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<インタビュー>LiSAが『スパイダーマン』の世界観に寄り添った、7か月ぶりの新作「REALiZE」を語る

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Interview: 一条皓太

 LiSAが7か月ぶりの新曲「REALiZE」を、6月14日にリリースした。本楽曲は、6月16日公開の映画『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』日本語吹替版主題歌で、作編曲には盟友・堀江晶太(PENGUIN RESEARCH)が参加。この主題歌のためにLiSAが書き下ろした、疾走感あふれるロック・チューンだ。
 今回はそんなLiSAにインタビューを実施。作品と進撃に向き合い、LiSAなりに解釈した『スパイダーマン』の世界を表現した「REALiZE」についてたっぷり話を訊いた。

“大いなる力には、大いなる責任が伴う”

――前回お話を聞いたのは、6枚目のアルバム『LANDER』の頃でした。同作の反響はいかがでしたか?


LiSA:あれからもう、7か月も経っているんですね。「明け星」など、既存曲のなかに新曲を足していって、最後は「NEW ME」で終わるアルバム。たくさんの楽曲が並びながら、それがすべて“LANDER”という私の新しい世界を表現するものにできたことで、いろいろな方から「とても物語性があるアルバムだね」と言ってもらえました。私としては、ちゃんと狙い通りの1枚になったので、「しめしめ」と思ったり(笑)。

――そんな大作を経てリリースされるのが、新曲「REALiZE」。こちらは、映画『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』日本語吹替版の主題歌に起用されています。ハリウッド映画の顔役を担うビッグタイトルになりましたね。


LiSA:それも、私がまだ子どものころから幅広い世代を夢中にしてきた『スパイダーマン』の主題歌に! シリーズ序盤の実写はもちろん、2018年に放映された『スパイダーマン:スパイダーバース』からアニメーションに切り替わってもいまなお、年齢や世代に関係なくたくさんの人々を楽しませてくれる作品なので、大人になってからこうしてジョインできることにすごく幸せを感じていますし、その主題歌を作れると聞いてとてもワクワクしました。



――日本のテレビアニメに主題歌を書き下ろす際と比べて、なにか違いを感じた点はありましたか。


LiSA:日本のアニメは細い線を使って緻密な描写をする印象があるのですが、『スパイダーマン』はアメコミということもあり、線の太さが特徴的だなと。なので、私自身も「REALiZE」ではサウンドのアメリカ感やハリウッド感を意識して、子どものころから親しんできたアヴリル・ラヴィーンのようなパンクロック、ヘビーロック、ラウドのような仕上がりになることを目指しました。自分のやりたい音楽を容赦なくぶつけられた気がします。でも、ハリウッドを意識したって……我ながらかっこよく言いすぎですかね?(笑)

――滅相もない。ところで過去の『スパイダーマン』作品で特に印象に残っているシーンや台詞があれば教えてください。


LiSA:「大いなる力には、大いなる責任が伴う」。作品の根幹としてずっと受け継がれてきたメッセージなので、やはり今回の歌詞にも反映しなければならない点だなと。スパイダーマンになる主人公たちは等しく、自ら力を望んだわけでないのに、世界のために闘わなければならない使命をある日いきなり背負わされるわけで。ヒーローとして生きる辛さに苛まれながらも、自らがヒーローであることを“自覚”して生きていくことが、このシリーズ特有の成長物語であり、そんなスパイダーマンに自分の姿を重ねて歌詞の言葉を考えていきましたね。

――少し偉そうになってしまうのですが、LiSAさんを主題歌に起用したのはこれ以上ない人選だなと。というのも、LiSAさんと『スパイダーマン』を明確に結びつける共通項として、“責任”という言葉があるじゃないですか。『LANDER』の取材時にも、アニメ作品などの主題歌を歌うことは作品の一部を背負う責任感とともにあるとお話をしてもらいましたよね。


LiSA:ありがとうございます。私自身はスパイダーマンほどなにかを犠牲にしてきたわけではないですが、私自身がLiSAであることの責任感を持ったり、アニメ作品などと関わらせていただく責任を背負わせていただいたり。一つひとつの作品に対して向き合い、思い入れを持ち、10年以上の時間をかけてきたからこそここまで強くなれたし、今回でいえばヒーローとしての役割をまっとうするスパイダーマンの気持ちにも共感できたのかなと思いました。

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自分の心のスイッチを入れる言葉を探した

――ここからは歌詞について深掘りをさせてください。歌い出しの<最低だ 動脈に流れ込んだ恐怖で 心臓が震えちゃってる>には“動脈”という言葉が登場しますが、なんとも具体的な言い回しから始まるなと。普段の生活で動脈という言葉はあまり聞かないものですし、そのものを目で見る機会もあまりないですよね。


LiSA:今回の歌詞では、スパイダーマンが最初に噛まれた蜘蛛の毒や力が、身体中を巡って浸透する様子を描きたかったんです。よく、血が騒ぐとか血が滾るなんていうじゃないですか。スパイダーマンだけでなく、私たちが感じるワクワク感や恐怖感も、体の外側ではなく内側から湧き上がってくるものだと思うので、それを示す動脈や細胞、皮膚の内側などの言葉を使いました。

――少し変な質問ですが、この部分が静脈でない理由はなぜですか? LiSAさんは、一言一句に意味を込めて、歌詞を流し書きしない方だと知っているからこそ、動脈という言葉を選んだ理由をさらに詳しく知りたいです。


LiSA:動脈は血液を心臓から全身の各組織に送り出す血管です。なので、心臓で感じたワクワク感や恐怖感を抱くのが心臓であれば、その恐怖を体全体に伝えていく役割なのが動脈だと思ったんですよ。

――なるほど。やはり明確な理由がありましたね。ではサビのフックとなる<時間だ>はどのように思いついたのですか?


LiSA:これは「よし行くぞ!」や「ショータイム!」のように、自分の心のスイッチを入れる、言い換えれば覚悟を決められる言葉を探していたんです。「REALiZE」のAメロとBメロでは、覚悟を決めかねたり、「闘わなければいけない」という本心の部分をなんとか正当化しようとしたりする時間を描いているのですが、もうここからは悩んだり、恐怖に怯えたりしている時間はないぞと。このフレーズに辿り着くまでに、カッコいい言葉をいろいろと思い浮かべては悩んでいました。

――となると、サビ以降は心を決めて即行動という。ですが、サビの終わりでは<最低な運命恨んでなんかないぜ まだ>となにやら含みを持たせていて。あの<まだ>も妙に気になります。


LiSA:あはははっ(笑)。



――この部分だけ倒置法を使っているあたり、LiSAさんとしても聞き手に意識を向けてほしいフレーズのはず。とはいえ歌詞の流れからするとネガティブな意味合いに転がる点で少し不自然だなと。


LiSA:ここで<まだ>と歌っているのは、あくまでもこの歌詞の段階では、最高な運命の渦中にいると思い切れていない。それが予測でしかないからですね。『スパイダーマン』でいえば、蜘蛛に噛まれたことで最高の人生を送れたのか。私自身で考えても、現状は最後に「いい人生だったな」と言えるに違いないと、明るい希望を持った上で毎日を頑張って過ごしていますが、その結果はまだ出ていないし、出てみないとわからない。もしかしたら、この人生を最後に恨むことになるかもしれないじゃないですか(笑)。

――結局のところ悩みは尽きないわけですね。少し複雑な質問になりますが、AメロとBメロで抱えていたものと、サビ以降での悩みはまた別の種類のものなのか。あるいは同じ悩みが発展して形を変えたものなのか。どちらを想定していますか?


LiSA:それでいうと後者ですね。少し本題から離れて男性と女性にかかわる一般論の話になるんですけど、男性が女性に悩み相談をされたとき、正論で返してしまうって聞いたことありませんか?

――むしろ身に覚えがありますね……。


LiSA:女性はただ単純に悩みごとを聞いてほしいだけ。答えは求めてないし、なんならすでに答えはあるから、背中だけを押してほしい。この楽曲のAメロとBメロもそんなイメージなんです。結局のところ、覚悟を決めて最後は闘いに行くのよ(笑)。行くんだけれども、最後の確認作業をしておきたいんですよね。

――「どっちの服が似合う?」というありがちな質問に近しいものを感じます。


LiSA:そうそう! あれも女性は悩んでいるんじゃなく、好きな男性に背中を押してほしいだけ(笑)。



――となると、サビ以降の展開は?


LiSA:例えるならば、赤と白の洋服が選択肢にあったとして、最終的に白い方を選びました。でも、出先でもしかするとトマトスパゲッティを食べることになって、いざ着ることを決心した洋服を汚しちゃうかもしれない。

――その瞬間、「あのとき、赤い方を選んでいれば……」という後悔がよぎるわけですね。


LiSA:そうそう(笑)。スパゲッティを食べる運命に陥るかもしれないし、そうならないかもしれない。そんな意味を歌詞で表現したのが、あの<まだ>なんです。

――とても考え抜かれた歌詞に対して、このような陳腐な例え方で質問をすべきか迷ったのですが、いまのところは「してよかった」と思えました。この記事が公開されるころには、どんな心境かわかりませんが……。


LiSA:すみません、説明がやたらとポップで(笑)。

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『スパイダーマン』の世界に相応しいかを重視した楽曲制作

――トラックの方に話を移して、今回は盟友の堀江晶太さん(PENGUIN RESEARCH)が作編曲を担当しています。


LiSA:デビュー10周年を迎えるまで、いろいろなクリエイターさんとご一緒して楽曲作りをしてきました。「Rising Hope」のアレンジで出会った晶太くんもその一人。ここ数年は「10周年を超えた後のLiSAはどんなふうに歩んでいこう?」と常々会話をしているくらい、彼は私自身の想いに近い存在でいてくれるし、言葉を音に変えてくれるんです。なので晶太くんと楽曲作りをすること自体が自然と増えたんですよ。

――トラックの制作期間はどのくらいでしたか。


LiSA:走り出したら早かったですね。たしか1か月くらい。今回は歌詞やメロディよりも先に、まず第一に『スパイダーマン』の世界に相応しいサウンドやリズムを考えるところから制作を始めて。過去の作品や今回の映画の予告映像を見ながらイメージを掴んでいきました。

――サウンドやリズムからですか?


LiSA:晶太くんはアレンジメントがすごく得意なので、彼とスタジオに入る機会が多くなるにつれて、サウンド作りから楽曲制作を始めることが多くなったんです。これまでは作曲者の方にメロディをいただいて、それをアレンジャーさんにお渡ししていたので逆のアプローチになります。そもそも、私も学生時代にバンドをしていたとき、楽曲作りをするとなると、まずはメロディよりも先にリズムやドラムのサウンド作りなどから手をつけていたなと。

――バンドならではの制作順序ということですね。


LiSA:そういうことです。スパイダーマンが街中を飛び交っているスピード感と、ただ明るいだけではない、物語が持つほんの少しのダークさをサウンドに織りまぜながら、まずは1番を作りました。

――そこから2番に入ると、音を抜いたりラップをしたりと、一気に流れが変わる展開も用意されています。


LiSA:前回の『スパイダーマン:スパイダーバース』のテーマソングがロックではなく、R&Bやヒップホップのテイストだったので、そうしたジャンルが持つ特有の余白というか……。スパイダーマンがただ果敢に攻める印象だけでなく、少し余裕や余白のある部分を私も取り入れたいと思ったので、このパートを用意したんです。しかも今回は、グウェンが活躍する作品なので、アニメーションになったときのスパイダーマンのキュートさが、どこか楽曲のなかにあってもよいのかなと。女の子っぽさが伝わればうれしいです!



――この部分は特に楽曲を通しての聴きどころですよね。ところで、ここまで詳しく解説してもらった「REALiZE」も、今年9月からの全国ホールツアー【LiVE is Smile Always〜LANDER〜】では披露されるのかと思います。現在の情勢のままであれば、約3年半ぶりとなる声出し解禁のライブが実現できそうですね。


LiSA:世界が変わってしまってからも、私自身は楽曲をリリースしているので、そんな彼らの本領発揮の場にできたらうれしいです。私はこの10年以上の活動において、ライブを通して楽曲を育てていくことや、ライブを意識して作った楽曲もとても多かったので、この3年半で披露機会のなかったものや、声出しの制限があったことで、どうしてもステージから反応が見えづらかったものもまとめて、もう大手を振って会場全員で楽しむことができればと思っています。

――ファンであるLiSAッ子も、「次のライブでこそこの楽曲のコールをしたい!」と予習を重ねているぶん、もしかするとコロナ禍以前のライブよりもパワーアップしたコール&レスポンスを浴びれるかもしれません。


LiSA:そうなんですよ。実際にみんなの声を頼りに制作している楽曲も多いのと、その上でみんながコールを体に入れた状態で完璧にしてきてくれるので、期待しかないです。

――そんな全国ホールツアーの前にまずは、待望の夏がやってきます。


LiSA:ここ最近は観光客も増えて、街も元気になりましたよね。お祭りや花火大会も今年から開催されるところが多いと思うので、私も数年ぶりの打ち上げ花火を楽しみたいです。あとはバーベキューも、薄着もしたい。ファッションが好きなので、今年の夏は薄着で肌見せをしていきたい!

――「薄着をしたい」という言葉はあまり聞き馴染みがないですね(笑)。ファッションが好きな方は、いろいろな洋服を重ね着できる秋冬の方が好きなイメージがありました。夏はどうしても一度に身につけられる洋服の枚数が限られるかと。


LiSA:私、筋肉もファッションだと思っているんですよ。歌手としても、歌やライブのために筋肉が必要なのですが、洋服を着るときにも見せられる筋肉をちゃんと鍛えておくことが大切だと常々思っていて。今年の夏は肌見せをしたいなら、きちんと見せられる筋肉を鍛えておかなきゃ。なので最近の目標は、薄着ができる体作りです。それに夏フェスとかに参加するにしても、薄着じゃないと暑いから(笑)。



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