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<公演開催記念インタビュー>FIELD OF VIEW・小橋琢人、“あの頃の想い”をそのまま届けるために進化し続けるバンドのライブにかける情熱

インタビューバナー

 FIELD OF VIEWが、2023年10月1日に大阪、10月6日に横浜にて、初のビルボードライブ・ツアーを開催する。1995年にシングル「君がいたから」でデビュー、「突然」「DAN DAN 心魅かれてく」等、力強さと爽やかさを併せ持つ楽曲を大ヒットさせ、90年代にJ-POPの礎を築いてきた彼ら。2020年に再結成以来、浅岡雄也(Vo.)、小橋琢人(Dr.)の2人にサポートメンバーを加えた編成で活動を行っており、2022年には20年振りのニューシングル「きっと」を発売するなど、28年目の今もなお音楽への情熱を燃やしている。今回ドラムの小橋琢人に、様々なエピソードと共にライブへ向けての意気込みを語ってもらった。FIELD OF VIEWとしての音楽作りへのこだわり、ミュージシャンとしての姿勢、リスナーへの想いを知ることで、今回のライブをより味わい深く楽しめるはずだ。(Interview: 岡本貴之 / Photo: Yuma Totsuka)

あのとき大事にしていたものを届けるために、逆に進化し続けないといけない

――ビルボードライブに向けた小橋さんと浅岡さんそれぞれのメッセージ動画を拝見したところ、すごく対照的なお2人のコメントでしたけども、とても楽しいライブが想像できました。

小橋琢人:ははははは(笑)。彼がああいうキャラクターで自由に振る舞えるタイプなので、僕が締める役割をできればなと思ってやってます。

――そうしたお2人の関係は、デビュー以来あまり変わらないですか?

小橋:変わらないですね。浅岡とはFIELD OF VIEWとして1995年にデビューする前、viewというバンド名で1994年にデビューする前から会っていたので、もうかれこれ30何年の付き合いになるんですけど、その間全然変わらないです。FIELD OF VIEWをやめていた時期でも、彼のソロのライブにたまに顔を出して一緒にやったりというのもあったので、昔から本当に友だちそのまんまです。

――2020年に新宿ReNYで行われた再結成ライブのダイジェスト映像を観ると、浅岡さんの熱唱をガッチリ支えてFIELD OF VIEWの世界観を作っている要が、小橋さんのタイトで重厚感のあるドラムだと感じました。FIELD OF VIEWの楽曲は爽やかな印象がありますけど、ライブはかなり熱いロックテイストもあるんですね。

小橋:基本的には爽やかというか、誰が聴いても気持ちが良くなる、空気感が綺麗になるようなサウンドを目指して作っているんですけれども、それだけでは奥行きがなくなるので、それをちゃんと届けるためには反対に、僕たちが元々持っているロックテイストをしっかり後ろから出すことによって、相乗効果になるんじゃないかなと思っているんです。ライブではシングルだけを届けているのとは違ってそういう部分もちゃんと出るので、ライブに来られた方は「こういう一面もあるんだ!?」と感じることもあると思います。



FIELD OF VIEW 25th Anniversary Special live ダイジェスト映像(For J-LOD LIVE)

――小橋さんがドラムを始めた頃は、ロック系の演奏から始まったんですか?

小橋:いや、じつは僕はジャズ系出身で、デビュー前はスタジオミュージシャンをやっていたんです。それもあってジャズ、ファンク、ロックを取り入れた音楽性があるのかなと思います。FIELD OF VIEW自体が、昔からみんな仲間だったってわけではなく、所属事務所と関係のある人たちに声を掛けて集まったバンドということもあって、「FIELD OF VIEWとして音を出すにはどうしたら良いか」ということはずっとブレずに、25周年を迎えられたんじゃないかと思っています。

――それぞれのルーツ、音楽志向を織り交ぜながらFIELD OF VIEWの音楽に昇華してきた感じですか。

小橋:みんなの最小公倍数みたいなところをそれぞれFIELD OF VIEWの音として作っていこうと思っていたんです。その一番最初の軸になったのが、ブリティッシュ・サウンドでした。そのあたりはメンバーみんなが持っていた部分ではあるので、そこに対して音を作っていこうというのは全員一致していましたね。

――当時影響を受けたバンドやアーティストの名前を挙げるとすると?

小橋:Blur 、U2、Travisとかをよく聴いていました。

――浅岡さんはどんな音楽志向だったのでしょうか。

小橋:浅岡は、元々YMOとかを聴いていてテクノが好きなんですよ。彼は機材オタクなところがあって、初めて家に遊びに行ったときもいきなりサンプラーを見させられて、もう機材の話ばっかりでしたから(笑)。ビジュアル系のロックバンドのボーカルとしても活動していたんですけど、本当のところは多分機械の方をやりたいんですよね。未だに、機材のつまみをいじったりしていると目が爛々としてますから。


――なるほど、それもあってテクノスタイルでの活動(別名義「uyax」)も行っていたんですね。

小橋:そうなんです。デビュー当時のメンバーはベースがボサノヴァっぽい音楽の傾向が強かったし、ギターはThe Beatlesが大好きで。そういう人間が集まって、自分たちの中にある引き出しにはこれがあるよっていうところで一致したのがブリティッシュ・サウンドでした。

――異なる音楽性のミュージシャンが集まって、ポップで爽やかに聴こえる曲としてアウトプットするというのが面白いですね。

小橋:そこはすごく意識していました。マニアックに自分たちの思いだけで作ってしまうと絶対届かないっていうのはわかっていたので。いかに咀嚼して届きやすいように、聴いていただいたときにパッと感じられるようにするためには、どういう言葉を使った方がいいのか、どういうコード進行を使った方がいいのか。それをすごくみんなで精査して、1人でも「違う、これじゃない」って言ったら却下して、全員が納得するまで作っていました。

――デビューした頃から考えると、音楽を取り巻く環境はリスナーも制作側も大きく変化していますよね。FIELD OF VIEWはまさにCD全盛期を体感しているバンドだと思うんですけど、そうした変化について小橋さんはどのように感じていますか。

小橋:個人としてはちょっと違うんですけど、FIELD OF VIEWとしては、サブスクに合わせて自分たちを全部変化させようとか、届け方をどんどん変えていこうとか、そういうことは逆にしない方がいいなと思っているんです。それは今、すごいアーティストがいっぱい出ていて、もう聴くだけでワクワクしちゃうし、嬉しいなって思うんですけど、それは他の人たちがやってくれているので、僕たちがやることはちょっと違うなとずっと思っていて。僕たちが出すやり方だからこそ意味があることにしっかり足をつけて、フラフラするようなバンドにはなりたくないというのがあります。僕は最近、諸先輩方のライブによく行くようにしていて、安全地帯や玉置浩二さんのソロとか、小田和正さん、MISIAさん、ユーミンさん(松任谷由実)、桑田(佳祐)さん、ついこの間はドリカム(DREAMS COME TRUE)のライブも久々に行ったんです。あれだけ長いことやってる方たちの音の出し方とスタンスって、守らなきゃいけないものだし、一番見習いたいと思っているんですよ。なので今は、新しいサウンドに傾倒してしまうとか、ブレないようにするために必死というか。今僕がすごく刺さっているのが、「動的平衡」という言葉なんですよ。


――どんな意味のある言葉なのでしょうか。

小橋:青山学院大学の生物学の教授が作った生物学を説明するための言葉で、解釈すると、生物というのは分子が何年かしたら全部入れ替わる、つまり物体としては全く新しいものに変化してるけれども、パーソナルはそのままで、それを保つために全てを変化させている。ということらしいんですけど、まさにそれだなと思っていて。もう僕たちには経験からくる色んなものがついてるし、手に入れてしまってる部分もあるので、20何年前にやったレコーディングそのままの音を出すのではなくて、アウトプットするときに進化した自分たちじゃないと、あのとき作った音をまた届けることができないなと思っているんです。だから全く違うものを届けたいと思ってるわけではなく、あのとき大事にしていたものを届けるために、逆に進化し続けないといけないんだな、というスタンスではありますね。

――それこそドラムのサウンドは、ゲート・リバーブがかかったスネアの音で80~90年代の音楽だとわかったり、時代と共に変化していますよね。小橋さんはドラマーとしてどのようにそうした変化に対応してきたのでしょう。

小橋:あの時代はそれがすごくナチュラルに聞こえた音だと思うんですけど、当時のゲート・リバーブとかの音を今やっちゃうと、あの頃に受け取ってくれた人の印象と変わっちゃうん思っているんです。あのときだからこそフィットした音を今伝えるためにはどう変えたら良いのか、今の時代に合ったナチュラルな音はどれなんだろうっていうことを取り入れて音を出すことによって、当時の思いを崩さないようにしたいなと思ってます。そういった意味では、もうあのゲート・リバーブは今使ってないですね。スネアも変わっていますし、全部変わってます。

――そうした姿勢は、ライブをご覧になった他のアーティストさんからの刺激もあるわけですね。

小橋:単に観客として観させていただいたんですけど、感動したんですよね。ドリカムさんにしてもユーミンさんにしても小田さんにしても。とくにMISIAさんがすごかったんですけど、デビュー当時以上のパワーで全部歌い切って、最後までファルセットをガンガン入れても、音は1つも崩れないんですよ。ただ、あれはその当時のままをやってるから感動したんではないと思うんです。よっぽど鍛錬を積まれてきて、切磋琢磨した上でステージに立っていてくれるからこそ、「あのときのあの歌だ」って感じられるんだろうなって。本当に毎日毎日、音に対して真摯に向かっていないと、こうはなれないということを目の当たりにした感じがしました。


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毎朝起きるたびに音のことを考えてワクワクしている

――小橋さんも浅岡さんもとても良いコンディションで音楽をやっていらっしゃるように見えますが、どのようにご自分を音楽に向かわせているのか、教えていただけますか。

小橋:僕も浅岡も、毎朝起きるたびに音のことを考えてワクワクしているんですよね。未だにドラムの機材を見るだけでワクワクしますし、「これをこういう風に変えたらどうなのかな」とか、他のアーティストの映像を観て「えっ、これ何使ってんの!?」とか考えるだけで楽しいんです。自分でも続けてこられたのはちょっと不思議ですけど、もうそれに尽きるんですよね。いまだにドラムにワクワクできるっていうのは、ありがたいなと思ってます。

――ファン、リスナーの方々の存在も大きいですか。

小橋:聴いていただいている方がいまだにいらっしゃるというのが、一番大きいです。解散した後もずっとメールをいただいたり、別のライブをやれば来ていただいて、いろんな話をしてくれたり。こういうときにCDを聴いてますよ、とか、こういうふうに思いましたよ、ってずっと言ってくださっていた方が多数いらっしゃったので、何かの形でもう一度お礼をしたいなとずっと思っていました。25周年っていうきっかけがあって、「じゃあもう1回やってみようか」っていう気持ちになったのも、そうした方々がいてくれたからです。その方たちに何か答えなきゃなっていう使命感はあるので、FIELD OF VIEWに関しては自分の趣味とかやりたい音楽だけっていうことではなく、求めてくださる方の想いに応えたいという思いがあります。それは浅岡も同じです。

――これまでの活動で特に思い入れのある楽曲や、制作エピソードについても教えていただけますか。

小橋:もちろんいっぱいあるんですけど、僕たちの最初の音楽的ルーツがブリティッシュ・サウンドということもあって、ロンドンに行く機会を与えていただいたときがあったんです。現地のライブハウスでライブをやらせてもらったり、アビー・ロード・スタジオでミックスもさせてもらったり、もうミュージシャンとしては感無量でした。そのときのアルバム制作はすごく忙しくて、日本ではいくつかのスタジオで同時にレコーディングしていたんです。浅岡が歌入れして、僕が別のところで別の曲をレコーディングしていて、コーラスを入れに行ったら今度は浅岡がこっちに来てみたいな(笑)。何回も録り直したりして夜中の26時とかまでやってましたから。そういう曲についての思い出は、レコーディング風景とかがバーッと走馬灯のように浮かびますね。その曲を持って、ロンドンに行ってミックスしてもらったんですけど、そのときに作った曲は今回ライブでも演奏する予定です。


――今回、FIELD OF VIEWはビルボードライブ初出演ということですが、今現在どんなことを準備していますか?

小橋:別のアーティストのサポートミュージシャンとして、大阪ではやらせてもらったことが何回かあるんですけど、FIELD OF VIEWとしては初めて出演させていただくので、僕たちもすごく楽しみです。せっかくならビルボードライブならではのライブになるように、「気負っちゃってるかな、大丈夫かな」と思いながら、セットリストを考えているところです(笑)。ライブハウスならではの雰囲気と、ゴージャス感もある会場なので、ハードな感じと全く正反対のちょっとアコースティックな感じを1つのステージで見せられる、メリハリをつけたライブ展開にできたらなと思っています。ステージと客席の距離が近くてお客さんの反応がダイレクトに届くので、音で会話できるようなライブにしたいです。

――大阪、横浜それぞれ2ステージずつありますけど、ステージごとにセットリストが変わったりすることもありそうですか?

小橋:それも考えています。お客さんの中には全部通して見るって強者も多々いらっしゃると思うので、そこはサービス精神を以って「これも聴いて行って!」という気持ちです。

――長年のファンにとっては意外な曲もありそうですね。

小橋:たぶん、そうなると思います。意外と思ってくれるかどうかは別として(笑)。とはいえ、「突然」はやります。せっかく来ていただいて代表曲が聴けなかったら残念だと思うので。

――「突然」は代表曲であり大ヒット曲ですが、FIELD OF VIEWにとってはどんな曲ですか?

小橋:当時のメンバー、スタッフさんも含めて、「これがFIELD OF VIEWだよね」って全員の意見が一致してできたのが「突然」なんです。それこそちょっとブリティッシュな空気感と、ケルトの感じ、民族的な音の流れとかコード進行も含めて、“ザ・FIELD OF VIEW”と言っても過言じゃない曲です。

――「DAN DAN 心魅かれてく」も、長年愛されている曲ですね。

小橋:これはちょっと意外だったんです。こんなに聴いていただけるとは思ってなかったというか。

――そうなんですか!?

小橋:TVアニメ『ドラゴンボールGT』のタイアップ(オープニングテーマ曲)ということもあって、どちらかというと小さいお子さんが観ていたアニメだったので、正直なところそこまで話題になる感じを当時もあんまり受けてなかったんですよ。それこそ「突然」は大塚製薬さんのタイアップ(「ポカリスエット」CMソング)をいただいたので、テレビをつければ流れていてくれたり、どこかに行けば聴こえてくるっていうことを体感できたっていうのもあるんでしょうね。それに、「DAN DAN 心魅かれてく」は自分たちの中ではすごくロックだったので、「これが受け入れられるのかな?」って思っていたんです。アニメのタイアップをいただいたので、ちゃんとオブラートに包んで良い形にはなってよかったなと思ったんですけど、「突然」のように色んな人に受け入れてもらえるとは、メンバー全員思ってなかったですね。

――それは意外でした。今では誰もが知っている有名曲ですから。

小橋:確かに、「DAN DAN 心魅かれてく」の方が知っている人が多いですね。特に海外の方に支持していただいているみたいで、僕はハワイに住んでた時期があるんですけど、ハワイの人たちも「この曲知ってるよ」とか、「おまえ、この曲をやってるアーティストなの!?」なんてびっくりされたりしたことがあります(笑)。そういう曲になるとは、当時はちょっと想像してなかったですね。

――「DAN DAN 心魅かれてく」は、サビに行く前の切ないメロディとそこから開けてくるカタルシスが最高に気持ち良いです。

小橋:その辺はやっぱり、織田(哲郎)さんのすごさですよね。「突然」もそうでしたけど、初めて聴かせていただいたときから「すげえな」と思いましたし、「今出させてもらうんだったら、俺たちの曲よりこっちのが絶対いいよね」っていう感じでした。


――どちらも作詞がZARDの坂井泉水さん、作曲が織田哲郎さんのコンビによる楽曲ですが、その頃はみなさんクリエイティブへのテンションがものすごく高かったんだなって、お話を伺っていて思いました。

小橋:そうですよね。だからそういう方々の力を借りることができたっていうのがすごくありがたいし、デビュー曲「君がいたから」もそうですけど、織田さん、坂井さんだけじゃなくて、コーラスで大黒摩季さんが入ってくれたり、いろんな方が一緒になって作ってくれて、僕らはもちろん、スタッフの方も含めて現場は「行くぞ!」っていう本当に熱い空気感がありました。その分、厳しかったですけどね。ちょっと違和感があるとやり直しという事も多かったし、テイク40とか当たり前でしたから、歌録りなんか相当大変だったんだろうなと思います。本当に、いつ終わるんだろうって思ってました。というか、「これじゃ駄目だろうな」っていうのがわかるんですよね。聴いてもらって、「やっぱり違う」って言われて、「何が違うんだろう」ってスタジオでもう1回やり直して、ミックスになれば「ちょっとここは定位が違うかもね」みたいなことを色々とやったり、もう本当に何10テイクもやってましたね。

――そうした努力を経て生まれた楽曲を、FIELD OF VIEWの中に坂井さんが残した作品として大事に思っているリスナーさんも多いのではないでしょうか。

小橋:本当にその通りだと思います。だからそれを裏切れないというか。坂井さんの想い、織田さんの気持ちも含めて、それを裏切るわけには絶対いかないので。その当時をそのまま伝えられるようにするために、僕たちが進化していかなきゃいけないなっていう感じがすごくありますね。だから変にアレンジもしたくないんです。テンポやキー、コード進行も変えたりはせずに、本当になるべく当時のまんま届けられるようにしたいなと思ってます。

――では、今回のライブに向けて改めてひと言お願いします。

小橋:今日は浅岡不在で申し訳ないですけども、浅岡の思いも僕の思いも同じで、今回のビルボードライブでの公演は「これがFIELD OF VIEWなんだ」っていう音を体感していただける場所だと思っていますし、こんなに良いチャンスを与えていただいてありがたいなという気持ちでワクワクしています。みなさんと近い距離で音で会話できるようなライブを一緒に作れたらいいなと思っていますので、是非、みなさんいらしてください。




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