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<インタビュー>僕の夢は生涯現役だから── 加古隆 パリでのデビューから50年、記念ツアーと音楽人生を語る



<インタビュー>僕の夢は生涯現役だから── 加古隆 パリでのデビューから50年、記念ツアーと音楽人生を語る

 僕の夢は生涯現役だから──

 1973年にパリでデビューしてから50周年、これまで作曲家でありピアニストとしてジャンルに捕われずいくつもの名作を生んできた加古隆。今年76歳を迎えた御大が、これまでの音楽人生をひとつのコンサートに集約させた一代絵巻とも言えるコンサートツアー【50thアニヴァーサリーコンサート ソロ&クァルテット~ベスト・セレクション~】に挑戦する。今回のインタビューでは、そのツアーについてはもちろん、50年に及ぶ音楽人生とこれからについても語ってもらった。すべての音楽ファンにご覧頂きたい。

<インタビュー>僕の夢は生涯現役だから── 加古隆 パリでのデビューから50年、記念ツアーと音楽人生を語る

--デビュー50周年。これまでクラシック、フリージャズ、現代音楽、劇伴などの映像音楽と様々な作品を手掛けてきましたが、この50年を経て今、加古隆はどんな音楽家になっているなと思いますか?

加古隆:ひとつのジャンルで縛ることができない音楽家になったなと思っています。今、僕のことをジャズミュージシャンと呼ぶ人はいないし、現代音楽の楽曲もあるけれども、そのジャンルの輪の中には混ぜてもらえていない(笑)。「じゃあ、クラシックのピアニストですか?」と言われたら、その中にも括れない。作曲家ですけど、随分たくさんコンサートもやっているわけで、あらゆる意味でどこにもカテゴライズすることができない。そういう音楽家になっていったなと思っています。

--何かのジャンルに捕われない音楽人生を送ってきたと。

加古隆:ひとつのジャンルが好きなファンの人の為の音楽家ではなくなりました。例えば、ジャズが好きな人は喜ぶけれども、クラシックの人はあんまり好きじゃないとかね。そういうカテゴリーとはちょっと違うところに自分の音楽を見つけることができた。なので、ジャンルでなく音楽そのものが好きな人だったら、僕の音楽は楽しんでもらえるはずだと思っています。それは50年間続けてきたから確立できたものだと思いますね。

--どんな音楽を奏でていても加古隆の音楽になる、オリジナリティを確立できたということですよね。

加古隆:音楽家というものは、そうあるべきだと思っていて。みんなそれぞれに自分の世界を持っているし、それ自体は珍しいことではないし、音楽家であれば、あたりまえのことだと僕は思っています。

--我ながらどんな音楽人生を歩んできたなと思いますか?

加古隆:そのときそのときに出逢って惹かれた、いろいろなもの。それと共に自然と歩んできた音楽人生だと思います。僕の音楽の変遷の中で、ひとつ「こういうやり方は得意じゃないし、やってこなかったな」と思うのは、次はこういうタッチの音楽家になろうとか、ジャズはもう結構やったから、今度は映画音楽専門になろうとか、そういう風に決めたことがないんです。すべて出逢いによって自然と変化してきた結果なんですよね。そして、僕はすべての仕事に対して「これ以上は出来ない」と思えるところまで必ずベストを尽くしてきました。これはどんな作品でも、どんなジャンルでもやってきたつもりで、そういう風に創作していたら自然と加古隆の音楽の世界が生まれていった。そして、自分を新しい場所へ連れて行ってくれたんですよね。

<インタビュー>僕の夢は生涯現役だから── 加古隆 パリでのデビューから50年、記念ツアーと音楽人生を語る

--そんな加古隆の50年間を集約したコンサートツアー【50thアニヴァーサリーコンサート ソロ&クァルテット~ベスト・セレクション~】が今春開催されます。50年分の音楽をひとつの公演で表現する上でどんなことを考えましたか?

加古隆:1973年にパリでデビューして、そこから今に至るまでの僕の音楽の歴史を一望できるような、そういうコンサートにしようと決めました。それを組み立てる為に僕にとって大切な時代、音楽、楽曲は何なのか考えたときに「これは外せない」という4つのパートが思い浮かんだんです。それは、やはりデビューしたとき。それから何年も続けてきたフリージャズの時代。これをなしにするわけにはいかない。という訳で、まず「Part1/巴里の日」というパートを設けようと。その次は、パリから帰国してピアノソロコンサートを中心に活動していくことになったのですが、それが僕のライフワークになっていったんですよね。しかも、その中で今の自分の音楽スタイルを見つけるきっかけがあって、そのターニングポイントとなった楽曲が「ポエジー」だったんです。

--イングランドの民謡「グリーンスリーブス」をモチーフにした楽曲ですよね。

加古隆:この「ポエジー」という楽曲が生まれたことで、その後の僕の音楽スタイルに辿り着いたんです。ですから、これも欠かすことができないので「Part2/ポエジー」というパートを設けました。ここまでを1部としてピアノソロでやろうと。そして、2部では、加古隆クァルテット。これは2010年に結成したので、もう13年になりますが、僕はパリ時代、フリージャズをピアノトリオやクァルテットなどグループでやっていたんです。それからひとりになってピアノソロを長くやってきたんですけど、2000年を過ぎた頃から「もう一度グループでやりたい」と。それは昔のようにフリージャズのグループをやろうと思ったわけではなくて、今の自分に相応しいグループ。それで誕生させたのが加古隆クァルテットなんですが、今でも現在進行形としてやっていますから、これをひとつのパート「Part3/クァルテットの誕生」として取り上げようと思いました。で、もうひとつのパートを考えたときに、それは映像の音楽。これもまた僕にとって欠かすことはできない。

<インタビュー>僕の夢は生涯現役だから── 加古隆 パリでのデビューから50年、記念ツアーと音楽人生を語る

--最後のパート「Part4/映像の世紀~パリは燃えているか」ですね。

加古隆:映像の音楽はたくさん手掛けてきていますから、その中から今まで最も広く世の中に紹介された『映像の世紀』、そして、そのテーマ曲である「パリは燃えているか」。これをひとつのセットにして4つ目のパートにしようと考えました。

--今回のコンサートツアーをサントリーホールで終えたとき、どんな世界やヴィジョンが見えていたらなと思いますか?

加古隆:ひとつひとつのコンサートを「これが今の僕にできるベストだったな」と思えるところまで昇華して、それを重ねていって。サントリーホールまでそれを続けて無事終えることができたら、まずほっとするでしょうね(笑)。そこで「来年はこれをやってみよう」と次のヴィジョンが見えてくるかもしれません。それはやってみないと分からないけれども、新しい世界が自分の中に浮かんでも浮かばなくても、僕の夢は生涯現役だから──。また新しい音楽を創作していくことには変わりないと思います。なので、50周年もひとつの通過点。

--この集大成的なコンサートツアーを経て、加古隆からどんな音楽が生まれてくるのか。楽しみにしています。

加古隆:そう言われたら、僕も楽しみになってきました(笑)。

Interviewer:平賀哲雄&オフィシャル|Photo:(C)GEKKO

加古隆の名前「隆」は旧字体、生の上に一が入ります。

加古隆クァルテット『パリは燃えているか [Takashi Kako Quartet / Is Paris Burning]』

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