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<インタビュー>神はサイコロを振らない、話題のドラマ挿入歌「修羅の巷」で見せるバンドの新境地



神はサイコロを振らないインタビュー

Interview & Text : 上野三樹

 TBS系日曜劇場ドラマ『ラストマン―全盲の捜査官―』の挿入歌として「修羅の巷」(読み:しゅらのちまた)を書き下ろした、神はサイコロを振らない。ロックの熱気の中で刺さるような言葉がメロディアスに舞う、ドラマのシリアスな世界観にもぴったりな、まさに渾身の1曲に仕上がった。インタビューではメンバー4人に、今回の制作の様子はもちろん、春フェスへの出演や秋に予定されているアルバム、その後の全国ホールツアーへの意気込みも語ってもらった。

左から:桐木岳貢(Ba)、柳田周作(Vo)、黒川亮介(Dr)、吉田喜一(Gt)

――配信リリースされたばかりの「修羅の巷」ですが、ドラマ『ラストマン―全盲の捜査官―』の挿入歌としてお話が決まったときはどんな気持ちでしたか?

柳田:シンプルに嬉しい、だけじゃない気持ちでしたね。日曜劇場で、福山雅治さんが主演のドラマですし、神サイがそんなお話を受けて良いものかと悩んで。プレッシャーもあったし、その責任を果たせるのかみたいな気持ちがあって、「やります!」と即答はできなかったですね。だけど、ちょうどその頃、2月にZeppツアー(【Zepp Tour 2023『雪融けを願う飛行船』】)のファイナルがあったんです。お客さんの声出しが解禁されて、その声に相当パワーをもらいました。いつもはツアーが終わったらしばらく燃え尽きて何もしたくなくなるんですけど(笑)、ツアー最終日の翌日から制作に取りかかれるくらいポジティブな気持ちになれたので、プレッシャーはあるけどやらせてもらいたいなと思いました。


柳田周作(Vo)

――この曲は度重なる試行錯誤を経て完成したそうですが、制作スタッフとはどんなやり取りをされましたか?

柳田:お話が決まった段階で、サウンドプロデューサーの亀田(誠治)さんと撮影現場へ行って打ち合わせをした中で、「福山さんと大泉(洋)さんをはじめとしたキャストのみなさんの演技に負けないような曲を書いてほしいです」というようなお話がありました。そしてその後「1曲作ってみます」というところから始まって、そこからいろんなやり取りを何度か重ねながら作っていきました。


――サウンドプロデューサーの亀田誠治さんは以前から神サイに注目していたそうですが、一緒に制作をしてみた感想は?

柳田:頼れる仏みたいな感じでしたね。ずっとニコニコしていて、亀田さんがいるだけでその場が明るくなる。いろんな人の気持ちが汲み取れて、全てのアーティストに対するリスペクトが半端なく伝わってくる方だと感じました。今回も僕が作ってきたデモを全部聞いてくださって、ドラマサイドとどんなやり取りをしているか亀田さんは知ってるからこそ、もがいている僕にかけてくれる言葉とか、全部が救いで。そういう意味で亀田さんはマジで仏のような存在だと思いました。

――レコーディングで大変だったところは?

黒川:亀田さんが結構、自由にやらせてくださったので、大変だったというより、いつも以上に自然に演奏できたと思えるレコーディングでした。結構シンプルなアレンジだったので、難しいことを考えず、感じるままに演奏しました。

桐木:うん、緊張感はありましたけど、レコーディングでも伸び伸びと演奏できました。

吉田:亀田さんってレジェンド的な存在なので、最初は身構えていたんですけど、僕らと同じ目線で話してくれて、僕らの意見もしっかり聞いてくださったので、やりやすかったんですよね。僕らの意見をとても尊重してくれたし、亀田さんの人間性に救われた部分が何度もありました。「修羅の巷」はこれまでの神サイでは使ってこなかったエフェクトなども取り入れて演奏したので、新鮮さもありました。


吉田喜一(Gt)

――では柳田さんが「修羅の巷」に込めた思いはどういうものでしたか?

柳田:人それぞれに、ここまできたらもう無理、と感じるような「苦しいメーター」みたいなものがあると思うんですけど、その苦しみの中でもがいて、もがいて、辿り着いて掴んだものって、一生の自分の経験値というか宝物になると思うんです。今回、何回も壊してはまた作ってという破壊と創造を何度も繰り返していくうちに、音楽がただ好きなだけでは成り立たないような、自分を俯瞰で見なきゃいけないような瞬間も多くて。冷静になって第三者の視点で曲を聞いたときに、今までだったら自分のエゴが勝ることが多かったんですけど、今回の制作においては、与えられた枠組みの中でどれだけ自分を表現できるかが、自分にとっての挑戦だったと思います。この制作を通して自分の常識をも覆すような挑戦ができましたね。

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――ドラマでは福山さんが演じる捜査官も、大泉さんが演じる刑事も、タイプは違えど根っこには熱い闘志のようなものがあるんだろうなと感じますし、その執念のような熱気はこの「修羅の巷」にも感じました。どんなふうに聞いてもらいたいですか?

柳田:ドラマは、もちろんめちゃくちゃ面白いので絶対に見てもらいたいですし、「修羅の巷」も神サイのキラーチューンの1つになったと思います。今後のライブでも核になりそうな曲ですし、ドラムは特に隙間で遊べるようなアレンジにしてあるので、ライブでは原曲とはまた違うアレンジも楽しみにしてもらえたら。制作段階から「ライブでは別のアレンジやりたいから、よろしくね」って亮介に言っていたんですけど……全部忘れてましたね。

黒川:こないだ言われて思い出しました(笑)。


桐木岳貢(Ba)

――この春はフェスにもたくさん出演されますが、意気込みはいかがですか?

柳田:【JAPAN JAM】は去年メンバーみんなで観に行って、ステージを羨ましく見ていたので、今年は出演することができてめっちゃ嬉しいです。【METROCK】は2年連続ですが東京にも今年は出れますし、【百万石音楽祭〜ミリオンロックフェスティバル〜】には数年ぶりに出演させてもらうんですけど、前回出演したときの僕らはまだメジャーデビュー前で、それまであんなに広いステージで演奏したことがなかったので、今でもあのステージは鮮明に覚えています。そして今年はさらに大きいステージでの出演なので、あれから進化した神サイとして、またライブができるのが嬉しいです。

――そして先日、2ndアルバムが9月27日にリリースされることが発表されました。どんな内容になりそうですか?

柳田:神サイは毎回、手をつけたことのないジャンルにチャレンジするバンドなので、今は色々とやってみている段階です。「キラキラ」や「夜間飛行」といったデジタルシングル曲も収録される予定で、もうその時点でバラエティー豊かなアルバムになりそうな気がしているんですけど、もっと実験的なことをして神サイの武器をたくさん集めたような内容にしたいです。これまでもジャンルを決めてこなかったバンドですし、チャレンジし続けられる環境を自然と自分たちで作ってこれたからこその作品を期待していてください。


黒川亮介(Dr)

――その最新アルバムを引っさげての全国ホールツアーも決定しているそうですね。

柳田:はい。神サイはメンバー1人1人が光る、全員がスターとして輝くバンドでありたいんですよね。なので次のツアーではメンバー1人ずつにフォーカスを当てる瞬間があってもいいよねって思っています。ベースソロ10分とか(笑)。

桐木:それはヤバいっす(笑)。

柳田:コロナ禍を経て、お客さんにライブに来てもらう価値を見出すには、例えば「あの曲を聞きに来たけど、ライブではもっとすごいことになってた!」みたいな、ライブならではの体験をしてもらうのってすごく大事なことだと思うんです。そのために説得力のある演奏をしていきたいなと思っています。

吉田:まだまだ丸くなりたくないなっていう気持ちがあるので、これからもおもしろいことに向かって走っていって、チャレンジし続けるバンドであり続けたいです。

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