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<インタビュー>一度は聞いたことがある!? SNSミュージックの新世代シンガー、ミイナ・オカベが語る世界的バズソング「エヴリー・セカンド」

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 心地よいギターに<Every second, every day I spend hoping we never change love when you ~>の柔らかい歌声が特徴的な「エヴリー・セカンド」。もしあなたがTikTokやインスタグラムなど、ショート動画を頻繁に利用しているのであれば、この曲を一度は聞いたことはあるのではないだろうか。

 日本のみならず、韓国や他国でも人気があるこの曲を歌うのが、デンマーク人の父親と日本人の母親を持ち、コペンハーゲンを拠点に活動するシンガー・ソングライターのミイナ・オカベ。国際色豊かなバックグラウンドを持つ彼女が放つオーガニックな音楽は、不思議とどのシーズンにもマッチし、リラックスさせてくれる。

 6月初旬にプロモーション来日し、9月6日にデビュー・アルバム『ベター・デイズ』のCD発売、9月9日に横浜・赤レンガ倉庫で開催される【Local Green Festival】に出演する彼女に、その世界的バズソングを中心に話を聞いた。(Photo:辰巳隆二)

――「エヴリー・セカンド」がインスタグラムを通じて世界的にバズっていますが、ミイナさんご自身はどのようにこの反響を受け止めていますか?

ミイナ・オカベ:とても驚いています。インスタグラム・リールで人気が出ていることを知ったのは、日本のインフルエンサーが愛犬と一緒に「エヴリー・セカンド」に合わせて踊っている動画を見たのがきっかけでした。母の友人が送ってくれた動画だったのですが、母も私も大興奮でした。レーベルにもこのことを伝えたのですが、その時点で2万件の動画が投稿されていたと思います。2021年のことだったので、リールについて全く知りませんでした。その後、さらに多くの人が曲を使った投稿をしてくれて、現在では340万本以上の動画があり信じられないです。いろいろな国の人たちが私の曲を聴いてくれているなんて夢のようですし、インスタグラムやTikTokは、私の音楽を様々な国の人たちに知ってもらうのに役立っていますね。


――インスタグラムやTikTokが音楽を宣伝する新たなツールとして機能する中で、リスナーに自分の音楽を届けるという点で、競争は厳しくなっていると感じますか?

ミイナ・オカベ:SNSがきっかけで音楽が広がっていくことは、本当に素晴らしいことだと思います。私自身もインスタグラムやTikTokでたくさんの曲を発見しましたし、多くの人々がSNSを通じて私の音楽を発見してくれました。SNS上にはたくさんの音楽が溢れていますが、それよりも多くの人に届く新しいツールになったことが喜ばしいです。




――ちなみにミイナさんが、SNS上で聞いて惹かれるのはどんな曲ですか?

ミイナ・オカベ:私がフォローしているアーティストの多くは、自分のインスタグラム・ストーリーズで曲をシェアしたり、ハマっている曲について書いたり、セレクトしたプレイリストをシェアしたり、自分が楽しんでいるプレイリストにリンクしたりするのが上手です。そういう投稿を通じて、もっとその曲について知りたいという気持ちになりますね。


――「エヴリー・セカンド」は、どのように誕生した曲だったか覚えていますか?

ミイナ・オカベ:当時、別の曲を完成させるためにスタジオ入りしていて、次にリリースされるシングルも決定していました。でも、何か新しい曲に取り組みたかったので、そうしました。その時に出来上がった「エヴリー・セカンド」をレーベルに送ったら、担当のA&Rが「代わりにこっちをリリースしよう」って言ってくれたんです。


――断言されたんですね(笑)。

ミイナ・オカベ:「本当にいいの?」って感じでした。ラジオ向きのサウンドではないんじゃないかという話もしていましたし。でも、曲にワクワクしていたので、とにかくリリースしたかったんです。直感に従って、自分たちが興奮させられるような曲をリリースできたのはいいことだったと思います。


――なぜこれほど多くの人の共感を得たと思いますか? BGMとして投稿に使われているだけでなく、ITZYのRYUJINなどによるカバーもたくさん公開されています。

ミイナ・オカベ:多くの人がキャプションにこの曲を引用しているのを見ますし、この曲に共感してメッセージを送ってくれた人もいます。そこが気に入ってくれている理由のひとつなのかもしれないですね。歌詞もすごくポジティブで、心配事について歌っていますが、今を楽しむことも思い出させてくれる。心配事があっても、目の前にあるもののことを忘れてしまわないよう、私自身も時々リマインダーが必要なことがあるので。


――アウトロでは、<I wanna remember this moment in time(この瞬間を忘れないようにしたい)>と歌っていますが、この1年でそう感じた瞬間はありますか?

ミイナ・オカベ:たくさんありすぎます。この1年、様々な新しい経験ができたことに本当に感謝しています。まだ実感がわかないようなことも多くて、アーティストとして日本を訪れているという事実すら、かなりクレイジーなことです。たくさんある中でも、日本にプロモーション来日していることは間違いなくその瞬間の一つですね。今朝、チームのみんなと日本で一昨日撮影した動画を見返していたんですよ。「本当にスゴイことだよね」って。




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――音楽的なルーツについて伺いたいのですが、曲作りを始めたきっかけを教えてください。

ミイナ・オカベ:幼い頃からずっと曲作りをしていて、両親へのプレゼントとして作ったりもしました。9歳の子供が書いたものなので、あまりいい曲とは言えないですけどね(笑)。8歳ぐらいの頃に、クリスマス・プレゼントの代わりにトナカイについてのクリスマス・ソングを作ったのも覚えています。それからもっと音楽に打ち込んでいきたいと思うようになったのは16歳のときでした。最初はギターとボーカルが上達するようにカバーを歌っていました。でもしばらくすると、自分がうまく歌えると思う曲や共感できる歌詞を見つけるのが、とても難しくなっていきました。そこで自然と自分の音楽を作るようになって、今もギターで曲を書き続けています。


――なぜギターだったのでしょうか?

ミイナ・オカベ:小さい頃、母がクラシック・ピアノを習わせたいと言ってピアノ教室に通い始めたんです。最初のうちはよかったのですが、歌いながら弾きたかったので、だんだんつまらないと思うようになりました。先生に「この曲を習いたい」とお願いしても、「今度ね」と結局教えてくれることはありませんでした。そこで教室をやめてギターを買いました。YouTube動画を見ながら、自分で弾き方を学んで、すぐに自分の好きな曲の弾き方を覚え始めました。


――そのギターで初めて書いた曲について教えてください。

ミイナ・オカベ:あまりよく覚えていなくて、当時ウクレレも練習していたので、それで変な曲を作ったりしました(笑)。確か両親が初めていいと思ってくれたのは、私が16歳のときに書いた曲でした。正直内容は忘れてしまいましたが、片思いの相手についてだったと思います。


――パーソナルで正直な曲を書くほうが、クリエイティブ面で満たされると感じますか?

ミイナ・オカベ:もちろんです。それが、自分にとって一番自然なので。自分の曲を作り始めた頃は、映画やテレビ番組を観て、そのときに感じたことなど、とりとめのないことについて書いていました。でも今は、自分の経験についてしか書けないし、フラストレーションや考えを吐き出すためのものだと感じています。自分の気持ちを話すのが苦手な私にとって、曲作りがそうするベストな方法なんです。


――様々な国で生活することで、音楽の趣味や影響は広がっていきましたか?

ミイナ・オカベ:はい、ロンドンで生まれた後、ニューヨーク、デンマーク、フィリピンでの生活を経て、再びデンマークに戻りました。それぞれの国で、様々なタイプの音楽が流行っていましたし、それらが私の音楽の趣味の幅を広げてくれました。私の母は日本人で父はデンマーク人なので、二人が好んで聴いていた音楽も違いますし、私の友人も様々な音楽を聴いていました。私の好みや歌詞へのアプローチ、好きなメロディに影響を与えたのは間違いないですね。


――ちなみに、当時フィリピンではどのような音楽が流行っていたのでしょう?

ミイナ・オカベ:私が引っ越したときは、ケイティ・ペリーやブルーノ・マーズなどのポップ・ミュージックがとても人気がありました。学校の合唱団にも入っていたのですが、インターナショナル・スクールに通っていたこともあり、音楽の先生から中国語、韓国語、フィリピン語、スペイン語など様々な言語の曲を学ぶことができました。これらの言語で曲を書いたことはないですが、その経験からは影響を受けていると思います。


――今後、ミイナさんがデンマーク語や日本語の曲をリリースする可能性はありそうでしょうか?

ミイナ・オカベ:日本語やデンマーク語を歌詞に取り入れてみたいですね。自分のコンフォート・ゾーンから大きく外れることになりますが、今後挑戦してみたいことの一つです。


――昔からアコースティックでオーガニックな曲に惹かれていたのですか?

ミイナ・オカベ:間違いないです。私が好きなオアシスやエイミー・ワインハウスについて教えてくれたのは父で、ずっとアコースティックやオーガニックなサウンドに惹かれてきました。リアルな楽器の音が好きなんです。


――様々な場所で幼少期を過ごしたミイナさんですが、あなたにとってのホームとは?

ミイナ・オカベ:15歳のときにデンマークに戻ることを決めたのですが、それまでは家族のいる場所が常に自分にとってのホームでした。様々な場所がホームだと感じてきたのですが、その時に自分が帰れて、友達もいて、家族もいるようなベースができたらいいなと思いました。デンマークと日本、自分がアットホームだと感じる場所が2か所あるのは素敵なことですね。


――デンマークを拠点として選んだ理由はあるのでしょうか?

ミイナ・オカベ:フィリピンに引っ越す前にデンマークに1年間住んでいました。デンマークの全寮制の学校に通っていたので、どんなところかはなんとなくわかっていて、親友も暮らしていました。日本語よりデンマーク語のほうが上手ですし、言葉が通じるところに行きたいという気持ちもありました。


――お母様が日本人とのことですが、日本の文化や芸術からも影響を受けていますか?

ミイナ・オカベ:たくさんありますが、自然と自分の一部になっているような気がするので、具体的に挙げるのは難しいですね。私という人間の一部で、考え方や行動にも反映されています。これは両親の育て方も要因だと思いますね。


――日本文化のどのような部分がユニークだと感じますか?

ミイナ・オカベ:日本に滞在しているときにデンマークっぽい行動をしていたり、逆にデンマークでは日本っぽい行動をしていたり、友達に度々指摘されることがあります。初めてデンマークで暮らしたのは8歳の頃で、学校に行くときに、母が日本のお弁当を作ってくれたり、日本のお菓子を持っていったりしていました。ある時、学校でアーモンドフィッシュを食べていたら、同級生に「何を食べてるの?」と不思議がられたのを覚えています。ニューヨークで暮らしていたときに通っていた学校には日本人がたくさんいたので珍しくなかったのですが、デンマークでは地元の学校に通っていたので、気づかずに目立つ行動をしていたんだと思います。


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――デビュー・アルバム『100デイズ』をリリースしてからもうすぐ2年になりますが、振り返ってみていかがですか?

ミイナ・オカベ:今でもとても気に入っています。たくさん時間をかけましたし、音楽を作ったり、リリースしたり、すべてのプロセスから多くを学びました。1曲リリースするのにどれだけの労力が必要なのかも理解できました。自分で曲をリリースする前は、「どうして自分が好きなアーティストはもっとアルバムや曲を発表しないんだろう?」「なぜこれほど時間がかかるんだろう?」って思っていたのですが、実際にやってみたら理由がよくわかりました。リリースする曲はどれも自分にとって大切で、完璧なものにしたいから。曲作りが大好きですし、サウンドについて考えたり、新しいことを試したりするのも大好きなので、2ndアルバムの制作に入るのが楽しみです。


――「この曲は自信を持ってリリースできる」「これは出せない」など、どのように線引きをするんでしょうか?

ミイナ・オカベ:自分の音楽については、レーベルのA&Rにすべて相談していて、彼の意見を信頼しています。自分で完成したと断言するのが怖いので、彼が「もう完成だ。これ以上アドバイスすることはない。今のままで完璧だよ」と言ってくれるんです。


――他にもアドバイスを求める人はいますか?

ミイナ・オカベ:家族にも聴いてもらいます。両親や妹はとても正直なので、気に入らない時は単刀直入に教えてくれますね(笑)。


――ミイナさんのアーティストとしての進化をずっと見てきていますしね。

ミイナ・オカベ:そう、私が誰なのか、私にとっての真実が何なのかを知っているので。


――数か月前に発表したEP『スピニング・アラウンド』には、デビュー・アルバムのリリース後の新しい経験についての曲が収められています。

ミイナ・オカベ:初めて自分の音楽を携えて海外に行ったり、初めて海外でセッションをしたり、新しい経験をたくさんしましたし、エキサイティングなこともたくさんありました。収録曲のプロダクションや歌詞は、そういったことにインスパイアされています。自由な作品づくりが行いたくて、様々なサウンドやスタイルをミックスして、ひとつの作品をつくりあげたかった。タイトルも、様々な経験が渦巻いているような感じを巧みに表現していると思います。


――プロダクションについてはどのように学んでいったのでしょう?

ミイナ・オカベ:初めてプロデューサーに会ったり、スタジオ入りしたりしたとき、とても緊張していて、自分の好き嫌いが理解できていなかったのを覚えています。今は何度もセッションを重ねて、いろいろな曲をプロデュースしてきたので、自分の好きなものや挑戦してみたいことが見えてきました。気に入ったこと、気に入らないこと、試してみたいことがあったら、怖がらずに言えるようにもなりました。いろいろな人に会って、いろいろなことを試すことで、多くのことを学んだと思います。あとは、自分のPCでプロデュースする方法を学ぶ努力をしたことも、とても役に立っていますね。


――EP収録曲「Talk To Me」は、プロダクションにおいて新境地だったと言えると思います。

ミイナ・オカベ:「エヴリー・セカンド」を作った人たちとスタジオで別の曲を作っていた時に生まれたんです。何度も一緒に仕事をしているので、お互いについてよく知っています。その時、プロデューサーが「Talk To Me」のギターのコードを弾いてくれたのですが、聴いた瞬間に「この曲に取り掛かろう」という感じでした。今までの曲のプロダクションとは違う雰囲気になったので楽しかったですね。歌詞にこれまでとは違う自信を持たせたかったので、新たなメンタリティでソングライティングに臨みました。


――ミイナさんに続く、次世代のソングライターやミュージシャンに何かアドバイスはありますか?

ミイナ・オカベ:すごく安っぽく聞こえるかもしれないですが、自分らしくいることを恐れないことだと思います。かつて、私は自分の声に対してとても批判的で、「私にはシンガーになれる声量がない」とか、「詩的な曲でないと聴いてもらえない」と思っていました。自分のことを他人と比べがちですが、自分らしくいること、自分らしい歌い方をすること、そして失敗を恐れてはいけないと言い聞かせることが大切です。最初の頃は、作った音楽を友達や人に見せるのがすごく怖かったのですが、思い切って行動してみてよかったと思います。失敗してもいいし、ありのままの自分でいいんです。


――最後に日本のファンにメッセージをお願いします。

ミイナ・オカベ:私の音楽を聴いてくれて、本当にありがとうございます。今ここにいることがとても幸せです。皆さんと直接会いたいので、またすぐに戻ってきてコンサートができたら嬉しいです。


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