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<コラム>ヒューマンビートボックスの祭典【BEAT X FES】、名うてのプレイヤーたちを徹底解剖



コラム

Text:高久大輝

 昨年も大盛況だったヒューマンビートボックスオンリーの音楽フェス【BEAT X FES】が帰ってくる。会場は昨年と同じくZepp Osaka Bayside(大阪/9月3日)とZepp DiverCity(TOKYO)(東京/9月5日)。なお、大阪編は【BEAT X LEAGUE】とされ、【BEAT X】初の試みとなるソロ特化型バトルイベントで日本初の点数制バトルが行われる。本稿では、前回同様ビートボックスオンリーの音楽フェスとなる東京編に注目し、その見所を紹介していくので、今年の【BEAT X FES】をさらに楽しむ助けになれば幸いだ。




BEAT X 2023 開催決定!


 だが、その前に今年も【BEAT X 2023】が開催されることを祝っておきたい。そもそも国内にヒューマンビートボクサーのみが出演する音楽フェスが存在しない中、つまり前例の無い状態で開催された前回は、もちろん運営サイドや出演者もどうなるのか予想ができない部分が大きかっただろう。しかも、前回開催時はライブのガイドラインが現在よりも厳しい状況で、声出しが禁止されていたことも向かい風だったはずだ。しかし、そんな状況下で、昨年の【BEAT X FES】は大盛況のうちに幕を閉じた。特に印象的だったのは、昨年トップバッターとして出演したRofuのFugaが「ビートボックスここまで来たぞ!」とシーンの一つの目標の達成を喜び叫んだこと。出演者が声出し禁止であることを何度も心から詫びていたこと。それに応えるようにどんなに声をあげたくなるような素晴らしいパフォーマンスに対してもフロアは声をグッと堪え、たくさんの拍手を送っていたこと。前回の成功が今回の開催に繋がっているのは間違いないからこそ、今年も【BEAT X 2023】が無事に開催されることだけでも胸が熱くなる。

 では、出演者を見ていこう。前回もCodfish(コドフィシュ)、D-low(ディーロウ)、SPIDERHORSE(スパイダーホース)ら海外アクトが大いに会場を震わせていたが、今年も海外から錚々たるメンツが来日する。

 まずはフランスのレジェンダリーなヒューマンビートボクサー、Alem(アレム)。数々の世界大会での優勝経験を持つ彼はもともとはドラマーだったそうで、ビートボックスシーンでいうニュースクールの先駆け的存在の1人だ。特徴は何より超高速のビート。もちろんそのパフォーマンスは見逃せないが、彼の投稿する日本向けのYouTubeチャンネルを見ると、非常にハツラツとした性格であることもわかるので、表情やMCでも存分に楽しませてくれるだろう。




ALEM l GBB 2021 World League SOLO Wildcard


 こちらもフランス(フランスは最もヒューマンビートボックスが盛んな国と呼ばれることが多い)からBeatness(ビートネス)とRythmind(リズマインド)が来日。2人とも様々な大会で実績のある優秀なビートボクサーで、Berywam(ベリーワーム)というグループでも活動している。日本のヒューマンビートボックスリスナーの多くは2019年のヒューマンビートボックス世界大会【Grand Beatbox Battle】(ループステーション・ソロ部門)の決勝トーナメントでSO-SOとぶつかったことで認知している人も多いかもしれない。BeatnessとSO-SOは初戦でマイクを交え、SO-SOが勝利。準決勝ではRythmindとSO-SOがバトル。結果、その年の【Grand Beatbox Battle】のチャンピオンに輝いたのはRythmindだった。因縁と呼ぶべきかはわからないが、そういった繋がりも踏まえた上で2人それぞれのソロステージを見るのも一つの楽しみ方ではないだろうか。ちなみに、【BEAT X LEAGUE】ではBeatness vs SO-SO、Rythmind vs SO-SOの再戦といっても過言ではない、BeatnessとRythmindからなるBERY vs SORRY(SO-SOとRUSYのタッグ)の対戦も行われるので、【BEAT X LEAGUE】にも足を運んで入れば一層楽しみ方も広がるはずだ。




SO-SO vs BEATNESS | Grand Beatbox Battle 2019 | LOOPSTATION 1/4 Final



 FootboxG(フットボックスジー)はベルギーのヒューマンビートボクサーだ。同じくヒューマンビートボクサーのSuper Nova(スーパーノバ)とのタッグチーム、Middle School(ミドル・スクール)を組んでおり、2021年の【Grand Beatbox Battle】ではソロ部門で3位、タッグ部門では優勝。さらに直近では8月2日から6日までドイツのベルリンで開催された世界大会、【The Beatbox Battle World Championship】(BBBWC)の男性個人部門で優勝を勝ち取った、現時点で最新の世界王者である。これまで紹介した3者と比べると若干年齢も若く(SARUKANIのメンバーよりは少し上)、ベテランというよりは現行のシーンで今輝きを放つ存在と呼べるだろう。繊細かつ大胆に、独自性と中毒性のある音を発する、個人的には今年の【BEAT X FES】で最も注目しているアクトだ。あの音がZepp DiverCity TOKYOの優れたサウンドシステムで鳴ると思うと、考えるだけで興奮してくる。補足すると、彼は【BEAT X LEAGUE】にもゲストバトラーとして参加。これは最新の世界チャンピオンによるバトルを体感できるまたとない機会だ。




FootboxG 🇧🇪 I GRAND BEATBOX BATTLE 2021: WORLD LEAGUE I Solo Elimination


 海外勢を迎える日本のアクトは【BEAT X LEAGUE】のジャッジでも参加するKAIRI。JAPAN BEATBOX CHAMPIONSHIPの優勝経験もある実力者でありながら、様々な表現の境界線を跨ぎ、ヒューマンビートボックスの可能性を探求する孤高の存在である彼の今回の出演決定に驚いた人も少なくないはず。果たしてKAIRIは【BEAT X 2023】でどのようなステージを披露するのだろうか。観客の多くにとってヒューマンビートボックスの新たな魅力を知るようなパフォーマンスを期待したい。




KAIRI | JPN CUP ALL STARS BEATBOX BATTLE | Judge Showcase


 そしてそして、【BEAT X 2023】は彼ら抜きでは語れないであろう、SARUKANI。すでにご存知の方も多いかと思うが、2021年の【Grand Beatbox Battle】クルー部門では2位に輝いた、SO-SO、RUSY、KAJI、Koheyで構成される日本を代表するビートボックスクルー兼音楽プロデューサー集団だ。ちなみに彼らは先日【IROHANIHOHETO】と題してジャパン・ツアーを行い、【BEAT X 2023】と同じ会場、Zepp DiverCity(TOKYO)を沸かしに沸かせていた。それぞれがソロでも活躍している彼らのステージは、技術やコンビネーションはもちろん、エンタメ性も非常に高く盛り上げ上手なのも特徴の一つ。もし「ヒューマンビートボックスについて何も知らない自分が楽しめるだろうか?」などと不安に思う方がいらっしゃるなら、SARUKANIがいれば、その心配は全く無いと断言できるほどだ。




SARUKANI | BEAT X FES 2022 IN JAPAN


 さて、ここまで現在発表されている今年の【BEAT X FES / LEAGUE】出演者を紹介してきたが、「マスク着用の有無については個人の判断に委ね、歌唱や声援いただくことは問題ございません」とHPの注意事項にある通り、今回の【BEAT X 2023】は声出しが解禁。ただでさえ、世界のヒューマンビートボックスシーンにおける重要人物が集う貴重な機会、なおかつ昨年は運営上の理由で開催されなかった世界大会【Grand Beatbox Battle】が今年は10月18日から21日までの4日間、東京で開催されるとあってどのプレイヤーも気合の入っているであろうタイミングだ。言うまでもなく、昨年以上の盛り上がりが期待できるはずだ。