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<インタビュー>学芸大青春が掲げる“ピアノダンス”とは? 素顔解禁し、ネクスト・フェーズに入った5人が語る
Interview:Takuto Ueda
Photo:Yuma Totsuka
現実世界とメタバースを行き来しながら活動するダンス&ボーカルグループ、学芸大青春 (ガクゲイダイジュネス) が3rdミニアルバム『Piano Dance』をリリースした。
昨年9月に活動3周年を記念したライブを開催し、ついに三次元の姿で素顔を解禁した彼ら。ネクスト・フェーズに入ったジュネスが満を持してリリースした今作は、タイトルも示している通り、コンセプトに「ピアノ+ダンス」を掲げた計8曲入りとなっている。メンバーの仲川蓮が本格的に楽曲制作に携わり、ラップの作詞は南優輝が担当するなど、等身大のジュネスを反映させたエッセンシャルな1枚について、5人に話を聞いた。
「ジュネスらしさ」に向き合い続けた日々
――まずは、2022年がジュネスにとってどんな1年間だったかを聞かせていただけますか?
内田:5人でいろんな経験をして、いろんな場面で力をつけられた年だったかなと思います。特に9月の活動3周年のときに顔出しするまでは、顔を伏せつつもTikTokやYouTubeを使ったり、ライブ・パフォーマンスの面も含めて、5人で試行錯誤していくなかで失敗も成功もあって。
【共同生活】じゅねす、顔出します。【学芸大青春】
――とりわけ印象に残っている成功体験を挙げるとすれば?
南:今回のミニアルバムにもつながる話なんですけど、みんなで「ジュネスの音楽とは」を改めて決められたことは大きいと思います。顔を出すことでプラスになる面もあるけど、他のボーイズグループと同じように見られるぶん、みんなに「学芸大青春だからこそ」と思ってもらえる自分たちの色って何なんだろうと思って、そこに向き合った1年だったなって。そのなかで一つ、ジュネスらしい音楽として、今回の“ピアノダンス”というテーマにたどり着けたのは成功だったのかなと思います。
仲川:昨年は5か月連続配信をやったりして、すごく音楽と向き合えたというか。曲を出すということは振り付けも覚えなきゃいけないし、ダンスも含めて自分たちのスキルアップにつながりましたね。僕は作曲もやらせていただく機会が増えたので、なおさら自分たちの想いとか、やりたい音楽について考える意識が強まりました。
左から仲川蓮、内田将綺、星野陽介、相沢勇仁、南優輝
星野:ライブも活動当初はお客さんが目の前にいなくて、僕らも反応が見えなかったり、アイコンタクトが取れないという壁があったけど、それでも「どう煽ったらいいか」とか「どうしたらお客さんがノッてくれるか」とかを考えて。「この曲はちょっとイントロを長くして煽る時間を増やしたほうがいいんじゃないか」とか、そういうことをプロデューサーに相談したり、工夫を続けた数年間だったなと思います。
内田:たしかに。ライブ活動の開始がコロナ禍とちょうど被っていたからね。
相沢:コロナ禍になる前から活動していたアーティストさんにとって当たり前だった感覚を、ここにきて僕らはようやく味わうことができて。やっぱり苦しかったり、悔しい思いもしてきたけど、その環境のなかでどうすれば盛り上げられるか、少しでも楽しんでもらえるかを考えられたのはポジティブなことだったと思います。今後、ライブの声出しが普通になっても、その経験は自分たちの糧になると確信していますね。
――顔出し解禁までの3年間、ある意味、素顔を隠し続けてきたことでハードルが上がったように感じたり、不安や葛藤を覚える側面もあったのでは?
相沢:ありますね。マネジャーやプロデューサーも含めて、それぞれがどのタイミングで出すのが一番なんだろうと考えたし、「もうちょっといいタイミングがあるんじゃないか」という気持ちもあったりしたけど、たしかに待たせるのが長ければ長いほど、お客さんの心理としてはやっぱりハードルも上がる。それぞれ葛藤したと思うんですけど、もともと自分たちが目指していたところはもっと高みにあるというか、ここまできたら表現の幅を広げるためにも顔出ししたほうがいいっていう、そういう段階にきたのが去年の9月のタイミングだったと思っていて。
南:やっぱり一番は、自分たちの音楽を知ってもらうこと。だからこそ、まずは音楽から入ってもらうために顔を隠そうという想いで始めたので、その最初のスローガンをある意味、曲げることになってしまうという葛藤が大きかったです。ただ、最終的に行き着いたのは、音楽を広めるという一番の目標を達成するために、俺たちは全部を使わないといけないんだという結論だったんですよね。
この5人で音楽をやることに意味がある
――3rdミニアルバム『Piano Dance』はタイトルにもある通り、コンセプトに「ピアノ+ダンス」を掲げた計8曲入りです。どんなふうにして今回のテーマにたどり着いたんですか?
相沢:ジュネスの音楽の一貫性がどこにあるかを考えたとき、もちろんダンス・ミュージックや青春をテーマにした曲もたくさんあるけど、もっと明確な何かがあるんじゃないかと思ったんです。リスナー目線で考えたら「こういう音楽性が好きだ」とか「こういう世界観が好みだ」とか、そういう一貫した魅力に惹かれるよなって。それで、ジュネスとしてどんなところに軸を置いて音楽をやっていくか、みんなで一度話し合いたいと思って、マネジャーやプロデューサーもいるミーティングで投げかけたんです。
――みなさんで話し合ったんですね。
相沢:蓮はピアノが得意で、ジュネスでは作曲にも携わるようになって。そこで蓮のピアノを取り入れた“ピアノダンス”というのはどうか、という提案をプロデューサーがしてくださって。ただ、もちろん本人の意志がまず必要だし、そうなったら蓮の負担はやっぱり相当大きくなる。曲を作る時間もそうだし、精神的なプレッシャーもそう。
仲川:僕もいつかピアノを取り入れた音楽をやりたいと思っていたのでうれしかったけど、やっぱりプレッシャーもすごくて。決まったあとはしばらく眠れなかったし、寝ても夢に出てくるような感じでした。でも、やっぱり僕たちは音楽をやっているグループなので、曲が一番大事だし、それがジュネスのイメージにもなるので、やっぱりいいものを作りたいという想いが強かったです。
――その決断を後押ししたものって?
内田:僕らの存在ですか?
仲川:言う気が失せたな(笑)。でも、まさにそうで。この5人で音楽をやることに僕はすごく意味があると思っていて、この5人で歌いたいから曲も作りたいという想いが強かったんですよね。そのおかげで乗り越えられたんだと思います。
南:蓮自身は無自覚かもしれないけど、僕らは蓮がずっと音楽と向き合ってきたのを知っていて。曲を作るようになってからは本当にいろんなジャンルの曲を日々聴いていたり、作曲家の方のところに勉強しに行ったり、そういう努力が自分を後押しする自信にもつながったんじゃないかなって、周りで見ていた身からすると思いますね。
――そんなジュネスの最新型『Piano Dance』の内容についても聞かせてください。みなさんがチャレンジングだったと感じる1曲は?
内田:僕は「煽句-Trash Talk-」ですね。ラップはもともと勇仁と優輝がメインでやっていたけど、この曲で自分もやらせていただく機会をもらって、個人的には新しい表現に触れられたと思うので。
――たしかに、これまで内田さんはフェイクを担当することも多かったですよね。
内田:そうですね。この曲は蓮がディレクションしてくれたのと、ラップに関しては優輝にアドバイスをもらったりして、すごくグループ力が出た楽曲なのかなと思います。
――ちなみに、どんなアドバイスを?
南:主にフロウ的な部分ですね。「ここはもっとメロウな感じで歌ったほうがいいから、語尾の頭の音を消したほうがいい」とか、そういう感じです。僕自信もまだまだなんですけど(笑)。
――全体的に“日常に寄り添う”ようなトーンで描かれている今作にあって、この「煽句-Trash Talk-」はかなり強めのメッセージ性が印象的ですね。
内田:挑発的ですよね。
――それがエンドトラックとして収録されている。このあたりには何か意図があったりしますか?
仲川:アルバムを通して聴いたあとに「よし、今日も頑張るぞ」と思えるようにしたくて。「煽句-Trash Talk-」は自分を鼓舞する曲なので、僕たち自身も今後、“ピアノダンス”という音楽を突き詰めていって、顔出しの活動やツアーもどんどんやっていくぞ、という気持ちも込めての曲順です。
南:俺たちの意思表示も込めているよね。蓮は喋りたい曲ある?
仲川:「アールビーワイ」ですかね。僕が初めて作った5人の曲なので。5か月連続配信の1曲目ということもあって、一番分かりやすく“ピアノダンス”を表現した曲でもあるし、いつかライブで声を出せるようになったときに楽しんでもらいたいという想いを込めた曲でもあります。
【MV】『アールビーワイ』学芸大青春 / Oh yeah この気持ち, ピカデリーに乗せたり…
ダンスでもジュネスを感じてもらえたら
相沢:自分は「すぐいくから…」という曲で、2番以降を歌っているんですけど、そこでギターの音とともに曲調がロックに変わって、BPMも上がるんですよね。歌詞だけを見たらちょっと優しく歌おうかと思ったけど、こうやって蓮がロック調にしたということは力強く歌ってほしいのかなって。高校生の頃にバンドを組んでいたので、けっこう久しぶりの感じだったんですけど楽しかったです。
――相沢さんはロックの人というイメージはありますよね、たしかに。
仲川:僕もロックがすごく好きで。この曲はもともとピアノだけのバラードだったんですけど、レコーディングの2週間前ぐらいに急に気が変わっちゃって(笑)。ギターとベースも自分で弾きました。昔からX JAPANが大好きだったので、自然と影響されている部分はあるかもしれないです。
内田:勇仁のレコーディング、ちょっと見学したんですけど楽しそうでしたね。
相沢:あははは。楽しかったですね。
南:僕は自分が作詞した「Ylang Ylang」という楽曲なんですけど、アルバムの中で一番ラップパートを多くもらっている曲で、ひとりのラッパーとして挑戦した曲だなと思っていて。自分のソロ曲を作詞したことがあるけど、グループの曲は初めてだったので、最初はけっこう悩みました。ラッパーってそれぞれスタイルがあって、ライムに力を入れている方もいれば、フロウ重視の方もいる。でも、僕がこのグループでラップをする意味って、やっぱりメッセージ性を出すことが一番だという結論に至って。ライムに引っ張られ過ぎて歌詞がぼやけてしまうぐらいだったら、いっそストレートにまっすぐ伝えようと思いながら作詞していきました。
【MV】『Ylang Ylang』学芸大青春 / 女子に紛れてもらったハンドクリーム、めちゃくちゃ良い匂い
――メッセージ性の強い楽曲としては、戦争のことを想起させる「ひまわり」も触れずにはいられないですね。
内田:ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに蓮が作詞作曲した楽曲ですね。あまりネガティブな言い方はしたくないんですけど、戦争や平和を歌うのってすごく挑戦的なことだと思っていて。でも、僕らとしては少しでも多くの笑顔が見たい、というポジティブな想いで歌わせていただきました。
仲川:やっぱり「ひまわり」は、作ることへの葛藤がすごくありました。でも、音楽に限らず芸術って、表現に自由があるべきだと僕は思うし、普段言えないことや誤解されやすいことも、音楽に乗せればいいと思っていて。あとは僕、広島出身なので、昔から平和について考える機会は多かったんですよね。こういうことが起きている現状で、僕らは力不足で何もできないかもしれないけど、歌で平和を願うことならできると思って作ることを決心しました。
【MV】『ひまわり』学芸大青春 / 誰かが決めたBorder、戦火へ向かうOrder
星野:正直、僕らは今まで“戦争”を想像できなかった世代というか、平和な時代をぬくぬくと育ってきたので、並の覚悟で歌っていいことじゃないなと思っていたんですけど、蓮がメンバーに参考資料として1本の映画を見て、その映画の主人公の気持ちになってこの曲と向き合ってほしいと言ってくれて。あらためて戦争について考えるいい機会になったなと思います。
――そんな星野さんが1曲挙げるとしたら?
星野:「ふたり」という曲、振り付けをRIEHATA TOKYOのKAITAさんに担当してもらったんですけど、歌うように踊ってほしいとアドバイスしてもらったんです。それって逆も然りで、踊るように歌うということをライブで意識するようになったら、やっぱり昔と歌い方が違うんですよ。個人的にはそういう学びがあった曲で、けっこう思い入れがあります。
内田:KAITAさんのイメージって陽介と似てるなと思って。ロジックで言語化したものを組み込むより、けっこう感覚派なところが二人の波長としてマッチしているんだろうなっていう。
【Dance Practice】学芸大青春『ふたり』2022.11.18 Digital Release曲 / 気づかれちゃうし気付くし、泣いてもいいかな
――歌もダンスも洗練されて、ますますライブ・パフォーマンスの仕上がりが楽しみですね。
相沢:これまでのライブもすごく楽しかったし、いい時間を過ごせたなと思うんですけど、今は顔出しもしているし、次のツアーからは声出しもできるので、本当の意味でお客さんと一緒にライブを作り上げていくのが楽しみです。
南:今回は楽曲のことを中心にお話ししたんですけど、3月からのツアーは【ダンス!ダンス!!ダンス!!!】というタイトルで、音楽だけじゃなくダンスでも自分たちの色を出していきたいです。KAITAさんも含めて、振付師さんも事務所の方にブッキングしていただいたとかではなく、ジュネスのダンスを担当することの多い僕が、1曲1曲選んでお願いさせていただいたので、曲はもちろんダンスでもジュネスを感じてもらえたらなと思っています。
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