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<インタビュー>KREVA×亀田誠治 【日比谷音楽祭2023】開催に向けて

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 「フリーでボーダーレス、親子孫三世代誰もが楽しめる野外音楽フェスティバル」として、2019年にスタートした【日比谷音楽祭】。2回目はコロナ禍で残念ながら中止となったが、その後は無観客生配信や、エリアを絞ったかたちでの有観客とオンライン生配信のハイブリット開催など形態を変えながら進み続け、今回生配信も活かしながらようやく元の形での開催となる。ロックやポップス、クラシック、民謡や歌謡曲など実に様々なジャンルの、幅広い世代のアーティストが一堂に会する日比谷音楽祭。「ごった煮」のようなそのラインナップは今年も健在だが、これまで以上に若い世代のアーティスト、コロナ禍でSNSを駆使して頭角を現したアーティストが多く並んでいるのが印象的。そこにはどんな思いを込めたのだろうか。実行委員長である音楽プロデューサー / ベーシストの亀田誠治と、第1回から参加しているラッパーのKREVAに話を聞いた。(Text:黒田隆憲 l Photo:辰巳隆二)

5年間で特に印象に残っていること

――2019年にスタートした【日比谷音楽祭】。コロナ禍を経て今回ようやく元の形での開催となりますが、今の心境からお聞かせください。

亀田誠治:ようやくここまできたな、という気持ちです。コロナ禍が明け、人々の心が開かれていく瞬間がもうそこまできていて。そんな絶好のタイミングで開催される【日比谷音楽祭2023】では、とにかく様々な音楽を皆さんに届けたいですね。


――初回から参加されているKREVAさんですが、この5年間で特に印象に残っていることはありますか?

KREVA:やっぱり、無観客ライブは印象に残っていますね。例えば会場が屋内なら、無観客の配信ライブも「スタジオライブ」みたいな臨場感が出せると思うんです。でも野外ライブだと、どうしても「お客さんがいないなあ……」という感じになる。特に野音(日比谷公園大音楽堂)は「抜け」が良いから、さらにその思いが強くなってしまって。


亀田:ミュージシャンとしては、メンバーと一緒に演奏できるだけでも幸せなことだとは思うし、カメラの向こう側にいるお客さんのことを想像しながら一生懸命演奏しているのだけど、「目の前にもいてほしい」とどうしても思っちゃう。そこに「お客さん」がいないという、不条理というか寂しさを噛みしめながらの「オンライン生配信」だったのを覚えていますね。それと、昨年はクラウドファンディングがかなり苦戦して。文字通り頭を抱え込んでしまう局面がたくさんありました。


――そうだったのですね。

亀田:そもそも【日比谷音楽祭】が無料開催として成立しているのは、企業からの協賛金と一般の方からのクラウドファンディングと、行政からの助成金があるからです。そこでちゃんとお金を集め、最高のスタッフと一緒に仕事をすることで成立しているわけですが、去年は思わぬ「アンラッキー」が色々重なってしまったんですよ。スポンサーが途中で抜けてしまったり、助成金がちょうど切り替えのタイミングで対象から外れてしまったり。クラウドファンディングに比重が大きくならざるを得なかったのですが、そこも苦戦して。

そんな中、スタッフも参加アーティストも、みんなそれぞれ知恵を出してくれました。例えば、お金が集まっていないならそのことをもっとオープンにしていこうという話にもなりました。

KREVAさんもステージ上から「今、本当に大変なんだよ」と呼びかけてくれたりして。最終的には、なんとか目標金額も達成することができたのはとても印象に残っていますね。


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【日比谷音楽祭2023】のブッキングに込めた想い

――そもそも亀田さんは、初回からKREVAさんをお誘いしてきたのはどうしてだったのですか?

亀田:シンプルにラッパーとしての訴求力、音楽的な守備範囲の広さというのかな、それが【日比谷音楽祭】のメッセンジャーとして本当に相応しい存在だと思ったのが一つ。KREVAさんだったら、ここで最高のパフォーマンスをしてくれるというイメージもすぐ湧きますし。ミュージシャンの中には、ご自身のこだわりがある方もいらっしゃり、もちろんそういう音楽の表現も大好きなのですが、KREVAさんも僕も、どんな場所でもすぐに演奏できちゃうっていうのは何より大きい。それに、これまで僕らいろんな節目で作品を作ってきたんですよ。震災の時もそうでしたしね。この積み重ねは大きい。


――今回のラインナップは、さらさやMega Shinnosuke、みゆななど若い世代のミュージシャンが目立ちます。

亀田:僕らコロナ禍の3年間、様々な負荷や制限を受けてきました。とりわけ10代の人たちは、最も多感な時期にコロナ禍を経験したわけで、そういう方たちに是非とも「リアルな音楽体験」をしてほしい。「KREVAさんのラップって、生で聴くとこんなにかっこいいのか!」とか、「亀田さんのベースってすごいなあ」とか(笑)。家で配信の音楽を楽しむ方法もあるけど、人の息遣いや音の波動をリアルで感じ取ってもらいたくて。


――なるほど。

亀田:そういう思いもあって、おっしゃっていただいたように今回は若い世代のアーティストもたくさんブッキングしました。「親子孫三世代誰もが楽しめる」という、【日比谷音楽祭】を立ち上げたときのコンセプトはもちろんそのままに、主にZ世代のアーティスト、もしくはこのコロナ禍にSNSなどを駆使して頭角を現した素晴らしいアーティストに声をかけていきました。なので、若い人たちにも観に来てほしいですね。


KREVA:そういう若い世代はもちろんですが、彼らの親世代も同じくらい「食らっている」んじゃないかなと。苦しんでいる子供たちをどうにかしてあげたいけど、自分にはどうすることもできない……みたいな無力感を抱いた人は多かったと思うんですよね。そういう、親世代の音楽ファンも両方楽しめるのが【日比谷音楽祭】の素晴らしいところだと思っています。


――今回、出演アーティストのジェンダーバランスも配慮したそうですね。

亀田:そうなんです。昨年もそれをやりたかったのですが、なかなか難しく男性アーティストの割合が多くなってしまって。今年はKREVAさんをはじめ【日比谷音楽祭】や他のフェスを知り尽くしている人たちを、男女関係なく軸に置きつつ結果的にジェンダーバランスが取れるよう徹底的にこだわりました。しかも、実力のある女性アーティストが実際に増えてきていることも実感しましたね。


KREVA:僕もフェスの主催をしていますが、ジェンダーバランスに関しては本当に難しいんですよね。シンプルに「いい」と思ったアーティストを集めたとき、男性もしくは女性の比重が大きくなってしまったからといって、わざわざ削るのもどうかと思うし。悩ましいところですが、今後も試行錯誤していくしかないでしょうね。


――今年、KREVAさんはどんなステージを展開する予定ですか?

KREVA:まだ決まってないんですよ。亀田さんが色々リクエストというか、無理を言ってくるので(笑)。


亀田:あははは。


KREVA:今のご時世、ハラスメント認定されるんじゃないかっていうくらいの直電攻撃(笑)。音楽祭全体のバランスを考えつつ、「こういうのがあったらいいな」と思う要素はなるべく盛り込みたいと思っています。


亀田:ちなみに今回「はじめまして」のミュージシャンの方たちには、全員ご挨拶とミーティングをさせていただいているんですよ。ただ有名だとか、ただ動員が見込めるからとか、そういう形でお願いしている人はいなくて。全員に【日比谷音楽祭】の趣旨をお話しして。僕も相手のことを知らなければと思っていて、もうこまめにYouTubeやSNSをチェックしています(笑)。DMを使って直接オファーすることもありますよ。


――それはすごい!

KREVA:とにかく、日比谷でこのメンツを集めてこの規模でフリーフェスをやるなんて、マジで亀田さんじゃなきゃ無理ですよ。体力とか気力とか、いろんなパワーが必要だと思うんですけど、何より亀田さんの「人間力」があってこそ。亀田さんの人望でみんなが集まっているところはすごくあると思いますね。石川さゆりさんにオファーして、出てもらえる亀田さんマジすげえなと(笑)。


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【日比谷音楽祭】の未来

――これまでの【日比谷音楽祭】は、複数のステージや会場で行われていました。今年はどうなるのでしょうか。

亀田:親子孫3世代楽しめる、ピースフルな空間が日比谷公園や東京ミッドタウン日比谷にも用意されていますので、とにかく心配無用。安心してきてください。今年はフードも再開しますので、お酒やご飯も充実するはず。ステージも、メインの野音だけスーパースターが集まっているわけではなくて、全てのステージに実力や才能のあるアーティストがバランス良く配置されています。もちろん、音響を含めステージスタッフも第一線で活躍するチームを集めているので、フリーイベントとは思えないクオリティのライブ演出を堪能できると思います。


――前回は『武亀セッションワークショップ』をはじめ、様々なトークセッションやワークショップがありました。今年はどんなプログラムが用意されているのでしょうか。何か新たな試みはありますか?

亀田:昨年武部さんと一緒に開催した『武亀セッションワークショップ』は、一般の方たちがプロの演奏家と一緒に歌うことができるという、他では味わえない体験を提供してとても好評を博しました。武部さんもとても楽しんでくださったようで、今年もまた開催することが決定しました。他にも、和楽器やダンス、子供たちが参加できるプログラムなど、現在最終調整している新たなワークショップもありますので、ぜひそちらも楽しみにしていてほしいです。


――「音楽文化が育まれる『新しい音楽の循環』」をテーマに、世代をつなぎ、ジャンルの枠を超える」「子どもたちの音楽の芽を育てる」「東京の街から日本を元気にする」など様々な目標を掲げてきた【日比谷音楽祭】。そうした理念はどのくらい浸透したとお考えですか?

亀田:例えば、【日比谷音楽祭】のSNS公式アカウントのフォロワー数も着実に増え続けていますし、徐々に賛同者が増えているという実感があります。それからクラウドファンディングも、さっき言ったように目標額を上げた分苦戦はしたのですが、支援者の数は確実に増えている。【日比谷音楽祭】の認知度と、受け入れられ方は確実に上がっていると思いますね。


――今後の展開として、もっと規模を大きくすることも考えていますか?

亀田:僕自身は規模を拡大していくことよりも、今掲げている理念を変わらず貫きたい。なぜなら若い世代をフックアップしたいのと、僕らを育ててくれた先輩たちの表現の場を確保したいという気持ちがあるから。お客さんだけでなく、アーティストの「親子孫3世代」の精神を貫きたいですね。

とにかくこのフェスが定着していってほしいのと、日比谷だけでなく他の場所でも同じような理念を持ったフェスやイベントができていくことを願っています。「うわ、真似された!」なんて思わないし、規模が小さくても大きくても全然良いから、全国津々浦々、いろいろな場所でこの【日比谷音楽祭】の精神を広めていきたいです。


KREVA:こういう試みが、一つの文化としていろんな地域に根付いていくといいですよね。とにかく今年の【日比谷音楽祭】も見どころ満載ですので、皆さんぜひ遊びに来てください。


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