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<インタビュー>屋敷豪太、大沢伸一、松本圭司、DUB MASTER Xらスペシャルバンドが見せる未知数のステージ
2022年に【KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭】の10周年記念スペシャルパーティーのために結成されたGota Yashiki & The Dub Messengers。世界的なドラマー屋敷豪太からの召喚に応えて集まったのは、MONDO GROSSOとしても知られる大沢伸一、様々なジャンルで活躍中のピアニスト松本圭司、数多のアーティストを手掛ける国宝級ダブエンジニアDUB MASTER Xだった。この核となる4人に、今回、やはり各方面から引く手数多のギタリスト田中義人とサックスの元晴が参加し7月、ビルボードライブに登場する。屋敷、大沢、松本、DUB MASTER Xの4人が公演に向けての抱負を語り合った。(Interview & Text: Masaki Uchida / Photo: Takashi Noguchi (San Drago))
音が育っていくようなバンド形態
屋敷豪太(ds):KYOTOGRAPHIEからの依頼を受けて、どうせならば面白いメンバーで、しかもその日の気候やお客さんの雰囲気、自分たちの調子で音が変わるようなバンドが面白いんじゃないかと。特に決め事も設けず、何が出てくるのか分からない化学反応を全員が楽しむ。即興演奏の原点ですね。その後、京都のクラブで(田中)義人を加えて演ったんだけど、今回せっかくビルボードライブに出られるのならば、さらに音が育っていくような形態にしようと思って元晴君を呼びました。
大沢伸一(b):(※取材時点で)まだ何も決めていないけど全部即興もアリかもしれない。『ビッチェズ・ブリュー』(1970年)の頃のマイルス・デイヴィスみたいに。
DUB MASTER X(mix):決め事が嫌いな連中が集まったよね。決め事のある仕事はもうそれぞれ他でやり尽くしているし。最早、「右に曲がろう」という掛け声すら面倒くさい感じ(笑)。全員で曲がりたくなったら自然と曲がればいいし。大概の 驚くような経験もバカみたいな経験もしてきた連中だから、何が起こってもびくともしないね。
屋敷:ステージの上では自由だし何を起こしても違法じゃない(笑)。大漁の日もあればボウズ(不漁)の日もあっていい。まあこのメンバーならそれは無いけどね。面白いのは、人間の本能なのか、何十分かステージを共にしていると自然と調和性が生まれてくる。その不思議なプロセスに僕もものすごくワクワクさせられる。
本当に何がどうなるか分からない
松本圭司(p):僕と義人君と元晴君はほぼ同世代でいわゆるジャズの即興を得意とする3人。だけどこの先輩たちのぶっ飛び具合がヤバ過ぎて(笑)。むしろ僕らはアイロン掛けやトリートメントする側に回るのかもしれません。
大沢:確かに(笑)。でも時にそれがブレーキとして働いてしまう場面もあって。確か前回のサウンドチェックで「持続音は弾かないで」と言った記憶があって。音が持続すると和音が生まれやすくて音楽らしくなるけど、短い音の塊やノイズっぽくてもいいし。
屋敷:俺にも覚えがあるよ。1拍目のバスドラから2拍目でスネアを叩いた瞬間、「あ、俺、普通じゃん?」って醒めちゃう時とかね(笑)。
松本:フリージャズって実は案外決め事が多い。このバンドはそれとも全く違うし自分のセオリーで演るとかえって上手くいかない。本当に何がどうなるか分からなくてドキドキしますね。
屋敷:この間も「圭司くんのピアノから他が入って3分ぐらい放っておこう」と言って始めたら1分半ぐらいでみんな入ってきて(笑)。ところで藤の花は綺麗だけど、藤棚がどうできるかって人はあまり知らないでしょ? 光も水も自然の多くの物は当たり前のようにそこにあるけど、多くの人はそのプロセス自体をあまり目にする機会が無い。これだけのメンバーが自分たちから素っ裸な状態でステージに立って音を出すプロセスを観て「あ、自分って何者だっけ?」みたいな気持ちになってもらえたらという狙いも実はある。
大沢:いい話だけど、聞けば聞くほど武者震いが(笑)。
DUB:こうなるとますます「俺、これ用意してきたんだけど」なんてダサい真似はできないな。俺のポジションはある意味演者側とスタッフ側の間だけど、今回は特にその日の観客が入った空間で、バンドが出す音に対してどうエフェクティヴな事ができるかの勝負になる。俺、この稼業を40年やってきたけど、ちょうど最近、実は全く客観的に音を聴けてなかったんじゃないのか?と感じていた。やっぱりどこか主観で聴いていたというか。リハで準備しておいたフェーダーをガッと上げて本番をスタートさせる事が必ずしも正解じゃないなって。むしろゼロから始めてもいいんだし。あと、ライブではスタジオ録音と違い、ドラムの生音があるから完全なミュートができない。そこがライブでダブを演る時のもどかしさでもあるんだけど、例えば今回はPAを通さずに鳴っているドラムの生音に対してPAを足してもいい。
Dub Messengersの“ダブ”観
屋敷:Dub Messengersと名付けているくらいなので、ジャズのインプロというよりもスケールやメロディで魅せるような空間を作ってはそれを止めてみせるといったダブ的な要素を色濃く出したい。止めるとか抜くとかって弾けるプレイヤーであればあるほど不安なものだけどこのバンドでやるとどうなるのかすごく見てみたい。
DUB:最近、『DUB WISE』(※屋敷参加のMUTE BEATが89年にリリースしたダブミックス盤。DUBは3曲で参加)が再発になったんだけど、当時、あれを聴いたヤン(富田。DUBの師匠的存在)さんから言われた「お前のダブには辛抱が足らない」という言葉がずっと心にある。嘘を言おうとする奴は饒舌になる。素っ裸になる時は辛抱も大事なんだよなって。
大沢:めちゃくちゃ深い話。もう、それでも我慢できなくなったらみんなで踊っちゃいましょうよ。
屋敷:当日は誰がステージのどの位置に立つかも楽しみだね。なんならパートをスクラッチさせてもいいし全員でパーカッションを叩いてもいい。もしビルボードライブと、バンドと、観客の皆さんが楽しんでくれたら毎年やるようなライブシリーズにできたらいいね。音が成長するプロセスを僕らと観客が一緒に楽しめる。そんな実験的なバンドにしたいですね。
Dub Messengersは未だ音源をリリースしていない。だからこそ予測不可能な緊張感と音が生まれる瞬間に立ち会う、エフェクティブな多幸感を期待せずにはいられない。7月、ビルボードライブのステージで彼らが放つ“Dub Message”をぜひともキャッチしてほしい。
公演情報
【Gota Yashiki & The Dub Messengers
屋敷豪太(ds) 大沢伸一(b)松本圭司(p) 田中義人(g)元晴(sax) DUB MASTER X(mix)】
2023年7月12日(水) ビルボードライブ東京
1st:Open 16:30 Start 17:30
2nd:Open 19:30 Start 20:30
チケット:
サービスエリア 7,900円
カジュアルエリア 7,400円(1ドリンク付)
2023年7月13日(木) ビルボードライブ大阪
1st:Open 17:00 Start 18:00
2nd:Open 20:00 Start 21:00
チケット:
サービスエリア 7,900円
カジュアルエリア 7,400円(1ドリンク付)
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