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<インタビュー>超特急ならではの“かっこよさ”を提示するアルバム『B9』を語る
Interview&Photo:Yuma Totsuka
超特急が新体制として初のアルバム『B9』をリリースした。本アルバムは、2023年の彼らのテーマでもある“Cool & Stylish”を掲げて制作された。初回限定盤には5人体制のラストライブ、新メンバー加入の瞬間、そして9人体制の初パフォーマンスを収録したBlu-rayと、ドキュメンタリー映像を収録したBlu-rayが計2枚付属しており、超特急の新たな第一歩の瞬間がたっぷりと詰まった作品となった。
今回Billboard JAPANでは、メンバー9人にインタビューを敢行。新メンバー加入後初のツアー【B9 Unlimited】を見据えた楽曲揃いのアルバムについて話を訊いた。
2023年の超特急は“Cool & Stylish”に
――今回のアルバムコンセプトは“Cool & Stylish”とのことですが、なぜこのようなテーマになったのですか?
カイ:今年の超特急のテーマとして“Cool & Stylish”を掲げています。今までの超特急のパブリックイメージは“おもしろいけどかっこいい”という、おもしろさが先行している部分が多かったのですが、“かっこいいけれど面白い一面もある”という方が、色んな人が気になってくれるんじゃないかって。なので、一回”かっこいい”に振り切ってみることにしました。
――そこから今回のアルバムの楽曲も、スタイリッシュな楽曲に?
カイ:はい。「Burn!」や「超えてアバンチュール」みたいな、今までの超特急っぽいイメージの楽曲は既に手札にあるので、かっこいい楽曲の手札を増やしたいなと。
――大変失礼だと思いますが、“Cool & Stylish”と聞いたときに、リョウガさんにはあまりイメージがなかったんですが…。
リョウガ:おい!(笑)
ユーキ:イジリにきた(笑)。
リョウガ:でも、確かに最初“Cool & Stylish”というテーマを聞いた時に、今まではふざけたりするのが当たり前だった超特急のスタイルを、ここへきてシンプルにかっこよくするというのは逆にどうすればいいのかわからないというか、「変顔とかも封印するのかな⁉」とか、思考が停止してしまう感じもありました。でも決して、今までの超特急らしさを無かったことにするわけではなく、今回は超特急のかっこよさを知ってもらいたいというコンセプトであるだけなので、不安に思う8号車もいると思いますが、安心して楽しみにしていてほしいです。
――なるほど。たしかに『B9』を聴いて、今後のライブや方向性がどんなものになっていくのかが気になりますね。
リョウガ:まあ、僕以外にも“Cool & Stylish”と結びつかないメンバーもいると思うので、そこは是非楽しみに…(メンバーを見渡して)いなかった!
――(笑)。先ほどカイさんがおっしゃったように、今回新たな手札を増やしたことで、ボーカルにもまた新たな引き出しが増えたように感じました。
タカシ:そうですね。今まで色んな楽曲を歌ってきた中では、自分の中でキャラクターを作って色んな声質を表現することをやってきました。『B9』ではキャラクターに頼るのではなく、色んな”かっこいい”の表現ができるようになれたらいいなというのを意識しました。低い声を出せばかっこいいみたいな表面上のものよりも「かっこよさを表現したい」というチャレンジでした。
――どうやって表現していったんですか?
タカシ:感情を強く出しましたね。感情を表現するのってバラードでしか活きないイメージでしたが、感情があってこそ、その曲自体が息をしている感じが出てくるというか、1曲1曲に魂を吹き込んだ感じです。
――曲に魂を吹き込む…かっこいいですね。シューヤさんはいかがでしたか?
シューヤ:僕は、超特急加入前はかっこいい曲しか歌ってこなかったので、どちらかというと入りやすかったです。でも今回はただかっこいいだけではなく、2人で歌っていることの意味を出したかったので、どういう世界観なのかというのを意識した上で話し合いを重ね、レコーディングに挑みました。
――今回のアルバム制作はメンバー全員参加しているんですか?
シューヤ:歌に関しては僕とタカシくんが、振付やMVにはユーキくんが参加しています。
ユーキ:今回のアルバムではプロデューサーチームを新たに向かえていて「客観的に見た超特急を大事にしていこう」という裏テーマがあるんです。その中でもリード曲の「MORA MORA」は“求愛ダンス”がテーマなので、「サビはこうしよう」とか「ラスサビはもっと求愛っぽく落としていこう」というバランス調整を念入りにしつつ、メインダンサーとバックボーカルという形を良く見せられるように落とし込んでいきました。今回は初めてKAITAさんに振付していただいたので、楽しんで見ていただけたら嬉しいです。
――KAITAさんと超特急という組み合わせからどんな化学反応が起こるのか楽しみですね。
ユーキ:想像できないですよね!
超特急「MORA MORA」MUSIC VIDEO
シューヤ:「MORA MORA」は、新しい用語を作りたくて、「意味が分からないけど耳に残る言葉をサビに繰り返し入れてほしい」というのをお伝えさせていただきました。それがうまい形で耳に残るような楽曲に仕上げていただけたのですが、そういった制作に関してもメンバーが意見を出して、それを汲み取っていただけるという形だったので、自分達の納得いくアルバムができたと思います。
――ちなみに「MORA MORA」って、どういう意味が込められているんですか?
カイ:“網羅する”の“MORA MORA”です。
ユーキ:造語なので、色んな場面で“MORAる”みたいな使い方をしていただけたら嬉しいです。テンションが上がった時にも「今MORAったね」とか。「マジ?」のことを「マ?」っていうみたいな。
カイ:それ造語じゃない(笑)。ただのネット用語だわ!
ユーキ:でもネット用語的な流行り方したら嬉しいです!
――では、今日も沢山“MORAる”を使っていきましょう(笑)。
一同:はい!
――「シャンディ」についてはいかがでしょうか?
カイ:僕、結構好きです。モチーフとなっているのが『美女と野獣』なんですが、曲調はおしゃれだけど、どこか『美女と野獣』を感じさせるところが素敵で。
――なぜ『美女と野獣』をモチーフに?
カイ:元々頂いた曲がミュージカルっぽくて、音楽担当の方やプロデューサーさんたちと話し合って、『美女と野獣』をモチーフにするのがいいんじゃないかという話が上がりました。そこからミュージカル要素を抜いて、変遷があったうえでの帰着がこれになりました。『よるのブランチ』のエンディングテーマになっていて、このアルバムの中でみなさんの耳に初めて触れる楽曲が「シャンディ」なんです。「MORA MORA」とはまた違うかっこよさになっていて、アルバムのふり幅を感じられてリリースがより楽しみになるんじゃないかな。
シューヤ:『よるのブランチ』で、もう聴けるのか! 楽しみだなー!(※インタビュー収録は『よるのブランチ』放送前) 「シャンディ」すごく好きなんです。トップ2です。
――1位ではないんですね(笑)。
カイ:まあまあまあ、素直でいいですけど。
シューヤ:1位と2位の順位は決まってないんですけど、最近「君と、奏で」もすごく好きで。でも「Typhoon」もいいですね~。
タカシ:甲乙つけ難い。
シューヤ:そう! 『B9』の雰囲気から、8号車がどういう反応をするのかが、すごく気になっています。「宇宙ドライブ」からの「NEW WORLD」をリリースして、8号車の中でも「お⁉」と、なったと思うんです。そこから「シャンディ」「MORA MORA」と来たときに、どういう反応をしてくれるのかとすごく楽しみなので、みんなの反応が待ち遠しいです。
――新体制になってから初のアルバムですしね。ほかの新メンバーのみなさんは、アルバム・リリースに向けてどう感じていらっしゃいますか?
マサヒロ:これだけかっこいい楽曲ばっかりなので、僕もシンプルに8号車の反応が楽しみです。
アロハ:僕は「あとはやるだけだ」と思っています。みんなに受け取ってもらった反応を、素直に受け止めます。
リョウガ:かっけえな…。
ハル:僕個人的な気持ちでは、まだ子供だと思われていると感じるので、今回のアルバムで覆したいし、良い意味で裏切りたいです。
――そういう意味でもライブでの披露が楽しみですね。
ハル:はい!
――先ほど、アルバム制作に関わったメンバーについてお尋ねしましたが、ビジュアルに関してはカイさんが参加されているんですよね?
カイ:はい。衣装、ヘアメイク、一式担当させていただきました。今回はイメージカラーを使わずにあえて黒一色で、メンバーのビジュアルを見ていただこうというところを前提に、ヘアメイクさんもスタイリストさんもはじめましての方にお願いしました。僕らのことを客観視できる新鮮な視点がほしいと思って。
――今回オール・ブラックにしたのはどういう意図があったんですか?
カイ:イメージカラーを入れる案もあったのですが、8号車は優しいから「どこにイメージカラーが入っているのか?」というのを探してくれてしまうと思うんです。それって視線が散らばるというか、純粋に顔面を見てほしくて。
――顔に注目してもらうためにストーンをつけたり?
カイ:そうですね。それは僕が提案させていただいて、石をつけている人もいればラメやシルバーのシートを切って貼ってる人もいたんですけど、超特急を知っている人がパッと見て、超特急と気が付かないようなものにしたくて。理想は、どこかに広告が貼られていたときに、アーティスト写真なのか、ブランドの広告なのかがわからないようなビジュアルを目指しました。
――タクヤさんも普段衣装プロデュースに関わることが多いと思いますが、今回のカイさんプロデュースのビジュアルはいかがでしたか?
カイ:なんか恥ずかしいな(笑)。
タクヤ:純粋にすごくかっこいいですよね。衣装制作において、カイが僕と違うのは、しっかりメンバーの個々を見ていて「これが似合う」「あれは似合わない」というのをしっかり選別できるところ。あとは、客観視できるような初めてのスタイリストさんともマッチして、こんなにかっこいい衣装になったのはすごいと思います。
カイ:(小声で)恐縮です。
フェスでの「バッタマン」は治外法権?
――楽曲のお話に戻りますが、2022年の年末ライブ【新世界 -NEW WORLD-】のテーマソング「NEW WORLD」もアルバムに収録されているんですね。
ユーキ:そうです。僕たちが9人体制として前に進んでいくという強い想いが込められていて、「世の中に超特急の時代を証明してやるぞ!」という気持ちがこもった楽曲です。イベントなどでも大体1曲目にやらせていただいていて、「これが今の超特急だ!」という、パフォーマンスの顔になっている曲だなと思います。
――最近フェスやイベントにも積極的に出演されていますよね。
ユーキ:めちゃくちゃ出させていただいています。
――新メンバーのみなさんは超特急としてのフェス出演はいかがですか?
ハル:すごく気持ちいいです。「Burn!」は会場を巻き込んでパフォーマンスできるのが楽しいですし、僕は「バッタマン」が一番やっていて気持ちいいです。ストレス発散できるので。
タカシ:ストレス発散は、カラオケと同じカテゴリーやな。
ハル:「大変そう」とよく言われるんですが、僕は「バッタマン」を早くやりたくてたまらないんです。なにをしても良いと言ったら違うかもですが、「バッタマン」のときは何からも解き放たれている感じがするので、フェスで外部の視線がある中でやるのがたまらないです。
リョウガ:「バッタマン」の時間だけは、日本国憲法は通用しないです。何しても許されます。
タカシ:誰が決めたんや(笑)。
リョウガ:俺が決めた。
――アロハさんはいかがですか?
アロハ:僕は「BakaBakka」がやっていて楽しくて、僕自身がバカなので本領を発揮できます。あと、自分で言うのもあれなんですが、フェスだと、他のアーティストさんのファンの方から好かれることが多くて、僕フェスに出演すると人気なんです。
リョウガ:なんでそんなこと知ってるの?
アロハ:マネージャーさんから聞いたり、結構言われるんです。だから、フェスは好きです!
――ご自身にその声が届くほど反応をもらえるというのはすごいですね。
アロハ:はい、表情が良いって言われます!
一同:(笑)。
カイ:ここまでくると、清々しくて気持ちいいな(笑)。
リョウガ:うん、良いわ。
シューヤ:こういうところだね(笑)。リョウガも何か言っておいた方がいいよ!
リョウガ:…ないね。なんもない!
マサヒロ:僕は「NEW WORLD」が好きです。理由は、ダンスがかっこいいからです。
カイ:うちのマサヒロはどんな曲でも楽しんでいます!(笑)
――今後声出しが解禁されてからのライブも楽しみですね。
カイ:今のところタイでは声出しOKだったんですが、みんな探っている感じはありました。とはいえ、ワンマンでの8号車の声は5人しか聞いていないので、新メンバーそれぞれに向けられる歓声を早く浴びてもらいたいです。
メンバーのレコメンド曲
――今回のアルバム『B9』は収録曲12曲という大ボリュームですが、その中でもみなさんが気に入っている曲を教えてください。
ユーキ:僕は「Typhoon」です。ライブ映えがする曲で、ダンサーも全員レコーディングに参加しています。「Typhoon」という名前の通り、8号車も巻き込んで超特急という”Typhoon”を巻き起こせそうな楽曲になっています。後半ではみんなで一緒に踊れるような振り付けも考えています。
マサヒロ:僕は「Typhoon」と「シャンディ」です。「Typhoon」はガチガチにHIP-HOPでセクシーな感じなので、ダンスの踊り方や表情の違い、そして表現の方法を是非見ていただきたいです。
アロハ:僕は「Winning Run」です。曲調はすごくニュージャックな感じで、ダンサーは嫌でも踊りたくなるような、絶対にノッてしまう楽曲になっています。HIP-HOPだけでなく、ブレイクやロックなど色んなジャンルで踊ることができる楽曲で、たくさんの可能性を詰め込んでいる曲だと思います。
タカシ:色んな曲がありますが「Introduction -THE EXPRESS to B9-」は、BOOM BOOM SATELLITESの中野雅之さんに制作していただいたんです。このイントロダクションを聴かないと『B9』に入り込めないくらいだと思うので、是非このイントロダクションを聴いてから色んな曲を聴いてもらいたいです。
――言われてみれば、超特急のアルバムにイントロダクションが入っているのは珍しいですね。
タカシ:そうですね、あまりないです。ライブの「Overture」のように気持ちを高ぶらせてからライブに挑むのと同じイメージで、気持ちを上げてから次の「MORA MORA」に繋がっていけるような、8号車とも同じ気持ちを共有したかったというのがあります。
タクヤ:僕は「君と、奏で」が好きです。8号車とライブで一体感を感じているのが想像できるピース・ソングなので、ライブでやるのが楽しみですし、声出しが解禁されたらみんなで一緒に歌いたいなと思っています。(※5月27日より開催するツアー【B9 Unlimited】より声出し解禁決定)
ハル:僕は「ラキラキ」が好きです。良い意味で超特急らしくなく、ライブでの8号車のペンライトの動かし方や披露した後の反応が気になります。自分的にもテンションが上がる曲なので、良い曲がたくさん詰まったアルバムですが「ラキラキ」にも注目してもらえたら嬉しいなと思います。
リョウガ:僕は「Thinking of You」ですね。歌声とサウンドが広がっていくのが聴いていて気持ちよくて、ライブでは野外フェスとかでこの曲の世界観に入り込んでもらえたら楽しそうだなと思ってます。
カイ:僕は「Together As One」。改めて2人のボーカルの歌声の気持ちよさを感じられる曲ですし、「君と、奏で」とは違った大団円感やライブでの雰囲気が想像できる。あんまり踊らなくても良いかなとか、2人のパフォーマンスだけで魅せらそうだなとか、ライブでの姿を想像できるし、ライブで大事に育てていきたい曲だなと思っています。
――みなさんのお話を訊いて『B9』は、ライブをすごく意識して制作されたように思いました。
カイ:超特急はライブを主軸人しているグループなので、さっき「あんまり踊らなくても良いかな」とは言ったけど(笑)、8号車のみなさんは曲を聴いてまず「どんなダンスなんだろう」と想像してくれていると思うし、ライブを軸に楽曲をセレクトしている部分は大きいです。
シューヤ:先ほど色々言ってしまいましたが、「KNOCK U DOWN」はとにかくサビがめちゃめちゃ高い。普通の男性では出ないキーだと思うんですが、そのめちゃめちゃ高い声を永遠と実声で歌っているというのはインパクトが強いと思っています。TikTokなどで高いキーが出るか出ないかのチャレンジとかあるじゃないですか。それをこの曲で是非やってもらいたいです。ファルセットだったらどこまででも出ると思いますが、実声でこれが出る人はなかなかいないと思うので、挑戦してほしいです。それと、3サビ前のフレーズで、僕とタカシくんが全く違うテンション感で、各々の思うかっこよさで歌っている部分があるのですが、そこが僕はすごく好きで、改めて聴いても「うおー!」ってなります。
――ご自身で聴いてもテンションが上がるくらい。
シューヤ:もう何回巻き戻したかわからないくらい聴きました(笑)。
タカシ:この曲に出会うまでは、自分がどこまで実声で声が出るか計ったことがなかったので、シンプルに「ここまで出るんやな!」という発見でした。今からライブで披露できるのが楽しみです。
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