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<インタビュー>MAN WITH A MISSION×milet TVアニメ『「鬼滅の刃」刀鍛冶の里編』主題歌コラボで得た新しい発見
Interview & Text: 柴那典
TVアニメ『「鬼滅の刃」刀鍛冶の里編』のオープニング主題歌「絆ノ奇跡」をコラボレーションにて制作したMAN WITH A MISSIONとmiletへのインタビューが実現した。
両者は、エンディング主題歌「コイコガレ」でもコラボレーション。両楽曲を収録したCDは5月31日にリリースされる。また、5月から6月にかけてMAN WITH A MISSIONは北米、UK、ヨーロッパ、秋にはアジアをまわる4年ぶりのワールドツアーも開催中だ。
MAN WITH A MISSIONのJean-Ken Johnnyとmiletに、楽曲制作の裏側から、お互いのルーツの共通点、海外ツアーを見据えた思いについてなど、語ってもらった。なお、Jean-Ken Johnnyの発言については、編集部にてひらがな翻訳を行っている。
『鬼滅の刃』に寄り添って生まれたコラボ
――まず、TVアニメ『「鬼滅の刃」刀鍛冶の里編』の主題歌のお話を受けての第一印象は?
Jean-Ken Johnny:日本だけじゃなく、世界中でも大人気のコンテンツでもありますので。正直、緊張はしましたね。ありがたい一心ではありつつ、襟を正さなければという気分になりました。
milet:今までの主題歌はLiSAさんとAimerさんが紡がれてきたということもあって、ひとりだったらかなり心細かったと思うんですけれど、今回はMAN WITH A MISSIONさんという超強力な生命体の方たちとご一緒させていただけたので、すごく心強かったです。
――今回はアニメの制作側から男女ツインボーカルの提案があり、そこからMAN WITH A MISSIONとmiletさんのコラボが決まったということなんですよね。
Jean-Ken Johnny:そうですね。「刀鍛冶の里編」は時透無一郎さんと甘露寺蜜璃さんをはじめとした“柱”が、竈門炭治郎さんたちと一緒に戦います。制作サイドから、そのストーリーに沿って男女混声の楽曲にしたいという話がありまして。いろいろ楽曲のデモを提案させていただきました。
――「絆ノ奇跡」は三味線や和太鼓など和楽器をフィーチャーしたアレンジになっていますが、この着想はどういうところから生まれたんでしょうか?
Jean-Ken Johnny:過去の楽曲を聴かせていただいて、劇中のサントラではかなり和楽器のサウンドが多い印象があったんですけれど、主題歌でそこまで全面的にフィーチャーしたものはなかったと思いまして。そこでインパクトのある仕掛けとして、和楽器を全面的にフィーチャーしたイントロにしようと。ロックとも相性がいいと思っていたので、生演奏とサンプリングを混ぜ合わせたら個性的な楽曲になってくれるんじゃないかと思って。楽曲を作る当初からアイデアがありました。
「絆ノ奇跡」Music Video / MAN WITH A MISSION×milet
――全般の曲調やサウンドのモチーフはどうですか?
Jean-Ken Johnny:自分たちの音楽性と共通項があって、この作品に投じることができるジャンル感で、かつ他の楽曲と差別化ができるものを考えて。オルタナティブでパンキッシュなバイブスのある楽曲だったら映えるんじゃないかと思いました。それと、楽曲制作の最初からmiletさんに歌ってもらうことが念頭にあったので、そこでも新鮮さが出せればという考えがありました。
――miletさんとしては制作を振り返って、どういう印象がありましたか。
milet:デモを聴いたときから、『鬼滅の刃』ファンとしても、この曲がすごく物語に寄り添っている曲だと感じて感動したのを覚えています。曲としては、歌いやすいというか、好きなメロディだし、自分の色も出しやすいなと思ったのが最初の印象でした。特に好きなのが低い声で歌うBメロのパートで。いろんなところにいろんなアイデアが詰まった一曲だと思いました。
――「絆ノ奇跡」というタイトルはどういう由来だったんでしょうか。
Jean-Ken Johnny:今回の「刀鍛冶の里編」の中では、主人公たちだけじゃなく、出てくる人たちの人とのつながり、“絆”の大切さが描かれていると思うんです。そこにフォーカスした言葉にしようと考えました。正直、ここまで真っ直ぐなタイトルは今まであまりつけてこなかったんですけれど、なるべくパワフルな、これまでもというくらい直球なワードにしたほうがいいだろうと思いました。
――ちなみに、MAN WITH A MISSIONのみなさんとmiletさんで、お互いのルーツや影響を受けたアーティストが重なり合っていたりもしましたか?
Jean-Ken Johnny:まさにそうですね。話してみたら、挙がってくるアーティストがびっくりするぐらい共通していて。シガー・ロスとかスマッシング・パンプキンズ、最近で言えばThe 1975とか、個人的に僕もドンピシャで好きなアーティストさんばかりだったので。コラボレーションする前から我々のチームは彼女の声とアーティスト性のファンになっていたんですけれど、聴いてきた音楽に共通項があるから好きになったんだろうなと合点がいきました。
milet:私はもともとMAN WITH A MISSIONさんの曲を聴いて、きっとこの人たちのルーツにあるロックは私の中にあるものと重なる部分があるんだろうなって思っていたんです。で、実際に語ってみたら、びっくりするほど一緒で。好きな映画音楽の話もしたんですけれど、エンニオ・モリコーネとかジョン・ウィリアムズとかハンス・ジマーとか、そこの趣味も似ていたのがビックリでした。
――楽曲の制作段階からmiletさんの歌声をイメージされていたということですが、Jean-Ken Johnnyさんが考える、miletさんのボーカルの魅力や特徴はどういうところにあると思いますか?
Jean-Ken Johnny:歌声そのものの生命力もそうですけれども、とにかく、声のファブリック、繊維質がすごくいいなと思っていて。他の追随を許さないものを持っていらっしゃると常々思っていました。声質だけじゃなく、歌い方や、歌そのものに込められている感情の情報量も多くて、ベクトルがひとつじゃない印象を受けるんですね。優しさもあるし、力強さもあるし、美しさもあるけれど、同時にダークな一面もある。内包されている感情の情報量が本当に豊かなんです。今回の楽曲に関しても、『鬼滅の刃』という作品は決して明るいだけの作品ではないので。ダークな一面というか、死生観も哲学も、ディープなものがある。ピッタリだと思って制作に臨ませていただきました。
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「コイコガレ」での挑戦
――「コイコガレ」についても聞かせてください。これは梶浦由記さんが作詞作曲なので「絆ノ奇跡」とは制作過程が違っていたと思うんですが、これはどんな始まりだったんでしょうか?
milet:これも私はデモの時点から歌を入れていったんですけれど、トラックがあまり完成していない状態で歌を入れるということが自分の中でほぼ初めてで、結構難しかったです。でも、何よりメロディと歌詞に込められている思いが強くて、それだけでこの曲の意味やメッセージ性を100%理解できるくらいだったので。言葉の意味を逃さず捉えようと挑戦できたと思います。
「コイコガレ」Music Video / milet×MAN WITH A MISSION
――アレンジはどんな感じで進めていったんでしょうか。
Jean-Ken Johnny:まずmiletさんが全編歌った状態で投げかけていただいて。そこからバンドアレンジに編曲していきました。梶浦由記さんとお仕事させていただくのは初めてだったんで、声域も含めて探り探りだったんですけれども、梶浦さんはバンドの持っている音楽性やサウンド感、哲学みたいなものをものすごく尊重してくださって。僕らとしてはとてもやりやすかったですね。
――miletさんとしては、この「コイコガレ」はどういう曲に仕上がった実感がありましたか?
milet:今までの『鬼滅の刃』の曲で、恋とか女の子の気持ちみたいなものを前面に押し出した曲って、そんなになかったと思うんです。私自身、ここまでストレートに憧れを抱くような恋心を歌うこともなかったので、それもあってすごく新鮮でした。
――レコーディングはどんな感じでしたか?
milet:私としては、この曲ではチャレンジがあって。梶浦さんに細かいディレクションをたくさんいただいたんです。たとえばAメロの「あ」という文字を「WA」みたいな音にしてみましょうとか、そういうのがほぼ全文字にあって。自分の歌の概念が変わるようなディレクションでした。歌詞がそこにある意味とか、歌詞の言葉がメロディに乗る意味みたいなものを教えていただいた、かけがえのない時間になりました。
日本のロックバンドとして見た“世界”
――MAN WITH A MISSIONは5月から6月にかけて北米とUK、ヨーロッパを回る4年ぶりのワールドツアー【MAN WITH A MISSION World Tour 2023 ~WOLVES ON PARADE~】を開催されます。取材時点ではツアー直前のタイミングとなりますが、今、どんな思いがありますか?
Jean-Ken Johnny:(海外には)長い期間行ってなかったですからね。嬉しいことにYouTubeでも海外のファンの方々が反応してくださるので、彼ら彼女らにまた会えるのもすごく楽しみにしてますし、さらに今回はデカい土産を持った状態でツアーを回ることになりますので、楽しみな時間を確実に過ごせると思います。
――MAN WITH A MISSIONは2013年から様々な国でライブを行ってきましたが、それは振り返ってどういう経験になったと捉えていますか?
Jean-Ken Johnny:僕自身はバンドが世界中で愛されている姿にすごく憧れてたので、単純に、今は夢を追いかけている途中ですね。音楽が国境を超える、国籍が無関係になる瞬間を一歩ずつでも噛みしめることができる海外ツアーというのは、自分たちのキャリアの中でもものすごく重要な立ち位置にある行程で。それができるのは嬉しい限りです。
――今のグローバルな音楽シーンのトレンドやその中でのロックのあり方を見たうえで、その中で日本のロックバンドとしてのMAN WITH A MISSIONの武器や強みについてはどんな風に思いますか?
Jean-Ken Johnny:自分自身の武器という意味では模索中だと思います。ジャンルとしてのロックとして考えた時にも、やっぱりここ10年、15年で、我々が知っているロックシーンの流行り廃りをすごくシビアに感じているので。この時代にロックバンドがブレイクスルーするにはどうしたらいいのかというのは、やっぱりいまだに模索中ですね。ただ実感として感じているのは、ロックの火種そのものは絶えてないんだなっていうことで。僕らは90年代の音楽の遺産を継承しつつ、そこに現代的なヘヴィネスやアプローチを混ぜ合わせているバンドだとは思うんで、ロックが今の時代でも力強く響いているというニュースを聞くと、ものすごく心強くなりますし、自分たちもそういう存在でありたいなと願うばかりですね。
海外への“アニメ×音楽”の可能性
―― 一方で、ここ最近ではアニメーションを介して日本のロックバンドの楽曲が海外に広まっていくという潮流も顕著にあります。そこについてはどう感じていますか?
Jean-Ken Johnny:音楽そのものがジャンルとして広がっていく以上に、SNSとかインターネットがものすごく豊かになったおかげもあって、局地的なムーブメントが生まれやすい時代になったと思うんですね。その最たるものが、日本の音楽シーンでいうと、アニメのような気がしています。正直、アニメが持っている影響力はとんでもないので。日本のかっこいい音楽を聴くのであればアニメからがいちばん入りやすいという図式が広まってきた印象もあります。日本のバンドにとっては、そのイニシアチブを持って世界で活躍するチャンスもあるんじゃないかと思いますし、心強い手段のひとつだと思ってますね。
――最後に、MAN WITH A MISSION、miletさん、それぞれこの2曲をリリースした先の展望やビジョンについて教えてください。
Jean-Ken Johnny:素晴らしい作品でmiletさんとコラボレーションさせていただいたので、今はこの楽曲がこれから生み出してくれる未来に期待感でいっぱいです。
milet:今はこの曲たちをライブで育てていくのをすごく楽しみにしています。フェスや、海外で歌うようなときにも、きっとこの曲が導いてくれる大きな景色というものがあると思うので。それを楽しみにしながら、この曲の中の自分らしさや、曲の中の大切なメッセージを真っ直ぐに皆さんに届けていけたらなと思います。
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関連リンク
絆ノ奇跡 / コイコガレ
2023/05/31 RELEASE
SRCL-12512 ¥ 1,320(税込)
Disc01
- 01.絆ノ奇跡
- 02.コイコガレ
- 03.絆ノ奇跡 -Instrumental-
- 04.コイコガレ -Instrumental-
- 05.絆ノ奇跡 -TV ver.-
- 06.コイコガレ -TV ver.-
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