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<わたしたちと音楽 Vol.24>SCANDAL 自分たちらしく生きることが、バンドの軸になる
米ビルボードが、2007年から主催する【ビルボード・ウィメン・イン・ミュージック(WIM)】。音楽業界に多大に貢献し、その活動を通じて女性たちをエンパワーメントしたアーティストを毎年<ウーマン・オブ・ザ・イヤー>として表彰してきた。Billboard JAPANでは、2022年より、独自の観点から“音楽業界における女性”をフィーチャーした企画を発足し、その一環として女性たちにフォーカスしたインタビュー連載『わたしたちと音楽』を展開している。
今回ゲストに登場してくれたのは、11月3日に日比谷野外音楽堂で行われる【Billboard JAPAN Women In Music vol.1】に出演するSCANDALの4人。彼女たちはバンド結成17周年を迎えた今年、「同一メンバーによる最長活動ロックバンド(女性)|Longest running rock band with the same musicians (female)」としてギネス世界記録™️にも挑戦している。彼女たちが語る今の心境からは、バンドや音楽活動の有無に限らず“自分自身と向き合う”大切さと、そのことで得られる芯の強さが感じられた。(Interview & Text:Rio Hirai[SOW SWEET PUBLISHING]/ Photo:Miu Kurashima)
ガールズバンドであることに、 誇りを持って活動してきた
――11月3日に日比谷野外音楽堂で開催される【Billboard JAPAN Women In Music vol.1】に出演していただきますが、オファーを受けた感想を教えてください。
HARUNA:結成17周年を迎えてギネス世界記録™️に挑戦するなど、自分たちにとっても大事に考えている今年、素敵なイベントに誘っていただけたのがまず嬉しいです。女性であることを大切にバンドを続けてきた私たちですから、自分たちにぴったりなイベントだと思っています。
RINA:パフォーマンスの内容に関してはこれから細かく考えていきますが、10月にリリースを控えている新曲も含めて、今の私たちの姿をそのままお届けできたらいいなと思っています。あとはやっぱり、HARUNAが言うようにイベントのコンセプトも自分たちの気持ちとリンクしているので、音楽を楽しみながらもメッセージ性あるライブにしたいですね。
――ライブでのパフォーマンスが今からとても楽しみです。「女性であること」を大切にしているとおっしゃられましたが、具体的にSCANDALの活動に、女性であることはどんな影響があったのでしょうか。
RINA:私たちの場合、特に10年くらい前のとある時期、「ガールズバンドの域を超えているね」とか「ガールズバンドじゃなくて、もうロックバンドだね」とよく言われるようになったんです。褒め言葉として言っていただいたと思うのですが、そのときは強い違和感がありました。その気持ちに向き合ってみて、自分たちはガールズバンドが上だとか下だとかの感覚がなく、すごくこのジャンルが好きなんだなと気がついたんです。ガールズバンドであることをポジティブに捉えていたので、「ガールズバンドを超えた」と言われても褒め言葉として素直に受け取れなかったんですね。
TOMOMI:その頃をきっかけに、女性が作っているバンドの音楽を、もっとフラットに皆さんに楽しんでもらえたら良いなと思うようになりました。
自分たちらしく生きてきた結果、 辿りついたガールズバンドという表現方法
――皆さんにお会いするまでは、わざわざ“ガールズ”と冠さなくても良いんじゃないか、ガールズバンドと括られることに抵抗感を持っているんじゃないかと思っていたんです。だから「ガールズバンド」というジャンルが好きで誇りを持っていると聞いて、自分自身の考えの至らなさに気がつかされました。どんなところが気に入っているのでしょうか。
TOMOMI:インディーズの頃から海外でライブをする機会があって、その頃は4人お揃いで制服の衣装を着たりしていました。そのスタイルから、現地ではアニメや漫画のような“ジャパンカルチャー”の一つとしてガールズバンドを捉えてもらっていたように思います。アメリカでインタビューを受けたときには、「女性4人で活動していて、どうしてダンスグループをやらなかったの?」と言われたこともありました。そう言われたのは、当時EDMが流行っていたからでもあると思うのですが、それくらい当時のアメリカで女性だけのバンドは珍しかったんじゃないでしょうか。自分たちはそうカテゴライズされることを新鮮に感じていたし、肯定的に感じていたんです。
RINA:その時々、また国によってもバンドブームがあったり去ったりはしていますよね。そんな波がある中で私たちは17年続けてきたことで、「楽器をやりたい」「バンドをやりたい」という女の子たちに対してずっと扉をオープンにしてこられたとも思う。そういった点も含めて、ガールズバンドというアイデンティティは自分たちがずっと誇りに思えている部分です。
MAMI:ガールズバンドというジャンルが好きでそのためにやっているというより、私たちにとってはガールズバンドをやることがが自分たちらしく生きていくってことなんです。普段感じているメッセージを曲に乗せて届けるときに、私たちにはバンドという手段が一番合っていたんですよね。
――ボーカルやダンスを勉強するミュージックスクールで出会い、講師陣の計らいで楽器を始めてバンドを組んだというのが結成のエピソードだそうですね。その当時は今よりも女性だけでバンドを組んでいる人は少なかったと思うのですが、初めはどのような心境だったのでしょうか。
RINA:今までやってこなかった楽器を始めるという挑戦の気持ちもありましたし、技術的な難しさも感じていました。でも、、周りの子達がやってこなかったことができている喜びや、できなかったことが徐々にできるようになる楽しさもありました。通っていたミュージックスクールでは初のガールズバンドだったので、その特別感もありましたね。
HARUNA:それまでもずっと音楽が好きでそのスクールに通って、歌とダンスでステージに立ちたいと思っていたけれど、なかなか芽が出なくて。当時私は高校3年生だったので、夢を叶えられないまま大学に進学するのか、就職活動をするのか、というタイミングで「このチャンスを逃したくない」という気持ちもありました。1人だったら挫けていたかもしれないけれど、3人がいたから、毎日楽しく新鮮な気持ちで続けられたのだと思います。
――そもそも、どうしてバンドに挑戦する女性は男性に比べると少ないのでしょうね。
RINA:やっぱりバンドは1人じゃできないので、女性たちだけで組むと、それぞれに出産するタイミングが訪れたりして、ライフステージが変わる時期がやってきますよね。そうじゃなくても体自体が20代、30代と変化していくので、気力があっても体力や時間的に難しいという問題にもぶつかるのだと思います。そういった意味で、男性よりも女性にとってのハードルが高いのかもしれません。
TOMOMI:そうなんです。それぞれが違う時期に出産をするとなると、何年も活動を休止せざる得なくなりますよね。だからやっぱり子育てをしながら音楽を続けているアーティストを尊敬しますし、大変なことだと思います。
HARUNA:それを考えると、私たちの場合は、結成が早かったのはラッキーだったかもしれないですね。早くから活動していたから、ある程度続けてきた段階でライフステージが変わるタイミングを迎えられるという。
RINA:そうやって、キャリアとプライベートの兼ね合いについて、音楽活動ではなく会社勤めをしているような女性たちと同じような悩みを抱えた時期もあります。「どうやって生きていくのが幸せなんだろう、楽しいんだろう」と悩んだことをきっかけに、音楽の作り方も変わりましたね。
HARUNA:そうそう。フェスやライブで盛り上がるようなアップテンポで派手な曲を多く作る時期もあったのですが、「それだけでいいのかな」と考えるようになりました。
MAMI:女性として自分たちの生き方やこれからに向き合ったことが制作にも影響を与えて、それがすごく良かったと思います。
――そういった心境の変化について、4人の間で話したり共有することはあるんですか。
MAMI:定期的に改まって話す機会を持っているわけではないのですが、今みたいにインタビューの中でそれぞれの意見を確認して「そうだよね」と思う機会は度々あります。あとは曲を作っていく中で、自然とそういう話になることも。「とにかく長く楽しく、心身ともに健康に正直にバンドをやっていきたいよね」という点は、ずっと共通した意識だと思います。
TOMOMI:その共通の意識のもとで、都度アップデートして新しい自分たちでいたいという思いも、日常の会話の中でシェアできている感じですね。
これからも長く続けていくために、 大切にしていること
――17年間続けるということがどれだけ大変なことだったのかが、少しずつ見えてきました。SCANDALはどうしてこれまで長く続けられたのでしょうか。秘訣を教えてください。
MAMI:私は作詞作曲をすることが多いのですが、悩んだ時にメンバーに相談すると、私に足りない要素を補うようにヒントをくれたりする。一人ひとりの足りない部分を、メンバーそれぞれが補っている感覚があるんです。
TOMOMI:最初にこの4人に声をかけてくれた先生に見る目があったのかもしれないですね。「どうしてこの相性の良さがわかったんだろう」ってくらい、パズルのピースみたいにぴったりハマって。
HARUNA:あとは、最後まで楽器をやめなかった4人だから、やっぱり負けず嫌いだし根性があるよね(笑)。先生もそういうところを見ていたのかもしれませんね。
RINA:確かに(笑)。17年続けてきた今でも、矢印が同じ方向を向いていることが多いんですよね。私たち、自分たちの方向性に悩んでいた時期もすごく長かったんです。音楽やパフォーマンスはもちろん、衣装についても、本当に色々なことに挑戦してきました。そんな中で不思議と、何をしたらテンションが上がるか上がらないかも、気持ちが揃うんです。
TOMOMI:方向性が定まらなくて悩んでいた時期は長く続いたけれど、色々なことに挑戦するうちにいつの間にか抜け出しました。多分何者かになろうとしてもがいていたのだと思います。どこかの枠に収まりたかったんだけど、それをやめたら楽になったのかな。
RINA:それから、「伝わるまで伝えよう」というのが私たちの合言葉なんです。泥臭くてもカッコよくなくてもいいから、「ステージで全部伝え切ろう」というマインドになってから、苦戦してたところから抜け出すことができました。
HARUNA:続けることでしか伝えられないものがあることもわかったよね。だからこそ、表現する音楽がどんどん変わってきているのだと思います。今しかできないことも尊いけれど、長く続けるために、50代になっても違和感なく続けられる音楽がやりたい。
――「長く続けられる音楽」というのは、具体的にはどういうものだと思いますか。
RINA:BPMとか音色とか、あとは歌詞ですね。今の自分たち的にOKかどうかのラインがあるんです。
HARUNA:バンドの精神論だけじゃなくて、自分の生活の言葉を歌詞にしていきたいと思っています。表に見えていることだけじゃなくて、日々の生活や自分たちの内側みたいなところから出てくる言葉も、バンドの人格として持っていることが奥行きになるんじゃないかと。
RINA:ずっと走り続けてきたから、コロナ禍で一度、立ち止まることの大切さを感じました。その頃、どんな生き方も音楽になるなと思ったんですよね。私たちは若いときから活動しているからか、大人の女性として認識してもらうのがなかなか難しいんです。みんな最初に見たときの印象が残っているでしょう? だからこそ、今の自分たちをしっかり言葉にして、音楽で表現していこうと思っていますし、そういう自分たちでいることで、これからもよりバンド人生を楽しんでいける気がしています。
11/3(金・祝)に開催される
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) August 1, 2023
【祝・日比谷野音100周年 Billboard JAPAN Women In Music vol.1 Supported by CASIO】にSCANDAL @scandal_band が出演決定⚡️
FC先行、ClubBBL会員先行、e+先行も受付スタートしました🎶
詳細はこちらへ⬇️https://t.co/AO988fXvFh#BBJWIM https://t.co/wSwuLs5JGJ pic.twitter.com/bCtxr3CBe3
プロフィール
2006年、大阪・京橋で結成。2008年「DOLL」でメジャーデビュー。翌年には「少女S」でレコード大賞新人賞を受賞。国内外問わずに多くのフォロワーを持ち、世界中でコンサートを行っている。近年ではファッションアイコンとしても注目を集め、自身のアパレルブランド"FEEDBACK"をプロデュース。2019年にはプライベートレーベル"her"を設立した。2023年8月21日になんばHatchで開催する結成17周年記念イベントでギネス世界記録™に挑戦。ニューシングル「ハイライトの中で僕らずっと」を10月4日にリリースする。
イベント情報
Billboard JAPAN Women In Music vol.1
Supported by CASIO】
2023年11月3日(金・祝) 東京・日比谷公園大音楽堂
出演:SCANDAL/にしな/のん
SCANDALファンクラブ先行(抽選)
ClubBBL会員先行(抽選)
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