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Billboard International Power Playersインタビュー vol.6  黒岩克巳 エイベックス株式会社 代表取締役社長CEO

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 米Billboard誌が、アメリカ以外の国で音楽ビジネスの成功を牽引しているリーダーを称える【Billboard International Power Players】。各国から音楽業界を牽引するリーダーが選ばれた中、エイベックスCEOの黒岩克巳氏が、初めて選出された。今回、本選出を記念し黒岩氏へインタビュー。グローバルヒットに向けたチャレンジや、女性アーティストの可能性について、話を聞いた。(Interview: 礒崎 誠二/高嶋 直子 l Text: 高嶋 直子 l Photo: 筒浦奨太)

様々なアーティストが挑戦することで、マーケットを作っていけるのでは

――XGのデビューやMediabase Top 40 Radio Airplayに日本の女性アーティストとして初めてチャートインしたこと等が評価されて、2023年の【Billboard International Power Players】に選出されました。まず、XGのデビューに向けてチャレンジされたことについてお伺いできますでしょうか。

黒岩克巳:XGをはじめとするグローバルアーティストプロジェクトであるXGALXを立ち上げたのは、今から6年前の2017年です。当時は、世界の音楽シーンにおいて、K-POPの存在が注目されはじめていました。もちろん、それまでにもK-POPは一定のファンを獲得していましたが、BTSをきっかけに圧倒的な存在感を示しはじめた頃でした。我々エイベックスは、古くからBoAをはじめとし、東方神起やBIGBANGなど、様々なK-POPアーティストとご一緒しています。2001年頃からS.M.entertainmentさんとパートナーシップを組んだり、YG Entertainmentさんとレーベルを設立してきた中で、強く感じていたのは日本国内のマーケット、ひいては世界のマーケットを非常に良く見ているという姿勢です。そういった経験や強みを活かし、グローバルヒットを生むことを目的にXGALXプロジェクトを立ち上げました。当初は2020年にデビューを目指していたんですが、コロナ禍の影響で大きな動きができなくなり、2022年デビューとなりました。その間に、さらにナレッジを貯めることができたので、結果的には良かったと思います。

――XGは韓国を拠点に活動していますが、メンバー全員が日本人です。K-POPとの違いは、なんでしょうか。

黒岩:K-POPとの違いに限ったことではありませんが、オリジナリティや新鮮さですね。韓国、日本、アメリカそれぞれの良いところを採り入れつつ、世界のパートナーと共に作り上げてきました。そして、彼女達のポテンシャル、プロデューシング、映像やファッションなどが総合的に積み重なって、今のXGが生まれました。XGはJ-POPでもなく、K-POPでもなく、X-POPという新しいジャンルを作っていきたいと思っています。

 歌詞の言語については、チーム内で様々な意見があって。日本人だから、日本語で歌うべきではという意見もありましたが、韓国も含めて世界のマーケットに売り出していくには、英語が一番適しているのではという意見にまとまりました。メンバー全員がネイティブではありませんので、育成当初から発音については非常に意識してトレーニングしています。

――日本とアメリカのヒットチャートを比べると、日本は主旋律の良さで支持されている楽曲が多いことに対し、アメリカやK-POPはリズムが印象的な楽曲が支持されているように感じます。そのあたりの違いは意識されていますか。

黒岩:そうですね。我々のDNAにはダンスミュージックが流れているということもありますが、彼女達の個性を活かし、“XGのリズム”というものを生んでいきたいと思っています。

――XGの今後の展開についてお伺いできますでしょうか。

黒岩:我々はグローバルでヒットするアーティストを生み出した経験はありませんし、ノウハウもありません。ですのでマーケティング専門の会社やDSP(音楽配信プラットフォーム)の皆さんと、様々な意見交換をしながらここまでやってきました。おかげで非常にオーガニックな広がり方ができていますし、これまでに得たナレッジは非常に貴重なものだと思っています。

 野球やサッカーなどスポーツの世界において、日本人選手の存在感は非常に大きくなってきていますが、突然シーンが変わったのではなく、野茂英雄選手も含め何十年も前から様々な選手がチャレンジしてきたことによって、世界が変わりました。

 XGALXプロジェクトも1~2年で終わることなく、10年、20年と続けていくことによって、日本人アーティストが世界のメインストリームで活躍できるようになればと思っています。もちろん、その突破口がXGになれば本望ですが、様々なアーティストが挑戦していくことで、線になり面になってマーケットを作り上げていければと思っています。


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女性アーティストの可能性


――2023年6月にYOASOBIが米ビルボードの“Global Excl. U.S.”で首位を獲得したことが話題となりました。Adoや藤井風、imaseなど様々なアーティストが世界で支持されはじめてきています。

黒岩:非常に心強いですよね。どのアーティストも広がり方が違うので、日本を含めたそれぞれの国で、どのように広がっているのか、注意深くデータを見る必要があると思っています。XGは今、3割が日本で、2割がアメリカ、5割がそれ以外の国で聴かれています。とても理想的な広がり方をしていると思いますし、「藤井風さんも良いし、YOASOBIさんも良いけど、XGも良いよね」と言ってもらえるよう、日本の様々なジャンルのアーティストが広がっていけば、日本の音楽マーケットの未来も明るいのではないでしょうか。

――2023年8月にNewJeansが米ビルボードのアルバムチャート“Billboard 200”で初登場首位を獲得しました。その他にも、BLACKPINKやテイラー・スウィフト、オリヴィア・ロドリゴなど、海外では女性アーティストの活躍が多くみられますが、日本のヒットチャートを見ると、男性アーティストが多くを占め、女性アーティストが少ないという現状が続いています。それについて、どう思われますか。

黒岩:男性アーティスト、特に男性グループは、女性ファンに支持されることが多いので大きな収益を生みやすいことは確かです。ただ、我々はこれまで安室奈美恵や浜崎あゆみなど、様々な女性アーティストをヒットさせてきました。2000年前後にどういった現象が生まれてきたかというと、男性ファンの方もいらっしゃいましたが、彼女たちに憧れた女性ファンの皆さんによる社会現象も生まれました。女性も男性も、デビュー当初は異性のファンから支持されることが多いのですが、ある一定のレベルを超えると、女性アーティストは同性からも数多く支持され、一つのカルチャーを生み出す力を持っています。今の時代において、性別で話をするのが適正かは分かりませんが、女性アーティストには性別も世代も超えられる力があると思っています。

――最後に、日本も世界もストリーミングの売上増によって音楽マーケットのプラス成長が続いています。ただストリーミングの伸び率は鈍化していて、新しい市場の開拓も始まってきています。御社の今後のお取組みをお伺いできますでしょうか。

黒岩:ストリーミング先進国については、そういった課題が挙がってきていると思いますが、日本を含めたアジアや、中東、アフリカに関しては、まだまだストリーミング市場の伸びしろがあると思います。ですので、そういった地域も含めてグローバルでヒットを生むという点において、日本は出遅れていると感じています。特に我々は外資系メジャーレコード会社ではありませんので、社内にそういったリソースもありません。ですので、我々は2013年にAvex Asia Pte. Ltd. 、2018年にAvex USA Inc.を設立し、世界中に拠点を増やしてきました。そして、今年(2023年)の8月にはサウジアラビアに新会社Avex Saudi Arabia Entertainment LLCを設立しました。日本、アメリカ、中国、シンガポール、サウジアラビア、それぞれの拠点が有機的に繋がることで、我々の生み出すIPが世界中で認知されていくというのが、自分たちができる戦い方だと思っています。

――世界中に拠点を増やしていっておられるのですね。

黒岩:Avex Asia Pte. Ltd.のあるシンガポールは東南アジアのハブですし、クリエイティブやマーケティングの面においては、Avex USA Inc.の存在は非常に重要です。そして、サウジアラビアや中東には大きなマーケットの可能性を感じています。グローバルヒットのために、日本のアニメは重要なIPの一つですが、サウジアラビアでも日本のアニメは非常に人気が高いため、2022年から【アニメビレッジ】というイベントを開催しています。

 音楽・映像・アニメの分野において、自分たちがオリジナルで生み出したIPを日本ならびに世界に売っていく、そこで出た結果が、また次の循環に繋がっていく。そういったことを何十年後も続けていける会社を目指したいと思っています。



▲「NEW DANCE」MV / XG

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