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J-HOPEのソロ活動に追ったドキュメンタリー『j-hope IN THE BOX』で見る、アーティストの光と苦悩
Text:尹秀姫
J-HOPEにとって初めてのソロ・アルバム『Jack In The Box』の制作からリリース、そして【ロラパルーザ】のヘッドライナーを務めるまでを追ったドキュメンタリー『j-hope IN THE BOX』が2月17日よりディズニープラス「スター」で配信スタートした。
©2023 BIGHIT MUSIC & HYBE. All Rights Reserved.
この映像で映し出されているのは、J-HOPEの嘘偽りのない姿だ。「次のステップに行くための大事なアルバム」と自ら定義づけたソロ・アルバムの制作。しかし、「録音したものを毎日1回聞いてるけど心に来ない。イマイチってことです」と、制作は序盤から難航。「最初の歌詞が書けない」とスタジオにこもったまま、せっかくソウルにやってきた父とも会えず数日を過ごし、家に帰って寝たいとぼやく。創作の苦しみにあえぐアーティストの姿というのは、なかなか見る機会がない貴重なものだ。特にこのアルバムは自身でも「J-HOPEという人間を振り返った」作品だと後に語るほど、彼の人生において重要なものとなったが、その制作過程をこのように映像にして残してくれたことに感謝の念すら覚える。制作の合間に光州の実家に帰省するシーンもまた貴重な映像だ。庭先に父が置いた岩を笑顔で紹介したり、母の作った朝食をおいしそうに平らげる姿は、J-HOPEという人間がどのように育ったかを想像させる。そうしてチョン・ホソクとしてつかの間の休息を過ごしたあと、「ソウルではまたJ-HOPEに戻らないと」と再びミーティングの日々に帰っていくのだった。
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アルバムリリースを前にして開催したリスニング・パーティーには、BTSのメンバーをはじめ、タイガーJK、ZICO、Heize、ソンミ、BIBIなど韓国内外で活躍するアーティスト、俳優、セレブたちがこぞって訪れ、J-HOPEのソロの船出を祝った。しかしその裏で彼は準備のためにパーティーフードの味見から動線の確認まで自ら行い、出席者たちをもてなし、パーティーが終わった後には会場をくまなく回ってスタッフたちをねぎらっていた。これはこの映像全編で見られる姿だが、J-HOPEはいついかなる時もスタッフへの礼儀を欠かさない人物であることがよくわかる。BTSが、J-HOPEがどれほど世界的な人気を得ても、謙虚で、善き人であろうとする姿は、ARMYならずとも好感が持てる。
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そしていよいよ【ロラパルーザ】に参加するため、米シカゴへ。現地でバンド、ダンサーたちとリハを重ねて、音とダンスをすり合わせていく。バンドとは息も合い、ちょっとした音の調整をして、笑顔で全員と挨拶を交わす。動画で確認した時は「(振りが)合ってないからグルーブがない」と心配していたダンスは、一緒に汗を流して、同じ時間を過ごすうちに、次第に動きが合うように。自分だけでなく「ダンサーたちも休ませてあげて」という気遣いもJ-HOPEらしい。その後も練習を続けたダンサーチームは、最後にはJ-HOPEからとびっきりの笑顔を引き出すことに成功した。そして忙しい合間を縫って、ライブで使う映像のチェック。映し出される字幕と音楽のズレを指摘し、その効果にどんな意味があるかを冷静に伝えていく。どんなに忙しくとも自分の仕事をおろそかにせず、かといって妥協せず、スタッフと一丸となってプロジェクトを進めていく姿勢は、何もこの時だけではない。
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【ロラパルーザ】のセットリストを決めるためのミーティングでは、自身が考えてきたセットリストをもとに他のスタッフの意見を聞き、ブラッシュアップしていった。J-HOPEとスタッフが懸念していたのは、J-HOPEのソロステージにBTSの曲を入れるべきか否か。普通に考えればソロ曲のみで構成するのが当然だが、これがソロとしては初ステージ、しかもあの【ロラパルーザ】のヘッドライナーなのだ。しかし、そもそもBTSの曲を歌うとして、グループの曲を1人で歌うには作り直さなければならず、また韓国語曲はアメリカの観衆には理解ができない。でも、「フェスだから一般客のことも考えないと」と、自分の考えに固執せずスタッフの意見を受け入れ、フェスに来る人が何を楽しみにしているかにフォーカスを切り替えていく。
シカゴで毎年開催されている本フェスティバルは、世界的にも有名な大型音楽フェスのひとつだ。本拠地はシカゴだが、ブラジルやフランスそしてインドなど、世界各地でも開催されており、4日にわたって開催された昨年は、J-HOPEはメタリカやグリーン・デイ、デュア・リパ、カイゴといった大物アーティストたちと肩を並べた。しかも、最終日かつメイン・ステージのトリという大役を任され、全米のメジャーな音楽フェスティバルにて、韓国人アーティストとして初めてメイン・ステージのヘッドライナーを担当するという歴史的快挙を成し遂げたのだ。
合間にはシカゴ観光も楽しみつつ、いよいよ本番となると、緊張感が増していく。初めてのソロ活動、しかもいきなり大きな音楽フェスへの参戦で、重圧を感じないわけがない。本番当日、神経質にテーブルを叩く、ややナーバスな姿も、ステージを愛し、大切にしているからこそ。そこにJIMINが陣中見舞いにやって来て、ホッとした表情を見せるJ-HOPE。他愛のないことを話しながら、高まっていた緊張がほぐれ、「JIMINが来たら少し安心したよ」といつもの笑顔を取り戻す。そんなJ-HOPEを見ながら「1人にしてあげたほうがいいかと思った」と言うJIMINに「僕はむしろ楽になる」と返す会話には、2人の絆が感じられた。
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映像の合間にインサートされる【ロラパルーザ】のライブ映像は、興奮のひとこと。まるで“Jack In The Box(びっくり箱)”から飛び出すようにステージに降り立ち、ペンライトがまたたく光の海のような客席にたった一人で向き合うJ-HOPEだが、その表情にはもう緊張も恐れもない。ただ純粋に曲の世界に没頭し、音楽を楽しみ、ダンスに夢中になる、J-HOPEというアーティストがそこにはいた。「もっと、もっと」と求めることが原動力だと歌った「MORE」をはじめ、観客に「SAME」と叫ばせた「= (Equal Sign)」など、ライブ映像としても見ごたえたっぷり。J-HOPE自身が自分の悩みを込めたと語った「放火(Arson)」では高まる感情のままステージを荒々しく歩きまわり、セットリストに入れるかどうか最後まで悩んだ「Dynamite」では観客に歌を任せ、J-HOPEはダンサーとともに楽しく踊る姿を見せることで、グループの曲をソロでどう魅せるかという問題を鮮やかに解決してみせた。「次の曲は僕たちの未来に捧げます」と言ってはじまった「Future」まで、【ロラパルーザ】でのライブは彼のアーティストとしての歩みと悩み、そして未来をも描き出して見せた。
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ライブが終わって2日が経ってもまだ実感がわかないというJ-HOPEは、【ロラパルーザ】を振り返って「自分とはどんな人間なのか見せられたと思う」と語ったが、『j-hope IN THE BOX』は彼がステージに立つ姿だけでなく、ステージの裏側に密着し、J-HOPEというアーティストを浮き彫りにしたドキュメンタリーだ。
J-HOPEは『Jack In The Box』というアルバムについて、「今までJ-HOPEは箱の中で自分のできる歌とメッセージを作ってきました。それが今回は箱の外に出て、自分が感じるより広い世界に向けて、自分が感じて語ることのできることを伝えるつもりです」と語っている。そしてこのタイトルは、実はデビュー前から考えていたとも。箱の中から世界に飛び出し、ぶつかりながらも経験を積み、そこで学んで得たことを音楽にしてみんなに見せたいと語っていたJ-HOPE。世界に飛び出した彼の挑戦が、『j-hope IN THE BOX』には詰まっている。
配信情報
『j-hope IN THE BOX』
ディズニープラス スターで配信中
スタッフ:パク・ジュンス
出演:J-HOPE
©2023 BIGHIT MUSIC & HYBE. All Rights Reserved.
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