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<インタビュー>初のビルボードライブ公演控えるMONO NO AWARE、4thアルバム以降の変化を語る「きっと以前より自由になりました」

インタビューバナー

 東京を拠点に活動する4人組バンド、MONO NO AWAREが初のビルボードライブ公演を開催する。

 2013年、八丈島出身の玉置周啓(Vo/Gt)と加藤成順(Gt)を中心に結成。二人が大学で出会った竹田綾子(Ba)、柳澤豊(Dr)が加わり、現在のメンバー体制となったのが2015年のこと。その翌年、2016年には【FUJI ROCK FESTIVAL】の新人ステージ<ROOKIE A GO-GO>に出演を果たし、2017年3月にリリースした1stアルバム『人生、山おり谷おり』は各所から高い評価を得た。今年5月に発表した「およげ!たいやきくん」のカバーも話題となり、最新の東名阪ツアーも全公演ソールドアウトするなど、気鋭のロックバンドとしてシーンの最前線を走り続けている。

 そんな彼らの最新音楽モードや来るビルボードライブ公演に向けた意気込みなど、メンバーの玉置、加藤、柳澤、そして現在活動休止中の竹田に変わってサポート参加している清水直哉を加えた4人に話を聞いた。 (Interview & Text:Takuto Ueda / Photo:Shintaro Oki(fort))

今は良い音源を作ることが最大の目標

――2013年に結成したMONO NO AWARE。今年10周年ですね。

玉置:ああ、そうですね。


――そこまで意識していない?

玉置:そうなんですよ。5周年のときに何もしなかったので、だったら10周年で何かをする理由はないかなって(笑)。


――ははは。とはいえ長い年月です。皆さんにとってどんな10年間でしたか?

加藤:最初の3~4年ぐらいは「いろんな人に聴いてもらいたい」「ライブハウスに出たい」ってとにかく必死だったので、どんどん時が過ぎていく感じでした。

――必死に走り続けてきた?

玉置:大まかに言えばそんな感じ。細かいことを言えば、やっぱりコロナ禍は独特なストレスがありました。だから10年って感じがしないのかも。まだ7年ぐらいの気持ちだから。


――空白の3年間になってしまった。

玉置:そうですね。あの状況下でやれることをみんなで考えて、それなりに達成感を得られたイベントもあったけど、今までとノウハウが違いすぎて、積み重ねたというよりまったく違う経験をしてきた3年間という感じがしていて。


――コロナ禍の3年間を経て、それ以前のMONO NO AWAREから変わった部分はありますか?

加藤:考えることが多くなった気はします。前は思いつきでどんどん「行っちゃえ行っちゃえ」みたいな感じでしたけど。

柳澤:制限が増えた感じ。特に僕らは変なことを思いつくから。昔はイベントにお客さんを呼んで、一緒に千羽鶴を作ったりしたけど、今はそういう触れ合いもしづらくなった。ただ、本質的に「MONO NO AWAREがやりたいこと」はそこまで変わっていないというか。それを世の中にアプローチするときに制限が増えたなっ感じですかね。


――その「MONO NO AWAREがやりたいこと」を具体的に言語化することはできますか?

玉置:今は良い音源を作ることが最大の目標です。それこそ目まぐるしく活動してきたけど、一昨年リリースした4thアルバム『行列のできる方舟』はそれまで以上にじっくり時間をかけて作ったアルバムで、評判も良かった。なので、そういう作り方をもっとしたいです。それは曲作りにおいてだけではなく、機材とか収録環境も僕自身は今まであまり考えずにきたので、今後はそういうことにも興味を持ちながら音源を作りたいです。


――前作『行列のできる方舟』では、制作のプロセスにも変化があったとか。それまでは玉置さんがイニシアティブを持っていたけど、同作からはメンバー全員がデモ段階からコミットしていた。

玉置:視野が広がったり知識が増えてくると、自分一人で作る音源とか、そういう制作スタイル自体に飽きてくるというか、もっと誰かを頼ったほうが面白いものになるんじゃないかという気分になってきて。それでメンバーに相談……というか泣きつく機会も増えてきたんです。「これ、どうしよう」みたいな。最近のシングルもそんな感じで、4thアルバムの延長線になっている感じですね。

――何かしら外的な要因もあったのでしょうか?

玉置:コロナ禍は自分の考えや好きなことを掘って煮詰めていくより、「どうしたもんかな」ってある意味で呑気な不安みたいなものに時間を費やしてしまったので、僕が一人で内面的な表現をしようすると、この世に生んではいけないものができるんじゃないかと思ったんです。暗すぎるというか。だったら最悪、自分は歌詞とメロディーだけでいいなって。


――加藤さんと柳澤さんは、そういった変化とどんなふうに向き合いましたか?

加藤:まず頼ってもらえることがうれしかったです。昔は周啓の世界観から始まり、その中でどうするか、どう良くするかだった。もちろん今もその世界観はちゃんとあるけど、頼ってくれることで別の解釈ができるというか。それが面白かったですね。実際、サウンドもちょっと変わったし。

柳澤:自分は最初の頃、決まったものに対して「ライブでは違うことをするんだ」って感じだったので。

玉置:俺も成順も振り返っちゃうんです。「今の何!?」みたいな(笑)。

柳澤:でも、今はクリエイターとして同じ目線というか。責任を負う部分も増えて、自分も批評家みたいにアイデアを出すのではなく、MONO NO AWAREというフィルターを通してどう鳴らすか、みたいなことを考えるようになりました。もともと自分が何をすれば面白くなるかは考えていたけど、その先まで考えてアイデアを出すようになりましたね。


――そういった変化はライブにも影響しましたか?

玉置:ありますね。きっと以前より自由になりました。昔のライブは音源の発表会に近かったですね。だから、違うフレーズが聞こえると振り向いちゃうんです(笑)。最近はライブ全体の流れやダイナミクスを感じながらやれるようになって、なおかつ、いつもと違うことをやれたときが快感に変わるような感じになってきましたね。にやっとしちゃう瞬間というか。





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MONO NO AWAREの音楽ルーツ

――現在、ベースの竹田さんが活動休止中。そのサポートとして清水さんが加わっているかたちです。MONO NO AWAREと清水さんの馴れ初めについて教えてください。

柳澤:下北沢のBASEMENTBARで夜な夜なセッション会みたいなことをやってるんですけど、面白そうだなと思って行ったら彼もいたんです。ベースだけでなく鍵盤も弾けるし、竹田が休むことになったときに「こいつだ」と思ったんですよね。


――清水さんがMONO NO AWAREを知ったきっかけは?

清水:当時、大学の同期がやっていたLaura day romanceでベースを弾いていたんですけど、そこでローディーをやっていた人が後輩で、MONO NO AWAREをバンドでカバーしていたんです。それで「へぇ、最近はこういうバンドがいるんだ」って。

――MONO NO AWAREの皆さんは清水さんを迎えるにあたり、何かプレイ面でリクエストを出したりしたのでしょうか?

玉置:竹田のプレイスタイルに寄せなくて大丈夫とだけ。上手いので。それで違うグルーヴ感になってもそれはそれでかっこいい、ということが2回目ぐらいのライブで確信できたので、それ以上は特に言うこともなかったですね。


――そういう変化を肯定的に捉えることも、先ほどの「ライブが発表会ではなくなった」という話につながりそうです。

玉置:そうですね。スコアは一応渡してはいたけど、そのとおりに弾かない部分も「そう動くパターンもあるのか」みたいな感じで。さっきも言ったように、にやっとなるというか、スパイスというか。ライブしていて「おぉ」ってなる楽しさがありますね。

――ベーシストとして清水さんの個性や魅力はどんなところにあると思いますか?

加藤:繊細だと思いました。もともとクラシックをやっていたんだよね。でも、聴いていくうちに重さ、それも後ろからぐいっとくるような粘りがあるなと思ったんです。それがいいなって。癖がちゃんとある。逆に引っ張られちゃうこともあるけど、それも僕は楽しいです。

玉置:たしかにそれは面白いね。一緒に2~3か月やって、この4人の状態が成長しているような空気を感じていて。サポートって一度入ったら同じ状態がずっと続いていくイメージがあったけど、実りがあるのですごく助かってます。バンドの時間が止まらずちゃんと進んでいるというか。

柳澤:自分がけっこう突っ走りがちなので、もっと前に行きたいときに来てくれなくて「ワー!」って思ったりすることもあるけど、トータルで聴いてみるとそっちのほうが良かったりもするから俯瞰して見れるんですよね。

玉置:そうやって我は持ってるのに普段はずっと恐縮してる。

清水:(笑)


――清水さんはサポート参加が決まったとき、バンドに対してどんなかたちで貢献したいと考えましたか?

清水:この2~3か月は勉強させてもらってる気持ちが強いです。最初はとにかく早く曲を覚えなきゃいけなかったし。その中で新しい価値観を見つけていく。そういうテンションですね。いろんな発見があります。

――この数か月、MONO NO AWAREの音楽をインプットし続けてきた清水さんですが、その魅力はどんなところにあると感じましたか?

清水:歌詞で伝えてることが個人的にはちょうどいいというか、絶妙にマジレスされる感じがあって。それが好きなんですよ。ざっくり言うと、リアルだなって思う。


――サウンド面については?

清水:最近、やっと「あ、こういうところにルーツがあったんだ」みたいなことを話せるようになってきて。最初はとりあえず鳴っている音を把握するしかなくて、バックグラウンドにまで気を回す余裕がなかったんです。


――MONO NO AWAREって、各メンバーの音楽ルーツがけっこうばらばらですよね?

玉置:そうなんですよ。もうめちゃくちゃで。


――何か共通項になるようなアーティストもいたりするのでしょうか?

玉置:うーん、フランツ・フェルディナンド?

加藤:みんなバンドは好きだよね。肉体的な音楽というか。

玉置:10年前の結成当時、みんなが聴いていたのはフランツだよね。そこから違う趣味に別れていった。最近は自分の範囲外の音楽をみんなに教えてもらって、プレイリストに入れて聴いてます。

加藤:よく聞くもんね。「何聴いてる?」って。

玉置:みんなちょっとシャイなので、聞かないと教えてくれないんです。

――その後、それぞれどんなふうに音楽性が広がっていったのでしょう?

玉置:僕はロックバンドを聴くことが多かったですね。ザ・ストロークス、アークティック・モンキーズ。あと、レディオヘッドはメンバーのソロも含めて、数年に一度はアルバムが出るじゃないですか。そのたびにテンションが上りますね。二十歳ぐらいの頃に聴いていた音楽にいまだ熱中している感じです。

加藤:僕もコロナ禍でレディオヘッドの「Optimistic」を聴いてすごく感動したんです。いろいろ聴くけど、やっぱりバンドが好きなんだなって。あと、8月にbetcover!!と対バンしたんですけど、その場その場で音を作り上げている感じがすごく良くて泣きそうになっちゃった。ただ、打ち込みのクラブ・ミュージックにも純粋に踊れる楽しさがあって、そっちはそっちで並行して好きになっていきましたね。

柳澤:自分はもうフランク・オーシャンしか聴いてないです。


――ははは。一途?

柳澤:基本的に内気なので『Blond』みたいな暗い音楽が好きで。そういうのばかり聴いてます。あとは、ソフィーとか<PC Music>周りのアーティスト。クラブ・ミュージック界隈のドラムをどうやったらバンドで面白くやれるか、みたいなことを一時期考えていて。グラデーション的に変わっていく音色とか。もちろんバンドも好きなんだけど、そっちは音源で聴くよりライブを見たり、自分で演奏したりするのが好きなんですよね。

――清水さんの音楽ルーツはどんなところにあるんですか?

清水:小さい頃はクラシックをよく聴いてました。豊さんと似ていて、僕もベースを弾きたいからバンドをやっているという感じで。でも、ライブハウスでスタッフをやり始めてからは、周りの音楽を聴くようになったり、いろんなバンドと出会う機会も増えました。ノンブラリとかすごく好きです。


初のビルボードライブ公演の向けて

――10月のビルボードライブ公演について。この取材も会場のビルボードライブ東京で行っているわけですが、場の雰囲気はいかがでしょう?

玉置:テンションが上がりました。天井高いし。


――東京は3階層吹き抜けになってます。

玉置:学生のとき、INO hidefumiさんの公演を見に来たことがあるんですよ。なので、ああいうミュージシャンの方が出る会場というイメージがあって。でも、今日来てみたら燃えたというか、いい日にできそうだなって思いました。


――内容については?

玉置:普段のライブとはセットを変えようと思ってます。今はまだ模索中ですけど。でも、MONO NO AWAREのバンドとしての良さもちゃんと残るステージにしたい。


――柳澤さんもお客さんとしていらっしゃったことがあるとか。

柳澤:そうですね。1パイントぐらいのビールを飲んで、べろべろになりながら踊ってました。なので、あまり記憶が残ってないです(笑)。初めて見たのはクリス・デイヴで、終わったあとにアンケートを書いたんですけど、それでザ・ニュー・マスターサウンズの公演招待に当たったんですよ。


――おお、強運!

柳澤:そのザ・ニュー・マスターサウンズを見たとき、お客さんがみんな立ち上がって、ライブハウスみたいに好きに踊っていて。場所が東京の一等地だし、最初は格式高いイメージがあったので、いろんな楽しみ方があるんだなって新鮮でした。別に座って見るだけじゃない。カジュアル席の近くにはバーカウンターもあるし、意外と好きなように楽しめる空間なんだなって思いましたね。

加藤:やっぱり音のことをめちゃくちゃ考えますね。ライブハウスはがっつりスピーカーで大きい音を出して、「自分たちはこういうバンドだ」みたいな世界観を打ち出すイメージがある。でも、こういう会場はお客さん込みで空気感を作れる場所だと思っていて。楽器の生の音も聴こえるだろうし、そういう意味でも一体化した空間になるよう、音も工夫したいなと考えてますね。下手に寄せすぎないようにはしつつ、ちゃんと自分たちにフィットするやり方もあると思うので、それを探すのが楽しみです。

柳澤:あと、ビールがマジでうまい。泡もきめ細かくて。MONO NO AWAREを見に来るお客さんの中には、たぶんビルボードライブが初めての人も多いと思うけど、僕自身も好きで来ていた場所なので、そういう人が今回をきっかけに好きになってくれたらいいなと思います。

玉置:まず僕らがテンション上がってるので。なかなかない機会だと思うんですよ。「おお、喜んでるな」というのが伝わるステージになると思うので、お客さんも同じ気持ちで楽しんでいただけたらいいですね。




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