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<インタビュー>野宮真貴×平山みき×松本伊代が語り継ぐ、“渋谷系歌謡曲”と筒美京平の偉大な魅力

インタビューバナー

 今年で10年目を迎える「野宮真貴、渋谷系を歌う。」シリーズの最新ステージが9月17、18日にビルボードライブ東京、9月22日にビルボードライブ大阪で開催される。今年のテーマは「野宮真貴、渋谷系歌謡曲を歌う。」。ゲストに平山みきと松本伊代を迎え、渋谷系に多大な影響を及ぼした作曲家・筒美京平の名曲も披露されるステージに期待が集まる中、3人の歌姫による鼎談が実現。今なお熱く支持され、若い世代からも注目を集める「歌謡曲」と筒美京平の時代を超える魅力を貴重な証言とともにお届けしたい。(Interview & Text: 佐野郷子)

3人が揃った筒美京平トリビュート・コンサート

野宮真貴:ビルボードライブで2013年から続けてきた「野宮真貴、渋谷系を歌う。」シリーズも今年で10周年を迎えることになりました。渋谷系とそのルーツの名曲を歌い継ぐというテーマでこれまで様々な内容のステージを開催してきましたが、今年のテーマは「歌謡曲」。渋谷系に影響を与えた筒美京平さんの作品を中心に、ゲストの平山みきさんと松本伊代さんと一緒にライブをしたいと思っています。

――平山みきさんと松本伊代さんと野宮さんは「ザ・ヒット・ソング・メーカー 筒美京平の世界 in コンサート」に出演されていますね。

野宮:そうなんです。2020年に筒美京平さんが他界され、2021年にトリビュート・コンサートが開催されたのですが、みきさんや伊代さんをはじめ、TVで観ていたスターの皆さんが勢揃いされていて、そこに私も呼んでいただいたことは光栄でした。

松本伊代:京平先生に縁のあるたくさんの歌手の方が出演されて、私も待ち伏せをしたいくらい豪華な出演者でしたよね。ただ、あのときはみきさん、野宮さんとちゃんとお話する時間もなくて。

平山みき:私は80年代にバンドをしていたときの仲間が野宮さんの周辺の人たちと親しかったので、野宮さんのことは知っていたんです。その後、私のライブを観に来てくれたり、共通の知り合いの店があったり、今年は私の50周年+2年のアニバーサリー・コンサートに野宮さんにゲストで出演していただきました。

――トリビュート・コンサートでお三方は大ヒットした筒美京平作品を歌われましたね。

松本:はい。私はデビュー曲の「センチメンタル・ジャーニー」を歌いました。

野宮:みきさんも伊代さんも、デビュー曲が京平先生ですもんね。私はピチカート・ファイヴ時代に「恋のルール・新しいルール」(作詞:小西康陽)という京平先生に提供していただいた曲があるんですが、あのコンサートでは誰もが知っているヒットナンバーということで、「セクシー・バス・ストップ」を歌わせていただきました。

平山:私がデビューした1970年頃は「歌謡曲」全盛の時代でしたが、気が合う人がいなくて、私はちょっと浮いた存在だったんです。でも、これだけ長く歌い続けていると、時間が凝縮されて不思議と仲間意識が生まれるものなんですよね。

――それも筒美京平さんが繋いだご縁ですね。

野宮:そう。私もTVでご一緒したことはあったものの、お話をしたことがなかった方々に「一緒に写真撮ってください」なんて言えるようになったんです(笑)。昔だったら恥ずかしくてできなかったけれど、今は気負いがなくなって、皆が楽しめる空気になってきた気がします。

松本:バックステージも雲の上のスターだらけの華やかな世界でしたけど、すごく楽しかったですね。

平山:京平先生のところで伊代さんの話は聞いていたんです。私も伊代さんも京平先生好みの鼻にかかった声だから、すごく親近感を抱いていたんですよ。

松本:うれしいです。私はデビュー前のレッスンで歌ったのが、みきさんの「真夏の出来事」だったんです。だからすごく思い入れがあって、デビュー40周年記念アルバム『トレジャー・ヴォイス』でもカヴァーさせていただいて、去年のビルボードライブ公演でも歌ったんです。


――平山みきさんは1970年に「ビューティフル・ヨコハマ」、松本伊代さんは1981年「センチメンタル・ジャーニー」でデビュー。野宮さんも松本伊代さんと同じく1981年にデビューされていますね。

野宮:私は伊代さんと同じ年にデビューしたものの、芸能界とは違うジャンルだったし、しばらくはなかなか売れなくて、ピチカート・ファイヴに加入した90年代になって少しは知ってもらえるようになったかなと。

平山:私はピチカート・ファイヴが海外で人気だと聞いて、スゴいなーと思っていましたよ。

松本:野宮さんと同期デビューだと知ったのも京平先生のトリビュート・コンサートのときでした。私も野宮さんといえばピチカート・ファイヴのおしゃれなイメージだったので、ぐっと親しみが湧いて、テンションが上がったんです。

野宮:伊代さんは「花の82年組」だし、みきさんは子供の頃からの憧れの存在。京平先生のトリビュート・コンサートは、ずっと違う場所にいた私にとっては別世界のようでした。そのとき受けた感銘が「野宮真貴、渋谷系歌謡曲を歌う。」に繋がっていったんです。

渋谷系のルーツ、2人の秘蔵っ子

野宮:私も子供のときから「歌謡曲」を聴いて育ちましたが、当時は作曲家や作詞家についての知識なんてなかったけれど、大人になって好きな曲を調べてみると、作詞・橋本淳、作曲・筒美京平の作品がどれだけ多いかが分かったんです。洋楽のテイストに溢れていて都会的なお二人の音楽はのちの渋谷系にも連なるルーツだと思います。

――作詞・橋本淳、作曲・筒美京平の黄金コンビの名曲は枚挙に暇がないですが、その秘蔵っ子として平山さんが歌った洒脱な楽曲は今なお鮮烈ですね。

平山:ありがとうございます。私のデビュー曲の「ビューティフル・ヨコハマ」は、両先生の代表作でもある「ブルーライト・ヨコハマ」の連作に近くて、当時はヨコハマ推しだったんでしょうね。デビュー前には私も京平先生の事務所に1年間レッスンに通っていました。


松本:私も初めて「センチメンタル・ジャーニー」を歌ったのは京平先生のピアノでした。湯川れい子先生に歌詞をいただいて、グランドピアノだけが置いてある先生の部屋に行ったのはよく覚えています。

平山:今にして思えば、京平先生が曲を作る過程を間近で見ることができたのは歌い手としては幸せな経験でしたね。

野宮:みきさんの特徴のある声とあまり笑わないクールな雰囲気は子供心にカッコイイと感じていました。

平山:あの頃、私が笑わなかったのは怖かったからなんです。ホントは小心者でお酒もタバコも夜遊びもしないのに、歌うとなぜか遊び人ではすっぱなキャラクターに見える、そんな自分では気がつかない資質を2人の先生は見抜いていたのかもしれないと、あとになって思いましたね。

野宮:そうなんですね。私は憧れてよく歌真似をしていました。

平山:そんなイメージがあったから芸能界で友だちができなかったの(笑)。

――「花の82年組」と呼ばれたアイドル全盛期にデビューした伊代さんの時代は?

松本:私はデビューこそ81年でしたけど、たくさんの同期がいる「花の82年組」に入れてもらえたことはラッキーだったし、だからこそ今も歌い続けているんだと思いますね。

平山:「センチメンタル・ジャーニー」の〈伊代はまだ 16だから〉の歌詞を今も歌えるのは素晴らしいことですよね。

松本:最初は〈伊代〉と〈16〉が歌詞に入っていることが少し恥ずかしかったんですけど、京平先生のメロディーとマッチしてとても素敵な曲だから大切に歌っていきたいと思っていたんです。でも、インタビューで「16を過ぎても歌えますか?」とか意地悪に聞かれたりして、一時は歌うのが辛いなと感じたこともありました。もっと大人っぽい歌も歌っているのになとか。

平山:そうそう。自分のイメージを決定づけた曲って歌いたくなくなる時期があるんですよね。

松本:大人になってからそんなふうに感じていた自分を反省して、「もう16じゃなくてごめんね」と思いながら(笑)、今は堂々と歌っています。

野宮:伊代さんもみきさんも声の印象が変わらないですよね。

松本:私は昔のほうが声は低かったかもしれない。

平山:たぶん、この3人は歌を聴いてくださる人が辛くなるような声の変化はしていないと思いますね。

野宮:そうですね。やはり、年を重ねると声やキーは多少変わるけれど、曲の印象を損ねることなく歌える工夫をしながら歌っていますね。長年、現役で活躍されている方は皆さんそうだと思います。

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平山みき「トライアングル 筒美京平☆橋本淳☆平山三紀 3人の絆」

トライアングル 筒美京平☆橋本淳☆平山三紀 3人の絆

2022/05/25 RELEASE
COCP-41760 ¥ 3,000(税込)

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Disc01
  1. 01.ビューティフル・ヨコハマ
  2. 02.さよならのブルース
  3. 03.真夏の出来事
  4. 04.ブン・ブン
  5. 05.ノアの箱舟
  6. 06.フレンズ
  7. 07.20才の恋
  8. 08.マジック・ロード(さすらいの天使)
  9. 09.希望の旅
  10. 10.いつか何処かで
  11. 11.恋のダウン・タウン
  12. 12.熟れた果実
  13. 13.想い出のシーサイド・クラブ
  14. 14.愛の戯れ
  15. 15.真夜中のエンジェル・ベイビー
  16. 16.マンダリン パレス
  17. 17.フィルム シティ モーテル
  18. 18.サンタモニカ マッチョマン
  19. 19.絆
  20. 20.ビヨンド
  21. 21.Jazz伯母さん
  22. 22.ラスト・ラブ・ソング

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