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<インタビュー>I Don't Like Mondays. 国内外でのツアーを経て“らしさ”に今一度向き合った最新作『RUNWAY』
Interview & Text:黒田隆憲
Photo:Shintaro Oki(fort)
I Don't Like Mondays.が、通算5枚目のフルアルバム『RUNWAY』をリリースする。
コロナ禍で自らの内面を曝け出した意欲作『Black Humor』からおよそ2年ぶりとなる本作は、再びルーツミュージックと向き合い「I Don't Like Mondays.らしさ」を追求したバラエティ豊かな10曲が並ぶ。ファンクやロック、ヒップホップなど様々な音楽スタイルを身に纏い、曲ごとに変化していくその姿はまるでランウェイを颯爽と歩くトップモデルのよう。音楽だけでなく、ファッションやアートワークなどトータルでの見せ方を常に考えてきたI Don't Like Mondays.の魅力がぎっしりと詰まった一枚だ。
ここ最近は海外でのライブも増え、さらなる成長が期待される4人に話を聞いた。
「I Don't Like Mondays.とは何か?」
――まずはアルバムタイトルの由来を教えてもらえますか?
YU:昨年のI Don't Like Mondays.は、アルバムこそ出していないのですが、ツアー【Black Thunderbird TOUR】を開催したことによって、その時点での自分たちを全て出し切ることができました。それを経て、改めて「I Don't Like Mondays.とは何か?」に向き合い、音楽を通して何を表現したいのかを考えました。
そもそも僕らは“ジャンルレス”というか、様々な音楽スタイルに興味のあるメンバーが集まり、その時々でやりたいことを、「I Don't Like Mondays.」というフォーマットに落とし込んでいくやり方を続けてきました。例えるならそれは、音楽を身に纏うような感じなのかなと。着ているモデルは同じでも、その時々で身に纏うファッションが変化していくような。そして、それこそが4人が思い浮かべる共通の“アイドラ像”なのではないか。そう思って付けたのが、ファッションショーの舞台となる「ランウェイ」から取ったタイトルなんです。
KENJI:そもそも僕らが好きなバンドって、たとえばローリング・ストーンズもそうですが、音楽はもちろんファッションやアートワークなど、全て含めて僕らをワクワクさせてくれる存在だなと。
CHOJI:個人的にはレッド・ツェッペリンのジミー・ペイジや、日本だったらCharさんみたいなファッションがとにかく好きなのですが、ペイジもCharさんも絶対ジャージ姿でステージに上がったりしないじゃないですか(笑)。もちろん、そういうラフなファッションもジャンルやサウンドによってはかっこいいと思うのですが、僕自身はロック・ギタリストの王道ファッションが好きだし、そこだけは譲りたくない。そういうこだわりはメンバー全員から感じられるし、それがそのままI Don't Like Mondays.のビジュアルイメージになっていると思うんです。
SHUKI:それでいうと、今回は制作の早い段階からアー写を撮ったんです。それがきっかけとなって、今回の衣装のイメージも決まったと思っているのですが(笑)、「この写真に写っている4人が奏でた時、いちばんしっくりくるサウンドってどんなだろう?」みたいに逆算して考えながらサウンドメイクした時期もありました。アルバム用の曲が全て出揃う前に、そうやってサウンドテクスチャーの実験や試行錯誤をしながら得たことが、アルバムを制作する際に頭の片隅に残っていたのも大きいと思います。
YU:たとえば「ダイナマイト」という曲は、先行リリースしたタイアップ曲「PAINT」を除いて、今回最も早い段階にできた曲でした。前作『Black Humor』の制作がひと段落して、さっきも話したように「I Don't Like Mondays.とは何か?」に向き合った際、活動初期の頃の楽曲には80’sポップに影響を強く受けたサウンドが多かったことに気づいたんです。
――確かに「ダイナマイト」は、曲の途中でa-haの「Take On Me」を彷彿とさせるシンセフレーズが飛び出しますね。
YU:はい(笑)。とにかく自分たちが好きなもの、やりたいことを思う存分やり切ってみようと。そうやってできた楽曲が「ダイナマイト」で、そこからアルバムの軸もだんだんと固まっていきました。
SHUKI:僕ら、ライブの照明も自分たちで話し合って決めているのですが、今回は青を軸にした照明が自分的にはいちばんしっくりきたし、それも事前にアー写を撮ったからこそ気づけたことだと思っています。ちなみにドラムに関しては、これまでの僕らだったら打ち込みだけでいくところに、生ドラムをちょっと加工して混ぜてみたり。今までよりも「バンドである意味」や「バンドっぽさ」を、すごく考えながら作った作品になりましたね。
KENJI:逆に、僕の方は生のベースにシンセベースを何本も重ねていきました。音色に関してはこれまででいちばん時間をかけていますし、気がついたら打ち込みの作業がめちゃくちゃ多い制作現場でしたね。
――たとえば?
KENJI:たとえば「Sin City」は、生ベースにシンセベースを合計5、6本くらい重ねています。ベースをレイヤーすることによって、どういう効果が生まれてくるのか。どの周波数帯域を強調したいのか、歪ませたいのかクリアでいくのか、レイヤーしたベースをどんなバランスで混ぜていったら面白いか……など、実験的に微調整しながら仕上げていったので、今まででいちばん時間がかかりました(笑)。でも、その分良いグルーヴが生まれたのかなと思っていて。出来栄えにも自信がありますね。
CHOJI:ギターに関しては、ライブの時に自分ひとりでなるべく再現したいと思っているので、同じところに音が重ならないようにするなど「1本のギターで成立できるような音作り」を今回も心がけました。ただ「Beautiful Chaos」は、ギターが主役の曲だと思っていて。アコギも良い音で録れたし、エレキギターはピッキングの繊細さも表現できた。初期の僕らの「WE ARE YOUNG」にも通じるような、もっといえばあの曲を超えるようなギターソングを作ることができて良かったですね。
ESME MORI&CREAM(DPR)とのコラボ
――今回、ESME MORIとのコラボ曲「Strawberry Night」や、韓国のヒップホップ集団DPRからCREAMを迎えた「conversation」が収録されています。
YU:ESME MORIさんとは何年か前、「ENTERTAINER」という曲でご一緒させていただいて。彼は僕やSHUKIと同い年ということもあり、当時すごく楽しく作業ができたのを覚えていました。
ESMEさんは、メインストリームの曲をたくさん輩出しつつ、エッジィかつオルタナティブな部分も併せ持つそのそのバランス感覚がいつもすごい。今回は「Strawberry Night」のデモができた時、「ESMEさんならきっと、自分たちの想像を超える仕上がりにしてくれるはず!」と思ってお願いしました。いい意味でサウンドを“汚して”くれたというか、エッジを立たせてくれたと思っていますね。
――DPRには以前から注目していたそうですね?
YU:はい。東京でライブがある時は、毎回観に行くようにしていました。“K-POP”というカテゴライズはもはや不要で、新しいグローバルスタンダードというか。サウンド面だけでなく、ミュージックビデオも含めたトータルのクリエイティブが常々最高峰だなと思っていて。「いつか一緒にできたらいいよね」という話をメンバーとずっとしていました。今回は初のコラボで、しかもリモートでの制作だったので、DPRと一緒にやることを想定したデモをこちらでまず制作してから投げたところ、それを再アレンジした素晴らしいトラックが上がってきました。
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言語化できないものを表現するのが「音楽」じゃないか
――今回、YUさんの歌詞の書き方や、目に映る世界はどう変わっていきましたか?
YU:良くも悪くもあまり考え過ぎないようにしました。というのも、自分の中にあるダークな部分を赤裸々に表現するという手法は前作でやり尽くした感があって。今回はサウンドありきで、それに寄り添った言葉を感覚で乗せています。
なぜなら、思考を働かせて言葉を紡いでいくのって、限界があるなと感じたんですよ。以前の自分は、思考を重視し過ぎて感覚を軽視していたというか。でも、側から見たら「適当」と思われるところに、いかに魅力があるかが大事だし、言語化できないものを表現するのが「音楽」じゃないか、と。そこを大事にしたかったんですよね。
――きっとそれは、思考を張り巡らせた前作を経たからこそたどり着いた表現なのでしょうね。
YU:おっしゃる通りだと思います。もともと僕らは、楽曲に寄り添う言葉、響きを重視した言葉を選ぶほうだったのですが、コロナ禍でメッセージや言葉の意味に重きを置かなければならない状況に、自分自身が追い込まれていくような感覚がありました。そこで、自分自身も色々なインプットをしたり試行錯誤を繰り返したりしながら歌詞を書いて。もう一度サウンドからのインスピレーションに立ち返ったのが今作の歌詞ですね。
逆にCREAMくんと作った「conversation」という曲は、ここまで僕がヒップホップのリリックを書く日がきたのか、と感慨深い気持ちになりました(笑)。普段の楽曲で歌詞を書くのとは、また全然違う脳みそを使っている感じ……? ラップの方が言葉を詰め込めやすいですし、思ったことを割と吟味せず、すぐリリックにしてしまうところに楽しさがありました。言葉の響き、フロウの心地よさなども歌ものとはまた全然違う快感原則があるなと改めて学んだというか。難しさと楽しさ、両方を味わうことのできた楽曲でしたね。
――ところでここ最近、I Don't Like Mondays.は海外ライブも増えていますが、オーディエンスのリアクションはどんな感じでしたか?
YU:ブラジルはサンパウロで開催されたアニメフェス【Anime Friends 2022】は、やはりアニメフェスというだけあって「PAINT」がめっちゃ盛り上がっていました。でもスペインの【BUBBLEPOP】や中国山東省・煙台の【YANTAI YOMA FESTIVAL】は、いわゆる音楽フェスなので「PAINT」以上に盛り上がっていました。「自分たちがやってきたことは決して間違っていなかった」と確信できたのは嬉しかったし、大きな自信につながったなと。今後も自分たちが「これだ」と思うものを、自信を持ってその世界観ごと皆さんに届けていきたいです。
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