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<インタビュー>Da-iCE、結成12周年を迎え新たな『SCENE』を見せるニューアルバムを語る
Interview & Text: 黒田隆憲
Photo: 興梠真穂
今年で結成12周年を迎えた5人組男性アーティストDa-iCEが、通算7枚目のアルバム『SCENE』をリリースした。2021年の『SiX』以来およそ2年4か月ぶりとなる本作には、ドラマ『ケイジとケンジ、時々ハンジ。』主題歌に抜擢された先行シングル「ダンデライオン」をはじめ、ゲーム『エグゾプライマル』テーマソングの「Funky Jumping」や、映画『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』主題歌の「ハイボールブギ」など、聴くだけで様々な“シーン”が脳裏に浮かんでくるようなキラーチューンが並ぶ。今や飛ぶ鳥を落とす勢いのPenthouseをはじめ、ボカロPの“てにをは”やPARIS on the City!ら、様々なクリエーターをコラボ相手に選ぶなど、これまで以上にチャレンジングな内容に仕上がっている。アルバムを引っさげ、6月からはグループにとって3度目となるアリーナツアーをスタート予定の5人に、『SCENE』の“舞台裏”をじっくりと話してもらった。
2年半ぶりのアルバム
――まずは、2年半ぶりとなるアルバム『SCENE』が完成した今の心境や手応えをお聞かせください。
花村想太:今回はタイトル通り、色々な“シーン”を見せられるアルバムというテーマのもと、コンペを行いました。実際、既発曲も映画やドラマ、ゲームにCMなど様々なシーンで使っていただいている楽曲が多くて。聴くだけでいろんなシーンが次々と脳裏に浮かんでくるような、そんなアルバムになったと思います。
大野雄大:個人的に、これまでのアルバムの中でいちばんよく聴いていますね。シンプルに全曲好きで、飽きずにずっと聴いていられるというか。もちろん今までの作品が飽きてしまったとかではないのですが(笑)。自信を持って届けられる一枚になったと思います。
花村:雄大くんは毎回、「今まででいちばん聴ける」って言ってるよね。リスニング頻度が毎回更新されているってこと?(笑)
大野:そう。だから今、すごいことになってますよ(笑)。
和田颯:僕もふたりと同じく、バラエティ豊かな、聴いてて楽しいアルバムになったかなと思っています。
岩岡徹:めちゃくちゃ幅広いうえに、奥の深い内容の曲ばかりで。僕も聴いていてずっと飽きないですね。
工藤大輝:今作は、いい意味で「ダンス&ボーカルらしさ」がなくなってきたように思います。作品として、違うフェーズに進んだ感があるというか。「CITRUS」や「スターマイン」の流れを経て、今のDa-iCEに注目してくださっている人たちが求めている方向へと、少しずつシフトしている。本作は、その集大成的な一枚になったのかなと。
――それは、具体的にはどのような変化だったのでしょうか。
工藤:まず、海外コライトの数がグッと減りました。今回は1曲くらいしかないんですよ。そういう意味では、2、3枚前のアルバムとは雰囲気が全く違います。しかも楽曲提供をしてくださっている方々が、ボカロPだったりバンドマンだったりしていて。これまでのDa-iCEだったら、USヒップホップのヒットメイカーから提供されたトラックをふんだんに使っていたと思うのですが、今作は「純度の高いJ-POP」というか、国内のいろんなシーンにプロップスのある方たちがたくさん参加しているのも大きいですね。
――よりドメスティックで、ソング・オリエンテッドな楽曲が増えたというか。
工藤:そうですね。僕らメンバーが作る曲も、もちろんタイアップなどの“縛り”と相まって、ダンス&ボーカルらしからぬ雰囲気のものが増えています。
――先日アルバムから先行リリースされたシングル「ダンデライオン」は、ドラマ『ケイジとケンジ、時々ハンジ。』の主題歌として書き下ろされたものですよね。
花村:はい。ドラマの制作サイドからは、「仲間との絆を糧に突き進んでいく姿を楽曲の中に落とし込んでほしい」とリクエストをいただきました。ただ、もともとDa-iCEの楽曲には「仲間との絆」をテーマにした楽曲が多いので、単に「仲間と一緒にレッツゴー」だと僕らのレパートリーとしてはありきたりになってしまうかなと。なので「夢を追いかけている若い人」という設定はそのままに、恋愛ソングにも家族との絆を歌う曲にも取れるような、誰が聴いても自分のことに置き換えられる普遍性を追求しました。
――ダンデライオン、つまりタンポポを比喩に用いるアイデアはどのように思いついたのですか?
花村:“夢”って、かなう場合もあれば、かなわない場合もあるじゃないですか。自分が「咲きたい」と思った場所では咲けないこともあると思うんですよね。僕らDa-iCEも結成したのはエイベックスで、そのまま突き進んでいくのかと思いきや、メジャーデビューの夢はユニバーサルへの移籍後に叶えることができた。思っていたのとは違う場所で、咲くことができたわけです。そうやっていろんなところで根を張り、花を咲かして、また萎んでという繰り返しの中で成長していく。そんな漂流している姿、思い通りにはいかない姿を、風に乗って飛散するタンポポの綿毛にたとえてみました。ちなみに、〈未来の景色と 草臥(くたび)れた絵を 擦り合わせては丸め〉というフレーズは、思い描いていた未来と現実をすり合わせながら、いつかしっくりくるその日まで前に進んでいこうという覚悟を歌っています。
――ボーカルレコーディングでこだわったのはどんなことですか?
花村:たとえば、サビの〈陽はまた昇るのだろう〉の部分。ファルセットで歌うには低く、地声で歌うにはちょっと高いという絶妙のラインを狙いつつ、雄大くんが歌う姿をイメージしながら書きました。僕の中では、雄大くんのボーカルがガシッとハマるほうがDa-iCEにもハマる曲になる気がしていて。なるべく無骨で男らしい楽曲にしようと思って作りましたね。
大野:おかげで気持ちよくレコーディングさせてもらいました。Bメロでガラッと情景が変わる部分は「優しく歌ってほしい」というリクエストもあり、同じメロディでも(花村)想太の声色とはまた違う、細かいニュアンスとか、僕なりのアプローチを意識しながら歌いました。
和田:この曲は、振り付けも歌詞の持つ世界観を伝えやすいものになっているのが印象的でした。その動きや仕草を見たら歌詞が頭に思い浮かぶんじゃないか?と思うくらい素敵な振り付けを、s**t kingzのNOPPOさんにつけてもらって。シンプルで力強く、踊っていて感情がこもる楽曲に仕上がったと思いますね。
岩岡:歌詞の世界観をNOPPOくんが体現してくれたんです。若くて生き生きとした力強さというよりは、ちょっと儚げだけど凛とした佇まいも感じさせる力強さというか。歌詞が持つ柔らかい部分が引き立って、総じてエモーショナルな楽曲になったと思っています。
――個人的には「絢爛なフィナーレ」がとても好きです。
花村:この曲は、僕がどうしてもPenthouseさんに楽曲提供をしていただきたくて、大原拓真(Ba)さんと歌詞を共作して、浪岡真太郎(Vo. / Gt.)さんに作曲をお願いしました。いただいた曲が大好きすぎて、デモ段階から何十回もひとりで聴いていましたね。最初は夜をイメージした歌詞を考えていたのですが、途中でコーセーコスメポート『サンカット® ライトアップUV エッセンス』のCMソングに起用されることが決まったので、真夏の曲に歌詞を書き直すことになり。気に入っているフレーズがいくつもあったので、それを残しつつ再構成していきました。
特に思い入れのある楽曲
――アルバム収録曲の中で、特に思い入れのある楽曲をそれぞれ聞かせてもらえますか?
工藤:僕は「Pioneer」ですかね。5人曲(メンバー全員で歌う曲)を、各アルバムになるべく一曲は入れるようにしているんですけど、K-POPに寄せたようなラップパートもあり、踊りをメインで見せるであろう構成の曲を5人で歌うというのは今回が初めてだったし、ライブも含めて今までにないDa-iCEの手札になりそうな気がしています。歌詞も、我々5人だからこそ歌えるような攻めた内容に仕上がったと思いますね。
岩岡:僕は「コメディアン」が気に入っています。てにをはさんからのデモが上がってきた段階で「いい曲だな」と思っていたのですが、想太と雄大が歌うことによって印象がいい意味でガラッと変わって。聴いていると心拍数が上がっていくような、高揚感あふれる楽曲に仕上がったと思います。アルバムの中でもアクセントになったんじゃないかなと。
和田:「Chase」かな。これがまた、アルバムの中でかなり異色な曲に仕上がっていて。(工藤)大輝くんがm-floの☆Taku Takahashiさん、Jazzin'parkの栗原暁さんと作曲して、Takuさんがアレンジを手掛けているんですが、イントロから最高にm-flo感があってテンションが上がりまくりますね(笑)。あと、今回僕は「H?NTO」の作詞を担当しているんですけど、共作したPARIS on the City!の小林ファンキ風格(Gt. / Cho.)は、高校時代の同級生なんですよ。大人になって、まさかこんな形で仕事ができるとは夢にも思わなかったので、個人的にはすごくメモリアルな楽曲にもなりました。
大野:全曲好きなのですが、僕も徹くんと同じく「コメディアン」に一票入れたいです。アルバムをドライブする時にずっと聴いていたんですけど、そしたら「コメディアン」がすごく切なく響いたというか。ダンス&ボーカルグループの楽曲とは思えないような、こういう刺さり方のする楽曲が自分たちのレパートリーとして加わったこともすごく嬉しいです。
花村:僕は「スターマイン」です。マジでこの曲がなかったら、去年はずっと落ち込んでいたかもしれないなと。「スターマイン」のおかげでDa-iCEの首の皮がなんとか繋がったというか、一発屋で終わってしまうのを免れたと思っています(笑)。今後は「CITRUS」「スターマイン」という両翼で、Da-iCEというグループを羽ばたかせていけたらいいなと思っています。
――では最後に、今後の予定をお聞かせください。
花村:アルバムを携えてのツアーを予定しています。Da-iCE史上最大級のライブができるよう、アルバムのタイトル通り、いろんな“シーン”を見せられるような趣向を凝らしたステージとパフォーマンスを考えていますので、楽しみにしていてほしいです。
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