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<インタビュー>GLAY・TERUが“限界突破”し続けてきた理由
どうしてこの人はいつもまっすぐなんだろう? なぜ彼はいつも前向きで突っ走ってるんだろう? パワフルでタフで熱い歌声はもちろん、 TERUはその言葉や行動のすべてで人々の背中を押し、心を支え、生きる活力を与える。そしてそこにはいつも笑顔の花がたくさん咲いている。
GLAYのニューシングルは『HC 2023 episode 1 -THE GHOST/限界突破-』という。冒頭に振られた<HC 2023>とは、この3月から始まる全国ツアー【HIGH COMMUNICATIONS TOUR 2023 –The Ghost of GLAY-】のことだ(「ハイコミ」と呼ばれるこのツアーはオーディエンスと濃度の高い交歓を目指すホールクラスでの開催)。このシングルに収められているのが「THE GHOST」と「限界突破」のふたつの新曲で、まず要注目の前者はJIROが作曲した、実にファンキーな感覚に満ちたもの。GLAYというバンドの新たな可能性を広げる意欲的な楽曲となっている。さらにもう1曲の「限界突破」はこれぞGLAY!な直球のロックナンバーで、こちらはTERUの作詞作曲である。
今回はTERUと話すにあたり、この「限界突破」にあるようなGLAYらしさ……つまり熱さ、優しさ、誠実さといった、まっすぐな衝動の理由を聞きたいと思った。そうしたポジティヴさの大部分を発しているのは、間違いなく、このヴォーカリストだからである。
取材の席でのTERUは、あの屈託のない笑顔と、やはりまっすぐなまなざしで、だけど何も飾ることなく語ってくれた。その姿からは、ステージでの神々しいシルエットと、ひとりの大人と人間としての素顔の、どちらともが垣間見えた。GLAYのパッションとエネルギー、そして優しさと誠実さの多くを抱え、走り続ける彼。本当に、愛すべき人である。 (Interview & Text:青木優/Photo:興梠真穂)
“カービングの神様”との出会いから生まれた「限界突破」
TERU:よろしくお願いします!
――こちらこそよろしくお願いします。Billboard JAPANでは一昨年からリーダーのTAKUROさん、次にJIROくんとHISASHIくんのおふたり、その次にソロアルバムのタイミングで再び TAKUROさんにお話をうかがってきてまして。今回ついにTERUさんにたどり着きました。
TERU:ハハハ(笑)……大丈夫かな? 俺がビルボードさんのインタビューを受けない理由が何かあるんじゃないの? マネージメントが「すぐふざけちゃうし、TERUじゃないよね」みたいな。
――そんなことないと思います(笑)。で、今日はTERUさん個人のお話もいろいろ聞きたいんですよ。
TERU:わかりました(笑)。お願いします。
――まずシングルのことからうかがいますけど、今回はタイトルからしてハイコミツアーに合わせたリリースなんですね。
TERU:そうですね。最初の構想だと「限界突破」とHISASHIの楽曲「Pianista」がゲームアプリ『ブラッククローバーモバイル 魔法帝への道 The Opening of Fate』に起用されているので、この2曲を収録したシングルのリリースとツアー開始がひとセットになる予定だったんです。それがJIROの楽曲のデモを作り始めたら、TAKUROが「これ、めちゃめちゃいいじゃん!」と言って、これを形にしようということになって。そのタイトルが「THE GHOST」になった瞬間に、じゃあツアーのタイトルもTHE GHOSTにしようと。それでこの曲の世界観に引っ張られて、ツアーももっとマニアックな内容にしようということになりました。
――その「THE GHOST」は明らかに今までのGLAYになかったタイプの曲ですね。TERUさんはどう思いました?
TERU:最初に簡単なデモが届いた時はJIROの仮歌だけだったんですけど、それを聴いた時に、正直「これ、GLAYでやるのか!?」って思って。その次には「これにツインギターがどう入るんだろう?」と楽しみになりましたね。
――ファンキーだし、音数が少ない、空間を生かした楽曲です。去年JIROくんに話を聞いた時に、最近のR&Bに代表されるブラック・ミュージックにハマっていて、そういう曲作りに取り組んでると聞いたんですけど、まさにそれが出てきましたね(※GLAY『Only One,Only You』インタビュー・JIRO編「今のGLAYは何をやってもいい」)
TERU:出てきましたね!「70年代のブラック・ミュージックを聴いていて、それでベースを練習してるんだよね」ということを聞いてましたし、ベースラインから始まる楽曲の作り方をしてるなと思いました。レコーディングでは亀田さん(プロデューサー・亀田誠治)にも「ベースをもっと太い音にしたい」と言ってたり、ひさびさにあそこまで注文をしてるJIROを見ました。
――横ノリだし、セクシーで、カッコいい曲だと思います。一方、TERUさんが書いた「限界突破」はGLAYらしい仕上がりで。
TERU:これはもともと、さっきの『ブラッククローバー』のゲームアプリの話をいただいた時に、TAKUROが「TERUとHISASHIでやってみない?」と言ってくれたので、ふたりで2曲ずつアレンジしながら作り込んでいって。その中でヨウイチロウくん(ロックバンドGARIの YOW-ROW/GLAYの2021年の楽曲「Holy Knight」ではプログラミングを担当)とまたやってみたくなったので「ヨーロッパの雰囲気が感じられる曲にしたい」と注文したら、ちょっとゴシック系のアレンジで返ってきましたね。
――ドラマチックなイントロからぐんぐん高まっていきますね。
TERU:はい。僕はもともと『ブラッククローバー』はマンガで読んでたし、ストーリーも大好きなので、そういうストーリー性とか、主人公のふたりがせめぎ合う姿だったりを音楽で表現できればなと思って作りました。
――で、この歌詞のほうは、スノーボーダーのラマさん(=平間和徳氏)という方との会話から生まれたそうですね。
TERU:そう、ラマさんは、スノーボードのカービングの神様と呼ばれてる方で。カービングって、こう、板のエッジを極限まで立てて、カーブするという技なんですけど……(立てた両手を倒しながら説明)。
――倒れそうになりながら曲がるんですね。
TERU:そうです。コロナ禍でその技を撮った映像を見ていて、めちゃくちゃカッコいいな!と思って。その瞬間にもうDMを送っていて(笑)。
――知り合いでもなかった、そのカービングの神様宛にですか?
TERU:「一緒に滑りたいんですけども」と送ったら、向こうは「まさかGLAYのTERUさんからDM来るとは思いませんでした」って(笑)。で、その半年後ぐらいには約束して、滑りに行って。その時にリフトに乗りながらお互いの業界の話をしてたんですけど、その中で「これからは僕らも限界突破して、この業界を支えていかなきゃいけないんで」という話を聞いた時に、限界突破ってすごくいい言葉だなと思ったんです。それがずっと頭に残っていて、今回そのお話をいただいた時に、スノーボードと『ブラッククローバー』の世界観とか、せめぎ合う感じがリンクして、これはもう「限界突破」という曲にしようと。だからすぐにタイトルから書き始めて、それに引っ張られていきましたね。
――へえー! じゃあメロディはそのあとに出てきたんですね。
TERU:そうですね。方向的には、自分がスノーボードで滑ってる時に聴きたい音楽のほうに持っていきたいなというのがあって。スピード感とかね。
――そういえば平間さんのほうで、TERUさんが滑ってる動画を上げられてますね。
TERU:上がってます! いや、ほんとはあれで「限界突破」を使いたかったんですけども、著作権の問題でね……まあそれは理解してるので、仕方ないんですけど。だからそっちの音はフリー素材を使ってるんです。あれ、カッコ良く編集されていますね。
TERU:「限界突破」は自分がスノーボードで聴きたいような音楽を作りたかったので、スポーツやってる人たちにも聴いてほしいなと思います。
――うん、この曲の疾走感と盛り上がる感じはスノボに合ってると思います。で、歌詞は先ほどの背景がありながら、GLAYというかTERUさんらしいものになっていますね。
TERU:はい(笑)。これはもうザ・GLAYというか、自分がGLAYのヴォーカルとしての立ち位置で書いた楽曲です。僕と言えばポジティヴな考え方だったり行動なので、とにかく聴いたら元気になる曲にしよう!と思って。歌詞も、ラマさんと話した時の言葉だったり、あとはGLAYの4人の絆を裏テーマとしてるんです。「GLAYは限界突破してきたなあ」と……「よくあそこを乗り越えたな」とか思いながら書いていったら、人と人とのつながりをテーマに書きたくなって。サビはもう、もろにそういうことですね。
――<願わくば君とずっと羽ばたき続けられるよう>のところですね。一体になって生きていく、その気持ちの強さが感じられます。
TERU:そうですね。GLAYって、今までは僕だけが勝手に「10年後、20年後は~」みたいなことを言っていて、ほかの3人は「そんな長く続くかな」なんて言ってたんですよ。それが最近は僕の熱にほだされて、TAKUROも「ほんとに60歳とか70歳でGLAYやっていられたら幸せだなと思うんだよね」とか、あとJIROも「10年後にはさ」とか言い始めていて。そんなふうに日常会話で出ていた会話を思い出せるような歌詞にしています。
――ああ、なるほど。日々の断片を入れ込んでるんですね。
TERU:そうですね。自分の歌詞に関しては、日常にあるものやふだん自分が使う言葉で書こうと思っていて。あんまり深く、難しい問題提起とかではなく、聴いた瞬間に元気になったりするように、わかりやすく、すぐ響いてくれる言葉選びをしているつもりです。たまにはカッコつけたのも考えたほうがいいのかな?と思うんですけど(笑)。でも難しいことを語るのは自分らしくないなと思うので、ふだん使ってる言葉とか、自分の生きざまとかが出るようなものにしたいなと思います。
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リリース情報
シングル『HC 2023 episode 1 -THE GHOST/限界突破-』
- 2023/2/15 RELEASE
『HC 2023 episode 1 -THE GHOST/限界突破-』特設サイト
GLAY 関連リンク
HC 2023 episode 1 -THE GHOST/限界突破-
2023/02/15 RELEASE
PCCN-56 ¥ 1,650(税込)
Disc01
- 01.限界突破
- 02.THE GHOST
- 03.海峡の街にて
- 04.GONE WITH THE WIND (Gen 3)
2.6k