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<インタビュー>HYDE、ニューシングル「6or9」で切り拓く新ジャンルと現在を語る

インタビューバナー

Interview & Text:Tatsuya Tanami

 HYDEが、9月6日に新曲「6or9」をリリースした。

 6月よりワンマンツアー【HYDE LIVE 2023】を敢行してきたHYDE。新曲は、コール&レスポンスが意識された構成となっており、発売前の曲であるにもかかわらず、毎回ライヴでは爆発的な盛り上がりを見せている。今回は、そんなロックシーン最前線を走るHYDEに新曲だけではなく、最近の音楽への向き合い方などもたっぷりと語ってもらった。

「僕らなりの雰囲気を出していきたいなと」

――新曲「6or9」ですが、ファンもリリースを待ち望んでいたと思います。ちょうど1年前の【RUMBLE FISH】で初披露されましたが、1年越しというタイミングでリリースしたのには、なにか理由があるのでしょうか。

HYDE:本当はアルバムを出そうと思ってたんですけどタイミングを逃したので、デジタルシングルだけでも出しとくかと思って。これまでのシングルとは違う雰囲気なので、「売れないんじゃないかな」とか思いながらも試しに出してみようかな、みたいな感じでしたね。でも、ライヴでの反応はすごくいいから、売れ行きとか見たいし、ある意味実験的でもあったかな。


――ライヴでも盛り上がりがすごいですよね。

HYDE:そうですね。THE LAST ROCKSTARSのライヴでもやったし、ツアーではインスタライブもやってるし、ファンの子も2階席からは動画が撮れるので、どんどん情報は流れてるから、みんな楽曲のことを知っててくれているんですよね。ただ音源がまだリリースされてないっていうだけで。


――【RUMBLE FISH】で披露されたときと、今年の【HYDE LIVE 2023】で披露されたときを聴き比べてみたのですが、間奏のところが違っていて。新しいほうは、静と動がしっかりしていると感じました。

HYDE:そうですね。



――今回、楽曲のジャンルが今までのロックサウンドとは違って新しい感じがしたのですが、挑戦されたところはありますか。

HYDE:今自分自身がやりたい方向性に寄せたアレンジにしましたね。ただハードコアなジャカジャカっていうのだけだと、ちょっと面白くないというか。もうちょっと打ち込みとかのニュアンスは出したいなと思って。


――やりたい方向性という言葉が出てきましたが、具体的にどういったことでしょうか。

HYDE:ラウドでありながらもダークな打ち込みの要素もあるところですね。その中でも僕らなりの雰囲気を出していきたいなと。


――元々はVAMPSの活動時に制作されていたそうですね。

HYDE:そうそう。2017年にラスベガスでレコーディングしたアルバム『UNDERWORLD』の候補曲の中にはすでにあったんだけど、スタッフからあんまり評価が良くなくて(笑)。でも、時を経て少し手を加えて友達に聞かせたらすごく評判が良くて。もう一回やり直したって感じですね。


――その後、どういう経緯で久しぶりに【RUMBLE FISH】でこの曲を持ってこようってなったのでしょうか。

HYDE:その時には自分的にはもうほぼ完成していて、早く披露したかったんです。コール&レスポンスの曲なんだけど、当時は声を出せなかったから、効果的ではなかったのかもしれないけど、ライヴで盛り上がる自信があったから、早くやりたかった。


――結果的に盛り上がって良かったです。クレジットには、バンドメンバーのhicoさん、Aliさんの他にAPAZZIさんがいらっしゃいます。

HYDE:作り始めたとき、APAZZIくんががプリプロで打ち込みをやってくれてて。そこから5年ぐらい空いて、今はバンドメンバーのhicoとやったほうがいいかなと思って、その後hicoに引き継いだって感じですかね。APAZZIくんは打ち込みや上物を考えてくれてたんだけど、最終的に彼の要素は無くなっちゃったので。でもTHE LAST ROCKSTARSのライヴバージョンは彼がメインで打ち込みしてます。


――最初に作った時よりかなりブラッシュアップされたって感じなんですね。

HYDE:そうですね。メロディーはそんな変わってないんだけど、打ち込みの雰囲気は変わってます。



――歌詞はいつも通り、最初に日本詞があった感じでしょうか。

HYDE:はい。それをAliが英語にしたって感じですね。もう基本的にはロックなパーティーチューンってイメージで、酔っぱらっててよく分かんないみたいな状況を想像しながら作りました。6か9かもう分かんないみたいな(笑)。表裏一体というか、怒ってるのか笑ってるのか、人生喜劇なのか悲劇なのか、そういうごちゃごちゃにしたような曲にしたいなと思って。


――何か訴えている歌詞かなと思ったんですが、そういうことではないんですね!

HYDE:うん、大した意味はない(笑)。


――ラストサビ前には日本語がちらっと出てきますね。

HYDE:この辺はもう日本語でもなんでもいいかなって。海外の人が聞いたときに、歌いたいところと歌わなくてもいいところってあると思うんですけど。例えば、「めちゃめちゃ速いラップをみんな歌いたいか?」っていうと、たぶん歌えないと思うんですよ。だから、そういうところは別に日本語でもいいんじゃないかな、みたいな。で、「ここで酒を注いで飲もうぜ!」みたいなイメージ。


――で、最後のサビに持っていくみたいな。

HYDE:そうそう。ちょっと日本語で、みんなで歌ってくれたら嬉しいなと。


――歌い方も英語寄りになっているなと感じました。

HYDE:基本的に「あえて日本語に聞こえなくていいから」ってディレクションしました。


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  1. 「自分にとって一番かっこいい状態」
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「自分にとって一番かっこいい状態」

――そうだったんですね。この曲で苦戦したところはありますか。

HYDE:作ったときの衝動を忘れてアレンジし直してるから、歌ってるときに「あれ、こんな曲だったっけな?」って思って。もう一回古いデモ音源を聞き直したら、その声のほうがかっこよかったんです。だから、昔の自分をマネしてもう一回歌い直しました。そこがやっぱり苦労したところかな。あと、コール&レスポンスのことをギャングボーカルって言うんですけど、そういう部分も昔のほうがかっこよくて。ラフなほうがかっこいいことも多々あるし、しっかりやり過ぎるとつまらなくなっちゃうんですよ。


――その加減って難しそうですね。

HYDE:うん、精神的に難しいですね。自分では正解だと思ってるけど、それは正解じゃないかもしれないっていうのは多々あります。まさに「6or9」の世界観で、分からないものですね。自分は常に更新してるつもりだったけど、振り返ったときに5年前のほうが良かったっていう。


――HYDEさんの中では、どういったことが正解なんでしょうか。

HYDE:自分にとって一番かっこいい状態じゃないですか? 本当はできるのに、勘違いしてやらなかったっていうのはやっぱり正解とは言えない。ちゃんと冷静にチェックすれば防げたことですよね。だから、気が付かずにそのままリリースして、昔のデモを聞いたときに「やっちゃった~」って経験は過去になかったわけじゃないので。


――逆に自分が不正解だと思っても、お客さんの反応がいいパターンもありますか。

HYDE:もちろんあるけど、大体自分の感性が合ってるかな。僕はファンがなんとなく求めてるものを、なんとなく自分で理解していると思います。もちろんそれをわざと裏切ることも多々ありますけど。ファンの望むものを作ることはできるけど、それをやってるだけだと新しいものが生まれなかったり、新しいファンが増えなかったりするから、あえて違うものを提示することもある。でもどっかで僕はファンの気持ちは分かってるつもりではあります。



――ソロ活動をリスタートしてからコライトが多いと思いますが、一人で制作するよりも刺激があったりしますか。

HYDE:今はそっちのほうがいいですね。自分で全部作ると、こじんまりしちゃって良くないなと思ってて。僕にとってソロアーティストって、昔は全部ひとりでやらないといけないと思ってたけど、考えようによっては、メンバーは世界中にいるってことになりますよね。そっちのほうがすごい自由だなって。


――確かに。

HYDE:だって、次の曲はニッキー・シックスにベースを弾いてもらえるかもしれないじゃないですか。でも、バンドにベーシストがいたら、その人が弾くに決まってるから。次は誰がバンドメンバーか分からないし、誰とでもやれる可能性があるから面白い。「この人、最近いい曲作るな」って人にお願いすることもできるし。


――なるほど。海外ではそんなコライトが当たり前になってますよね。

HYDE:そっちのほうが賢いと思う。前、僕がハワード(・ベンソン)に楽曲を持っていったときに、スタッフが3人ぐらいいて、「ここからどうしよう」みたいな感じでみんなで相談して作っていったんですよ。で、監督みたいにハワードが「そのアイデアいいね」って言って、歌詞もみんなで考えてたんです。やっぱり自分だけだと、何十曲を1年で作るってなると限界が出てくる。僕もいろんなアーティストとやったほうが、自分の引き出しがどんどん開いていくし。


――最近、何か引き出されましたか。

HYDE:歌い方かな。僕がメロディーを考えない場合もあるから、hicoの歌ったメロディーで歌うと、「こんな歌い方もあるんだ」ってマネしてみると曲の表情が変わるというか。僕が考えもしないような曲を誰かが作ってきたりすると、「この曲に対してどうアプローチすればいいんだろう?」って、すごく考えるじゃないですか。自分で作ったものだと、いいメロさえあったらいいなって思っちゃうんだけど。だから、どんどんハードルを自分で上げていくし、面白いですよね。


――これから共作したい人はいらっしゃいますか。

HYDE:例えば、信頼できるプロデューサーとがっつり組んでやってみるのも面白そうかな。アメリカのプロデューサーと作るとやっぱり海外の音になるから、そういうのはいいなと思います。でも、最近は日本人のすごくいいアーティストと出会う機会がよくありますね。


――最近だと、【ROCK IN JAPAN FESTIVAL】や【男鹿ナマハゲロックフェスティバル】で新しい音楽の出会いはありましたか。

HYDE:昨年の対バンツアー【RUMBLE FISH】に出てくれたバンドとかは仲良くしてくれますね。あとは、今回は男鹿で細美君(ELLEGARDEN)と初めてちゃんと喋りましたね。カリスマなのは知ってたけど、楽しく酒が飲めました。あと、この間もラウドのフェスに行ったけど、案外みんな話してくれて。


――いいですね。

HYDE:僕、もともとあんまり社交的な性格じゃなくて、人が話し掛けてくれたら話せるタイプなんですよ。だから話し掛けてくれる人が多くて楽しかったですね。


――もう先輩後輩は関係ないようないい感じで。

HYDE:基本的にはみんな年下になっちゃうけどね(笑)。でも、年下の子たちのほうが音楽的には想像してないことしてくるから面白いよね。


――想像してないこととは?

HYDE:聞いたことのない音楽をやったり、見たことないカルチャーだったり、ファンもクレイジーな人がいっぱいいたりして、すごく勉強になります。年上の人ももちろんすごいんだけど、すでに見てきたカルチャーだから驚きはないじゃないですか。そういう意味ではフェスも含めて得るものはたくさんありますね。


――それを自分の楽曲とかに昇華させていく。

HYDE:だから、他のアーティストのライヴを見るのはすごくいい。井の中の蛙にならなくてね。負けてるところがいっぱいあるなと思いながら見てますよ。


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「ライヴハウス以上に激しくなる」

――楽曲のお話に戻りますが、タイトルに「6」がついていますが、改めてHYDEさんにとって「6」はどんな数字でしょう。

HYDE:もともと「6」は悪魔の数字って言われてて、キャッチーですよね、ロックだし。そういうところから繋がってはいるんだけど、特にそこにこだわりはないですね。面白いからやってみただけ。あと調べたんだけど、蜂の巣とか、自然界によくある六面体ってすごく世界的にも完璧な形なんですよね。「6」ってそういう意味があるのかって。でも宗教的には「7」が完璧とされていて、「7」から一つ欠けてすごく良くないとされているから、悪魔の数字って言われてるらしい。まあ、そういう無駄な知識をここで今言っただけです(笑)。


――ありがとうございます。勉強になりました(笑)。

HYDE:そういうのもあって、なんだかんだやっぱり「6」は気にはなるよね。


――ツアーではすでに披露されてた別の新曲のタイトルも「I GOT 666」ですよね。

HYDE:そうそう。言われてみればこれまで『666』ってアルバムはあったけど、曲にしたことは今までないなって思って。激しい曲だけど、サビでキャッチーな言葉が欲しいなと思って、これを使ってみようかなと。


――「6or9」のジャケットはどういうイメージで作られましたか?

HYDE:これはもう明らかに映画『オーメン』のオマージュですね。オーメンは、頭に「666」のアザがある子。


――あと、ミュージック・ビデオも撮られてますよね。

HYDE:ツアー中にいろんな映像を撮り集めていて、いろんな地方で撮影した映像が入ってます。


――SNSでは、トラックの上で歌っている動画も上がってますよね。

HYDE:あれは仙台ですね。あんな感じで灼熱の中、ライヴ前にSENDAI PITの前で撮りました。



「6or9」ミュージック・ビデオ


――【HYDE LIVE 2023】は残すところあと幕張公演だけになりましたが、どんなライヴにしたいですか。

HYDE:ツアーのファイナルではあるんですけど、これまでのライヴハウス・ツアーとは違ってスケールアップします。ステージ上の演出も大きく変わるし、フロアもスタンディングエリアにライヴハウスのような柵はないから、壮観な眺めになると思います。あと、幕張メッセのイベントホールなので、スタンド席の人は落ち着いて見られる状況でもあるっていう。

今、どんどんラウドな音楽に向かっていて、お客さんもどんどん激しくなってきてるので、たぶんライヴハウス以上に激しくなると思いますね。ラウドミュージックでありながらも、エンターテインメントでの差別化っていう部分もこだわってるので、見るだけでも面白いと思うんですよね。だから、知り合いの見に来てくれる年配の方にはカルチャーショックかも? ってそう前振りしておきました。僕自身もライヴになると変わるけどファンも凄いし。私生活では僕、そんなに暴れ回ったりせず、おとなしくしてるほうなので(笑)。


――楽しみですね……。今回のツアーから声出しが解禁になりましたが、改めて気付いたことはありますか。

HYDE:逆にコロナ禍のときのほうが良かったって思っている人も中にはいますよね。以前は隣の人との距離があって快適だったけど、今は隣から音痴な声が聞こえるのが嫌って人もいますよね(笑)。でも、そういうのもひっくるめて、今の時代を楽しんでほしいなと思います。


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HYDEが見据える音楽シーン

――HYDEさんの中で「世界で勝負していきたい」ということは今も変わらないと思います。この10年間で音楽へのアクセスの仕方が変わり、日本と世界の壁が薄くなってきているように感じますが、今の音楽シーンをどう見ていますか。

HYDE:日本はまだまだじゃないですか。韓国は何年も前から今のスタンスでやってきて、やっと花が咲いたっていう印象があるけど、日本ってホント、ぬるいというか。それは“国”としても。ほとんどの人があんまり世界に対して力を注いでないですよね。もちろん一部の人は海外に向けてやってるんだけど、日本ってやっぱり国内だけで音楽がめちゃくちゃ売れるから、そこでもう生活が成り立つじゃないですか。でも韓国って世界に出て行かないと、っていう考えですよね。


――そうですよね。

HYDE:ONE OK ROCKとかすごいじゃないですか。ああいう世界で戦ってる人たちがいると、向かっていきやすくなるよね。「あんな先輩がいるんだったら、もっとこうしてやろう」とか。僕らにとってその存在だったのがLOUDNESSだったりするんですけど。ああいう先輩を見て、「こんなことできるんだ、すげえな」って目標ができたのが根本にあって。面白い音楽は日本にもあるけど、それが(国外で)広がっていくのに10年はかかるだろうから、今からどんどん出て行くべきだと思いますね。


――音楽ビジネスへの考え方がもともと違いますもんね。

HYDE:後輩たちは先輩の姿を見て育つじゃないですか。先輩が日本であぐらかいてたら、それが目標になってしまいますよね。


――そんな中で、HYDEさんは人生を逆算して活動されていると思うんですけど、今、身近な目標はありますか。

HYDE:THE LAST ROCKSTARSをどう動かしていくか、かな(笑)。ミーティングするだけでも(調整に)時間がかかるから。いろいろな歯車を合わせるのが大変なんだけど、素材としてはすごく面白いことをやっているし、これをいかに爆発させるかですかね。僕は自分自身でなにがやれるのか分かってるけど、それぞれ別の方向を向いて走っている人たちをひとつにするのは、なかなか難しいです。ラルクも難しいけど(笑)。


――最後に2023年は残りどんな年にしたいですか。

HYDE:基本的には、これ以上、仕事を入れないようにしようかなと。やるべきことを重点的にやっていくようにしないと、いろんなものがおろそかになりそうなので。それこそTHE LAST ROCKSTARSの活動も決まっているから、成功させるために、それに向けてどうしていくべきかに力を入れなくちゃいけなくて、「他の仕事を入れてる場合じゃないな」って思ってます。これ以外にもたまってる仕事がたくさんあるんですよね~。でも、もうそれだけでも十分エンターテインメントだと思いますよ、僕の人生。



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