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<インタビュー>ボンジュール鈴木 & RinRin Doll、ロリィタファッションを通して世界に届けたいメッセージ

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Interview: 岡本貴之
Photo:SAKUnoTORIDORI

 シンガー・ソングライターとしてアニメ、ゲーム、映画などでの歌唱、楽曲提供、音楽プロデューサーとしても才能を発揮しているボンジュール鈴木と、ロリィタ(ロリータ)ファッションモデルやYouTuberとして国内外で活躍しているRinRin Dollが、音楽ユニット「ボンジュール鈴木 & RinRin Doll」を結成。2023年6月30日にデビュー曲「Carnival Dolls」をリリースして本格的に活動をスタートする。共に海外で絶大な人気を誇る2人が手を取りあって新たな扉を開け、世界の人々に伝えたいメッセージとは? その想いを聞かせてもらった。

お互いが与える音楽的相乗効果

――ユニット結成の経緯を聞かせてください。まず、お2人の出会いから教えてもらえますか?


鈴木:人気ロリィタブランドの「Angelic Pretty(アンジェリックプリティー)」さんのファッションショーに私が出演して歌わせていただいた時に、すごく不思議な魅力のある綺麗でかわいいモデルさんがいて、とても惹きつけられてしまって。それがよく見たらRinRinだったんです。彼女が雑誌とかでたくさん活躍してるのを知っていたんですけど、そのときは話しかけられなくて。しばらくして別の機会でまたお会いすることができてみんなでご飯を食べたりして、親しくさせていただくようになったんです。RinRinはTikTokにダンス動画とか中国舞踊の動画を上げていて、それを見たらすごくダンスが上手なんですけど、プライベートで遊びに行ってカラオケで歌を聴いたら、声もかわいくて魅力的だったんです。それで「何か一緒にやろうよ」って、自然な流れでユニットが始まりました。

RinRin:最初に会ったときは、ボンちゃんのショーをちゃんと観れなかったんですけど、リハーサルの時にステージ裏から歌が聞こえてきてかわいいなと思って見ていました。そのあとプライベートで遊ぶようになってからは、面白い人だなって(笑)。

鈴木:あはははは(笑)。



RinRin:でも、今まで会った人にこういう人はいないというか、家族みたいにすごくケアしてくれるんです。特にコロナ禍では心配してくれて、トイレットペーパーが貴重だった時期に送ってくれたりとか。日本で13年過ごしてきた中で一番優しくしてくれた人なので、一緒に仕事ができて嬉しいです。

――プライベートでお互いをよく知ってからスタートしたユニットなんですね。鈴木さんはもともと1人でも音楽活動をしていらっしゃいますが、RinRinさんと一緒に活動したいと思ったのはどんな理由があったんですか?


鈴木:彼女の活躍をTikTokやYouTubeで見ていて、すごいなーと思っていたんです。いるだけでアーティスティックで絵になるような。一方で、プライベートではすごくかわいらしくて優しくて純粋ですごく繊細な心の持ち主なんです。そういうところを音として伝えていきたいなと思いました。

――それはご自分のソロ活動で作る音楽とはまた違うわけですか。


鈴木:彼女のDOLLのように美しく不思議な魅力をひき出せるような楽曲にたどり着くまで時間がかかりましたが、やっと「RinRinとやる1作目だったらこれがいいかもしれない」と形にできた曲が「Carnival Dolls」です。

――「Carnival Dolls」の前に、カバー曲「Santa Baby」のMVが公開されていますよね。あれはどんな理由で発表したんですか。


RinRin:クリスマスだったから(笑)。私は基本的に友だちと楽しい作品を作るのが好きで、ずっとボンちゃんと何か一緒にやりたいなと思っていて、クリスマスに「『Santa Baby』かわいいじゃん」って言って一緒にMVを作りました。







――お2人が共通して好きな音楽ってあります?


鈴木:たぶん共通点ってそこまでないんですよ。

RinRin:そうだね。私がプレイリストを出したら、珍しいとか聴いたことがない曲ばかりって言われます。

鈴木:アメリカの音楽はずっとBillboardさんのチャートで勉強させていただいているのですが、私が好きそうな曲をRinRinがいろいろ教えてくれてます。

RinRin:私は女の子の不思議っぽい感じだったり、ちょっとハードな部分やラップが入っている曲が好きで、それは結構ボンちゃんに聴かせました。最近はハイパーポップにハマって、超明るくなりました(笑)。

鈴木:RinRinは、私が好きな不思議な感じの音楽をアメリカでやってるアーティストを知っているので、違う視点なんですけど共通しているところもあるんです。

RinRin:私が好きなのはフェミニンでクールな感じがあって、ボンちゃんはちょっとミステリアスな曲調が好きだと思います。

鈴木:実はエレクトロニカ、HIPHOP、ポップミュージック、ソウルミュージック、ロック、チルウェイブ、教会音楽、フレンチ、house、ドリームポップなど、ジャンルにとらわれず不思議な気持ちになる心地よい音楽や、特に電子音の中にバイオリンやハープが入ってる曲が特に好きですね。あとは、FKJなど一人で色々な楽器を演奏する素晴らしいアーティストの音楽を聴いて、自分を奮い立たせています。でもRinRinが私の知らないアメリカの音楽も聴かせてくれて世界を広げてくれています。

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ロリィタファッションが持つパワー

――では、それぞれのルーツや活動について訊かせてください。鈴木さんはクラシックピアノを小さい頃から習っていたんですか?


鈴木:はい。3歳からずっとクラシックピアノをやっていて、お箏、三味線、ハープ、Violaなども習っていました。母がジャズを歌う人だったので、子どもの頃からソウルミュージック、スタンダード・ジャズ、Bossa Nova、モータウンやフレンチミュージックなどを聴いて育ちました。親戚にフランスの方がいるので父に「フランス語を勉強しなさい」と言われて音楽や映画やアニメなどでフランス語を勉強して、後に南フランスに留学しました。幼少期から母と一緒にスタンダードジャズなどをパワフルに歌わされていたのですが、留学中に出会ったボイス・トレーニングの先生から「あなたは声質が変わっているから、聴いた人が映画を見ている感覚になような表現や上手に歌おうとか自分が気持ちよくなる歌い方より、優しい気持ちになれたりするような歌い方をしてみたら?」などのような事を言われて、とてもハッとしたというか。そこでアイスランド、フランスなどの歌を聴いて歌い方を見つけていったのが、今に反映されていると思います。

――ボーカルだけじゃなく、作詞作曲編曲、演奏、ミックスまで全部1人で作り上げているそうですね。


鈴木:そうですね。お願いすることもありますが一人でやることも多いですね。フランス人のEmilie Simonさんというエレクトロミュージックを中心に作詞作曲編曲・歌唱をされている女性アーティストさんに憧れて、いつか私も一人で全部でやってみたいなと思い勉強しはじめました。



――2019年にリリースしたアルバム『Sweetie Sweetie』ではTomgggさんをはじめとするトラックメーカーとコラボしてますよね。


鈴木:Tomgggさん、Yunomiさん、TAKU INOUEさん、Jun Kurodaさんなど私が好きなトラックメイカーさん達に編曲をしていただきました。もともとTomgggさんの曲が好きでCDも持っていて、後に偶然歌わせていただく機会や、楽曲提供などでもご一緒させていただけてとても嬉しかったです。


――RinRinさんは、いつ頃から音楽に触れてきましたか?


RinRin:アメリカ・ロサンゼルス出身なんですが、子どもの頃からピアノや中国の古箏を習ったりしていました。音楽はわりと趣味で聴いてきた感じです。

――ロサンゼルスと聴くと、ロックのイメージもありますが、そういう音楽には触れてこなかったですか?


RinRin:聴いてましたよ! 高校生の頃からずっとリンキン・パークとか、ロックだけじゃなくエミネムとかも聴いてました。

――モデルやYouTubeの活動は、日本に来てから始まったんですか?








RinRin:そうです。日本に来てからロリィタファッションのモデルを始めて、「Angelic Pretty」さんのカタログとか、「KERA」「Gothic Lolita Bible」とかで読者モデルとして活動を始めました。その後2013年から、海外でもロリィタファッションが大好きな子たちが増えてきたので、海外のイベントやアニメ・コンベンションとかにゲストとしてよく呼ばれていたんです。そのときに、「ロリィタファッションってどうなんですか?」とか「今の日本、原宿はどんな感じですか?」って訊いてくる人がすごく多かったので、そういう声に一気に答えられると思ってYouTubeチャンネルを始めて、並行して海外でのロリィタ文化のイベントにも出演したりしています。

――そんな中で鈴木さんとも出会ったわけですね。初めて鈴木さんの歌声を聴いたときはどう思いましたか。


RinRin:不思議(笑)。声を楽器みたいに使っている感じがして曲に馴染んでました、声でイラストを書いてるように。今まで聴いた事のない雰囲気の曲だったので、すごく面白かったです。

――ボンジュール鈴木 & RinRin Dollとしても、いずれ海外での活動を考えていると思うのですが、これまでそれぞれの活動で感じたロリィタ文化の海外での反響ってどんな感じなんですか?


鈴木:私はアニメ『ユリ熊嵐』の主題歌を歌わせていただいたのですが、その作品を手掛けた『劇場版美少女戦士セーラームーンR』や『少女革命ウテナ』などの作品でも世界的に知られている幾原邦彦監督が色々な国にファンが多く、そのおかげもありたくさんの方々に聴いていただける機会がありました。ドイツ、ロシア、スペイン、中国、インドネシア……などいろいろな国の方々が、自分の国の言語で主題歌をカバーしてくれたり、最近でも色々なVTuberさん達がカバーしてくれて、とても嬉しかったです。元々、海外の友人とRapやエレクトロなどの曲を作って活動していたのですが、ソロ活動を始めた時に、日本独自のかわいい文化を象徴するような曲と不思議な世界観を融合したような独特の世界観の曲を、一緒に表現して活動していける女の子を探していたんです。RinRinと出会えたのは運命だと思っています。ロリィタのお茶会などでもかわいい空間を色付けできるような2人の曲をもっと作っていきたいです。







RinRin:“お茶会”という、みんなでロリィタファッションを着て集まって、お茶をしながらファッションショーをしたり、トークショーをしたり、お話しするイベントを国内と海外でもやっているんですけど、そのときに毎回ボンちゃんの曲をかけさせてもらっているんです。今までそういう時の雰囲気に合う曲がなかったから、みんなすごく気に入って大好きになってくれるんですよ。

――お茶会はどんな雰囲気なんですか?


RinRin:特に私は日本語と英語が喋れるので、テーブルごとを回ってみんなとお話しするようにしています。そうすると、ロリィタファッションに触れたきっかけとか、どんなロリィタファッションが好きとか、みんなにとってどんな意味があるのか?という事など、色々なお話が聞けるんです。どんな国でも、みんなロリィタファッションを“自分を表現できる武器”として考えていて、そこに毎回感動するんです。話を聞くとみんな辛い事がたくさんある中で「ロリィタファッションを着たら強くなれる」って言うんですよね。あとは、海外の場合、日本と違って海外ではセクシーなファッションが主流だから、かわいい系の服を着る機会がなかなかないんです。それが許される場所があることがみんな嬉しくて、そういうコミュニティができているんです。そういう事を日本のみんなにも伝えたいです。このユニットの音楽を通じて日本と海外の繋がりを作って、「ロリィタファッションはこんなにパワーをくれるものなんだ」って知ってもらいたいなと思っています。

――すごく熱い思いがあるんですね。


RinRin:本当に、みんなの話を思い出したら泣いちゃいます。病気を患っている人でも、「今日はイベントだから頑張って元気を出して着る、可愛くする」ってロリィタファッションを着てくる人もいて感動します。もっともっとこんな機会を作ってみんな自分の可愛いさを楽しめるように応援したいです。

鈴木:世界中にRinRinのファンの方がいらっしゃって、みんなイベントでロリィタファッションを着るのを楽しみにしているというのが素晴らしいなと思います。特別な日になっているというか。

――音楽を通して、ロリィタ文化の深いところまで広めていきたいわけですね。


鈴木:RinRinが活動を通して知っている海外の視点と、私の日本の視点を融合して、2人にしかできない世界を日本・海外のかわいいものが好きな人たちに発信したいなと思っています。

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自分達で作り上げたミュージック・ビデオ

――デビュー曲「Carnival Dolls」はどんな発想で生まれた曲なんですか?


RinRin:最初にトラックを聴かせてもらったときに、“フェアリーリング”を思い出したんです。フェアリーリングというのはキノコが地面に円を描いて生える、実際にある現象のことなんですけど、ヨーロッパのおとぎ話の中にもよく出てくるんです。しかも結構怖い話で「人がフェアリーリングの中に誘われて妖精とダンスをしていたら、時間の感覚がなくなって、いつの間にか20年経っていた」っていうミステリアスな話なんです。それをこの曲のトラックを聴いたときに思い出したんですけど、それが今のSNSにもリンクしているなって。TikTokとかで楽しそうにしている子にも、悩んでいる裏の面があったりするなっていうところと繋がっている気がしました。でも「とりあえずみんなと一緒にいる時間、楽しんでダンスしていこう!」という、今の瞬間に留まって楽しいことを味わうという刹那的な所もあると思います。

鈴木:RinRinはフェアリー(妖精)のような不思議な魅力があるので、森の中をイメージして曲を作りだしたんですけど、彼女がフェアリーリングのことを教えてくれてからその要素を入れたイメージでトラックも作り直して歌詞を書きました。J.S.Bachの小フーガ ト短調から始まり、バロック要素の多いクラシカルな楽器を重ね、私もスタジオにハープ運んで弾いて、打ち込みの音の上にヴァイオリン奏者のAsuka Mochizukiさんにヴァイオリンやヴィオラを何本も重ねて弾いていただいて、RinRinが森の中で妖精みたいに舞っているイメージを楽器で表現して深みを出すことで、彼女が感じたフェアリーリングを音でイメージに近づけるように編曲しました。

――歌詞にはいろんな国の言葉を織り交ぜていますよね。


RinRin:そうですね。歌詞は一緒に書きました。いろんな国の人が聴いて、すぐ分かる言葉の部分を聞いて「あっ!」と思ってほしいです。

鈴木:フランス語は、響きが不思議で素敵な空気感を演出してくれるので所々散りばめました。言葉が1つでもわかるとイメージが膨らむので、自分もそうやって曲からフランス語を勉強した時のように、RinRinの書いた英詩で気になった言葉を調べて自分の生活に役立ててもらったり、英語圏の方にも日本の言葉を少しでも覚えていただけたらミュージシャンとして嬉しいなと思っています。

――ミュージック・ビデオも拝見させてもらいましたが、ちょっとホラー映画っぽい印象でした。







鈴木:それは嬉しいです。私自身、幻想的で不思議なファンタジー映画に影響を受けたので、そういうイメージを思い描いていました。今回、MVは私たち2人の共通の友人の、アートディレククションをしてくれたSAKUnoTORIDORIさんと3人でMVのストーリーを考えて、ディレクターのアフガンRAYさんにイメージを伝えて素敵な映像に調理していただきました。

RinRin:私がいつもお世話になっているロリィタ専門のヘアメイクで有名な、双木昭夫さんが代表を務めている「クララシステム」の方々にヘアメイクをしていただきました。衣装はいつもお世話になっている「Angelic Pretty」です。

鈴木:SAKUさんと3人で「かわいくて不思議なダークファンタジーを作ろう」と制作をはじめました。小物を揃えたり、場所を決めたり、SAKUさんがウサギの耳や私のヴェールなど手作りでいろいろ作ってくれたり。今回は自分達でゼロから作った事は初めてだったので「もう時間ないよ。どうしよう!うわーん」って泣きながらMVの制作を進めました(笑)。


RinRin:私は、巨大なキノコを一週間徹夜でトータル13時間かけてペーパーマッシェで作って、手が痛くなるまで夢中で作ったんですけど、ちょっとしか映ってない(笑)。探してみてください。

鈴木:でもあのキノコとてもかわいかったな。今までは制作会社さんがMVを作ってくれていたのでやりたい世界観を打ち合わせで決めて当日行く形だったのですが、今回はそれぞれが電車で大きな荷物を運搬したり、小物を用意したり、ロケ場所の相談したり、タイムスケジュールを作ったり……ゼロから作るMV撮影は初めてでしたがスタッフさんに協力していただきながら、3人のイメージする世界観の作品を完成させることができて良かったです。

――今後はこのユニットでどんな活動を考えていますか?


RinRin:私がこれまでやってきた国内と海外のお茶会やファッションショーやイベントでライブをしたり、曲を流して一緒に楽しめるような空間を作れたらいいなと思います。ロリィタの良さをもっとみんなに知ってもらえるように、海外と日本を繋ぐ存在になれるように頑張ります。

RinRin:RinRinと海外の色々な場所のイベントでライブをしたいです。そして2人でいつかアニメ、ゲームの作品などで歌わせていただけるようにがんばります。

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