Special
<コラム>セルフプロデュースでK-POPアイドルの定義を更新し続けるSEVENTEEN、その魅力とは?
Text:まつもとたくお
Photo: (C)PLEDIS Entertainment
BTSの活躍でワールドワイドなジャンルになった感のあるK-POP。その人気ぶりは日本でも相当なものがあるが、個人的にはさらに一組、彼らに負けず劣らずの存在感を発揮していると日々実感するボーイズグループがいる。名前はSEVENTEEN。K-POPを代表する“もうひとつの顔”として音楽シーンの最前線に立ち続けている。
2015年5月にミニアルバム『17 CARAT』で韓国デビュー。13人で構成されたこのグループは、VOCAL TEAM/HIPHOP TEAM/PERFORMANCE TEAMにわかれ、それぞれが磨き上げた得意技をミックスするというスタイルで結成直後から注目を集める。
通常こうしたセールスポイントは話題にはなるものの、現実的には十分な成果を得られないケースが多い。しかしながらSEVENTEENは、プロが考えつかないような斬新なアイデアをジグソーパズルのように組み合わせ、他では味わえないサウンドとパフォーマンスを構築。アイドルのフォーマットの中で、自分たちのやりたいことや好きなことを思いきってチャレンジする姿も清々しく、同世代のファンをすぐに獲得したのも納得がいく。
曲作り、振り付け、ボーカルアレンジに加え、ライブのセットリストや番組企画、グッズの監修まで何でも自分たちが携わるため、“自主制作グループ”と呼ばれているが、その良さが広く知れ渡ったのは2016年に大ヒットしたナンバー「Pretty U」を出したあたりではないだろうか。
K-POPは刀群舞(カルグンム)と呼ばれる一糸乱れぬ踊りが大きな売りとなっている。SEVENTEENの場合もダンススキルの高さは言うまでもないが、同曲ではそれ以上にミュージカルを思わせる緻密な構成力に引き付けられる。サウンドもイントロのアカペラや爽やかなAメロは“ツカミ”として使い、以降は二度と使わないユニークな作りで、職業作家では思いつかないであろうトラックメイクに非凡な才能を見いだせる。
2018年リリース曲「Oh My!」における、ルービックキューブの色をそろえていくようなダンスも見応えがあった。レトロなゲーム風のイントロから着想を得たのかどうかは定かではないが、楽曲の魅力を倍増させているのは間違いない。
歌唱については以前から上手いとは思っていたものの、声の美しさにうなったのは、AOR風のアレンジが心地よいポップス「I wish」(2020年)である。成就できなかった女性への気持ちを春の季節に重ねる歌詞の素晴らしさもさることながら、言葉をかみしめるように歌うメンバーの力量もたいしたものだ。
以上のようにどこを切り取っても独創的かつハイレベルなグループだが、そうなったのは各メンバーのロールモデル(行動や考え方の模範となる人)にあると考えている。初期のインタビューで彼らが理想とするアーティストをあげているが、スーパースターのマイケル・ジャクソン、韓国ロック界の大物であるユン・ドヒョン、振付師のケノエ・マドリッド、ラッパーのルーペ・フィアスコなど、それぞれの理想とするところがまったく違うのだ。
この十人十色ならぬ“十三人十三色”を自力でひとつにまとめようとする「力技」こそ、SEVENTEENならではの良さではないかと思う。ファンはそこに惹かれつつ、同時にパワーをもらっているのだろう。
前述した通り、彼らは日本でも多くの支持を集めている。2018年の本格的な日本進出以来、来日公演のチケットはあっという間にソールドアウトに。特に2022年は目を見張るものがあり、大阪、東京、名古屋と巡った初ドームツアー【SEVENTEEN WORLD TOUR [BE THE SUN] – JAPAN】は計6日間で約27万人を動員した。さらにコンサートの開催地では『THE CITY』と名付けたプロジェクトも同時に展開。ラッピング列車やイルミネーションの演出、写真展、スタンプラリーなどを通じて、地域の特性とともにグループの個性をアピールし、ファンを喜ばせている。
CDの売れ行きも好調だ。2022年11月に発売したJAPAN 1ST EP『DREAM』が、今年1月にミリオン(最低累計正味出荷枚数100万枚)を達成。海外アーティストでミリオンに認定されたアルバムは、BTS以来とのこと。この名誉な記録を手に入れたのは、2020年代ではSEVENTEENと3組(米津玄師、BTS、Snow Man)のみで、これだけで本盤のセールスがいかにすごいものか、よくわかるはずである。
昨年はBillboard JAPANの2022年年間アルバム・セールス・チャートで『DREAM』が3位となり、『第64回 輝く!日本レコード大賞』で<特別国際音楽賞>を受賞するなど、飛ぶ鳥を落とす勢いだった彼ら。今年に入っても前述のミリオン達成をはじめ、人気ドラマ『罠の戦争』の主題歌「BETTING」で香取慎吾とコラボレーションを果たし、グループ内ユニットのBSS(SEVENTEEN)(読み:ブソクスン)がヒットチャートを賑わせるなど、話題に事欠かない。
近年は(G)I-DLEやStray Kidsといったセルフプロデュース型のグループがK-POPシーンをけん引しているが、いまだにSEVENTEENの自己研鑽とクリエイティビティは群を抜く。この姿勢が変わらない限り、13人は永遠にスーパースターであり続けるはずだ。2023年もリスナーの期待を良い意味で裏切るようなインパクトのある活動を期待したい。
関連リンク
関連商品