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<わたしたちと音楽 Vol.27>原田知世 自分が良いと思うものを、誠実にしなやかに続ける大切さ

インタビューバナー

 米ビルボードが、2007年から主催する【ビルボード・ウィメン・イン・ミュージック(WIM)】。音楽業界に多大に貢献し、その活動を通じて女性たちをエンパワーメントしたアーティストを毎年<ウーマン・オブ・ザ・イヤー>として表彰してきた。Billboard JAPANでは、2022年より、独自の観点から“音楽業界における女性”をフィーチャーした企画を発足し、その一環として女性たちにフォーカスしたインタビュー連載『わたしたちと音楽』を展開している。

 今回ゲストに登場したのは、10月25日にラブソングカバーアルバム第4弾『恋愛小説4~音楽飛行』を発売する原田知世。1982年にデビューして以来、俳優や歌手として活躍してきた。透明感ある姿と歌声はデビュー当時から変わらないようにも見えるが、さまざまな経験を経て大人になった今だからこそ感じていることがある。自身の転換点となった経験や最近影響を受けている音楽まで、幅広く語ってくれた。(Interview & Text:Rio Hirai[SOW SWEET PUBLISHING]/ Photo: Yu Inohara)

カバーアルバム制作を通して、新しい表現と出会う喜び

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――『恋愛小説4~音楽飛行』の発売おめでとうございます。気に入っていらっしゃるのはどういったところでしょうか。

原田知世:オリジナルアルバムと違って、収録曲はもともと多くの人々に愛されているナンバーばかりです。そして、これまでにいろいろな方が歌っていらっしゃる。カバーするにあたっていろいろな方のバージョンを聴くと、ヒントがたくさん隠れています。「自分ではこういう歌い方は考えつかないな」という歌い方があって、さらに日本語では出せない英語独特のニュアンスもあって、すごく表現の勉強になります。そう言った発見があるのは、カバーアルバムならではの楽しみですね。


――今回は、世代を超えて愛されてきた1960年代から70年代の名曲を中心に選曲されていますね。

原田:皆さんの日常にそっと寄り添えるような音楽をお届けしたくて、プロデューサーの伊藤ゴローさんやスタッフと一緒に曲を出し合って、全体のバランスを鑑みて決めていきました。伊藤さんはいつも素敵な、遊び心のあるアレンジをしてくださるので、それも楽しみながら作っていきました。私自身が思い入れの深い曲も入っているんですよ。例えば、ニール・ヤングの「Only Love Can Break Your Heart」は、10歳年上の兄が長崎の実家でよく歌っていた曲。私と2歳年上の姉が遊んでいると、兄の部屋から覚えたてのギターを弾きながら一生懸命練習しているのが聞こえてきました。この曲を聴くと、姉と耳を澄ませて聴いていた温かい思い出が蘇ります。



▲「Here Comes The Sun」 / 原田知世

大人になったからこそ、こだわりすぎずにしなやかに

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――リスナーそれぞれ、さまざまな思い出を想起させそうな曲のラインナップですね。その当時、原田さんが夢見ていた大人の女性像はありますか。

原田:それが、あんまり覚えていないんですよね……今は、しっかりと軸を持っている女性は素敵だなと思います。軸があると、しなやかでいられるでしょう。そういう人に私自身もなりたいし、歌でもそういう表現ができるといいなと思っています。


――その理想像は、最近抱くようになったのですか?

原田:いえ、徐々に徐々に、私の中で育ってきたものだと思います。若い頃ってすごく生真面目で、頑なな部分もあったりするでしょう。まっすぐしか知らないというか……年齢を重ねていくうちに視野が広くなってくるし、自分の中に軸のようなものができてくる。そうすると、ポキっと折れないしなやかな強さが得られるのではないでしょうか。目に見える強さじゃない、柔らかな強さというか。そういうものを魅力的だと感じるようになりました。


――原田さん自身が、その理想に近づくために気を付けていらっしゃることはありますか。

原田:そうですね、何かにこだわりすぎたり物事を考えすぎないこと。こだわると視野が狭くなるし、可能性を自分で縮めてしまうこともあるかもしれない。人の言葉に耳を傾けて、「絶対こうだ」と頑なにならないようにしたいですね。目の前のことに誠実に向き合って、しっかりとエネルギーを注げれば、あとは「なんとかなるさ」ってふんわりしているくらいでいいんじゃないかなって思います。


良い音楽を信じて作り続けて、音楽業界の扉がやっと開いた

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――女性であることは、表現活動や人生に何か影響はありましたか。

原田:それが、あんまり思いつかないんですよね。幸い、私は女性だからどうということはなかったのだと思います。


――悪い影響はないに越したことはないですね。それでは性別関係なく、原田さん自身が困難や壁を感じたときにはどのようにして乗り越えてこられたのでしょうか。

原田:困難なこともあったのでしょうけど、越えられない困難はなかったと思っているんですよね。だからちょっとニュアンスは違いますが、印象的だった出来事はあって。私は10代のデビュー当時から、俳優と歌手の仕事を両方やらせてもらっていました。20代になって、鈴木慶一さんにプロデュースしていただくときに、それまでの自分のイメージは一旦端に置いて、音楽を一からやって改めてデビューをするくらいの気持ちで始めようと思いました。そうしてとても良い作品ができた。でも、当時のラジオ番組やテレビ番組はジャンルがきっちり分かれているところがあって、俳優もやっていることで出にくい番組もあったんです。まさか、これまで一生懸命やってきた俳優の仕事が壁になるとは思ってもみなかった。けれど、良いものを作っている自信はあったから、コツコツ続けていくしかないと思いました。そうしているうちに、スウェーデンのプロデューサー、トーレ・ヨハンソンさんとの出会いによって生まれた「ロマンス」という曲がいろいろな人に受け入れてもらえた。そこからは扉が開いたように、垣根なく扱ってもらえるようになり、音楽業界の人からも応援してもらえた感覚がありました。


――なかなか音楽業界の扉が開かないと感じていたときには、何を信じて続けてこられたのでしょうか。

原田:やっぱり、鈴木慶一さんとやっている音楽が良いものだと思っていたからですね。ヒットさせたい、というよりも、「良い音楽を作りたい」という純粋な気持ちで続けていた。途中で諦めずに続けたことに意味がありました。新しいファンの人々にも出会える喜びがあったし、歌手としてやっていく大きな転換点だったと思います。私はそうやって人との出会いによって人生が変わっていくのを20代のときに体験しました。どこでそういう出会いが待っているかわからないから、ちゃんと目を凝らして出会った人を大切にしていきたいですね。


最近はAwichとちゃんみなから勇気をもらっています

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――そうですね。その時々を大切にしたからこそ、転換点になったということですよね。今回のインタビューのきっかけとなったのは、ヒットチャート上にあるジェンダーギャップです。2022年のBillboard JAPANの年間チャート100位中、男性が58組、女性が27組、混合グループが15組という結果があります。この割合が例年続いているのですが、原田さん自身は「この人の曲を聴くと勇気が出るな」という女性アーティストはいらっしゃいますか。

原田:チャート上にジェンダーギャップがあることは知りませんでした。私は大学生の姪から新しい音楽を教えてもらうことが多いのですが、最近はAwichさんやちゃんみなさんの動画をよく一緒に観ています。初めて観たときには、ゾクゾクしました。大勢のお客さんを前に堂々とステージに現れて、エネルギーに溢れていて、のびのびと自由に見える。言葉もすごく正直で、強くて、まだ年齢も若いはずなのに、どれだけ深い、濃い人生を歩んできたんだろうって。


――原田さんからお二人の名前があがるのは新鮮ですね!新しいことを教えてくれる人が身近にいるのは心強いですね。

原田:テレビの音楽番組に出演して、「Bad Bitch 美学」を披露すると知ったときには、テレビの前で待機して観ました。大学生の姪を始め若い女性たちが、こうやって自分の気持ちを素直に言葉で表現するアーティストを見て育っているのは頼もしいですよね。

原田知世「恋愛小説4-音楽飛行」

恋愛小説4-音楽飛行

2023/10/25 RELEASE
UCCJ-2230 ¥ 3,300(税込)

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Disc01
  1. 01.ヒア・カムズ・ザ・サン
  2. 02.デイドリーム・ビリーバー
  3. 03.遙かなる影
  4. 04.オンリー・ラヴ・キャン・ブレイク・ユア・ハート
  5. 05.イン・マイ・ライフ
  6. 06.青春の光と影
  7. 07.ビー・マイ・ベイビー
  8. 08.マイ・シェリー・アモール
  9. 09.シーズ・オールウェイズ・ア・ウーマン

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