Special
<対談>Murakami Keisuke×Galileo Galilei・岩井郁人が意気投合して完成した音楽の“種”
Interview & Text: 松永尚久
Murakami Keisukeの3年ぶりのフル・アルバム『Water and Seeds』がリリースされた。Renato IwaiやGalileo Galileiの岩井郁人、Michael Kanekoらが参加した本作には、Murakami Keisukeが得意とするソウルフルでキャッチーな9曲が揃っている。
「SUPERNOVA」「Strawberry Girl」「Muse」の3曲を提供したGalileo Galilei・岩井郁人とMurakami Keisukeの対談を実施。年も近く、長年ソングライターとして活動してきた二人だからこそ通じ合うものがあったようだ。コライトキャンプで意気投合して誕生した楽曲の裏側について、話を聞いた。
――3年半ぶりのオリジナル・アルバム『Water and Seeds』が完成しました。Murakamiさんにとって、この3年半はどんな時間でしたか?
Murakami Keisuke:ちょうど新型コロナの影響を受けていた時期にあたると思うのですが、その間に技術面といいますか、作曲、ヴォーカル力で成長できたのかなって。2017~2018年のデビュー当時に思っていた「こんな音楽をやって、こういうふうに見られたい」という自分の理想により近づくことができたと思います。
――タイトルを『Water and Seeds』にした理由は?
Murakami Keisuke:抽象的なものでありながらも、具体的にも感じられる言葉はないかと考えていた時に“ウォーター(水)”が僕の中でピンときて。脳科学的に言えば、水は人類を応援する存在と言われているらしく、その考察が自分にとってしっくりきたんです。スタッフと話しているなかで、「ウォーターだけだと漠然とし過ぎているかも」という意見があって、この作品は今後、自分の活動に花を咲かせる“種”になると、楽曲を完成させていくたびに感じていたので、当初考えていた“ウォーター”と組み合わせて、このタイトルをつけました。
――今回のアルバムには、岩井郁人さんを含め、多彩なミュージシャンの方々が制作に参加されていますね。
Murakami Keisuke:岩井さんとは、2022年の春に北海道の芸術の森スタジオにて2人きりで行ったコライトキャンプで知り合いました。当時の僕は、コロナを経て今後何ができるのかが全然見えてなかった時期で、(周囲に)どう見られるか無視して、とにかく好きなものを好きなふうに作ってみよう、世代や国境を超えて、おもしろいと感じてもらえるものを作ろう、という思いで、朝から晩までセッションして完成したのが(アルバム収録曲の)「Strawberry Girl」です。この楽曲を作ることができたことが、自分にとってはとても大きな出来事で。アルバム全体の道筋が見えてきたというか、漠然と思い浮かんだこと、自分の作りたい音楽の方向性が、岩井さんとの出会いをきっかけに、具体的にわかりました。すると自然に、今回のアルバムで一緒に制作したい・すべきミュージシャンの方々の顔が次々と浮かんできましたね。
岩井郁人:実は、コライトキャンプでお会いするまでは、Murakamiさんのことをあまり存じ上げていませんでした。共通の知人を通じて、事前にいくつか楽曲を聴かせていただいたうえで、北海道の芸森スタジオで初対面をしたという感じでしたね。2泊3日、2人きりで寝食を共にしながら、好きなものの話や価値観など、たくさん話をしていくうちに、音楽にとても詳しいし、アコースティック・ギターで弾くフレーズや鼻歌で歌う歌とかのセンスが半端ないって思いました。それと同時に、音楽への造詣の深さを、これまでの活動で十分に表現できていないフラストレーションを抱えていることも感じて。そのギャップを、一緒に作業をすることで埋められたらいいなって。結果、Murakamiさんが感じている思いを、一緒に音楽として変換できたんじゃないかなと思います。これが、新しいMurakami Keisukeの遺伝子の1つになってくれたらうれしいですね。
――岩井さんがバンドで追求されているサウンドと、Murakamiさんのシンプルでソウルフルなものとは、音楽の方向性が異なる印象がしますが。
岩井郁人:確かに、アウトプットの形は、僕の場合はオルタナティブな方向で、Murakamiさんはブラック・ミュージックで、異なるものになるのかもしれません。でも、音楽への愛とか、知らない分野への好奇心とか、いい作品をたくさん聴きたい欲求は一緒です。Murakamiさんが勧めてくれた音楽は全部いいって思ったし、逆に僕が好きな作品もいいって言ってくださったし。音楽への愛みたいなところは、共通しているというか。アウトプットの方向性は異なるのかもしれませんが、インプットへの貪欲さが近いって思ったからこそ、一緒に曲作りができたんだと思います。
――そのせいか、とても自由な雰囲気で音楽と向き合っている姿が、アルバム全体から漂ってきました。
岩井郁人:制作中のMurakamiさんは、とてもリラックスしていたように感じました。
Murakami Keisuke:楽曲制作していた頃は、何も考えずに、とにかく自分の作りたい音に集中していたけれども、振り返ってみて「なんて楽しい作業だったんだろう」と思った。それは、岩井さんとの相性が良かったからなんだろうなって。今回3曲を一緒に制作したのですが、そのうちのひとつである「Muse」は、15分くらいで完成しました。
――岩井さんと制作された3曲は、どれも風通しの良い環境でセッションしていらしたのでは?
岩井郁人:電波もあまり届かないんじゃないかってくらいの自然に囲まれた空間のなかで、スピーカーと鍵盤、ギター、そしてパソコンを持ち込んで制作したので、ミュージシャンをたくさん呼んでセッションしたっていう感じではないんですけれども、アコースティック・ギターの響きは「あのアーティストのこの楽曲の雰囲気だよね?」とか、「ここにサックス入れてみては?」と提案したり、お互いが聴いてきた音楽のアーカイブというか、愛みたいなところをぶつけあい完成させたという部分においては、セッションだったのかなって思います。
――完成された楽曲は、3曲とも恋愛をモチーフにしながらも、より大きな愛が伝わってくる仕上がりですね。
Murakami Keisuke:恥ずかしながら、僕がロマンチストなところがありまして(苦笑)。そういう自分のコアな部分や忘れたくない価値観が色濃く反映されていると思います。岩井さんとプライベートの話も混ぜながら話していくなかで、何を大事にして生きていくかなどを考えていくうちに、表現できたものじゃないかって。
リリース情報
Murakami Keisuke『Water and Seeds』
2023/7/19 DIGITAL RELEASE
配信リンク
Galileo Galilei『Bee and The Whales』
2023/5/31 RELEASE
配信・購入リンク
公演情報
【NU AiR Fes 2023】
8月19日(土)、8月20日(日)※Murakami Keisukeは8月20日に出演
会場:東急百貨店さっぽろ店屋上 NU AiR Roof Top of Sapporo
詳細はこちら
【Galileo Galilei Tour 2023 "WINTER HARVEST" - 冬の収穫祭 -】
11月6日(月)北海道・札幌 PENNY LANE24
11月13日(月)大阪・なんばHatch
11月15日(水)東京・豊洲PIT
関連リンク
Murakami Keisuke 公式サイト
Murakami Keisuke Twitter
Galileo Galilei 公式サイト
岩井郁人 Twitter
――先行トラックとして発表された「SUPERNOVA」は、岩井さんはコンポーザーだけでなく、ソングライティングにも参加されていますね。
岩井郁人:この楽曲は、コライトキャンプを終えてしばらく経った後に、Galileo Galileiのヴォーカルである尾崎雄貴が所有するスタジオで制作したものです。僕はMurakami Keisukeには変態性というか、カオスな部分があって、その爆発したいと思っている欲求を掘り出すことができた曲なんじゃないかなと。歌詞に関しては、Murakami Keisukeというアーティストは、ロマンチストでピュアな生き物だと会うたびに感じていて、そこは自分にもある部分なので、共通点のあるふたりが集まることで、よりロマンチストな部分を肯定できたというか。素直に出すことに抵抗がある、自分の深い部分を自然に引き出せたような気がします。
Murakami Keisuke:ある程度の関係性が構築できていなかったら完成できなかった曲だと思うんです。だからこそ、もう時間を無駄にしたくない、今後の人生は意味のあるものだけに費やしたいというピュアなエネルギーを表現できたのではないかなって。
――そのほかの収録曲も聴きごたえのある仕上がりになっていますね。
岩井郁人:僕は、このアルバムが完成したことが自分のことのように嬉しくて。なぜかと言うと、初めて出会った時から彼は音楽が本当に好きな人であることが伝わってきて、それを表現しきれていないフラストレーションを抱えていることもわかっていたので、それを今回完成された収録曲を通じて、どんどん解消されているなって感じたからです。Galileo Galileiも自分たちが好きな音楽を色濃く反映した作品を発表した時、想像していた反響を得られなかった経験があって。その時メンバー間で話していたのは、音楽の種を蒔いていこうということでした。リスナーの方々と世界の素晴らしい楽曲を共有して、バンドだけではなく音楽そのものを好きになってくれる人を少しでも増やしていこうと。その当時の僕らのことが、このアルバムを聴いて蘇ってきたというか。これから、Murakami Keisukeが愛する音楽の種がたくさんの場所に散らばって、それぞれに大きな花を咲かせていくような。その始まりに自分も関われたような気がして光栄ですね。
Murakami Keisuke:今回、アルバムという大きな枠を形成させたことで、自分の現在の価値観を確認できました。気持ちの節目ができて、本当に完成させてよかったと思いましたね。これがどうリスナーのみなさんに届くかはわかりませんが、音楽に対する教養を深めていただくきっかけになればいいですね。「こういう音楽もありだよね」と、さらに興味を深めていただけたら嬉しいです。
――また、今後のライブも楽しみになる仕上がりですね。
Murakami Keisuke:僕の根底には「ソウル」というマインドがあって、それは音楽のジャンルではなく、僕を表現することを意味するものだと考えています。どんなタイプの楽曲を歌っている時でも「ソウル」が宿っていて、ある意味、自分の起爆剤のようなものです。以前はすべてを表現しきれていない気持ちがあったのですが、ここ数か月のライブは楽しめるようになれたというか。自分に絡みついていた鎖みたいなものが、ちょっとずつ切れていって、現在では解放された感があるんですよね。今後のライブは、より魂を感じていただけるというか、会場に足を運んでいただいたみなさんと、より「ソウル」で繋がるパフォーマンスができそうな気がします。
――楽しみですね。また、今後も岩井さんとのコラボレーションは続いていくのでしょうか?
岩井郁人:人生において大きな転換点っていくつか起こると思うのですが、今回一緒に楽曲を制作したことで、自分のなかで新たな価値観が生まれた気がします。僕は今回の一連の作業は、今まで経験したことのないやりやすさ、また自分の頭の中に潜んでいた、メロディや音楽センスを引き出してくれたような感覚があって。特別な経験でした。何か新しいものを生み出す化学反応が起きたとも思っています。またMurakamiさんと制作できることが楽しみですね。
――また、岩井さんは11月からライブツアー【Galileo Galilei Tour 2023 "WINTER HARVEST" -冬の収穫祭-】を開催されますが、そこでも共演があったり?
岩井郁人:(笑)。バンドは、5月にアルバム『Bee and The Whales』をリリースして、ツアーもひと段落ついている状況で、今はソロのプロジェクトも同時進行させようと考えているところなので、リズムの取り方など、自分にはないセンスをMurakamiさんに補っていただけたらなって。
Murakami Keisuke:ぜひ、いつでもご連絡ください! お待ちしています(笑)。
リリース情報
Murakami Keisuke『Water and Seeds』
2023/7/19 DIGITAL RELEASE
配信リンク
Galileo Galilei『Bee and The Whales』
2023/5/31 RELEASE
配信・購入リンク
公演情報
【NU AiR Fes 2023】
8月19日(土)、8月20日(日)※Murakami Keisukeは8月20日に出演
会場:東急百貨店さっぽろ店屋上 NU AiR Roof Top of Sapporo
詳細はこちら
【Galileo Galilei Tour 2023 "WINTER HARVEST" - 冬の収穫祭 -】
11月6日(月)北海道・札幌 PENNY LANE24
11月13日(月)大阪・なんばHatch
11月15日(水)東京・豊洲PIT
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Murakami Keisuke Twitter
Galileo Galilei 公式サイト
岩井郁人 Twitter
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