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<インタビュー>地球の全てがインスピレーション――バーチャル K-POP アーティストAPOKIの“旅の記録”、待望の1stアルバムを語る

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Interview:田中久勝

 韓国発のバーチャル・アーティスト「宇宙のどこかに住むウサギに似ている存在」のAPOKIが、1stアルバム『Earth Space Time』をリリースする。

 2021年2月にシングル「GET IT OUT」でデビュー。ソングライターにメラニー・フォンタナ(BLACKPINK、デュア・リパ、ジャスティン・ビーバー、BTS)をはじめ一流作家陣を起用したこの曲は、宇宙や近未来を想像させる世界観のミュージック・ビデオと相まって、唯一無二なバーチャル・アーティストの強烈な名刺代わりの一作になった。以降もメラニー・フォンタナやGGラミレス(TWICE、ジヒョ)らの作家陣、A-Dee(GOT7、MONSTA X)、Lindgren(エイバ・マックス、ジョン・レジェンド、TWICE)といったプロデューサー陣を起用し、K-POPマナーを備えた世界最先端のクールなトラックを作り上げている。

 そして、待望の1stアルバムが完成した。既存曲に新曲を加えた全11曲は、あらためてAPOKIというバーチャル・アーティストがなぜ世界中で注目を集めるのかを、雄弁に語っている。この作品について韓国のAPOKIにオンライン・インタビューした。

APOKIにしかできない表現を

――これまでコンスタントに楽曲を発表してきて、いよいよ記念すべき1stアルバム『Earth Space Time』が完成しました。最初のアルバムということで、どんな作品にしたいと思って制作に入りましたか?

APOKI:このアルバムのキーワードは“回想”と“始まり”です。最新曲も入っていますが、今まで発表した曲も収録されていて、APOKIのアーティストとしての旅の記録でもあります。APOKIを応援してくださっているファンのためのプレゼントのような作品だと思います。

――既存曲とあらためて向き合って、そして新曲も含めてこのアルバムの中で一番チャレンジングだった曲、新しいインスピレーションが求められた曲を教えてください。

APOKI:今回のアルバムだけに限らず、全体的に考えると一番チャレンジしたと思う曲はデビューシングルの「GET IT OUT」です。デビューから2019年まで、いろいろな楽曲を“歌ってみた”とか“踊ってみた”でカバーをしました。でも「GET IT OUT」は初めてのオリジナル曲であり、APOKIの世界観を全世界に発信して、APOKIの存在を知ってもらう作品でもあり、とてもチャレンジだったと思います。




APOKI - GET IT OUT MV


――『Earth Space Time』というタイトルの由来を教えてください。

APOKI:APOKIのこれまでの世界観と、今後広がっていく世界観を3つの単語で提示しました。意味についてはこれからの私の活動を見ていただくと分かっていただけると思います。

――1曲目の「Mood V5」は何かが始まるワクワク感を感じさせてくれますが、曲順はどのように決めていったのでしょうか?

APOKI:リスナーの方が1曲目から順番に聴いてくださったとき、そこに感情が重なってくれると嬉しいなという思いを込めて曲順を考えました。アルバムのトラックの並びを決めて、最後はこんな曲があったほうがいいかなというアイデアを積極的に出して、制作チームと話し合って決めていきました。最初のアルバムだから曲順も悩んで時間がかかるかなと思っていましたが、意外とすんなり決まりました。

――メラニー・フォンタナをはじめ、スウェーデンのアンドレアス・カールソンなど、世界的なヒットを作っているチームがAPOKIさんの楽曲を制作されています。

APOKI:ここ数年、K-POPシーンでは、コライトも含めて海外のチームが楽曲を制作するのがスタンダードになっていて、そのトラックと韓国語の歌詞が融合して生まれるシナジーがあると思います。最近はどんどんジャンルの区別がなくなっている感じもしていて、APOKIのいろいろな世界観をお見せすることができています。いろいろなK-POPアーティストの多彩な曲に刺激されて、インスピレーションが生まれることもあります。

――多彩な音楽性がAPOKIさんの魅力のひとつだと思いますが、1曲1曲の歌の表現力、すごく強かったりとか、時にはすごく女の子っぽかったりとか、明るかったり、切なかったり、歌の表情の豊かさがAPOKIさんの大きな魅力だと思います。“歌”という部分で影響を受けたアーティストはいらっしゃいますか?

APOKI:そうおっしゃっていただけて嬉しいです。いただいた曲を深く解釈して、とにかくいいものを作りたい、APOKIにしかできない表現を、という気持ちでどの曲にも向き合ってきました。

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メロディーには壁がない

――アルバムのリード曲として7thシングル「Space」が9月13日にリリースされましたが、この曲に込めた思いを教えてください。

APOKI:「Space」はAPOKIが生まれた宇宙への思いというか、まだ地球では明らかにされていない宇宙の真理があるということを頭に置いて制作しましたが、その真理が何かは秘密です(笑)。でも、リリースをして、リスナーの方々がいろいろな角度から解釈してくださって嬉しいですし、ありがたい気持ちでいっぱいです。「Space」のいろいろなバージョンもリリースされているので、そちらもぜひチェックしてください。




APOKI ‘Space’ Official MV


――今回のアルバムを聴いて、サウンドはクールで本格的ですが、どの曲もメロディーがすごく親近感があるとあらためて感じました。

APOKI:やっぱり言葉の壁というのは存在すると思いますが、メロディーには壁がないと思います。だから世界中の方が聴いてくださるのだと思います。どんな方が聴いても親近感を感じてもらえるようなメロディーを、これからも追求していきたいです。

――8月にリリースした「Hold On」も収録されています。初の日本語オリジナル・ソングですが、反響や反応はいかがでしたか?

APOKI:今年4月にGirls²とコラボした「Countdown feat. APOKI」では、これまでとは違うファン層の方に楽しんでいただけたと思いますが、「Hold On」をリリースしてから、APOKIのことを好きになってくださる日本のファンの方が増えているのを実感しています。この曲は日本のUSEN週間リクエストJ-POPチャート(11/1付)で5位にランクインしたと聞いて、とても嬉しかったです。




APOKI (アポキ) 「Hold On」 Official MV

Girls² - Countdown feat. APOKI (Music Video)


――アルバムに入っている新曲のバラード「冬の桜」では、ギタリストの押尾コータローさんをフィーチャリングしています。押尾さんのギターのどんなところに魅力を感じていますか?

APOKI:実は「冬の桜」の初期段階にはギターのパートがなかったのですが、尊敬する押尾コータローさんにギターを弾いていただきたくてお願いしました。APOKIのボーカルに寄り添ってくださる繊細な音色で、とても気持ちが満たされるような音色になりました。押尾さんのギターは繊細でどこか寂しい感じの音色がすごくいいんです。でも、寂しさの中に暖かさを感じさせてくれます。

――たしかにAPOKIさんの歌に寄り添いながらも、ちゃんと押尾コータロー印を残してるというか、切なさがより立ってくるような感じです。

APOKI:一緒に作品を作ることができてとても光栄でした。

――先ほどリード曲「Space」について聞かせていただきました。選ぶのは難しいかもしれませんが、アルバムの他の曲でAPOKIさんが特に気に入っている推し曲を教えてください。

APOKI:全て推し曲です(笑)。でも、どうしても選ばなければいけないのであれば、新曲の「Hashtaggg」という曲です。とてもシックな雰囲気のミディアム・テンポの曲で、サウンドもとてもユニークなんです。歌詞は恋をした相手に「私をHashtagggして! 私を見て!」って強い感情をぶつける攻めている内容で、これは恋をした経験がある女性なら誰でも一回は経験したことある感情だと思います。この曲の歌入れのときは、APOKIを推してくださっているファンの皆さんとの関係を想像しながら歌いました。

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オリジナリティにこだわっていきたい

――APOKIさんといえば、作品ごとに最先端CGで描かれるミュージック・ビデオも毎回大きな話題になりますが、刺激を受けたクリエイターや作品はありますか? そして、あの唯一無二のセンスはどのように養われたのでしょうか?

APOKI:APOKIのビジュアル的な要素は、APOKIが生まれた宇宙の世界ではとてもノーマルなものですが、地球の皆さんにはとても新鮮に感じていただけているのであれば良かったです。APOKIは今も地球のセンスを勉強している最中で、地球の全てがとても新しくて大きなインスピレーションになっています。ちなみにAPOKIのアートワークには『AKIRA』をはじめとして、日本のSFマンガからインスピレーションを受けているものがあります。ぜひ探してみてください。

――最近ハマっているアニメやマンガはありますか?

APOKI:『ワンピース』はいつも読んでいますが、アニメは最近Netflixで『大奥』を見つけて、「実は歴史から消えた事実があるのでは?」と想像しながら夢中になって観ました。

――韓国の音楽シーンでもバーチャル・アーティストが増えてきています。他のバーチャル・アーティストと比べてAPOKIさんが目指すもの、一番大きな違いはどこにあると考えていらっしゃいますか?

APOKI:最近、韓国では本当に多くのバーチャル・アーティスト、アイドルが生まれ活動を始めています。特に今年に入ってからはファンの規模がすごく大きくなっているのを感じています。同じバーチャル・アーティストとしての目標は、皆さんと一緒にバーチャル・マーケットをさらに大きくしていくこと、みんなで一緒に活動して成長していくことが目標です。バーチャル・アーティストとして、アートワークがとても大事だと思いますが、やっぱり音楽性が大きなポイントになると思うので、そこは他のアーティストとは差別化して、オリジナリティにこだわっていきたいです。

――日本でもバーチャル・アーティストのシーンが盛り上がりを見せていますが、APOKIさんの目にはどう映っていますか?

APOKI:日本の文化が大好きで、日本で活動することが目標のひとつでした。日本のファンのバーチャルに対する興味は高いと思うので、私も積極的に活動をしています。これからもっともっと大きくなるシーンだと思いますので、さらに頑張って日本で活動していきたいと思います。

――APOKIさんから日本のミュージック・シーンはどんなふうに見えていますか?

APOKI:韓国では最近J-POPが人気です。昔から人気ですが、最近さらによく聴かれていてシティポップも人気です。日本は世界的に見ても大きな音楽マーケットで、色々な音楽を聴くことができるし、アイデンティティを持っているマーケットだと思います。なので今後、K-POPシーンも日本の音楽から色々な影響を受けるのではないかと思います。個人的にはあいみょんやOfficial髭男dismの音楽が好きでよく聴いています。最近は新しい学校のリーダーズにも注目しています。

――APOKIさんはSNSのフォロワーが世界中で500万人を超える注目の存在で、インフルエンサーとしてバーチャルとリアルをつなぐ重要な役割をしていると思います。その中でこのSNS時代のファンとの関わり方というものについて、どう捉えていますか?

APOKI:まだファンの方々と実際に対面したことがないので、インスタライブとかで皆さんと積極的にコミュニケーションを取っています。どうすれば親近感を持っていただきながらカッコよく見えるかを悩みながら接しています。皆さんから色々なコメントや意見をいただきいつも感謝してますし、それを活動の中で積極的に反映しようと思っています。

――やはりライブをやりたいということが大きな野望でもあり希望でしょうか?

APOKI:大きな目標としては、ライブで皆さんとコミュニケーションを取りながら楽しむことです。いつか必ず日本でライブを開催したいし、そのために今準備をしています。もう少し待っていてください。

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