Billboard JAPAN


Special

Billboard JAPAN 2023年上半期チャート発表、Official髭男dismが【JAPAN Hot 100】/King & Princeが【Hot Albums】首位に



 ビルボードジャパンの2023年 上半期チャートが決定した。本特集では総合ソング・チャート【JAPAN Hot 100】、総合アルバム・チャート【Hot Albums】、さらに【Hot 100】と【Hot Albums】のポイントを合算したアーティスト・チャート【Artist 100】などのチャートを解説とともに発表する。

 ドラマやアニメの相乗効果によって、ストリーミング・動画再生・ダウンロードのデジタル指標のポイントを今まで以上に積み上げる展開が目立つなか、「怪獣の花唄」、Tani Yuuki「W/X/Y」、なとり「Overdose」など、ノンタイアップ楽曲の躍進も顕著で、デジタルマーケットの拡大を追い風とした新たな楽曲が、今後、日本そして世界の音楽チャートで大逆転を起こすチャンスがあると期待させる結果となった。

※集計期間:2022年11月28日(月)~2023年5月28日(日)


JAPAN Hot 100

Official髭男dism「Subtitle」が歴代記録を塗り替え、総合首位



▲ 「Subtitle」MV / Official髭男dism


 2023年の上半期Billboard JAPAN総合ソング・チャート“JAPAN Hot 100”で、Official髭男dismの「Subtitle」が総合首位を獲得した。

 昨秋放送のフジテレビ系ドラマ『silent』の爆発的ヒットが主題歌である「Subtitle」との相乗効果を加速させ、同曲は通算13回の週間総合首位をマークした。これは“JAPAN Hot 100”史上最多記録だ。ドラマや音楽番組、情報番組における当楽曲の地上波露出は12月にピークを迎えたが、年明け以降も情報番組を主とした露出が続き、10月から3月まで週間チャートのトップ3圏内をキープ。各指標で高ランクをマークしたのはもちろんだが、特に1位となったストリーミング指標は287,706,788回再生と、同指標2位の米津玄師「KICK BACK」(193,429,943回再生)に約9,000万の大差をつけており、現在でも週間700万再生を維持するロングヒットとなっている。同じく昨秋放送のアニメ『チェンソーマン』の主題歌として爆発的なヒットとなった「KICK BACK」は、各指標で1位こそ無かったものの、ハイレベルなポイントをバランス良く維持し、総合2位につけた。

 このように、ドラマやアニメタイアップによる相乗効果が、ストリーミング、動画再生、ダウンロードのデジタル指標のポイントを今まで以上に積み上げる展開が目立っている。それを如実に示すのは、今春放映中のアニメ『【推しの子】』の主題歌であるYOASOBI「アイドル」の快進撃だ。昨秋や昨年末でのヒットの勢いを維持することができた楽曲が上半期チャートの上位を占めるなか、同曲はデジタルリリース後わずか2か月あまりの加点で総合3位まで急上昇し、ストリーミングは154,890,460回再生で4位、動画再生は55,123,008回再生で2位、ダウンロードは202,404DLで1位という今までにない結果をみせ、デジタルマーケット自体の拡大がネクストレベルに入ったことを示している。

 デジタルマーケットの拡大を示すのは逆にノンタイアップの楽曲の躍進からもみえてくる。『第73回NHK紅白歌合戦』での熱演が新たなファン層の拡大に繋がったVaundy「怪獣の花唄」、TikTok発のロングヒットとなったTani Yuuki「W/X/Y」、なとり「Overdose」がトップ10入りを果たし、これらはストリーミングが牽引するデジタル3指標での加点が大きい。また、動画再生指標では、King & Prince「ツキヨミ」が58,875,058回再生で1位となり、同「ichiban」が5位、Snow Man「タペストリー」が6位、同「ブラザービート」が9位と、ジャニーズ勢の躍進が目立ち、こちらもフィジカルからデジタルマーケットにも軸足を置きつつあるファンダムの変容がみてとれる。


▲ 「怪獣の花唄」MV / Vaundy


 これらからみえてくるのは、楽曲がなんらかのフックで爆発的にヒットすると、長期間にわたって高ランクを維持するのが“JAPAN Hot 100”の常だったが、今年度はそれに加えて、そのポイント加点が非常に大きくなってきていることだ。フィジカルでの加点もボーイズグループを中心に大きくなっているが、それをはるかに上回る爆発的な加点がデジタル指標で確実に起きている。上半期総合首位の「Subtitle」を猛烈に追い上げる「アイドル」が今後の注目ポイントである一方で、デジタルマーケットの拡大を追い風とした新たな楽曲が大逆転を起こしうる、新局面の“JAPAN Hot 100”に今後も目が離せない。

Text by 礒崎誠二

  • 2023年 上半期Billboard JAPAN総合ソング・チャート“JAPAN Hot 100”
  • #1
    Subtitle
    Official髭男dism
  • #2
    KICK BACK
    米津玄師
  • #3
    アイドル
    YOASOBI
  • #4
    怪獣の花唄
    Vaundy
  • #5
    第ゼロ感
    10-FEET
  • #6
    新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)
    Ado
  • #7
    W/X/Y
    Tani Yuuki
  • #8
    Overdose
    なとり
  • #9
    ミックスナッツ
    Official髭男dism
  • #10
    アイラブユー
    back number


Official髭男dism
コメント

「こんなにも多くの皆さんが自分たちの音楽を聞いてくださり、感謝の気持ちでいっぱいです。

これからも楽曲制作やライブに励みながら、この先も自分たちが良いと思う楽曲を届けられるように、楽しみながらバンドとして活動していこうと思います。

本当にありがとうございました」ーーOfficial髭男dism

▲ TOP


Hot Albums

King & Prince『Mr.5』が総合首位 Snow Man/SEVENTEENが続く

 2023年度上半期の総合アルバム・チャート“Hot Albums”で、King & Princeの『Mr.5』が首位を獲得した。

 King & Princeの初となるベストアルバムで、2023年4月19日にリリースされた同作は、初週に1,220,014枚を売り上げてミリオンを達成し、CDセールスで首位を獲得。その後は少しずつ順位を下げているものの、CDセールス、そして総合アルバム・チャートでトップ10圏内を走りつづけている。結果的に上半期累計売上1,376,802枚でCDセールス1位を獲得した。



▲ 「King & Prince BEST ALBUM「Mr.5」Special Movie」


 総合2位にチャートインしたのはSnow Manの3rdアルバム『i DO ME』。5月17日にリリースされた本作には、シングルとしてリリースされた「オレンジkiss」「タペストリー」「W」が含まれており、上半期累計でCDセールスが1,162,120枚で2位を記録している。初週で1,072,926枚を売り上げてCDセールス首位を獲得した本作は、2週目でも89,194枚で2位につくなど、高順位をキープしている。

 総合3位にはSEVENTEENの『FML』がCDセールス3位(791,275枚)、ダウンロード37位(3,351DL)を記録してチャートイン。SEVENTEENの10thミニ・アルバムである本作は2023年4月26日に日本リリースされ、初週で708,303枚を売り上げてCDセールス1位、そして2,512DLでダウンロード数も1位と両指標で好スタートを切っていた。

 総合4位にはStray Kidsの『THE SOUND』がCDセールス4位(617,849枚)、ダウンロード54位(2,546DL)を記録してチャートイン。そして、1月4日にリリースされたSixTONESの『声』がCDセールス595,008枚を記録し総合5位に登場している。両作ともに5月31日発表のチャートではランク外になってしまったものの、『THE SOUND』は発売から13週、『声』はじつに20週にわたって“Hot Albums”にチャートインし続けるという長期的なチャートアクションを見せていた。

 また、TVアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』の劇中バンドである結束バンドの1stアルバムが総合6位を記録。本作はCDセールス16位(161,614枚)だが、ダウンロードでは54,566DLで見事1位を記録。同指標での好成績も影響し、最終的にトップ10内に入っている。

Text by Haruki Saito

  • 2023年 上半期Billboard JAPAN総合アルバム・チャート“Hot Albums”
  • #1
    Mr.5
    King & Prince
  • #2
    i DO ME
    Snow Man
  • #3
    FML
    SEVENTEEN
  • #4
    THE SOUND
    Stray Kids
  • #5
    SixTONES
  • #6
    結束バンド
    結束バンド
  • #7
    Awakening
    INI
  • #8
    FACE
    JIMIN
  • #9
    ユーモア
    back number
  • #10
    POWER
    ジャニーズWEST


King & Prince
コメント

「このたび、King & Prince初めてのベストアルバム『Mr.5』が、2023年上半期ランキングのアルバム部門で1位を受賞させていただきました。

手に取っていただいた皆様、そして関わっていただいたすべての皆様、本当にありがとうございます!

このアルバムは、King & Princeがこれまで歩んできた道のりを、共に歩んで来て下さったファンの方々と一緒に作り、振り返る一枚として制作させて頂きました。

楽曲投票では、たくさんの応募をいただき、こんなに愛していただいているのかと、とても嬉しかったです。

多くの皆様の応援があったからこそ、今回このような嬉しい結果を頂くことができたのだと思います!

これからも自分たちらしく、最高のパフォーマンスや楽曲をお届けしていきます。

ぜひ、楽しみにしていてください!」ーーKing & Prince(永瀬廉 髙橋海人)

▲ TOP


Artist 100

Official髭男dismが堂々1位、総合100位圏内に8曲入り

 2023年の上半期Billboard JAPANトップ・アーティスト・チャート“Artist 100”で、Official髭男dismが総合首位を獲得した。

 本チャートは、総合ソング“JAPAN Hot 100”と総合アルバム“Hot Albums”のポイントを合算したアーティスト・ランキングだ。Official髭男dismは、総合ソングチャートの全順位内で18曲、100位圏内に8曲、“Hot Albums”では100位圏外ではあるが5作がチャートインした。集計期間内に合計861,022,275回再生を挙げ、同指標2位のVaundyに約4,500万の大差をつけたストリーミングとラジオで1位となり、名実ともに“よく聞かれた曲”を持つアーティストといえるだろう。



▲ 「ミックスナッツ」MV / Official髭男dism


 総合2位のVaundyは、指標1位こそ無いものの、“JAPAN Hot 100”の全順位で23曲、100位圏内には5曲が入った。“Hot Albums”では66位に1作のみがチャートインと、楽曲数ではヒゲダンを上回ったが、アルバムタイトル数で差を付けられた。総合3位のback numberもVaundyと同様の展開だが、アルバム『ユーモア』のフィジカル・セールスの加点が総合順位を押し上げた。

 「アイドル」が急伸を続けるYOASOBIは総合4位に。ダウンロード1位で、これも「アイドル」による20万超DLの影響が大きい。5位のAdoはカラオケ指標での1位が目を引くが、この加点の大半は『ONE PIECE FILM RED』によるもので、昨夏以降の知名度の全国的な浸透を裏付ける結果といえる。



▲ 「新時代 (ウタ from ONE PIECE FILM RED)」MV / Ado


 そして、トップ10圏内に、King & PrinceとSnow Manが8位と9位にチャートイン。ともにソング、アルバムのCD指標で高ポイントを記録する一方で、動画再生でも同じように1位と2位を確保し、それぞれの動画再生数は合計で196,801,697再生、183,248,983再生だった。同指標3位のヒゲダンは100,581,650再生で、この2アーティストが頭一つ抜けた印象だ。この指標では、ボーイズグループのチャートインが目立っており、なにわ男子(動画再生9位、総合51位)、SixTONES(同13位、総合22位)、BE:FIRST(同14位、総合31位)、BTS(同17位、総合29位)、Stray Kids(同22位、総合16位)が動画再生指標トップ30位圏内に入っている。

 ここで、CD指標順位をみてみると、トップ30で、かつ動画再生指標で100位圏外だったボーイズグループは、ジャニーズWEST(CD 7位、総合58位)、TOMORROW X TOGETHER(同8位、総合55位)、&TEAM(同14位、総合63位)、ATEEZ(同15位、総合80位)、TREASURE(同17位、総合56位)、ENHYPEN(同18位、総合79位)、NCT DREAM(同20位、総合71位)、THE RAMPAGE from EXILE TRIBE(同25位、総合73位)、NEWS(同26位、総合100位圏外)、KAT-TUN(同28位、総合100位圏外)。そして、CD指標トップ30圏内、動画再生指標で100位圏内のボーイズグループは、King & Prince(同1位、総合8位)、Snow Man(同2位、総合9位)、SEVENTEEN(同3位、総合14位)、SixTONES(同4位、総合22位)、Stray Kids(同5位、総合16位)、INI(同6位、総合34位)、なにわ男子(同24位、総合51位)。

 これらの結果から、群雄割拠の様相を呈しているボーイズグループ・シーンにおいて、大半がフィジカルでポイントを積み上げるグループと、動画再生を主としたデジタル指標でもポイントを獲得できるグループとに類別可能となりつつあることが分かる。これがどういう結果を今後もたらすか推測するのは時期尚早といえるが、“JAPAN Hot 100”にて述べたような、デジタルマーケットの拡大を考慮するならば、デジタル指標での加点についても目を配る必要があるのは昨年度以上に明らかになったといえる。今後のボーイズグループそれぞれの展開に注目だ。

Text by 礒崎誠二

  • 2023年 上半期Billboard JAPANアーティスト・チャート“Artist 100”
  • #1
    Official髭男dism
  • #2
    Vaundy
  • #3
    back number
  • #4
    YOASOBI
  • #5
    Ado
  • #6
    Mrs.GREEN APPLE
  • #7
    優里
  • #8
    King & Prince
  • #9
    Snow Man
  • #10
    米津玄師

▲ TOP

NEXT PAGE
  1. < Prev
  2. その他の上半期チャートへ
  3. Next >



Hot Animation

史上初“21連覇”達成、アニメ『チェンソーマン』OPの米津玄師「KICK BACK」上半期制す

 2023年の上半期Billboard JAPAN総合アニメソング・チャート“Hot Animation”で、TVアニメ『チェンソーマン』オープニング・テーマである米津玄師の「KICK BACK」が1位に輝いた。

 アニメの初回放送と同時の10月12日に配信がスタートした同曲は、集計初週となる10月19日発表チャートでさっそく初登場首位を記録。その勢いをキープし続け、2022年年間チャートにも、当時登場から7週という短期間にもかかわらず年間9位に登場していた。



▲ 「KICK BACK」MV / 米津玄師


 チャート年度をまたいだ後もこの勢いを止める楽曲が長らく現れず、そこから2023年3月8日発表チャートまで、じつに21週にわたって首位をキープし続けた。なお、この記録は、これまでTVアニメ『鬼滅の刃』オープニング主題歌であるLiSA「紅蓮華」が持っていた16週連続首位を抜き、当チャート歴代1位の連続首位記録となる。

 「KICK BACK」に迫るもあと一歩、という成績で2位に収まったのは、アニメ『【推しの子】』オープニング・テーマのYOASOBI「アイドル」だ。4月12日にデジタル・リリースされ、4月19日チャートに初登場して以来、アニメチャート首位をキープし続けている同曲。上半期チャートの集計期間としてはわずか7週分の記録であったが、特筆すべきはその圧倒的なポイント獲得数だろう。「アイドル」はCD未リリースのため、ダウンロード、ストリーミング、ラジオ、動画再生、カラオケの5指標が集計対象となっているのだが、特にダウンロードと動画再生指標でのポイントが圧倒的で、指標単位で見ると「KICK BACK」にも大きく差をつけている。なお、「アイドル」は6月21日にCDシングルでリリースされることが予定されており、ここからアニメチャート連覇記録更新、また先の年間チャートに向け、さらに成績を積み上げていくことが予想される。

 恒例ながら、全体的に“ロングヒット”作が多い当チャートだが、トップ10を見ると、TVアニメ&映画の放送/上映期間終了後も楽曲そのものとしていくつかフックがあり、聴かれ続けている楽曲が多くみられた。たとえば、3位にチャートインした映画『THE FIRST SLAM DUNK』エンディング主題歌の10-FEET「第ゼロ感」は、国内動員が1,000万人を突破するという映画そのもののヒットももちろんだが、その聴く人を鼓舞するメロディや歌詞からか、3月に日本を熱狂させた【ワールド・ベースボール・クラシック】の中継番組のほか、映画に関係のない場面でも耳にする機会が多かった。

 また、10位のMAISONdes「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ feat. 花譜, ツミキ」は特殊で、エンディング・テーマに起用されていたアニメ『うる星やつら』第1クールが終了したあとにチャートが急上昇。そのきっかけになったのは、VTuberの星街すいせい等による「歌ってみた」動画だった。アニメタイアップをきっかけとして、そこからどのように話題を集めていけるかが、下半期でもカギとなりそうだ。

Text by Maiko Murata

▲ TOP


Streaming Songs

Official髭男dism「Subtitle」が約2.8億回再生で首位獲得 米津玄師/Vaundyが続く

 2023年上半期Billboard JAPANストリーミング・ソング・チャート“Streaming Songs”で、Official髭男dismの「Subtitle」が首位を獲得した。

 「Subtitle」は、ドラマ『silent』の主題歌として書き下ろされ、2022年10月12日に配信開始。10月19日公開の当チャートで2位に初登場し、翌週には首位を獲得した。その後も順調に数字を積み重ね、25週連続と約6か月にわたって首位の座を守って、上半期の累計再生回数は287,706,788回を記録。同曲は5月にBillboard JAPANチャートにおける史上最速ストリーミング累計4億回再生を突破しており、チャートイン31週目での記録到達は、これまでBTS「Dynamite」が保持していた最速記録を10週以上更新している。

 続く2位は、TVアニメ『チェンソーマン』のオープニング・テーマとして書き下ろされた米津玄師「KICK BACK」。アニメ初回放送と同日の2022年10月12日に配信開始、10月19日公開の当チャートで初登場首位を獲得し、上半期の累計再生回数は193,429,943回を記録した。なお、同曲は総合アニメソング・チャート “Hot Animation”において首位を獲得している。

 「KICK BACK」のように、アニメ作品とのタイアップが作用してヒットを生むケースも顕著で、TVアニメ『【推しの子】』のオープニング・テーマであるYOASOBI「アイドル」が4位、映画『ONE PIECE FILM RED』の主題歌であるAdo「新時代 (ウタ from ONE PIECE FILM RED)」が7位、TVアニメ『SPY×FAMILY』のオープニング・テーマであるOfficial髭男dism「ミックスナッツ」が8位、映画『THE FIRST SLAM DUNK』のエンディング・テーマである10-FEET「第ゼロ感」が9位をマークと、トップ10内の半数を占めた。



▲ 「アイドル」MV / YOASOBI


 なかでも、比較的最近リリースされた「アイドル」は、アニメの放送開始日である2023年4月12日に配信開始され、4月19日の当チャートで初登場首位を獲得。以降、自身初の週間2,500万回超えを記録し、当チャートにおける歴代2位の数字をたたき出し、2023年リリース楽曲としては初、さらに史上最速のチャートイン5週目で累計再生数1億回超えを達成するなど、短いスパンで数々の記録を打ち立てている。

 そんななか、昨年末の『第73回NHK紅白歌合戦』で披露されたことで再注目を集めたVaundy「怪獣の花唄」が3位にチャートイン。1stアルバム『strobo』からの先行シングルとして2020年5月に配信開始した本曲は、紅白放送後の2023年1月11日公開の当チャートで3位に浮上。その後も根強く数字を積み重ねて、上半期の累計再生回数は177,096,272回を記録した。自身初のストリーミング累計3億回再生を突破した同曲は、首位獲得こそないものの、現在も123週連続でトップ100圏内を走り続けている。なお、Vaundyは、上半期ストリーミング・ソング・チャート内のトップ100以内に計8曲を送り込んだ。

 そのほか、2022年の年間Billboard JAPANストリーミング・ソング・チャート“Streaming Songs”で首位を獲得したTani Yuuki「W/X/Y」は高水準を維持して5位、なとり「Overdose」が6位をマークし、TikTokやYouTubeといったプラットフォームでバズを生む次世代アーティストも次々と頭角を現している。



▲ 「W/X/Y」Lyric Video / Tani Yuuki


 近年リリースされた楽曲が多数チャートインする一方で、過去の楽曲がリバイバル・ヒットしたケースにも注目したい。今回、25位にチャートインしている宇多田ヒカル「First Love」は、1999年にリリースされた1stアルバムの表題曲で、2022年11月24日に配信開始したNetflixシリーズのオリジナル・ドラマ『First Love 初恋』によって再び注目を集めた。12月7日に18位で251週ぶりのチャートインを果たし、さらにはドルビーアトモス版の配信、7インチアナログ盤の発売といった話題性も相まって、12月21日には3位まで順位を上げた。

 結果として、ドラマ、アニメ、映画といったタイアップ楽曲が多くみられるものの、チャートインのトリガーは社会的ヒットを記録した映像作品の話題性のみではない。その楽曲自体が長きにわたって聴かれ続けていることが、それぞれの累計再生回数から見えてくる。

Text by Yuma Sakata

▲ TOP


Download Songs

YOASOBI「アイドル」首位、アニメ関連曲がチャート席巻

 2023年上半期Billboard JAPANダウンロード・ソング・チャート“Download Songs”で、YOASOBIの「アイドル」が首位を獲得した。

 2023年4月12日に配信された、TVアニメ『【推しの子】』のオープニング主題歌である「アイドル」は、4月19日公開チャートで2位に初登場すると、その後、通算4週にわたり1位をマーク。2022年11月28日から2023年5月28日が集計対象の上半期チャートで、累計202,404ダウンロード(DL)を獲得し、堂々の1位となった。

 またYOASOBIは、6位に『機動戦士ガンダム 水星の魔女』のオープニング・テーマ「祝福」が累計86,476DLでチャートインしており、2曲が上半期トップ10入りした。

 ロングヒット中のOfficial髭男dismの「Subtitle」は、累計190,774DLを売り上げ、僅差で2位に。ドラマ『silent』の主題歌に起用された本曲は、2022年10月19日公開チャートで3位に初登場し、11月9日で首位に浮上。2023年1月4日公開チャートまで通算8週にわたりトップの座に君臨し、トップ40圏内に推移し続けている。他の指標でもバランスよくポイントを稼ぎ、上半期Billboard JAPAN総合ソング・チャート“JAPAN Hot 100”を制した。

 なお、Official髭男dismもYOASOBI同様に、2曲が“Download Songs”上半期トップ10入りしており、今年1月11日に配信されたTVアニメ『東京リベンジャーズ』聖夜決戦編のオープニング主題歌「ホワイトノイズ」が累計73,091DLで10位につけている。

 3位には、10-FEETの「第ゼロ感」が累計187,365DLをマークして続く。2022年11月16日公開チャートで37位にデビューすると、12月3日にエンディング主題歌に起用されている映画『THE FIRST SLAM DUNK』の劇場公開が開始したことにより、12月14日公開チャートで2位にジャンプアップ。トップ5圏内を維持し、2023年2月1日公開チャートではついに首位に到達した。以後勢いが衰えることなく、トップ20圏内に堅実にチャートインしている。



▲ 「第ゼロ感」MV / 10-FEET


 MAN WITH A MISSIONとmiletがタッグを組んだ、TVアニメ『鬼滅の刃』刀鍛冶の里編のオープニング主題歌「絆ノ奇跡」は125,367DLを売り上げて、チャートイン7週にして4位となった。「アイドル」と同週にリリースされ、首位デビューした本曲は、その後もトップ5圏内をキープし続けており、「アイドル」ともに年間上位も期待できそうだ。

 昨年からチャートインし続けている米津玄師によるTVアニメ『チェンソーマン』のオープニング・テーマ「KICK BACK」(107,892DL)が5位、Adoが歌う映画『ONE PIECE FILM RED』の主題歌「新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」(83,940DL)が7位に続き、Vaundyの「怪獣の花唄」は累計82,628DLで8位となった。2020年5月11日に配信開始した曲だが、昨年末の『第73回NHK紅白歌合戦』に初出場した際にこの曲をパフォーマンスしたことで人気が再熱し、2023年1月11日公開チャートでは見事1位となっていた。

 昨年4月28日に配信されたSEKAI NO OWARIによる「Habit」は累計74,893DLを獲得し、9位となった。「怪獣の花唄」同様に『第73回NHK紅白歌合戦』で披露され、2022年12月30日に発表された『第64回輝く!日本レコード大賞』では<レコード大賞>を受賞したことが後押し、1月4日公開チャートで最高位を2位に更新していた。

 今年のトップ10は、Official髭男dismの「Subtitle」、Vaundyの「怪獣の花唄」、SEKAI NO OWARIの「Habit」の3曲以外すべてアニメ作品のタイアップ楽曲で、人気の高いアニメと作品を盛り上げる楽曲が相乗効果を生み、ロングヒットになるケースがさらに顕著になっている。

Text by 岡田

▲ TOP


Download Albums

結束バンド『結束バンド』が通算21回のトップ10入りで首位に 
back number『ユーモア』が続く

 2023年上半期Billboard JAPANダウンロード・アルバム・チャート“Download Albums”で、結束バンド『結束バンド』が首位を獲得した。

 結束バンドは、アニメ『ぼっち・ざ・ろっく』の劇中バンドで、本アルバムは2022年12月25日に先行配信がスタートすると、初週5,877DLを売り上げて、初登場首位を獲得した。その後は通算7回の首位を獲得し、トップ10には計21回チャートイン。アニメは2022年12月24日深夜に最終回が放送されたにもかかわらず、半年経ってもなお10位を獲得するロングヒットとなり、累計54,566DLを売り上げた。5月24日にはニューシングル『光の中へ』がリリースされ、『ぼっち・ざ・ろっく!』の劇場総集編の公開が2024年春に予定されていることから、下半期もチャートアクションに注目だ。



▲ 「光の中へ」MV / 結束バンド


 2位はback number『ユーモア』が獲得。1月17日にリリースされた7thアルバムで、初週8,718DLで首位を獲得、週間チャートで首位を獲得したのは初週のみだったが、3月18日から4月23日まで初の5大ドームツアーが開催されたことも後押しして、集計期間中に何度も再浮上し、通算8回のトップ10入りを果たした。

 そして3位は、2022年の年間ダウンロード・アルバムを制したAdo『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』、4位はELLEGARDENが16年ぶりにリリースして話題となった『The End of Yesterday』がチャートイン。スピッツが約3年半ぶりにリリースした『ひみつスタジオ』はチャートイン回数2回にもかかわらず、9位に食い込んだ。

 音楽配信の売上はストリーミングはプラス成長が続いているものの、ダウンロード売上は減少。レコード協会の発表によると音楽ダウンロード全体では、2022年は前年比81%となった。世界的に見てもダウンロードの減少傾向は続いており、IFPIが発表した2022年のグローバルの売上はストリーミングが2兆4500億円に比べて、ダウンロードは902億1600万円と大きく乖離している(1ドル140円で計算)。

 ただ世界におけるストリーミングとダウンロードの売上が約30倍近い売上の差があることと比べて、日本はストリーミングが928億300万円、ダウンロードが114億4,600万円と、ダウンロード売上が高いことが特徴だ(日本レコード協会発表)。トップ20を見てみると、アニメを通してなど、世代を超えて愛された作品が並んだ。

Text by Naoko Takashima

▲ TOP

TOP Singles Sales

King & Prince『Life goes on/We are young』で初首位 Snow Man/乃木坂46が続く

 2023年上半期Billboard JAPANシングル・セールス・チャート“Top Singles Sales”で、King & Princeの『Life goes on/We are young』が1,104,399枚を売り上げ首位に輝いた。

 本チャートは、2022年11月28日から2023年5月28日までの6か月間のサウンドスキャンジャパン販売枚数データを累計したもの。King & Princeの12thシングルは、メンバーの永瀬廉出演ドラマ『夕暮れに、手をつなぐ』のエンディング曲「Life goes on」と、岸優太主演のドラマ『すきすきワンワン!』の主題歌「We are young」が両A面で収録されている5人体制ではラストのシングルだ。本作は2月22日にリリースされ、初週で1,051,909枚を売り上げミリオン突破を記録。この記録は現在、2023年度の最多初週セールスでもある。なお、King & Princeが上半期もしくは年間シングル・セールス・チャートで首位を獲得するのは、今回が初めてだ。



▲ 「Life goes on」MV / King & Prince


 続く2位は、Snow Manの8thシングル『タペストリー/W』がチャートイン。「タペストリー」はメンバーの目黒蓮が主演を務める映画『わたしの幸せな結婚』の主題歌、「W」はドラマ『大病院占拠』の主題歌にそれぞれ起用されている。本作は3月15日にリリースされ、初週で921,011枚を売り上げて自己最高記録を更新。2023年4月17日~4月19日の集計時に自身5作目のミリオン突破を記録した。

 3位・4位は乃木坂46が独占。3位は983,925枚売り上げた、31stシングル『ここにはないもの』、4位は742,645枚売り上げた、32ndシングル『人は夢を二度見る』が続いている。

 そのほか、今回トップ10にチャートインした作品のうち、男性グループが5作品、女性グループが5作品とアイドルグループが席捲する結果となった。また、新たにどんな作品が生まれてくるのか、今後の動向にも注目したい。


Text by Rumi Miyamoto

▲ TOP


TOP Albums Sales

King & Prince『Mr.5』が首位獲得、Snow Man/SEVENTEENが続く

 2023年上半期Billboard JAPANアルバム・セールス・チャート“Top Albums Sales”は、King & Prince『Mr.5』が獲得した。

 本チャートは、2022年11月28日から2023年5月28日までの約6か月間のサウンドスキャンジャパンでの販売枚数データの累計で決定する。King & Princeは、2022年年間“Top Albums Sales”では『Made in』が5位となっていたが、2023年4月19日に発売したベスト盤『Mr.5』が1,376,802枚を売り上げ大躍進し、2023年上半期で首位を獲得した。



▲ 「King & Prince BEST ALBUM「Mr.5」KPQP & シンデレラガール 2023 Special Movie」


 続いて2位は1,162,120枚を売り上げたSnow Manの『i DO ME』が獲得、3位は791,275枚を売り上げたSEVENTEENの『FML』、4位は617,849枚を売り上げたStray Kidsの『THE SOUND』、5位は595,008枚を売り上げたSixTONES『声』がそれぞれ獲得した。

 2022年上半期は1位から10位までの合計販売枚数が2,609,112枚だったが、2023年上半期は5,891,022枚と倍以上になっており、非常に高レベルのランキングとなっている。また、トップ10の内訳は、男性グループが9組、男性ソロが1組と上位を男性アーティストが占め、SEVENTEENの2作ランクインをはじめ半数の5作をK-POPが占める結果となった。

Text by kzskm

▲ TOP

NEXT PAGE
  1. < Prev
  2. その他の上半期チャートへ
  3. Next >


TikTok Songs Chart

HoneyWorks「可愛くてごめん (feat. かぴ)」が首位獲得

 2023年の上半期Billboard JAPAN“TikTok Songs Chart”で、HoneyWorksの「可愛くてごめん (feat. かぴ)」が1位に輝いた。

 本楽曲は、サビ頭の<Chu!>という歌詞に合わせて投げキッスをするダンス動画から人気に火が付き、すっぴんからのメイク動画、投稿者自身の推し活を紹介する動画など楽曲に合わせた使用方法から、静止画をイラストにしてくれるエフェクト「マンガエフェクト」のBGMとしても使用されるなど、様々なシチュエーションで使用されてきた。2022年10月12日公開の“TikTok Weekly Top 20”で8位に初登場してから勢いを伸ばし、12月7日時点では6週連続首位を記録。2023年5月24日時点で33週連続でのチャートインを果たし、現在もその記録を伸ばし続けている。



▲ 「可愛くてごめん (feat. かぴ)」MV / HoneyWorks


 また、TVアニメ『ヒロインたるもの!~嫌われヒロインと内緒のお仕事~』に登場する、中村千鶴のキャラクター・ソングとして、声優の早見沙織が歌う「可愛くてごめん feat. ちゅーたん(早見沙織)」も人気が上昇している。この日本でのバイラルヒットをきっかけに、K-POPアーティスト達もこのダンス動画を投稿、世界的に認知されることとなった。

 2位は、オランダのポップ・ミュージック・グループChipzによる「1001 Arabian Nights」。2005年にリリースされた楽曲で、サビの歌詞<1・0・0・1>を指で表現したダンスが突如バズり、リバイバルヒットとなった。また、3位にはメイ・スティーブンス「イフ・ウィー・エヴァー・ブローク・アップ」がチャートイン。<ブローク・アップ>の歌詞に合わせ両手で作ったハートをパカッと開いたり、泣いてる顔文字のように指をTにして悲しさを表現するダンスがバズっている。6位にはジョージ・エズラ「グリーン・グリーン・グラス」がチャートインしており、洋楽の10位圏内チャートインが目立つ。どれも国外でバズったダンス動画が国内にも広がった形だが、BGMとしての相性も良いことから、2023年上半期のTikTok定番曲となりロングヒットを果たした。

 4位の有華「Baby you」は、andropの内澤崇仁が楽曲提供した有華のメジャーデビュー曲。ローカルカンピオーネのRYOMAが振り付けたダンスがバズり、有華本人もオフィシャル・アカウントでこのダンスを披露し、話題に。また、動画編集アプリ「CapCut」でもこの曲が多く使用され、曲に合わせた写真のスライドショーなどを使って、友人や恋人との仲の良さをアピールする遊び方も流行した。



▲ 「Baby you」MV / 有華


 9位のLANA「TURN IT UP (feat. Candee & ZOT on the WAVE)」、14位の10-FEET「第ゼロ感」、15位のKANA-BOON「サクラノウタ」、17位のBE:FIRST「Boom Boom Back」は、TikTokとSpotifyの共同応援プログラム『Buzz Tracker』のマンスリー・アーティストに選出された楽曲だ。上半期の総合チャート“JAPAN Hot 100”でも5位にチャートインした「第ゼロ感」は、映画『THE FIRST SLAM DUNK』の主題歌としての影響も大きく、TikTokでも話題に。ファンアートやバスケのプレイ動画など国内外問わず使用された。

 「サクラノウタ」は、「さくらのうた」「桜の詩」に続く、2023年の“桜ソング”としてリリースされた楽曲で、4月12日公開の“TikTok Weekly Top 20”では初登場首位という結果を残した。4月度のマンスリー・アーティストだったこともあり、桜や入学・進学など春にまつわる動画のBGMとして使用されることが多かった。アーティスト自身が「CapCut」でテンプレートを作成したことも、楽曲が拡散するきっかけとなったようだ。

 また、TikTokでのバイラルをきっかけに総合チャートにチャートインした楽曲も誕生した。10位のano「ちゅ、多様性。」は、TVアニメ『チェンソーマン』第7話のエンディング・テーマに起用された楽曲だ。元・相対性理論の真部脩一が作詞、作曲は真部とあのの共作で、編曲はTAKU INOUEが手がけた。TikTokでは「♯ゲロチューダンス」のタグをつけたダンスチャレンジが人気を集め、2022年12月7日公開“TikTok Weekly Top 20”で初登場3位を獲得した。

 そして、新しい学校のリーダーズが2020年5月1日にデジタル・リリースした「オトナブルー」がリバイバルヒットし、13位に。作曲はyonkey(Klang Ruler)が手がけており、TikTokではサビの「♯首振りダンス」が注目された。3月16日には急遽ミュージック・ビデオも公開され、さらに話題を呼んだ。

Text by Yuma Totsuka

▲ TOP


Top Lyricists

「Subtitle」「ミックスナッツ」とロングヒット続出、藤原聡が1位に

 2023年の上半期Billboard JAPAN作詞家チャート“Top Lyricists”にて、藤原聡が1位に輝いた。

 本チャートは、総合ソング・チャート“JAPAN Hot 100”にチャートインした楽曲を作詞家別にランキング化したもの。藤原はラジオ、動画再生、カラオケで1位を獲得しており、特に、2022年年間作詞家チャート“Top Lyricists”から続いての1位となったラジオ指標においては、ポイントで比較すると同指標2位の草野正宗に1.2倍以上の差をつけている。さらに、今回の加算対象となった楽曲をさらってみると、「Subtitle」「ミックスナッツ」「ホワイトノイズ」といった、長期にわたって“JAPAN Hot 100”上位にチャートインしていた楽曲がずらりと並ぶことがわかる。いずれも人気ドラマ/アニメ作品のタイアップ曲であるが、それをきっかけにラジオや動画再生を中心に楽曲が聴かれ、さらにカラオケで自ら歌って楽しむ、という流れが、他のアーティストよりも強く確立されていることがうかがえる。



▲ 「ホワイトノイズ」MV / Official髭男dism


 なお2位には、2022年年間作詞家チャート“Top Lyricists”の4位より浮上したVaundyが登場。2022年大晦日に放送された『第73回NHK紅白歌合戦』への初出場により、一気に幅広い世代への認知と支持が広がった印象のある彼だが、そこで披露された「怪獣の花唄」が、番組放送後の2023年1月11日公開チャート(集計期間:2023年1月2日~1月8日)より“JAPAN Hot 100”で前週27位から3位へ急上昇。その後もトップ10内をキープし続けており、総合順位とストリーミング指標の推移を比べてみると、その動きがほぼ同期していることから、楽曲が聴かれるチャネルがほぼストリーミングであることが伺える。その様子を表すように、2023年上半期作詞家チャート“Top Lyricists”のストリーミング指標1位を勝ち取った。

 また3位には、昨年3月の再始動以降のMrs. GREEN APPLEでのコンスタントな活動、さらに映画『ONE PIECE FILM RED』での楽曲提供に、そのセルフカバーと話題をさらった大森元貴がチャートイン。続く4位は、YOASOBI「アイドル」が今まさに各チャートを席巻しているAyaseに。「祝福」といった最近の大型タイアップ曲から、「群青」をはじめとするロングヒット曲と、新旧入りまじった楽曲が広く支持を得ているのが特徴的だ。

 そして5位は、NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』の主題歌「アイラブユー」、コロナ禍に学生生活を翻弄された高校生たちを支えた「水平線」がロングヒットを続け、23年1月にはそれらをまとめた約4年ぶりのアルバム『ユーモア』をリリースしたことも話題をさらったback numberのソングライティングを担う清水依与吏が獲得した。

Text by Maiko Murata

▲ TOP


Top Composers

藤原聡、ラジオ/動画/カラオケで3冠達成し3年ぶりの首位

 2023年上半期Billboard JAPAN作曲家チャート“Top Composers”で、藤原聡が1位に輝いた。

 本チャートは、総合ソング・チャート“JAPAN Hot 100”の中から作曲家にフォーカスしたランキングだ。指標別に見ると、藤原聡はラジオ、動画再生、カラオケで1位、ダウンロード、ストリーミングで2位、CDセールスは100位圏外を記録した。今回の結果は、Official髭男dism「Subtitle」「ホワイトノイズ」「TATTOO」といった上半期を彩った楽曲たちが牽引役となった。さらに、「ミックスナッツ」「Pretender」「115万キロのフィルム」「Cry Baby」「I LOVE...」といった過去の楽曲たちも“JAPAN Hot 100”にチャートイン。Official髭男dismは、“新旧タイトル問わず長く聴かれるアーティスト”の理想像といえる。



▲ 「TATTOO」MV / Official髭男dism


 Vaundyはダウンロード3位、ストリーミング1位、ラジオ、動画再生5位、カラオケ6位、CDセールス100位圏外と上位を多く獲得して2位に登場。首位を獲得したストリーミングを“JAPAN Hot 100”の指標別で見てみると、2022年12月31日に放送された『第73回NHK紅白歌合戦』に出場したことを機に「怪獣の花唄」(2023年上半期Billboard JAPANストリーミング・ソング・チャート“Streaming Songs”3位)のポイントが急上昇していることが分かった。その後もトップ5をキープしたことで、3月22日公開のストリーミング・ソング・チャート“Streaming Songs”で累計再生回数3億回を突破。そのほか、「踊り子」「不可幸力」「そんなbitterな話」「CHAINSAW BLOOD」「おもかげ (produced by Vaundy)」、Ado「逆光 (ウタ from ONE PIECE FILM RED)」も大きくポイントを稼いだ。

 2022年年間作曲家チャート“Top Composers”の9位から今回3位に上昇したのは、大森元貴だ。指標別に見ると、ダウンロード4位、ストリーミング3位、ラジオ8位、動画再生3位、カラオケ5位、CDセールス100位圏外となっている。“JAPAN Hot 100”の指標別でストリーミング、動画再生を見てみると、Mrs. GREEN APPLE「ダンスホール」「Soranji」「私は最強」「青と夏」「僕のこと」、Ado「私は最強 (ウタ from ONE PIECE FILM RED)」の6曲が100位内にチャートイン。その中でも、「ダンスホール」「青と夏」、Ado「私は最強 (ウタ from ONE PIECE FILM RED)」はカラオケ順位も好調で、“聴かれて歌われている楽曲”が多いことが分かった。

 2022年年間作曲家チャートと比較すると、トップ10入りしていたアーティストがそのまま同様にチャートインしている。2023年上半期、世間ではChatGPTをはじめとしたAIの台頭がホットな話題を呼んだ。国内では音楽生成AI「SOUNDRAW」、韓国では「AI作曲エンジン」などの制作が進んでおり、一般の人でも簡単に曲を作ることができる時代が近づいている。多くのプロ・アーティストがこういったコンテンツを活用して、さらに作曲家チャートを激化させてくれる日は遠くないかもしれない。

Text by Tatsuya Tanami

▲ TOP


Heatseekers Songs

ano「ちゅ、多様性。」通算8度の首位獲得で上半期1位に

 2023年上半期Billboard JAPAN“Heatseekers Songs”で、anoの「ちゅ、多様性。」が1位に輝いた。

 “Heatseekers Songs”は、総合ソング・チャート“JAPAN Hot 100”を構成するデータのうち、ラジオ、ダウンロード、ストリーミング、週間動画再生数を集計し、その中から急上昇中のアーティストを抽出したチャートだ。

 見事1位に輝いた「ちゅ、多様性。」は、TVアニメ『チェンソーマン』第7話エンディング・テーマに起用された楽曲。作曲は元・相対性理論の真部脩一、作詞は真部とあのによる共作で、編曲はTAKU INOUEが手がけた。

 リリース後はTikTokで「#ゲロチューダンス」のタグをつけたダンスチャレンジが人気に。さらに今年3月にはYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」にて披露され、再び注目を集めた。ヒートシーカーズチャートでは2022年12月14日公開チャートで首位デビューを飾り、歴代5位タイとなる通算8度の首位を獲得した。



▲ 「ちゅ、多様性。」MV / ano


 2位は「ちゅ、多様性。」と同じく通算8度の首位(※上半期の集計期間外含む)を獲得したヤングスキニー「本当はね、」。TikTokでは本楽曲を使ったフィンガーダンスやリップシンク動画が流行した。続いて、NewJeans「Hype Boy」が3位にチャートイン。NewJeansは今夏に【SUMMER SONIC 2023】での来日公演を控え、国内での本格的なブレイクに期待がかかる。

 4位には国内外で人気急上昇中の新しい学校のリーダーズ「オトナブルー」、5位にはドラマ『君の花になる』から生まれたユニット=8LOOMの「Melody」がそれぞれトップ5入り。これまでの上半期・年間チャートは上位入りするジャンルに被りがあったが、今回のトップ10は編成もアピールポイントもバラバラなニューカマーたちが出揃った。

 また、トップ10のうちNewJeans、新しい学校のリーダーズ、結束バンドの3組は、当チャートにチャートイン後、総合ソング・チャート“JAPAN Hot 100”のトップ10にチャートイン。上半期のヒートーシーカーズがいかにハイレベルだったかがうかがえる結果となった。下半期はどんな楽曲がチャートインしてくるのか楽しみだ。

Text by Mika Fuchii

▲ TOP


ニコニコ VOCALOID SONGS TOP20

記念すべき初の上半期首位獲得はKanaria「酔いどれ知らず」、ツミキ/すりぃが続く

 2023年上半期Billboard JAPAN“ニコニコ VOCALOID SONGS TOP20”で、Kanaria「酔いどれ知らず」が首位を獲得した。

 本チャートは、2022年12月7日からスタートしたニコニコ動画におけるVOCALOID曲の人気を測るチャートだ。オリジナル動画や二次創作動画などの動画再生数や動画総数、コメント数、いいね数などのデータにBillboard JAPANが独自開発した係数に乗じて上位20位までのランキングを生成している。



 記念すべき初の上半期チャートを制した本楽曲は、Kanariaの8作目のVOCALOID曲で、自身7曲目となるミリオンを達成している。6月9日時点でのニコニコ動画での再生回数は約290万回、YouTubeでの再生回数は約2,840万再生を記録している。本チャートが始まって以来、毎週チャートインし続けており、6回の首位獲得を果たした。本楽曲は、オリジナル動画の人気も凄まじいが、今期の上半期チャートの集計期間内において二次創作動画の動画再生数、マイリストが最も多く、動画再生数に関しては2位ツミキ「フォニイ」の約2倍近い差をつけた。また、二次創作動画の中でも特に人気があったのがメガテラ・ゼロが投稿した“歌ってみた”動画で、ニコニコ動画での再生回数は約450万再生、YouTubeでの再生回数は約5,600万再生と、オリジナル動画を大幅に超えた再生回数を誇っている。このように、“歌ってみた”の再生回数が特出していることが首位獲得の要因だろう。また、本チャート以外にもCDセールス、ダウンロード、ストリーミング、ラジオ再生、動画再生、カラオケの6種類のデータからなる総合ソングチャート“Billboard JAPAN Hot 100”やYouTubeのUGCを指標としている、“Top User Generated Songs”にもチャートインしており、カラオケ指標においてもトップ10圏内をキープし続けている。Kanariaは、本楽曲以外にも「KING」を上半期チャートにチャートインさせており、今後の活動に期待したい。

 続く2位には、ツミキ「フォニイ」が登場。ツミキの9作目の楽曲で自身初のCeVIO AI・可不オリジナル曲だ。本楽曲は、6月5日でニコニコ動画に投稿されてから2周年を迎え、同サイトでの再生回数は約730万再生を記録し、コメント数は2万件を超えている。さらに、ニコニコ動画におけるVOCALOIDタグのいいね数で歴代1位を獲得しており、再生回数のみならずいいね数も多いことから楽曲の人気度が窺える。また、CeVIOオリジナル曲で現在ミリオンを達成している曲で、可不オリジナル曲では史上2番目のミリオン達成曲だ。今期の上半期チャートにおいては、オリジナル動画の再生数、マイリスト数、いいね数それぞれ安定して増加していたが、特に二次創作動画の動画総数の伸びが凄まじく、集計期間内では2番目に動画総数が多い楽曲だったことが2位の原因だと考えられる。なお、本結果に伴い本人からのコメントも到着している。

 3位には、すりぃ「ラヴィ(Lavie)」がチャートイン。すりぃのVOCALOID曲としては19作目の楽曲で、ニコニコ動画では約300万再生を記録しており、自身8曲目となるミリオン作だ。本楽曲は、今期の上半期チャートにおいて集計期間内にオリジナル動画が最も伸びた楽曲で、動画再生数、マイリスト数、いいね数それぞれ最も多い結果となった。特にコメント数の伸びは、首位のKanaria「酔いどれ知らず」に約2.5倍の差をつけており、集計期間内で最も勢いのあった楽曲であるといえる。

 また、まらしぃ×じん×堀江晶太(kemu)の「新人類」が4位を獲得。同作は、2023年3月に開催されたドワンゴ主催のオンライン参加型イベント【The VOCALOID Collection ~2023 Spring~】で首位を獲得した影響で、2023年3月に投稿されてから本チャートで8回のトップ3入りを果たした。特に、オリジナル動画のコメント数の伸びは他の楽曲と比べて群を抜いて多く、その伸び率は首位のKanaria「酔いどれ知らず」も抜く躍進をみせた。

 そして5位登場したのが驚異のスマッシュヒットをみせた、ゆこぴ「強風オールバック」である。本楽曲は、本チャート始まって以来の快挙である、8連覇を達成(2023年6月7日公開チャート分まで)。今期の上半期チャートにおいては、2023年に投稿された楽曲の中で最も二次創作動画の動画総数が多く、“歌ってみた”だけではなく“MAD動画”なども多く投稿されていることが動画総数を増やしたファクターだと考えられる。

 そのほか、かいりきベアとピノキオピーが上位20曲にそれぞれ3曲を送り込む結果となったほか、2010年に投稿されたwowaka「ローリンガール」がトップ10圏内に入り込むなど、投稿日に関係なく新旧おりまざった楽曲が登場する結果となった。

Text by Hironari Kagehi

▲ TOP


Top User Generated Songs

Kanaria「酔いどれ知らず」が首位、2位はなとり「Overdose」がチャートイン

 2023年上半期Billboard JAPAN UGCソングチャート“Top User Generated Songs”で、Kanaria「酔いどれ知らず」が1位に輝いた。

 本チャートは“踊ってみた”動画など、YouTubeで公開されているユーザー生成コンテンツ(UGC)のみを集計したチャートだ。1位を獲得した「酔いどれ知らず」は、Kanariaの8作目のVOCALOID曲で、自身7曲目となるミリオンを達成。二次創作動画では、メガテラ・ゼロが投稿した “歌ってみた” 動画がYouTubeで約5,600万回再生されており、オリジナルの再生回数を大幅に超える人気を誇る。また、ニコニコ動画におけるVOCALOID曲の人気を測るチャート“ニコニコ VOCALOID SONGS TOP20”の上半期チャートでも首位を獲得、“TikTok Songs Chart”では8位を獲得しており、その人気は如実だ。

 2位はなとりの「Overdose」がチャートインした。なとりは、2021年よりTikTokやYouTubeにてオリジナル楽曲を発表しているシンガーソングライター。「Overdose」は2022年5月にTikTokにて公開された楽曲で、2022年9月に満を持して配信をスタートしてから、同年12月にはストリーミング累計1億回再生を突破した。YouTubeではAdoによる “歌ってみた” 動画が1,380万再生、ボカロ曲を英語で歌うYouTuber、ウィル・ステットソンによる英語版「Overdose」は105万回以上再生されている。



▲ 「Overdose」MV / なとり


 HoneyWorks「可愛くてごめん feat. ちゅーたん(早見沙織)」が3位に。TVアニメ『ヒロインたるもの!~嫌われヒロインと内緒のお仕事~』に登場する、中村千鶴のキャラクター・ソングとして、HoneyWorksの原曲「可愛くてごめん feat.かぴ」を声優の早見沙織が歌うバージョンだ。“TikTok Songs Chart”では「可愛くてごめん feat.かぴ」が首位を獲得。歌詞に合わせたダンス動画から人気に火が付き、TikTokの定番楽曲としての立ち位置を確立してきた。YouTubeでは、テレビ朝日公式による『アニソン神曲カバーでしょdeショー!!』での鈴木愛理による歌唱動画や、すとぷり、天月-あまつき-ら人気歌い手たちによるカバーなど、二次創作がブームとなったようだ。

 2022年を制したピノキオピーの「神っぽいな」は6位に。そのほか、ツミキ「フォニイ」や、DECO*27「ヴァンパイア」、Kanaria「KING」がトップ10位圏内にチャートインし、やはりボカロ曲が目立つ結果となった。

Text by Yuma Totsuka

▲ TOP

関連キーワード

TAG