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<コラム>ディズニー100周年を彩る珠玉のディズニー名曲をプレイバック、注目はジュリア・マイケルズの手掛ける『ウィッシュ』劇中歌「This Wish」

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Text: 村上ひさし

 “ディズニー100周年”の集大成となるドラマティック・ミュージカル『ウィッシュ』の公開が12月に決定した。ジュリア・マイケルズの手掛ける劇中歌「This Wish」がいち早く公表されて話題だが、改めて歴代ディズニーの長編アニメーションの代表曲と、その魅力を振り返ってみたい。


 ディズニーソングといえば、誰もがすぐに口ずさめて、ストーリーや情景ともピッタリで、登場人物の心情を見事に反映……。いろいろと思い当たる特長があるけれど、常にそれらに共通しているのが、夢が描かれ、願いが歌われている点だ。古くは1937年に公開された名作『白雪姫』(日本公開は1950年)から、最新作『ウィッシュ』まで。歴史に残るディズニーソングには、主人公の強い気持ちが込められ、作品のコアとなるテーマが描かれている。

 『白雪姫』には「ハイ・ホー」や「口笛吹いて働こう」、「ブラドル・アドル・アム・ダム」など、お馴染みのクラシックソングが多数登場するのだが、やはり最も印象的なのが、憧れの“あの人”への思いが歌われる「いつか王子様が」だろう。吹替えを務めたアドリアナ・カセロッティが美しく清楚に歌い上げている。『ダンボ』(1941年)や『バンビ』(1942年)など、初期ディズニー作品の多くを手掛けたフランク・チャーチルが作曲を担当。マイルス・デイヴィスやオスカー・ピーターソンらにも取り上げられ、次作『ピノキオ』(アメリカでの公開は1940年、日本は1952年)の「星に願いを」と共にジャズのスタンダート曲となっている。


 実写版でも人気の『シンデレラ』(2015年)だが、元祖アニメ版はといえば、ずっと遡って1950年に公開されている(日本では1952年)。「魔法のつえはどこかしら/ビビディ・バビディ・ブー」、「宮殿での舞踏会/これが恋かしら」など、誰もが聴き覚えのある曲が多数出てくるが、挿入歌となった「夢はひそかに」がなんといっても絶品だ。その名のごとく、ひと際ドリーミーに酔わせてくれる。実写版の日本語版では、吹替えを担当した高畑充希と城田優によって歌われた。


 1989年公開の『リトル・マーメイド』(日本では1991年)の頃になると、前述の2作に濃厚だったノスタルジックなムードは消えて、音作りはかなりモダンに進化。ディズニー音楽の巨匠と呼ばれるアラン・メンケンが作曲を、ハワード・アッシュマンが歌詞を担当し、「パート・オブ・ユア・ワールド」、「アンダー・ザ・シー」などの名曲を生み出した。このコンビは1991年公開の『美女と野獣』(日本では1992年)でも再びタッグ。耳にするだけでシーンが目に浮かぶロマンティックなナンバーで映像を盛り立てた。なかでもセリーヌ・ディオンとピーボ・ブライソンが歌った主題歌のポップバージョン「美女と野獣(デュエット・バージョン)」は大ヒット、<アカデミー賞歌曲賞>を受賞した。2017年の実写版では、ジョン・レジェンドとアリアナ・グランデが同曲のデュエットを担当した。



1992年公開の『アラジン』(日本では1993年)においても、アラン・メンケンが大いに腕を奮っている。全編を流れるムーディなアラビックサウンドが、夢の世界に誘ってくれる。歌詞を担当したハワード・アッシュマンが途中で他界。引き継ぐ形でティム・ライスが担当し、両者による楽曲が使われた。なかでもメンケン&ライスによる「ホール・ニュー・ワールド」は、吹替えにあたったブラッド・ケインとリア・サロンガが歌って大ヒット。更にピーボ・ブライソンとレジーナ・ベルによるバージョンも大ヒット。両バージョンが競う形で【アカデミー賞】や【グラミー賞】など多数の賞レースを席巻した。ウィル・スミス主演の2019年の実写版では、元ワン・ダイレクションのゼインとジャヴァイア・ワードが同曲のデュエットを披露した。


 2010年公開の『塔の上のラプンツェル』(日本では2011年)でも、アラン・メンケンが作曲を担当しているが、1960〜70年代のフォークロックや中世音楽の影響が伺える異色のサウンドが展開されている。当時ポップスターとしてアイドル人気も高かったマンディ・ムーアの歌った「自由への扉」、ムーアとザッカリー・リーヴァイが共演した「輝く未来」など、自由を夢見る主人公ラプンツェルの気持ちがストレートに歌われる。「輝く未来」は【グラミー賞】を受賞し、【アカデミー賞】や【ゴールデングローブ賞】など多数にノミネートされた。


 2013年公開の『アナと雪の女王』(日本では2014年)に関しては、後にも先にも「レット・イット・ゴー」のインパクトが強烈だ。「レリゴー」、「ありのままで」などの愛称でも親しまれ、世界中で大ヒット。吹替えを担当したイディナ・メンゼルによるバージョンに加えて、デミ・ロヴァート、日本語版の松たか子、May J.らによるバージョンも広く人気を博した。作詞・作曲を手掛けたクリステン・アンダーソン=ロペスとロバート・ロペスの夫婦は『くまのプーさん』や『リメンバー・ミー』、続編の『アナと雪の女王2』なども手掛けている。願いを込めて高らかに歌われる「レット・イット・ゴー」は、【アカデミー賞】の<歌曲賞>や【グラミー賞】など、さまざまな賞を受賞。アルバムは英米をはじめ、世界各国のチャートで首位を記録した。


 その後『アナと雪の女王』はミュージカルにもなり日本やブロードウェイで上演されたが、2016年公開の『モアナと伝説の海』(日本では2017年)では、ブロードウェイの人気ミュージカル『ハミルトン』の立役者リン=マニュエル・ミランダが音楽を担当したことでも話題を呼んだ。

 そして、もちろん12月公開のディズニー映画最新作『ウィッシュ』からも、数々の名曲が生まれそうだ。音楽を担当するジュリア・マイケルズは、シンガー・ソングライターとして自身も「イシューズ」などのヒットを放ち、【グラミー賞】候補に挙がってきたが、ジャスティン・ビーバーからエド・シーラン、セレーナ・ゴメスまで、多数のアーティストにヒット曲を提供している。いち早く公開された劇中歌「This Wish」も彼女による書き下ろしナンバーで、主人公アーシャの吹替えを務めるアリアナ・デボーズが、たっぷり“願い”を込めて歌い上げている。後日、公表されるであろう日本語版「This Wish」にも、当然ながら期待が募る。一方、スコアを中心に担当するデヴィッド・メッツガーは『アナと雪の女王』、『アナと雪の女王2』、『モアナと伝説の海』など、多数のディズニー作品のオーケストラを手掛けてきたベテラン作曲家。“ディズニー100年”の歴史の重みと現代性と、その集大成を、音楽からも感じさせられるはずだ。


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