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<対談>レスリー・キー&DJ kowta2、色褪せない音楽を体験できる【Music Time Travel~あの頃の夏へ~】の見どころを語る



Music Time Travelインタビュー

Interview & Text:Mariko Ikitake
Photo:Yuma Totsuka

 ユニバーサルミュージック合同会社が東京・渋谷キャットストリートにあるイベントスペース、X8 GALLERYにて開催している【Music Time Travel~あの頃の夏へ~】が9月3日まで開催(入場無料)。1階には同ギャラリーのキュレーターである写真家レスリー・キーと学生たちのコラボレーション【夏の想い出の一枚】、2階には夏の名曲を年代ごとに紹介する巨大年表やアーティストが作成した夏ソングのプレイリストなどがあり、音楽・アートを通して、“あの頃”にタイムトリップすることができる。

 8月21日のDJイベントには、昨今のシティポップ・ブームの立役者であるNight Tempoが登場。時代を超えた音楽でオーディエンスを魅了した。8月31日には、ドラマ『六本木クラス』の挿入歌「Start Over」で話題を集めたTHE BEAT GARDENのサポートDJであるDJ kowta2が、松任谷由実「真夏の夜の夢」やback number「高嶺の花子さん」、そして自身がサポートを務めるTHE BEAT GARDEN「花火」など、90年~2020年代の音楽を中心に音楽ラヴァーたちを楽しませた。

 今回、大のユーミン好きで、昭和~平成ソングをリアルタイムで聞いていたレスリー・キーと、それを今、新鮮なリバイバル・ミュージックとして楽しむDJ kowta2による、世代を超えたクロストークをお届けする。

――ユニバーサルミュージックが展開する、夏と音楽、リバイバルをメインとする本イベントを、レスリーさんからはどんなふうに見えていますか?

レスリー・キー:私はリアルタイムで80年代、90年代の曲を聴いていましたが、私より若い世代たち、とくに今の20代なんかは、私が少年時代に聴いていた音楽をほとんど知らないと思うんです。でも、Night Tempoのような、いろんなDJ、プロデューサーたちが、ここ数年の間に日本の音楽の宝をたくさん蘇らせてくれていますよね。新曲でも古い曲でもなく、タイムレスな音楽として、どんどん広がっていったらいいなと思ってます。この【Music Time Travel】は、まさにそういうことができる、体験できる機会ですよね。写真の世界でも流行りはあるけど、タイムレスな写真、人の生きざまを写した作品は永遠に残ると思います。

――CDやカセットで音楽を楽しんでいた世代からすると、モノがない最近のデジタル音楽は少し寂しい気もしますよね。

レスリー:そうなんです、寂しい。私は今でもEPやアルバムを購入して大切にするから、若い人たちにもその感覚を忘れないでほしいと思ってます。

――レスリーさんは、70年代、80年代の日本の音楽にかなり影響を受けたようですが、特に影響を受けたアーティストはどなたですか?

レスリー:ユーミン! kowta2さんはユーミンの曲、聴きますか?

kowta2:聴いたことある、ぐらいですね……。

レスリー:これから聴いてほしいね、いっぱい。

――ギャラリーには70年代から現在までのジャケット写真が飾ってありますが、kowta2さんから見て、懐かしいなと思う作品はありますか?

kowta2:ありますし、僕からしたら、懐かしいより“新しい”に近いですね。70年代の音楽でも新しく聞こえるというか。実は、僕もデジタルじゃなくてレコード屋さんに行ってレコードを買うこともあります。ジャケ買いしたり。一時期、週5まではいかないですけど、そのぐらい通っているときもありました。

レスリー:やっぱりジャケ写を見ていいな~ってなるよね。レコードは何枚ぐらい持ってるんですか?

kowta2:棚にびっしり並んでるくらいですね。洋楽と邦楽、7:3ぐらいですかね。

レスリー:リアルタイムで聴いていた日本の音楽はどのあたりになるんですか? ミスチルやスピッツは、ちょっと先輩だよね? スキマスイッチとか?

kowta2:そうです、スキマスイッチの代です。

レスリー:じゃあ、BUMP OF CHICKENあたりか。どっちかっていうとクール系の音楽のほうが好きなのかな?

kowta2:元々ダンサーでもあったので、ヒップホップ系もよく聴いています。

レスリー:じゃあ、ダンスがきっかけで音楽が好きになって、今はDJをしているってこと?

kowta2:そうです。

――Night TempoのDJイベントには、月曜日の17時スタートながら、幅広い年齢層の方々がたくさん集まって、昭和歌謡の人気の高さを実感しました。

レスリー:彼は本当に研究してますね。彼のおかげで、40年も50年も前に作られた日本の素晴らしい曲をもう一度、大人たちが懐かしんで楽しめていますし、若者たちも聴く機会が作られている。今後Night Tempoさんが生み出していく新しいムーブメントに超期待してます! もちろん音楽には流行りがあるし、そこを我々はコントロールできないけれども、すでにあるものをどうリパッケージして、アジアでもう一度愛されるものにするのか。そんなことができたら、良いライフワークになると思いますし、すごく楽しみです。

――日本人が歌った曲を国外の方々が新しく生まれ変わらせてくれることが不思議です。

レスリー:そう。日本の宝を逆に外国人がもう一度味わわせている。これこそSDGsだと思わない? 新しい曲なんて、もう作らなくていいんじゃないかって。新しいものを作っていかないとビジネスは成立しないんだけど……それぐらい、新しいものを作るのと同時に50年、60年前の音楽を、“もう聴かない”のではなく、同時に“これからも”聴いていこうっていう。この【Music Time Travel】は、まさにそういう考え方じゃないですか。たくさんの人がこう思えたら、音楽は絶えず、日常生活の中に存在して、ずっと聴かれていくと思います。

――レスリーさんも日本人では発想できない、“国外の視点”のようなものを求められたこともあったのでは?

レスリー:ありましたし、日本に長く住んでいるから、客観的に日本人の心もよく分かるんです。外国人の視点として日本を見ることもできているので、いろんな挑戦をさせてもらえてありがたいです。

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――今はデジタルとアナログの両方を楽しめる時代で、DJもレコードを流すスタイルとPCから曲を流すスタイルがありますよね。それぞれの良い点はどんなところですか?

kowta2:僕はPCでやる時もあれば、レコードでやる時もあります。デジタルの良い点は、すぐに音源を入手できることですね。レコードは、買って家に帰って聴くという楽しみがありますし、なにより音が違います。

レスリー:レコードを使ってるDJは職人な感じがします。面倒くさいし、段取りも必要じゃないですか。華麗に上手く回すのを見ると感動します。デジタルのDJはどちらかというとプログラマーっていうイメージ。レコードとは違う頭の回転がされているのかなと思いますし、それもまた違うリスペクトがあります。両方できるなんて最高ですね。

――写真の世界ではどうですか? フィルムからデジタルが主流になっていますよね?

レスリー:写真はほとんどデジタル化されています。フィルムで撮影していたら、締め切りに間に合わないですから。でもデジタルでフィルムっぽい質感を出すこともできますから、いいですよ。

――このイベントは夏の曲がテーマです。夏と聞いて思い出す、思い出の曲はありますか?

レスリー:ユーミンの「真夏の夜の夢」とか「Hello, my friend」とか……いっぱいありすぎて1曲に決められない。先週、杏里のライブに行ってきたんです。懐メロをたくさん歌ってくれることはもちろん、何が嬉しいって、当時よりも輝きがパワーアップしていて、それを見ていると、人間としてすごく励まされます。彼女のダンスのエネルギーと伝えたいっていう気持ちが全力で、まさにpower of musicを感じました。本当に音楽のパワーはすごいです。政治とか戦争とか、世界で起こっていることをこの手で止めるのは難しいけれど、音楽は人の心を癒したり、平和になろうと思わせてくれたりする。音楽のパワーにいつも圧倒されます。


――kowta2さんの思い出の夏の曲はなんでしょうか?

kowta2:僕はKREVAの「イッサイガッサイ」が大好きで、ミュージック・ビデオの夏祭りのように、思い出がいろいろありますね。

レスリー:やっぱりヒップホップが好きだね。


――音楽とは関係なく、夏の思い出はありますか?

レスリー:日本語学校と写真の専門学校に通っていた留学生の頃は、本当にお金がなくて、中野にある25,000円の部屋に5~6年住んでいたんです。日本の夏は暑くて、でもお金もないから、誰かが教えてくれた「風鈴をかけたら涼しくなる」を実践しました。ユーミンの曲にもそういう曲があって……風鈴の音色が聞こえると、私の懐かしの思い出がたくさんよみがえりますね。

kowta2:僕は8月1日が誕生日なので、毎年、誕生日に家族と友達と海に行ったり、川に行ったりして遊んでました。スポーツもやっていたので、その大会のこととか、スポーツ大会の有名なテーマソングを聴くといろいろ思い出します。

――このイベントは9月3日まで開催されます。どういった方に来ていただきたいですか?

レスリー:若い方にも、偶然ここの通りを通った方にも、たくさんの人に興味を持ってもらえたら嬉しいですね。私は、このギャラリーを若い世代のコミュニケーションの場所にしたいんです。私が通っていた専門学校の後輩や現役の学生たちから、夏の思い出の写真を1枚提出してもらって、1階に飾っています。日本の音楽の歴史を巡るイベントをきっかけに、当時の写真や作品から懐かしさを感じてもらって、それがその人の夏の思い出になったらいいですね。

kowta2:僕は、こういう場所や音楽を知らない人に来てほしいですね。僕のDJプレイで少しでも変わったり、日本の音楽を聴くようになったりすることができたらいいなって。通り掛けにふっと入ってくるのもウェルカムです。

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