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<インタビュー>「NIGHT DANCER」が韓国で大ヒット中、音楽歴2年のimaseが語る音楽ルーツと自身の強み
2021年5月にTikTokで「音楽経験0の素人がオリジナル曲作ってみた(dtm歴4ヶ月)」という投稿とともに初めてオリジナル曲を発表。それから約半年後、2021年12月に自身のバイラルヒット曲「Have a nice day」でユニバーサル ミュージック内<Virgin Music>からメジャーデビューを果たしたimase。2022年8月に発表した「NIGHT DANCER」は現在、国内はもちろん韓国を中心に海外にまでリスナー層を広げており、SNSではLE SSERAFIM、TOMORROW X TOGETHERといったK-POPスターたちのダンス動画も見ることができる。
そんななか、5月には最新シングル「Nagisa」をリリース。Jazzin'parkの久保田真悟がアレンジを担当、レトロな80’sサウンドをフィーチャーした同曲について、そしてimase自身の音楽ルーツやアーティストとしての個性、強みについて、本人に語ってもらった。(Interview:Takuto Ueda / Photo:Yuma Totuka)
今は実力も自信もついてきたと思います
――まずはimaseさんが音楽活動を始めたきっかけを教えてください。
imase:高校卒業後、働き始めて1~2年が経った頃に友人がギターを弾いているのを見て、自分も弾き語りをしてみたいと思ったことがきっかけです。幼少期からずっと歌うことは好きでしたが、活動を開始した頃は音楽を仕事にするというビジョンはなく、一般的な社会人として企業で働き続けるつもりでした。
――本格的にお仕事として音楽活動をしていこうという気持ちに切り替わったのはいつ頃?
imase:覚悟が決まったのは比較的最近です。最初に「Have a nice day」が広まって、その次の「逃避行」もたくさんの方に聴いていただけて。でも、バズは運の要素も強いじゃないですか。当時の自分は今よりも知識がなかったので、「これでやっていけるのかな」という不安がかなり大きかったんです。でも、レーベルに所属したりタイアップをいただいたり、活動していくなかで様々な経験をして、今は実力も自信もついてきたと思います。
――何か転機になるような出来事はありましたか?
imase:一つ挙げるとしたら、3月に渋谷WWWで開催した初めての有観客ライブですかね。今までTikTokやサブスクの向こう側にいたお客さんと対面して、自分が皆さんを楽しませる立場であることを実感したタイミングでした。実際にみなさんがいる空間で、自分が作ったものを共有できたことがとても嬉しく、楽しかったです。今後はもっとレベルアップして、さらに良いライブをしていきたいと思いました。楽曲に関しても、ライブ映えするものを作っていきたいなと思います。
――これまでライブを意識した曲作りはしたことがなかったですか?
imase:あまりなかったですね。最初に投稿した「Have a nice day」もその後の曲も、打ち込みがほとんどで、ライブで演奏することを想定せずに作っていたので。ですが、最近発表した「Nagisa」や、これからリリースしていく曲は、ライブもイメージしながら制作していくと思います。
――ライブでパフォーマンスしてみて意外だったり、新鮮な手応えを感じた曲はありました?
imase:どの楽曲にも意外性や新鮮味がありました。音源のままの演奏はできないので、シーケンスも出しつつ。僕の楽曲はギターが入っていないものも多いですが、ライブではバンドにギターを入れてもらったり。ライブ用の音作りをすることによって、サブスクで聴く音とライブで聴く音とを差別化できるのではないか、と改めて感じました。
――そもそもリスナーとしてはどんな音楽がルーツなんですか?
imase:根底にあるのは日本の歌謡曲やポップスですね。幼少期には車で松田聖子さんが流れていたり、中学生の頃はGReeeeNさんや湘南乃風さん、高校生の頃は米津玄師さん、SEKAI NO OWARIさんなどを聴いていました。加えて、音楽活動を始めてから洋楽も聴くようになりました。昔聴いていた歌謡曲のメロディーと、今聴いている洋楽が良い塩梅でミックスされて今のルーツになっているのかなと思います。
――洋楽はどんなアーティストを聴きます?
imase:よく聴くのはR&Bですね。特に韓国のアーティストが好きです。ブルーノ・マーズやジャスティン・ビーバー、ポップスのアーティストもよく聴きます。
――実際、imaseさんの楽曲はダンサブルなリズムのアプローチと歌謡曲的な耳馴染みの良いメロディーが個性的であるように感じます。
imase:そうですね。最近は、メロディーの譜割りが細かくBPMも速い曲が多い気がしますが、自分の楽曲は歌謡曲ならではの普遍的なメロディーが強みであると思います。また、裏声、ファルセットも個性を出せているひとつの要因だと思います。
――そういう自分の強みや個性を自覚した瞬間って?
imase:それこそ「Have a nice day」を作ったときですかね。もともと自分の歌声がすごく苦手だったので、地声と裏声を4本ずつぐらいミックスし、歌声が分からないような曲を作っていたんです。でも弾き語りのオーディションでは、歌声1本で臨んだんです。その時に、裏声のほうが楽曲が映えるなと感じました。
“imaseっぽさ”とは
――「Have a nice day」や「逃避行」がTikTokを中心にバズり、現在は「NIGHT DANCER」が韓国やタイなど世界各国でも大ヒット中。多くのインフルエンサーやアーティストたちがダンス動画を投稿しています。楽曲のバイラルヒットに関して、imaseさん自身はどんな要因があると自己分析しますか?
imase:時期によって、バイラルする楽曲が全く異なる気がします。「Have a nice day」や「逃避行」を出した頃はTikTokでは良い意味で素人感のある、親近感の湧くような曲が流行っていたイメージがありました。でも、2022年の上旬頃からアッパーな曲が流行りだして。「NIGHT DANCER」のように少しアップテンポで気分が上がる感じがうまくはまって、たくさん聴いてもらえたんじゃないかなと思います。
――楽曲を制作する際、社会的なムードやトレンドの移り変わりも意識している?
imase:意識しているというよりは、僕自身もリスナー目線なところがあって。そのときに自分が作りたいものが、みんなが求めているものと一致することが多いのかなと思います。
――この数年間で身の回りの環境も目まぐるしく変化したかと思います。制作スタイルへの影響などはありましたか?
imase:今まで制作した曲に表れている “imaseっぽさ”は自分でなんとなく分かってきたので、そうじゃないものを作っていきたいです。もちろん、タイアップなど自分らしさを求められた際はしっかりと“imaseっぽさ”を出せるようにしつつ。それ以外のときは変化をつけて、「こんなこともできるんだ」と思ってもらえるような楽曲を作りたいなと思います。
――その“imaseっぽさ”を言語化することはできますか?
imase:ポップさ、楽しさ、あとは跳ね感ですね。スタッカートを効かせたメロディーは“imaseっぽさ”のひとつだと思います。また、サウンドはピアノの印象が強いと思います。最近リリースした曲にもピアノは必ず入っていますし。
――5月26日にリリースした「Nagisa」については?
imase:「Nagisa」はリバイバルに特化した曲ですね。
――80’sテイストを散りばめた楽曲ですよね。制作時にリファレンスにした楽曲はありましたか?
imase:80’sの曲だと松原みきさん、オメガトライブさんは特にリファレンスにしました。コードも日本のR&Bで多く使われている進行で、全体を通してシティポップを感じられるようにしてその中で、今っぽさも感じられるような歌い方を意識しました。また、今回はJazzin'parkの久保田真悟さんに編曲をお願いしました。
――imaseさんは普段、どんなところで新しい音楽と出会うことが多いですか?
imase:チャートは常に確認しています。特に洋楽は、トレンドの曲をたくさん聴いています。あとは、サブスクのおすすめが多いですね。自分が作りたい音楽ジャンルを集中して聴くことが多いので、同じようなジャンルの曲がまとまっているプレイリストをよく聴きます。
――最近のお気に入りを挙げるとしたら?
imase:おすすめしたいアーティストはjo0jiさん。YouTubeに投稿されている「駄叉」という曲が一番好きです。ソウル感もありつつ、昔の歌謡感もあって。あと、声がいいんですよ。他にも、今後自分が作りたい音楽の系統だと、Cafunéの「Tek It」やスピッツさんの「甘ったれクリーチャー」がお気に入りです。
▲jo0ji - 駄叉
――では、最後にあらためて、imaseさんが目指すアーティストとしての目標、今後のビジョンをお聞かせいただければと思います。
imase:最近は、ありがたいことに海外でも聴いていただけているので、今後も言語の壁を越えて国内外問わずもっと多くの方々に聴いていただけるような曲を作っていきたいです。
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