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<インタビュー>【フジロック】初来日が話題、d4vdが受けた日本文化からの影響と次の“分身”
Photo:辰巳隆二
ショート動画に多く使用される「ヒア・ウィズ・ミー」やSpotify USバイラルチャートで1位を記録した「ロマンティック・ホミサイド」など、リリースから1年も満たずにヒットメイカーの仲間入りをするシンガー、d4vd(デイヴィッド)が7月末に開催された【FUJI ROCK FESTIVAL】で初来日した。日本のアニメやマンガに影響され、藤井 風との交流も来日前から話題を呼んでいた米テキサス出身、弱冠18歳の若き新星は、エモーショナルに、そしてパワフルに届ける日本初パフォーマンスが話題をかっさらった。
早くも12月に単独来日公演が決まったd4vdに、今後の音楽制作や新たに生まれるであろう別のキャラクターについて話を聞いた。
――念願の初来日をしてみていかがですか?
d4vd:7、8歳の頃から日本に来たいと思っていたから現実じゃないみたい。自分が昔から望んできたことが叶った気分だね。
――日本の文化に興味を持ったのは、やはりアニメがきっかけでしょうか?
d4vd:そう、初めてアニメを見てから。8歳の時に父が『ドラゴンボールZ』のDVDを買ってくれたんだ。それ以来、アニメはもちろん、日本文化について学んだり、マンガを読んだり、手に入った日本に関するものはすべて吸収したよ。
――日本はあなたが想像していた通りの場所でしたか?
d4vd:想像以上だね。街のネオン、文化、言葉、ファッションなど、とにかくすべてがクールで、みんなすごくファッションセンスがいい。
――食べ物はどうですか?
d4vd:ラーメンをたくさん食べた。でも、厳密には日本の食べ物ではないと聞いたから、寿司と照り焼きチキンが気に入ってる。
――先日、【FUJI ROCK FESTIVAL】での日本初ライブを見たのですが、すごくいいバイブスでした。
d4vd:ありがとう。楽しんでくれた?
――もちろんです。ここ数週間ツアーで様々な会場やフェスでライブをしてきたようですが、振り返ってみていかがですか?
d4vd:日本でのライブが一番よかったよ! 1億パーセント以上の力を出したからね。観客にノってもらおうと思って、ジャンプしたり、バク転もした。すごく喜んでくれていたし、同時にリスペクトも感じた。歌詞を一緒に歌ってくれていた観客も何人かいたし、最高だったね。
――バク転は予想外でしたが、それによって盛り上がりが増しましたよね。まだパフォーマーとしてのキャリアは浅いそうですが、これまでの道のりを教えてください。
d4vd:すごく興味深いものだった。今年2月17日にテキサス州ヒューストンで初めてライブをやったんだ。それ以前にライブに行ったことすらなかったから、人生初のライブが自分自身のライブだったんだ。自分がどうパフォーマンスすべきか、どう歌うべきか、どうマイクを持つべきかなど、他のパフォーマーを見ることで外部の影響を受けたくなかった。そのまま飛び込んでいって、自分のスタイルを確立していったんだ。これは自分にとって本当に重要なことだったと思う。緊張したくなかったのもあるし。
――実際、全く緊張しなかったんですか?
d4vd:うん、これまで順調にこなしてきた。フェスに出演することで、観客によってライブが違ったものになることも学んだ。オーディエンスのエネルギーをうまくパフォーマンスに取り入れることが重要なんだ。あとは、観客をどのように引き込んでいくのかというのが、これまで学んだ中で特に大切なことの一つだね。
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――【フジロック】で演奏された、ひと際ロックな未発表曲の「リハブ」はライブを経験したことで生まれたんでしょうか?
d4vd:あの曲は、テレビアニメ『呪術廻戦』のオープニング主題歌に起用されているEveの「廻廻奇譚」にインスパイアされたものだよ。
――なるほど。「ノーツ・フロム・ア・リスト」という新しいバラード曲も披露していましたね。MCで歌詞に注目してほしいと話していました。
d4vd:僕が中学1、2年生の時に、自傷行為をしていた友達がいて、彼女をオマージュした曲なんだ。とてもパーソナルな曲だよ。
――パーソナルな経験を元にした曲を書くのは難しいですか?
d4vd:自分にとって最も難しいことの一つ。2022年まで5年間ホームスクールだったから、自分の人生を退屈だと思っていた。だから自分について書くのが本当に大変だった。そこで、曲ごとにキャラクターを創り上げることにしたんだ。そのキャラクターの人生、背景、設定などを想像して、その人物について曲を書いた。自分の音楽のためにキャラクターを生み出し、映画のような世界観を創り上げていくことは、そうやって始まったんだ。いろいろなジャンルの音楽を作っているから、今では様々な音世界に住むオルターエゴ(分身)を持つことができている。これは実験し続けるための口実でもあるね。
――そのオルターエゴの一人が、血がついたシャツを着ている“Itami(痛み)”ですが、どのように生まれたんでしょう?
d4vd:『東京喰種トーキョーグール』や『呪術廻戦』を見ていた時に閃いたもので、主人公が悪役でもあるようなストーリーがずっとやりたかった。基本的に“Itami(痛み)”は僕自身で、自分の内なる闘いを表現している。だからシャツの血も僕自身のもの。自分といつも闘っているからね。僕が作る音楽はとても内向的だから、“Itami”はそれをパワフルに表現している。僕の音楽を聴くと、自分を見つめ直すきっかけになると思うんだ。自分のことを自分以上に知っている人はいないという本質を捉えているように感じるし、僕はいつも自分自身と闘っている。そういったことをアートに落とし込むのに完璧な表現方法なんだ。
簡単に言うと、“Itami”は自分で自分の犯罪を解決する探偵だ。普段は様々な謎を解いているけれど、人格が分裂して急に豹変し、罪を犯すことがある。なぜうまく事件を解決できるのか周りが聞くんだけど、それは文字通り、彼自身が罪を犯しているから。ノワール的な探偵バットマンのような物語だね。
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――彼は紹介動画で白い薔薇を手にしていますね。あなたの作品には花のモチーフが散りばめられていますが、その意味について教えてください。
d4vd:諸刃の剣のような感じで、美しすぎるゆえに自分が傷つけられるという意味合いがあるんだ。見る分には美しいけれど、深く潜ってみると棘があって傷つけられることがある。赤い薔薇がロマンチックな象徴だとしたら、そこからロマンスを奪ったあとに残るのが白い薔薇。だから美しいけれど、傷つけられるほどの美しさという風に僕は考えているんだ。
――EPのタイトル『ペタルズ・トゥ・ソーンズ』は、その考えを基につけられたんですね。
d4vd:その通り。EPの冒頭では、美しい薔薇の花が咲いていたのに、後半の失恋の部分に突入すると、すべてがいばらのように感じる。そして続きが気になる形で終わらせている。
――その続きというのは、デビュー・アルバムで展開されていくのでしょうか?
d4vd:それに関してはまだ考え中。アルバムはとても大きなステップだから、もう1枚EPをリリースする予定なんだ。『ペタルズ・トゥ・ソーンズ』とデビュー・アルバムの間を埋めるためにね。
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――先ほど、様々なオルターエゴがいると言っていましたが、今後どのようにあなたの音楽と融合されていくのでしょうか?
d4vd:ライターとしての側面やミュージシャンとしての側面など、僕の脳内には様々な部分がある。ボーカリストのd4vd、そして敵役の“Itami”。じゃあ、ライターの部分の自分はどこにハマるんだろう? エモーショナルで、いつも何か書き留めていて、言いたいことがたくさんある部分。もしかしたら、それが次に発表するキャラクターになるかもしれない。
――どれぐらい先まで世界観を創り上げていますか?
d4vd:考えながら創っているけれど、“Itami”が最も綿密に計画されていたかな。d4vdというアーティスト名は去年考えついたんだけど、4という数字が入っているから、4人のキャラクターを登場させようと思っているんだ。
――ライターといえば、「ポエティック・ヴァルガリティ」は、あなたが書いた詩を基にした曲だそうですね。昔から詩を書くのが好きだったのでしょうか?
d4vd:小学5年生の時、夏休みに読書の課題が出された。指定された本を読んで、その要約を書かなければならなかったんだけど、僕は代わりにマンガを読んでいた。その時に最初に読んだのが『進撃の巨人』だったと思うんだけど、その要約を書き留めていったんだ。指定された本じゃないから、いつも落第点をもらっていたよ。でも、それがきっかけとなって自分で物語を書くようになったんだ。まず詩や自由詩から始めた。どれも韻を踏んでいなかったけれど、僕が伝えたいことを本当に理解するために、深読みしなければならないような思索的な文章だった。それがずっと今も続いているんだ。
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リリース情報
EP『ザ・ロスト・ペタルズ』
2023/9/8 RELEASE
『ぺタルズ・トゥ・ソーンズ』
2023/7/12 RELEASE
<初回限定盤(直筆サイン入りカード封入)>
UICS-9181 2,970円(tax in)
<通常盤>
UICS-1401 2,750円(tax in)
公演情報
【Petals to Thorns Tour】
2023年12月6日(水)開場18:00/開演19:00
東京・The Garden Hall
チケット:スタンディング7,800円(ドリンク代別)
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