってくれたら嬉しいですね。「自信がなくても大丈夫だよ」って伝えたいというか。
――自分自身と向き合う機会でもあった?
AMUGIRI:そうですね。自分でも考えたし、メンバーから「意外とプライド高い」とか「負けず嫌い」みたいなことも教えてもらって、それを歌詞に落とし込んだ部分もあります。自分が見ている自分と人から見た自分の違いなど、いろいろ気づけたこともありますね。あと、コムドットのことも歌詞にしていて。
――〈同じことやってる今と昔 変わったのはスケールと見える景色〉は、まさに今のコムドットの状況だなと。
AMUGIRI:何も変わってないわけではないですけど、今も昔も同じように(動画を)撮っているし、基本的には変わってないんですよ。いろんな人が見てくれるようになって、気を付けなきゃいけない部分もありますけど、やれることが増えているのはめっちゃ嬉しいです。
――アーティストデビューもその一つですよね。フロウも気持ちいいし、ラッパーとしての個性もしっかり出ていて。
AMUGIRI:韻を踏むのは難しかったですけどね。つながってるラッパーの方にも相談したんですよ。言葉の乗せ方とかも、「こういう感じにしたいんですけど、どうですかね?」って。韻を踏みたいという気持ちもあるんだけど、そっちに引っ張られ過ぎて、テーマから逸れそうになることもあって。やっぱり難しいですね。
――「すいません」というタイトルについては?
AMUGIRI:それはやまとの提案なんですよ。「『すいません』でいいんじゃない?」って言われて、「確かに」って(笑)。
――ラッパーのデビュー曲が「すいません」って、すごいインパクトだと思います。ビートやトラックメイクに関しては?
AMUGIRI:それこそCreepy Nutsさんのアップテンポの曲みたいな感じにしたくて、それを伝えて作っていただきました。人前で歌ったり、ライブでやったりするときに盛り上がる曲がいいなと思ったし、1曲目はバラード系よりアップテンポだなと。【CDF】で人前に立ったときも、メンバーのゆうま(今年5月に「悠馬」としてアーティストデビュー)とか、他のYouTubeクリエイターのライブを見たときも、「こんなふうに盛り上げたい」と感じたので。
――悠馬さんに刺激を受けたところもあるんですね。
AMUGIRI:ありますね。去年の末に「TOKYO DRIFT」でラップした動画をアップしたんですけど(「TOKYO DRIFT FREESTYLE」/TERIYAKI BOYZ ®「TOKYO DRIFT」のビートでラップを披露し、ビデオと共に公開する企画)、そのときも「自分の曲として配信できるオリジナルソングを作りたい」と思っていて、5月に悠馬がデビューしたことで、自分にも可能性を感じたというか、「やってみたい」という気持ちがより強くなりました。悠馬とはぜんぜんジャンルが違いますけど、曲を聴いて「カッコいいな」と思いましたね。
ネガティブな部分は誰しもある
それはあまり気にしなくていい
――「すいません」のレコーディングはどうでした?
AMUGIRI:作曲してくれた方やレーベルの方と一緒にレコーディングしたんです。人前で「すいません」を歌うのは初めてだったし、最初は緊張しましたけど、「自分で書いた歌詞だし、自信を持ってやろう」と思って、全力でやれたし、めっちゃ気持ちよかったです。みなさんがすごく優しくて、「最高!」ってずっと盛り上げてくれて。やってるうちに「この人たちのテンションをもっと上げたい」と思えたし、すごくいい環境でした。
――自分らしいパフォーマンスができた、と。
AMUGIRI:そうですね。「こうやってみたら?」という意見もいろいろ提案してもらったんですけど、やっぱり「自分がしっくり来るやり方がいちばんいいな」と思って。みなさんもそれを受け入れてくれたし、すごくやりやすかったです。完成したときも「いい曲ができた」と思いました。言いたいことを歌詞に落とし込めたし、やりたいことをやれて。
――素晴らしいです。MVの撮影はどうでした? 当然、一人でパフォーマンスしているわけですけど……。
AMUGIRI:そうですね(笑)。「TOKYO DRIFT」でもダンスをやったし、いろんなラッパーの方のMVもずっと見ていたので、独学だけど身振り手振りはちょっと予習できていたのかなと。撮影が始まる前は緊張してたんですけど、流れているのは自分の曲だし、「ホームだな」と思って楽しくやれましたね。コンビニ店内のシーンもあって、エキストラの方とお話できたのもよかったです。僕、コンビニでバイトしたことがあるので、懐かしいなって(笑)。ちょっとユーモアのあるMVにしたかったし、出来上がった映像がすごくいい感じになって嬉しかったです。
――楽曲自体もそうだし、MVも含めて、自信を持って提示できる作品になりましたね。
AMUGIRI:どんな評価がもらえるか、楽しみです。曲を作ってるときは「大丈夫かな?」っていう不安もあったんですけど、いまは「早く聴いてほしい」と思ってます。
――リスナーのみなさんに対しては、どんな思いがありますか?
AMUGIRI:ネガティブな部分は誰しもあると思うんですよ。それはあまり気にしなくていいというか、逆に武器にして生きてほしいなって。あと、この曲をきっかけにヒップホップにハマってくれたら嬉しいです。
――「すいません」を作ったことで、AMUGIRIさん自身にもポジティブな影響があったのでは?
AMUGIRI:あ、そうかもしれないです。小心者ですけど(笑)、それを“礼儀正しい”と思ってくれる人もいて。見方を変えることで、ポジティブに捉えることもできるだろうなと。
――AMUGIRIさんのそういう性格は、グループのなかでも活かされていますよね。
AMUGIRI:「こういうキャラでやっていこう」と決めたわけじゃなく、気づいたらこういう立ち位置だったんですけどね。YouTubeは素でやってるし、取り繕っているわけでもないので、楽曲でもそういう部分を出していけたらいいなと思ってます。
――この先、アーティストとして、どんな活動をしていきたいですか?
AMUGIRI:カッコいい曲を出すのはもちろんなんですけど、自分の色というか、普段の動画では発言しにくいこと、できないようなことを歌詞にしたいです。あと、普通に音楽を楽しんでいる自分を見てもらえたら嬉しいです(笑)。
――ライブについては?
AMUGIRI:やりたいことはいっぱいあります。ゆうまが【CDF】で「武道館でやりたい」と言ってたんですけど、僕もいつか、そういうデカいところでやってみたいと思っていて。「何年後に」とかは決めてないんですけど、目標は持ちながら活動していきたいです。12月にリリースイベントを開催することになっていて、そこで初めて「すいません」を歌うので、緊張しますけど、楽しみです。
――未来が広がりますね。コムドットをはじめたときは、アーティストとして活動するなんて想像してなかったでしょうし。
AMUGIRI:そうですね。最初は自己満だったのが、今ではいろんな人たちに自分の曲を届けられる環境があるのは、すごく嬉しいことです。