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<インタビュー>showmoreが語る、オルタナティブと反骨精神とルーツ。「テンプレートありきで作っているわけじゃない」



showmoreインタビュー

 華麗で力強いボーカル。そして巧みなアレンジと演奏力。ジャズやR&B、レゲエなど、さまざまなジャンルを取り入れ、それらの旨味を活かした音楽性で人気を博している東京発のユニットshowmore。2015年にバンドとして結成され、2017年9月よりヴォーカリストの根津まなみ、そしてキーボーディスト/プロデューサーの井上惇志による2人体制となったshowmoreは、これまで3作のアルバムを発表。加えて、数々の名うてのミュージシャンやラッパーとも共演。井上いわく「化学反応」に積極的で、今年3月にリリースした最新作『Wonderland』もギタリスト/トラックメーカーGimgigamとの共演盤となった。今月末の大阪と東京のビルボードライブでのツアー公演でもストリングスを加えてのパフォーマンスを予定している。聞けば、現在新曲のレコーディング中なのだそうだが、いつも以上にステージへの熱が高まっているようだ。(Interview & Text: 中村悠介 / Photo: 山元裕人 / 撮影協力: ACEHOTEL KYOTO)

ライブに対するエネルギーがより増していて

――活動の中でライブをどのように捉えていますでしょうか?

根津まなみ:すごい好きですね。今、ちょうど新曲を制作しているんですが、それもライブのために。

――井上さんはいかがでしょう?

井上惇志:もちろん好きです。1週間のうち4、5日はライブかそのリハーサルなので活動の軸になっています。showmoreもライブのために制作を頑張っている部分があって。ビルボードではその新曲を携えて乗り込むつもりです。

――今回披露される新曲はどんな楽曲でしょうか?

井上:「silky」と「habilabi」という曲です。「silky」は弦カルテットも入るアレンジで、アコースティックだけど、音源的な硬さがあるというか。これまでのshowmoreにはない、ファンタジックな楽曲というか。それともう一曲は「habilabi」という曲で、言葉の面白さが強調されている楽曲でもあります。

――ちなみに、ライブ前に楽屋で必ず行うことやルーティンはあったりされますか?

根津:私はなるべく独りになる時間を取るようにしています。しっかり緊張して臨むタイプ。それに最近ライブに対するエネルギーがより増していて。その燃料を蓄える準備したくて。自分の状態を完全にしたいというか。

井上:(サポートで参加している)他のバンドではハイタッチしたり、円陣を組んだりするんですが、showmoreでは自分は監督的というか、直前までいろんな準備に追われているので、いつも地に足が着かない状態でライブに突入しますね。ステージに上がって、ようやくスイッチが入る感じですね。

showmoreは「自分を守るための表現」

――“ジャズやR&Bをベースにしたポップス”や“アーバンポップ”。それに“シティポップ”など、showmoreを取り巻く、さまざまな形容を客観的にどう捉えていますか?

根津:その話はふたりでよくするんですけど、自分たちは結局オルタナティブなんだよね、という話で落ち着きますね。

井上:例えば、本来的な意味でのシティポップ。欧米の音楽に影響を受けた、という意味では当てはまるけれど、今のシティポップはそこから乖離して記号的で。結局、自分たちはポップスのオルタナティブですね。メインストリームへのカウンターという意味で。

根津:個人的にはロックが好きだったので、反骨精神じゃないんですけど括られたくない。互いにかっこいいと思うものだけを突き詰めていく。そこは共有していて。

――では、おふたりのルーツや影響を受けたアーティストを教えてもらえますか?

根津:最初に衝撃を受けたのがUAとベンジーがいるバンド、AJICOですね。子供の時ってテレビからの音楽が当たり前だったんですが、私が中学2年生くらいの頃に、AJICOがMステに出たことがあって、なんだこの人たちは? なんだこのかっこいい音楽は?って。次の日、学校で喋っても誰も共感してくれなくて…そこから自分の好きな音楽、というものを自覚しましたね。それからEGO-WRAPPIN’などを聴き始めました。

――AJICOの音楽は今も聴かれます? どんなところに影響を受けましたか?

根津:今でも普通にファンで、現在進行形でずっとかっこいいなと思ってますね。音楽を真似したいというのではなく、自己表現という部分に影響を与えてくれたと思います。私は自己表現、という気持ちだけでやってきているので、究極を言えばshowmoreを聴く人がまったくいなくても良いんですよね。まず自分を守るための表現というか。

――自分が一番のshowmoreのリスナーでもある?

根津:すごく聴いてますよ。showmoreの音楽、大好きです(笑)。

――井上さんはいかがでしょう? 自身に影響を与えているものとは?

井上:僕はもともと音楽はそんなに好きじゃなかったんですね。音ゲーをやってました(笑)。pop’n musicとか。サブスクがない時代には、流行りの音楽がコミュニケーションツールだったと思うんですけど、流行りに乗れなかったし、ちょっとはみ出してもいたので(笑)。ただその中でも、高校の頃、椎名林檎はかっこいいなと思って聴いていましたね。

――ジャズを始められるのは大学からでしょうか?

井上:そうですね。大学時代にジャズを始めて、そこからEGO-WRAPPIN’なども聴くようになって。だから中高からのルーツがあるわけじゃないんですが、今の自分を形作っているものは大学時代のオーセンティックなジャズですね。

――ジャズプレイヤーとしての道もあったのでは?

井上:プレイヤーとしては三流というか挫折したというか。もちろん今でもジャズは好きですけどね。あと、サンバのチームに入っていたこともあります。だからshowmoreの音楽は、ジャズからの応用やいろんな音楽をポップスに混ぜるようなスタイルになったんだと思いますね。今考えると、いい意味で特定のジャンルの好みがそれほど無かったこともあって、フラットな目線でいろんな音楽を捉えることができたんだと思いますね。

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showmoreらしさ、「そこにはこだわらずに」

――近作のアルバム『seek』(2021)はレゲエからストリングスの入る楽曲まで、そして生楽器だけでないビートのアプローチも。showmoreの音の作り方とは?その時々のモードで変化する?

井上:基本的に根津さんがメロディや詞を作って、それを僕が曲として構築していくことが多いですね。ふたりとも根がアコースティックというか、それにメロディ先行で。だから、それに合うアレンジを考えていくので、ジャンルが雑多になりやすい。

――特定のジャンルのフォーマットを出発点にしているわけじゃない?

井上:そうですね。R&Bとかヒップホップとか、特定のジャンルのテンプレートありきで作っているわけじゃないので。だからジャズに振れる曲もあれば、ダンスっぽい曲もある。ポップスである、という核はあって。というのも、ポップスはいろんな音楽を取り入れられるものだと思うし。

――楽曲ごとに多様なアプローチで挑まれていることに関して、根津さんはいかがでしょう?

根津:自分たちを超えていくというか、常に挑戦したいんですね。showmoreらしさ、というものはあるとは思うんですが、そこにこだわらずに。曲がベストな形になるように、と考えています。そのためには変化を恐れず、新しいものに挑戦していきたいと思っていますね。

――さまざまなバンドに参加されている井上さんにとってshowmoreらしさをどのように捉えていますか?

井上:showmoreは「circus」や「rinse in shampoo」が一番聴かれている楽曲だと思うんですが、それらはピアノが主体のジャズっぽいコードの曲なんですね。でも僕が思うshowmoreの核は、ブレンド具合だと思うんです。

――ブレンド具合とは?

井上:showmoreの音楽は根津の歌詞の世界を補強するためのメロディやアレンジであって。その世界を強調するために、ピアノロック調になるときもあるし、ジャズっぽくなったりもする。そのブレンド具合で変わっていくから、showmoreは特定のジャンルで捉えにくくなっていると思いますね。

――では、その楽曲制作の発端となる根津さんの歌詞、言葉の見つけ方とはどんなものでしょう?

根津:曲を構想する時には、単語から世界を広げていくことが多くて。例えば「rinse in shampoo」って、100点満点の完璧な言葉、和製英語だと思うんです。


▲ showmore - rinse in shampoo【Official Music Video】

――どんな意味で完璧?語感でしょうか?

根津:語感はもちろん、それだけで物語やメロディを感じられるところ。他の曲では「dryice」という言葉も好きですね。語感も良いし、ひとつの単語で自分の世界を広げていける。単語が好きなんですよね。単語フェチというか、辞書が好きなこともあったり。

――showmoreの音楽はひとつの単語からストーリーをクリエイトしていく、と。

根津:あと、必ず詞のストーリーには主人公がいるんです。自分ではないんですけどね。でも新曲の「silky」や「habilabi」は新しい気持ちで書けたというか、弦とのアレンジで導かれた世界観で歌詞が書けた。より物語的な側面が強くて、新しいアプローチで作れたかな、と思っています。

井上:showmoreの世界観は小説とか映画的なものを目指しているので。うまく言えないんですが、翻訳版のない邦画のような感じですかね。

新曲は自分たちの新境地

――今年3月にリリースされたGimgigamとの『Wonderland』を始め、これまでさまざまなミュージシャンとセッションに挑戦されています。他のミュージシャンと演奏することの醍醐味とは?

井上:自分は化学反応を期待するタイプなので、自分たちの新しい扉を開けてくれるというか、コラボレーションする人の演奏スキルはあまり関係ないかも。人間的に信頼できることで生まれるグルーヴの方が大切で。

――では最後に、これからどんなユニットとしての活動を構想されていますか?

根津:今日も10年前はビルボードでライブすることなんて考えられなかった、って話をしてたんですけど、それはやっぱりひとつひとつの積み重ねで。これからも恐れずにチャレンジすることが大事だな、と。自分の新たな部分を求めていかないと良い歌詞は書けないんだなって。それと、聴いてくれているみんなと一緒に楽しんでいきたいですね。

井上:自分の趣味性も含めた、いろんなバランスでshowmoreを続けられたら、と思っています。もちろんポップスである、ということを意識しつつ。あと今回、披露する新曲は自分たちの新境地なのでぜひ楽しみにしてもらえたら。

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